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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!松島編
318/364

松島編第27話 潮風舞う塩釜ストレート

花「後ろから見てわかる……ッ!!」

「高速コーナーで、無理な減速をしないで……」

「そのまま、突っ込んでいる……!!!」


WRXのフロントが、わずかに震える。

踏んでいる。限界まで。


花「直線でも……」

「ギリギリのレコードラインを……」

「空気の一番軽い場所を、掴もうとしてるのよ……!!」


視界の先、

ミッドナイトブルーのR33は――揺れない。


花「……これは……」

「カナタくんの86と……同じやり方……!!」


フェルリア「ええ……」

「“攻めて速い”のではなく……」

「失わないから、速い」


西塩釜の潮風が、さらに強く吹く。

だが、その風は――R33を乱さない。


美保「……ふぅ……」


胸いっぱいに、冷たい空気を吸い込む。

潮の匂い。

塩の粒子。

夜の海。


美保「潮風が……気持ちいい……」


ハンドル越しに、

路面と車体の呼吸が、はっきり伝わる。


美保「海の……優しい力が……」

「胸に……伝わってくる……ッ!」


アクセルは、踏み足すのではない。

預ける。


美保「そして……」

「この33も…………」


RB26の回転が、さらに澄む。

無理は、ない。

だが――速度だけが、自然に上がる。


美保「……一緒に……」

「泳いでくれてる……」


若林「速い!!!」

「R33!!高速域で、まだ伸びるゥゥゥ!!」


花「……っ……!」


距離が、また広がる。

追っているはずなのに、

“置いていかれる”のではなく――

次元が、ずれていく感覚。


花「……同じ……」

「カナタくんと……」

「同じ“理”で……走ってる……」


フェルリア「ええ……」

「減らさない走り」

「失速しない者だけが、入れる領域です」


美保「……行くよ」


誰に言うでもなく、静かに。


美保「海も……」

「33も……」

「私を、前に連れていって」


西塩釜の夜。

潮風と速度が溶け合う中で――


ミッドナイトブルーのR33は、

86と同じ“理”を纏い、

さらに深い速度域へ踏み込んでいった。


それは、

力の勝負ではない。


“減らさない者”だけが辿り着く、

静かな速さの世界。


花「後ろから見てわかる……ッ!!」

「高速コーナーで、無理な減速をしないで……」

「そのまま、突っ込んでいる……!!!」


WRXのフロントが、わずかに震える。

踏んでいる。

限界まで。


花「直線でも……」

「ギリギリのレコードラインを……」

「空気の一番軽い場所を、掴もうとしてるのよ……!!」


視界の先、

ミッドナイトブルーのR33は――揺れない。


花「……これは……」

「カナタくんの86と……」

「同じやり方……!!」


フェルリア「ええ……」

「“攻めて速い”のではなく……」

「失わないから、速い」


西塩釜の潮風が、さらに強く吹く。

だが、その風は――R33を乱さない。


美保「……ふぅ……」


胸いっぱいに、冷たい空気を吸い込む。

潮の匂い。

塩の粒子。

夜の海。


美保「潮風が……気持ちいい……」


ハンドル越しに、

路面と車体の呼吸が、はっきり伝わる。


美保「海の……優しい力が……」

「胸に……伝わってくる……ッ!」


アクセルは、踏み足すのではない。

預ける。


美保「そして……」

「この33も…………」


RB26の回転が、さらに澄む。

無理は、ない。

だが――速度だけが、自然に上がる。


美保「……一緒に……」

「泳いでくれてる……」


若林「速い!!!」

「R33!!高速域で、まだ伸びるゥゥゥ!!」


花「……っ……!」


距離が、また広がる。

追っているはずなのに、

“置いていかれる”のではなく――

次元が、ずれていく感覚。


花「……同じ……」

「カナタくんと……」

「同じ“理”で……走ってる……」


フェルリア「ええ……」

「減らさない走り」

「失速しない者だけが、入れる領域です」


美保「……行くよ」


誰に言うでもなく、静かに。


美保「海も……」

「33も……」

「私を、前に連れていって」


西塩釜の夜。

潮風と速度が溶け合う中で――


ミッドナイトブルーのR33は、

86と同じ“理”を纏い、

さらに深い速度域へ踏み込んでいった。


それは、

力の勝負ではない。


“減らさない者”だけが辿り着く、

静かな速さの世界。


若林「おおっとォォォ!!!?」

「坂田五郎丸が――11位にいたミルキークイーンをオーバーテイクしているぞォォォ!!!」


塩釜の夜、ストレートの終わり。

黒い巨体――ブガッティ・シロンが、音もなく横に並ぶ。


坂田「……なんだ、こいつ……」


視線の先、白く可憐なマシン。

ふわりとした挙動。

まるで氷菓子のような走り。


ミルキークイーン「あれぇ……?」

「ミルク氷が……効きませんわ〜……?」


ステアリングを切って“冷やす”ようにラインを作る。

だが――


坂田「そんなの……」

「耳ツンポな俺には、効かねぇよ」


アクセルを、ほんの一段だけ深く。

それだけで、シロンの世界が変わる。


坂田「それにな……」

「俺は――漆黒の魔王だからな……!!」


一瞬。

景色が、後ろへ流れる。


若林「抜いたァァァァァ!!!」

「ミルキークイーンを――シロンが一気に飲み込んだァァァ!!!」


フェルリア「力任せではありません……」

「余裕を残したままの、完全な加速です」


ミルキークイーン「まぁ……」

「黒い方、ちょっと……冷たすぎませんこと……?」


その声は、すでに後方。


若林「止まらない!!!」

「VTuber・坂田五郎丸!!」

「快進撃を――ここでも繰り広げているゥゥゥ!!!」


シロンは、まだ踏まない。

だが、もう止まらない。


若林「やはり――」

「元・絶対王者NSX吉田と!!」

「並走したあの少年は――黙らない!!!」


坂田「……吉田さん」


一瞬だけ、過去がよぎった。

赤いNSX。

横に並んだ、あの日の直線。


坂田「……あの時からだ」


「速さってのは……」

「吠えるもんじゃねぇ」


「静かに――」

「前に出るもんだ」


シロンが、さらに一台を射程に捉える。

まだ上がある。

まだ、届く。


若林「坂田五郎丸!!」

「このまま、どこまで行くゥゥゥ!!?」


塩釜の夜。

潮風の中で――


漆黒の魔王は、

静かに、しかし確実に――

中団を食い破り始めていた。


若林「な、なんだァァァァァ!!?」

「坂田五郎丸が――1位に浮上だァァァァ!!!!」


直線の終わり、潮風が一段強くなる。

漆黒のブガッティ・シロンが、信じられない速度で先頭に躍り出た。


内藤「えへへ☆」

「……早すぎ……」


カナタ「は!?」

「今、高速で――……!!」


花「はあああ!???」


黒川「オイ!!」

「俺のポジション返せよオラオラオラァァァァ!!!!」


美保「あ……でも……」


その瞬間――


ドボオオオン!!!!


若林「はい、来ましたァァァァ!!!!」

「坂田五郎丸!!R45を防御無視したまま――」

「塩釜湾にダァァァァァーイブッッ!!!!!!」


夜の海面が大きく波打つ。

水柱が上がり、街灯の光が砕けて散る。

だが、破壊はない。

ただ――勢いが、海へ逃げただけ。


黒川「相川の次に……」

「テメェかよッ!!!!!!」


花「何してんのシロォォォンッ!!!」


ジュン「あー……」

「やっぱり、そうなると思った……」

「だって……ブガッティ、1500馬力あるもんね…………」


実況席がざわつく。

だが、海は静かだった。


美保「……そうなると思ってた」


ミッドナイトブルーのR33は、

塩釜湾の気配を背に受けながら、真っ直ぐ走り続ける。


美保「でも……」

「海は、私の味方だよ……」


小さく、微笑む。


美保「……愛してる」

「ずっと…………」


若林「坂田五郎丸は――」

「ここで事実上のリタイア!!」


フェルリア「……速度の神様に、最短距離で触れに行きましたね」


一方、コース上。


若林「順位が大きく動いたァァァ!!!」

「先頭、再シャッフルだァァァ!!!」


セリナは息を整え、

カナタは目を細め、

黒川は歯を食いしばる。


そして――


美保のR33だけが、

何事もなかったかのように、

潮風と同調したまま前へ進んでいた。


塩釜の夜。

海は、すべてを飲み込まない。


“受け止める者”だけを選ぶ。


レースは――

まだ、終わらない。


フェルリアは、もう堪えきれなかった。


実況席の机に、

どん、どん、と片手で叩きながら――

肩を震わせる。


フェルリア「……あー……」


「……これは……もう……」


言葉が途切れ、

クスクスと笑いが漏れる。


フェルリア「復帰、無理ですね……」

「ボディも……アレですし……」


モニターには、

塩釜湾に突っ込んだ漆黒のシロン。

水面に残る波紋だけが、静かに広がっている。


フェルリア「というか……」


一拍。


フェルリア「……ダサッ」


若林「ちょ、フェルリアさん!?」

「今、全国放送――」


フェルリア「だって……」


もう一度、机を軽く叩く。


フェルリア「1位になって……」

「次の瞬間、海ダイブですよ?」


「伝説には……なりましたけど……」

「順位表には……残りませんね……」


モニターが、順位更新を映す。


坂田五郎丸:リタイア


フェルリア「……はい、消えました」


若林「言い切ったァァ!!」


フェルリアはようやく顔を上げ、

目尻の涙を指で拭う。


フェルリア「速かったのは……事実です」

「でも……」


「コースを走りきれない速さは、レースじゃない」


その視線は、

今も走り続けるマシンたちへ。


フェルリア「残ってる人たちが……」

「本物ですね」


実況席の空気が、少し引き締まる。


若林「さあ!!」

「レースは続くゥゥゥ!!」


画面の中、

潮風を切り裂くR33、

淡々と前を詰める86、

歯を食いしばる先頭争い。


フェルリア「……」


小さく、微笑む。


フェルリア「……面白くなってきましたね」


塩釜の夜。

派手に散った者と、

静かに残った者。


本当の勝負は――

ここからだった。


1位 内藤セリナ(Audi R8)

2位 黒川海斗(EVOⅨ MR)

3位 小岩イオリ(812スーパーファスト)

4位 相川美保(R33 GT‑R Vスペック)

5位 山吹 花(WRX STI VAB)

6位 カナタ(86 NA)

7位 佐藤大河(Corvette C8)

8位 柊 蒼真(シビック FL5)

9位 岡田大成(GRカローラ)

10位 ジュン(RX‑7 FD)

11位 伊藤翔太スイフトスポーツ

12位 山吹芽衣(ポルシェ911 カレラ)

13位 ミルキークイーン(LC500)

14位 柳津雄介(BMW M4 DTM)

15位 湯川サトル(S2000)

16位 高村圭吾(フェアレディZ Z33)

17位 サテラ(EVO VII MR)

18位 坂田五郎丸(※リタイア)

19位 相川律(※リタイア)

20位 クレア(※リタイア)


※現在 走行中:17台/リタイア:3台(坂田五郎丸・相川律・クレア)

※先頭は セリナ/黒川/イオリ の三つ巴、

※追撃が 美保・花・カナタ の“失速しない組”。


フェルリア「……この絶妙な高速コーナーで……」


モニターに映るのは、

真昼の光を受けて走る――赤い戦闘機、腹切カナタのトヨタ86。

アスファルトは乾き、空は高く澄んでいる。

影が短く、速度の錯覚が起きにくい――

誤魔化しの効かない時間帯だ。


フェルリア「……この速度域で……」


トヨタ86は、ラインを外さない。

だが――リアがわずかに滑っている。


フェルリア「……ドリフトしていますね」

「真昼の高速コーナーで……」


若林「えっ!?昼間で、しかもこのスピードで!?」


フェルリア「はい……」

「光の下では、はっきり分かります」


画面の中、

トヨタ86はブレーキに頼らず、

姿勢だけで曲がっている。


フェルリア「赤い戦闘機が……」

「スピードそのものに……」

「魅せられているように感じます……」


太陽光が、赤いボディのラインを際立たせる。

隠しようのない挙動。

それでも――乱れない。


フェルリア「ただ……」

「あのトヨタ86は……NAです」


「それが……」

「絶妙なバランスなんです」


R、WRX、フェラーリ、ポルシェ。

本来なら、

昼の直線では差がはっきり出る相手。


フェルリア「それらに……」

「ここまで……今まで……」

「食いついてきたのは……」


一拍。


フェルリア「……奇跡ですね」


若林「昼間で、それをやってるのが……すごい!」


フェルリア「音を聴いてください……」


実況席に届く、

高回転で張りついたままのエンジン音。

澄んでいるが――

どこか限界を知らせる乾いた響き。


フェルリア「……そろそろ……」

「限界です……」


「寿命が近い音です」


昼の実況席が、一瞬静まる。


フェルリア「この時代に……」

「2012年式のトヨタ86……」


「昼間の高負荷で……」

「ここまで走らせるなんて……」


「かなりの“生き残り”ですよ」


画面の中、

赤い戦闘機――トヨタ86は、

それでもWRXに食らいつく。


影が短い。

逃げ場はない。

すべてが見える真昼間。


カナタ「……」


声はない。

だが、覚悟だけが、

太陽の下ではっきり伝わる。


フェルリア「……それでも……」


「最後まで……」

「走ろうとしていますね……」


若林「腹切カナタ……!!」


真昼の空。

強い光の中で――


古いNA、トヨタ86が、

最新鋭のマシンに噛みついたまま、

“最後の速度”を削り出している。


夜ではない。

演出もない。


誤魔化しの効かない真昼間だからこそ、

この走りは――本物だった。


若林「赤い戦闘機が――西塩釜ストレートへ突入です!!!」

「ファンの皆様!!!」

「しっかり、目に焼き付けてください!!!」


真昼の太陽が、アスファルトを白く照らす。

逃げ場のない直線。

誤魔化しの効かない――本物の速度区間。


赤い戦闘機、腹切カナタのトヨタ86が、

風を切り裂いて伸びていく。


カナタ「……行くぞ……!!」


エンジンは、限界域。

それでも、回転は落とさない。


カナタ「この先の……」

「海岸沿いのTポイントコーナーで……いく!」


若林「来たァァァ!!」

「勝負所を――自分で宣言したァァァ!!」


フェルリア「……引きませんね」

「もう……覚悟は、決まっています」


真昼の海が、視界の端で光る。

青と白の境界線。

Tポイントコーナー――

突っ込めば、失速。

残せば、生きる。


そして――

この瞬間、SNSも爆発していた。


《SNSリアルタイム反応》


▶「赤い戦闘機キターーー!!!」

▶「西塩釜ストレートでまだ踏むの!?正気か!」

▶「トヨタ86、昼間でこれとかヤバすぎる」


▶「相川美保のR33、マジで海の化身」

▶「花ちゃん必死すぎて泣ける」


▶「坂田五郎丸さぁ……」

▶「1位→海ダイブは伝説すぎるwww」

▶「ブガッティでダイブは草」


▶「アホなリタイヤ3連発ほんとエーペックス」

▶「でも嫌いじゃない」


▶「赤い戦闘機、壊れるなよ……」

▶「Tポイントで何か起きるぞ……」


花「……来る……」


WRXのコクピットで、花が息を呑む。

赤い戦闘機の進入角が、明らかに違う。


美保「……」


ミッドナイトブルーのR33は、

少し離れた位置から、静かに見ている。


美保「……あの子……」

「本当に……行く気だね……」


若林「トヨタ86!!」

「西塩釜ストレートを全開で駆け抜け――」

「Tポイントコーナーへッ!!!」


カナタ「……まだ……減らすな……!」


エンジン音が、悲鳴に近づく。

だが――

アクセルは、戻らない。


フェルリア「……これは……」

「走りで、答えを出しにいってます……」


真昼の海。

逃げ場のないコーナー。


赤い戦闘機は――

時代も、限界も、

全部まとめて――突っ込もうとしていた。


1位 黒川海斗(EVO IX MR)

2位 内藤セリナ(R8 V10)

3位 古賀加奈子(BMW M3)

4位 小岩イオリ(812スーパーファスト)

5位 相川美保(R33 GT‑R Vスペック)

6位 山吹 花(WRX STI VAB)

7位 佐藤大河(コルベット C8)

8位 柊 蒼真(シビック FL5)

9位 腹切カナタ(トヨタ86 NA)

10位 岡田大成(GRカローラ)

11位 ミルキークイーン(LC500)

12位 伊藤翔太スイフトスポーツ

13位 霧山トオル(ヴェネーノ)

14位 山吹芽衣(ポルシェ 911 カレラGTS)

15位 佐藤ジュン(RX‑7 FD)

16位 柳津雄介(BMW M4 DTM)

17位 湯川サトル(S2000)

18位 高村圭吾(フェアレディZ Z33)

19位 サテラ(EVO VII MR)

20位 川村修一(Kワークス)


※リタイア:相川律/クレア/坂田五郎丸



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