松島編第15話 レクサスの誘惑
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若林「ああ!!!?腹切カナタ、再び仕掛けたァァァ!!!!
赤い戦闘機がLC500の外側へ飛び出したぞ!!!!!」
カナタ「……ッ!!!
行く……!!行かせろ……ッ!!」
ミルキークイーン「まあ……また来るんですのね……カナタさん……。
ですが……わたくしの壁は……そう簡単には崩れませんわ〜……」
グワアアアアアアアア!!!!!!
赤い86が全身を震わせながら外へ踏み切る。
だがLC500は、寸分の狂いもなく同じタイミングで角度を合わせ、
進路を塞ぐ。
若林「だめだァァァァ!!!
抜けないッッ!!!!
外から、内から、カナタが全部のラインを探っているのにッ……!!
進路そのものが閉じられているッ!!!!」
カナタ「ちょ……っ……!!
なんでだよ……ッ!!
踏んでる……踏み切ってるのに……前が……前が開かねぇ……!!」
ミルキークイーン「ふふ……残念ですわ〜……。
“そこ”は……カナタさんが出てくると分かっておりましたの……」
若林「読まれている……!?
えっ、何ですかこれ!!?
テールの動きが……避けてるんじゃなくて……
誘導して塞いでる!!!?」
フェルリア「ええ……ミルキークイーンのLC500は、
重さが武器であり、
同時に“ラインの芯”を感じ取る精度が異常に高いんです。
カナタくんの86が踏んだ瞬間、
どの方向へ抜こうとするかをほぼ“勘”で読むんですよ。」
若林「は、反則級じゃないですかそれ……!!」
フェルリア「それに……
LC500は直進の安定性が異常に高いので、
ブロックラインに迷いが一切出ない。
彼女にとってこれは……
“遊び”みたいなものですよ。」
カナタ「クソ……ッ!!
踏んでるのに……
重い……!!
LC500が前の空気ごと塞いでくる……!!
なんだよ……この壁……ッ!」
ミルキークイーン「焦らないでくださいまし、、、。
わたくしはただ……カナタさんの前を走っているだけですわ〜……
それ以上でも……以下でもなくてよ……?」
若林「う、動けない……!!
腹切カナタが完全に進路を奪われた!!!
あの攻めのカナタが……まるで飛び出せない!!!」
フェルリア「これは……“封鎖”ですね。
ミルキークイーンの本領です……。」
若林「封鎖って……そんな……
まだ序盤なのに……
カナタ選手が……ここまで抑え込まれるなんて……!!」
カナタ「まだだ……まだ終わってねぇ……!!!
出口を……どこかに……
絶対あるはずだろ……!!
俺の86が……飛べる場所が……!!」
ミルキークイーン「ふふ……
では、探してみてくださいまし……カナタさん……わたくしを……抜けるという道を……ね……?」
ミルキークイーン(通信)「花さ〜ん……聞こえまして……?」
ズルッ……ギィャァァァァ!!!!
キキィィィ……!!!
花「ふざけんじゃないわよォォ!!
あと少しで三百六十度スピンするところだったじゃない!!!」
花「アンタのその声……!!
ブレーキより効くわよッ!!
集中ぶち壊しに来るんじゃないのッ!!?」
ミルキークイーン(通信)「あら〜……ごめんあそばせ……。
でも花さん、ちょっと力みすぎですわ〜……?
そんなに熱くなったら……クルマも拗ねてしまいますわよ〜……」
花「はあああ!?
アンタに言われたくないわよ!!
その“ゆるふわボイス攻撃”やめなさいっての!!!」
若林「花さん!?怒りの通信!!
ミルキークイーンのゆるふわ攻撃に……
完全にペース乱されております!!!」
フェルリア「ミルキークイーン……彼女はね……声だけで空気を変えるんですよ。
それがアクセルワークにも、ハンドルにも、ぜんぶ影響してくるんです。」
花「くっそォ……!ああもうっ……!!
ミルキークイーン!!
アンタ、ホントに敵に回すと厄介よ!!!」
ミルキークイーン(通信)
「ふふ……花さんもカナタさんも……
レース後にぷるんぷるんにして差し上げますわ〜……♡……」
花「やめろォォォォ!!!!そのぷるんぷるんって何よォォ!!!」
花「くっ……!?
M3!!??
それに内藤のR8まで来てんの……!!?」
白青のWRX、そのテールに影のように食いつく二つの怪物。
片方は獣じみた咆哮を放つ赤いM3、もう片方はレモン色の閃光のR8。
古賀「花ちゃん、悪いけど……ここは“通らせてもらう”よ」
内藤「えへへ☆ばんざーいばんざーい……☆
花ちゃん見ぃつけたぁ〜〜♡」
花「このッ……!!黙って抜けると思うなよォォ!!」
しかしその瞬間、二台は呼吸を合わせた獣のように加速を始めた。
M3の直6が吠え、R8のNA V10が空気を裂くように伸び上がる。
WRXの水平対向サウンドが一瞬だけ掻き消された。
若林「きたきたきたァァァァァ!!!!!」
「山吹花のWRXSTiを……
M3とR8が同時に並んだ!!!」
フェルリア「これは……まずいですね……。
WRXSTiは低中速の鋭さが強みですが、いまはストレート寄りの住宅街区間。
M3もR8も……最高速の“伸び”が違います。」
内藤「ほら〜花ちゃん、いったん後ろで見てて〜?
レモン色の感動見せてあげるね〜☆」
花「……ッッッ……!!
後で覚えとけ内藤ォォォ!!!!」
古賀「花ちゃん、ごめんね!
でも、トップ集団に追いつくには……ここで行くしかないの!」
グワアアアアアアアア!!!!
赤いM3が花の横を擦り抜けた。
さらにレモン色のR8が、まるで踊るみたいに軽い加速で花の視界を奪っていく。
花「くそッ……ッッ……!!
前が塞がったッ!!」
若林「オーバーテイク成立!!!
なんとM3とR8が、
WRXを一気に交わし去りましたァァァァァ!!!!」
フェルリア「これで花ちゃんは順位を落としましたね……。
でも……彼女は簡単には終わりませんよ。
この先はコーナー区間。
WRXの牙は、これからです。」
花「……逃がさない。
アンタたち二人……絶対“前”で捕まえるからね……!!」
名取の住宅街の細いストレート、その瞬間だった。
ガアアアアアアアア!!!!!!
空気を叩き割るような横殴りの衝撃音が、WRXのキャビンを震わせた。
花「……は……???」
左のフェンダーに鋭い衝撃。
視界の端を、ひらりとレモン色の閃光がすり抜ける。
内藤「えへへ☆
擦り傷与えちゃったー☆
おっさきー☆」
ヴァァァァンッ……!!!
R8のNA V10が、まるで悪戯上手の天使が笑って首筋を撫でていくみたいに響き渡り、
住宅街の陰へ消えようとした。
花「…………ふざけんなァァァァァ!!!!!!
いますぐその頭!!
冷凍庫に閉じ込めてやりてェぐらいだァァァァァ!!!!!!」
怒気が爆ぜる。
水平対向ターボのエンジンが吠えた。
ドゴオオオオオオンッ!!!!!!
花のWRXが地面を蹴り上げ、
怒りのままにR8へ食らいつく反撃の加速に移る。
エンジン音が街路の壁を震わせ、
舗装の隙間から舞い上がった砂埃が後方へ吹き飛ぶ。
冷気にも似た殺気が花から漏れた。
花「ナメんなって言ってんでしょォォォ!!!!
内藤ォォォォーーーー!!!!!!」
名取の住宅街、建物とガードレールが迫り寄る細い道。
そこへ――背後から、地面をえぐるような三気筒ターボの雄叫びが迫る。
ゴォォォオオオオオッッ!!!!
若林(実況)「その後方からも来たァァァァ!!!
GRカローラ岡田ァァァァァ!!!!!!」
花「もう……カローラまで……!??」
背後のミラーに、白と赤のGRカローラの鋭いグリルが飛び込んでくる。
まるで獲物に噛みつこうとする狼の顔だ。
岡田「花さん……!!
アンタの怒り、後ろからでも丸聞こえだぞ……!
でもな!!オレだって負けられないんだよッ!!!!」
ガアアアアアッッ!!!
岡田のGRカローラが、ブレーキの火花を散らしながら切り返し、
花のWRXのリアに吸い付くようにラインを重ねてくる。
花「ッ……!!
内藤、古賀……次はカローラまで来るとか……マジで全員順番にケンカ売ってんのかッッ!??」
フェルリア(解説)「この区間……!
WRXの重量とトルク、そしてGRカローラの軽さと旋回力……
どちらが上でもおかしくない状況です……!!」
住宅街の道幅は狭い。左右は民家。
ほんの数センチの判断ミスで壁とキスだ。
岡田「オラァァァ!!前に出る!!
花さん、アンタのケツ……もらうからなぁッ!!」
花「ふざけんじゃないわよ岡田ァァァァ!!!!
内藤の次はアンタ!?
全員まとめてかかって来いってのッ!!!!」
エンジン音が絡み合う。
タイヤが路面を引っかき、住宅街に白煙が走る。
先行するR8内藤。
すぐ後ろにM3古賀。
その後ろに怒りのWRX山吹花。
さらに背後から一歩ずつ迫るGRカローラ岡田。
四台のモンスターマシンが、名取の住宅街という狭い檻に押し込められたように暴れまわる。
名取の細い住宅街。
建物の壁が迫り、道幅はもはや“車幅ギリギリ”。
そんな場所で、まったく空気を読まない爆弾が投下された。
白と赤のGRカローラがWRXにビタ付けしたまま……岡田の口から飛び出したのは――まさかの告白。
岡田「花さん……あなたのこと好きです……!
結婚してください……!!!!!」
花「はああああああああああああ!?!???」
WRXが一瞬、蛇行する。
いや、明らかに動揺だ。
花「アンタ何言ってんのよォォォ!?!!
レース中!!人のケツに張り付いて!!クランク目前で!!何が結婚よォォォ!!頭どうかしてんの!?!?」
フェルリア(解説)「岡田くん……あんた今、人生で最も命の危険なプロポーズしてますよ……」
岡田「いや……!でも……!!
このレース見てたら……やっぱ花さんだって思って……!
アクセル全開で想い伝えたくて……!!」
花「伝えるなァァァ!!そんな想い!!!
黙って走れェェェ!!!!馬鹿ぁぁぁ!!!」
岡田「うぉぉぉ!?怒られた!?
でもオレは……諦めないッッ!!
花さんが前を走る限り、俺も全力で追うッ!!人生もッ!!レースもッ!!」
若林(実況)「えええええ!!??プロポーズしながらクランク入りィィィ!?
大変危険です!!!!」
花「危険なのはアンタの頭よ!!!
ぶっ飛ばすぞ岡田ァァァ!!!」
住宅街に、WRXの怒号とGRカローラの本気の雄叫びが響き渡る。
名取住宅街の出口。
クランクの影が濃く落ち、エンジン音が建物の壁で跳ね返ってくる。
その中で――赤い戦闘機トヨタ86は、まだ前に出られない。
ミルキークイーンのLC500が、まるで柔らかい氷の盾のように
すべての“出口”をふわりふわり遮ってくる。
そのライン取りは優雅で、しかし絶望的に強い。
カナタ「……チッ……出れねぇ……!
呼びかけるなよ……エンジンまで震える……!」
ミルキークイーン「あらあら〜?そんなに焦らないでくださいまし〜……
レースが終わったら、ぷるんぷるんにして抱きしめて差し上げますわ〜……
全身……冷たくて気持ちいいミルク氷でぇ……」
カナタ「やめろ……その声……集中がズレる……!」
白く輝くLC500のリアが、道幅めいっぱいに広がる。
ミルキークイーンはスピードを落とさない。
まるで“氷のベール”で背後の相手を絡め取るように、絶妙なラインでブロックを続けていた。
そこへ――
背後から水鮫の咆哮が迫る。
ヴウウウンッ!!!!
水色の影が噛みつくように接近する。
サテラ「へえ……カナタくんと絡んでたの?
ボク、そういう悪趣味は嫌いなんだけどね〜?☆」
カナタ「サテラ……!来たのか!」
サテラの口元がニヤリと歪む。
青年の声は軽いのに、どこか棘がある。
サテラ「……見つけたぞミルク女。
テメェは痴女同士でしゃぶってな……このクランクで沈めてあげるよ?」
ミルキークイーン「まあ……物騒ですわ〜。
サテラくん、もっと穏やかにいきませんこと……?」
サテラ「穏やかぁ?ボクが?
知ってるでしょ……ボク、“気に入らない相手”には容赦しないんだよ?」
エボ7MRのタービンが吠える。
水色の光が一瞬、LC500と86の隙間へ差し込んだ。
カナタ「……来るなら来い、サテラ!
ミルキークイーンの後ろは譲らない……!」
サテラ「なら……このブロックごとこじ開けてあげるよ、カナタくん☆」
水色のエボ、白のLC500、赤の86。
三台のラインが“刺さり合う”ように重なっていく。
水色のエボ7MRが、赤い戦闘機と白いLC500のすぐ背後に食い込む。
空気がわずかに震えるほどの距離。
その中でサテラが、小さく息を吐いた。
サテラ「カナタくん……前回は協力したよね、ボクたち。
だけど今回はパスするよ。味方しない……“競争相手”として行く。」
カナタ「……ああ、分かってるよ。
お前はそういうヤツだ。遠慮はいらねえ。」
サテラは前方のLC500を一瞥した。
ミルキークイーンがまるで“氷のベール”のように、
完璧なラインで後続を寄せつけない走りを見せている。
ミルキークイーン「このまま、お二人まとめて抱きしめて差し上げますわ〜……
逃がしませんわよ〜……?」
サテラ「これ。これが邪魔なんだよ……氷のベールってやつね。
このブロック、普通にやったら絶対抜けないじゃんか……」
水色の瞳が細くなる。
サテラ「だから……まずはこれをどうにかしないとね。」
ヴォオオオオッッ!!
一瞬でタービン音が跳ね上がる。
サテラのエボが、左右に揺さぶるような蛇行を開始。
LC500の死角、赤い86の真後ろ、あらゆる角度を一瞬で測りきる。
カナタ「おい……サテラ!?
まさか力づくでいく気かよ……!!」
サテラ「ボクはね……
“堅い壁ほど壊したくなる”んだよ。
それが女王でも、氷でも、ミルクでも、なんでも。」
ミルキークイーン「おほほ……は言いませんけれど……
やれますの〜?その軽い車で〜……?」
サテラの笑みが鋭く跳ねた。
サテラ「軽いからいいんじゃん。
じゃ、行くよ……氷の女王サマ。」
三台が、クランクの闇へ吸い込まれる。
ブレーキングの火花と、タイヤが路面を噛む鋭い泣き声が重なる。
その中心で、白い艶をまとったLC500が――まるで氷の彫刻が走っているかのように――微動だにしない。
ミルキークイーン「させませんわ〜……
この位置は渡しません……お二人とも、後ろでぷるんぷるんしていなさいませ〜……」
軽い声。
なのに、走りは“絶壁”。
小さな隙も、甘いラインも、一切ない。
サテラ「……クソ、しぶといな……
ブロック精度、化け物レベルじゃん……!」
ミルキークイーンはほんのわずかに角度を変え、
カナタもサテラも、抜けるラインを塞がれていく。
まるで、透明な氷の壁が路面に張り巡らされているようだった。
カナタ「……!
本当に……道がねぇ……!!」
サテラが低く舌打ちをする。
サテラ「ねぇミルク女……
アンタ、普通のLC500じゃないよね?
重いはずなのに……なんでその角度で踏ん張れるんだよ……!」
ミルキークイーン「秘密ですわ〜……
でも、ひとつだけ申し上げますと……」
白い指先がステアリングをより深く握り込む。
ミルキークイーン「私は“護る”タイプなんですの。
この位置も……
この流れも……
誰にも崩させませんわ〜……」
カナタ「……ッ!」
サテラ「……ったく、やりづれぇ……
でも、壊せない壁なんてないんだよ……!」
蒼いエボが再び横に揺れる。
白いLC500の僅かな死角を探る。
赤い86はそのすぐ後ろで、三台の気配に飲み込まれそうになりながらも、前を睨み続ける。
ミルキークイーン「さぁ……どちらが先に崩れるのかしら〜……?」
サテラ「……覚悟しろよ、ミルク女……」
路面が唸った。
三台の地獄めいた駆け引きが、次のコーナーへと繋がっていく。
カナタ「……この組み合わせ……
この圧……このブロッキング……
間違いない……!
吉田さん……吉田さんと“同じ匂い”がする……!!」
胸の奥がざわめく。
赤い戦闘機のステアリングが震えたのではなく、カナタ自身が震えていた。
あの“黒いNSX”の強烈な壁。
一切の遊びも、油断も、生ぬるい隙もない。
抜こうとした瞬間に心を折りにくる、あの圧倒的な包囲感。
今、目の前でミルキークイーンが見せているのは――
まさにその“絶対王者の壁”そのものだった。
カナタ「吉田さん……!
ミルキークイーンさんのライン取り……
あのときの、吉田さんのブロックと……怖いくらいに似てる……!」
ミルキークイーンは通信越しにくすりと微笑む。
ミルキークイーン「まあ〜……そう言われると嬉しいですわ〜……
あの黒いNSXさん……以前、実況席から見ていて思いましたの。
“あら、可愛らしい走りですわ〜”って」
サテラ「可愛らしいじゃねぇよ!
黒の化け物と同じとか洒落にならねぇんだけど!!」
ミルキークイーンは意図的なのか天然なのか分からない、
“柔らかい声なのに硬すぎる壁”をそのまま保ち続ける。
ミルキークイーン「でも……今はこの位置、譲りませんわ〜。
カナタさん……あなたの赤い戦闘機、とても素敵ですけれど……
まだ、わたくしを崩すには早いですわ〜……?」
カナタ「……ぐ……ッ!
だが……ッ!!」
サテラ「ボクもまだ諦めねぇよ……!
ミルク女の壁なんか、必ず突破してやるから……!」
ミルキークイーンは、ほんのわずかにステアリングを切る。
その一瞬で――
カナタもサテラも、二人同じタイミングで悟った。
これは、吉田と同じ“ブロック巧者”ではない。
それを“超えている”。
カナタ「……ッ!
この人……!」
ミルキークイーン「ふふ……まだまだこれからですわ〜……♡」
白いLC500の“氷のベール”が、赤と水色の二台を完全に封じ込める。
次のクランクが、三人の勝負を待ち受けていた。
ミルキークイーン「コーナー……ここもブロックできますわ〜……」
微笑む声は穏やかなのに、ラインは氷刃のように鋭い。
LC500 がコーナーの頂点をぎゅっと押さえつけ、赤と水色の二台をまるごと締め出すように滑り込む。
サテラ「前に出たいが……っ、この細い道路じゃ……ダメだ……!!
クソ……!ラインが全部潰されてる……!完全に“氷の柵”だろこれ……!」
サテラのエボ7MRが横に揺れる。
フロントが“開きかけた”瞬間、ミルキークイーンのLC500がさらに角度を変えて塞ぎ込む。
ほんの数センチの世界で、完全に“出口”を閉じられた。
カナタ「……ッ……!!
きつい……!!
この団子状態……抜ける場所が……ない!!
スピードを上げれば壁みたいに締めてくるし……
でも、離れたら終わる……!!」
アクセルの震えがブレていく。
赤い戦闘機の心臓ともいえるエンジンが、
“行けるぞ、踏めよ”と囁いてくる感覚がありながら――
その先にLC500の鋭いラインが立ち塞がる。
ミルキークイーン「焦らないでくださいまし〜……
この道は狭いですもの。
無理をして抜こうとする方が危険ですわ〜……?」
その柔らかい声が逆に、
カナタとサテラの神経をじわじわ削る。
サテラ「……はぁ!?そういう余裕ぶったこと言って……
次の右!ここでいっちょ……うわッ、塞がれた!!?」
ミルキークイーンのラインは芸術的だった。
インもアウトも、わざと少しだけ余白を作りつつ、
“絶対に”割り込ませない“黄金比の角度”で道を塞ぐ。
カナタ「なんなんだ……この人……!
吉田さんの時みたいに……
先が全部読み切られてる……!」
サテラ「くっ……!こんな壁、久しぶりだよ……!!でもな……燃えてきた……!!」
カナタ「サテラさん......!!!」
ミルキークイーンは微かに笑い、
次のコーナーへと白いベールをたなびかせながら進んでいく。
ミルキークイーン「さあ、お二人とも……
まだまだ続きますわ〜……♡」




