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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
松島編
299/364

松島編第11話 一番危ないヤツ

通算271話


若林「先頭は黒川海斗ォォォ!!!!!」

「黒いエボ9MR!!その速さは完全に別次元!!」


黒川「このままァァァ!!!

誰にも邪魔させずにィィィ!!!!!」


ギヤァァァァァァァ”!!!!!!!!!!


黒川「ゴール行くぞオラァァァァァ!!!!!」


1位 黒川海斗(ランサーエボリューションIX MR)

2位 山吹花(WRX STI VAB)

3位 相川律(R35 GT-R)

4位 クレア(R35デビルスタイル)

5位 岡田大成(GRカローラ)

6位 佐藤大河(コルベットC8)

7位 腹切カナタ(トヨタ86 前期型)

8位 柊蒼真(シビックタイプR FL5)

9位 小岩イオリ(フェラーリ812スーパーファスト)

10位 サテラ(ランサーエボリューションVII MR)

11位 伊藤翔太(スイフトスポーツ ZC33S)

12位 山吹芽衣(ポルシェ911 カレラ)

13位 高村圭吾(フェアレディZ Z33)

14位 霧山トオル(ランボルギーニ ヴェネーノ)

15位 相川美保(R33 GT-R ミッドナイトブルー)

16位 柳津雄介(BMW M4)

17位 内藤セリナ(アウディ R8 V10 NA)

18位 ミルキークイーン(レクサスLC500)

19位 湯川サトル(S2000)

20位 佐藤ジュン(RX-7 FD3S 紅)

21位 川村修一(Kワークス・黄色)


先頭――

その景色だけは、後方の地獄とは別世界だった。


潮風を裂き、松島の海岸線を真っ黒な弾丸が突っ走る。

ランサーエボリューションIX MR。

黒い塊が、まるで“道路そのものを噛み砕いて進む獣”みたいに跳ねる。


黒川海斗。


黒い翼の暴走族が、レースの先頭を完全に掌握していた。


黒川「だはははははは!!!!」

「ざまぁみやがれェェェ!!!」


エボ9MRの排気が、海沿いの柵を震わせ、波打ち際の水面まで揺らす。

アクセルを踏むたびに、車体が怒りの拳で殴られたみたいに前へ弾ける。


若林「先頭は黒川海斗ォォォ!!!!!」

「黒いエボ9MR!!その速さは完全に別次元!!」


フェルリアが、少し目を細めてモニターを見つめる。


フェルリア「……粗い走りですけど……恐怖を知らないのが、逆に最大の武器ですね。

前も横も後ろも……あの子は“全部ブレーキングポイントじゃない”と思ってます」


黒川は海岸線を飛び出す。

後方の混乱も何も関係ない。

ただ、勝つことだけを思いっきり楽しんでいた。


黒川「このままァァァ!!!

誰にも邪魔させずにィィィ!!!!!」


ギヤァァァァァァァ”!!!!!!!!!!


黒川「ゴール行くぞオラァァァァァ!!!!!」


海風とエグゾーストが混ざり、黒川の影が黒い稲妻のように路面を滑る。


山吹花のWRXは距離を詰めるために必死。

相川律のR35も、なお追い続けている。

だが今は――

完全に黒川が世界の先頭で笑っている。


暴走の走り。暴力的な加速。

そして何より――


黒川海斗の“勝つ”という気迫が、

海岸線の風よりも強烈だった。


霧山(通信)

「伊藤くん……ボクが今日、このレースに参戦したのはね……

君のその……なぜか“生き返った”スイスポを……

潰してあげたいんだよ……!!!

海にね……ゆっくり沈めてあげたい……」


海風の温度が一瞬で落ちた。


ヴェネーノの排気が低く唸り、まるで捕食者の呼吸そのもの。


伊藤(通信)

「霧山ァ……!!!

ふざけんなよ……!!

俺のスイスポは……何度でも走るんだよ!!!

お前なんかに沈めさせるか!!!!!」


その叫びは鋼の反骨。


復活したスイフトスポーツ ZC33Sが、まるで怒りを共有するように回転数を跳ね上げた。


花(通信)

「……酷い……!海に落とすとか……悪趣味にも程があるわよ霧山……!!!

伊藤くんを……そんな目に遭わせさせない!!!」


花の声は炎のように真っ赤で、海風すら焼く熱量。


霧山(通信)「ふふ……怒ると可愛いね、花さん……でも……この世界ってさ……

速い者しか、生き残れないんだよ……?」


海の底から響くような声。

ヴェネーノの低周波サウンドに混じるように、ただ不気味に笑う霧山。


伊藤(通信)「花!大丈夫だ……俺が……守る!!

霧山ァ!!!俺が相手だ!!!!」


黒川(通信)

「おいおい……後ろで何やってんだテメェら……!

勝手にホラー始めんなや!!!

そんな暇あんなら俺を追って来いよォ!!!!」


海沿いの道がざわめく。


松島戦の空気に、

霧山という“深海の捕食者”が牙を剥いた瞬間だった。


突風みたいな咆哮が背後から迫った。


WRXのミラーに、

黒い牙のようなR35のヘッドライトが刺さる。


相川律のGT-Rが、

吸い込まれるように加速していく。


花「……うそでしょ……ッ!?」


律「花ァ……!!

そこでモタついてんじゃねェよ!!!!」


花のWRXが全開で踏んでも、

R35の怪物トルクがストレートで伸び切ってくる。

V6ツインターボが、地面を蹴破るように吠える。


花「この加速……なにこの速さ……!!

アンタ、踏みすぎでしょッ!!」


律「お前の時代はもう終わりなんだよォ!!!!

トロい走りで前いんじゃねェ!!!!

この直線は俺のもんだッ!!!」


R35が横にピタッと並び、

ほんの一瞬だけ花の視界に律の横顔が映る。

挑発というより、

“置き去りにする覚悟”だけがこもった目。


その瞬間。


律「いくぜ……ッ!」


GT-Rが地響きのようなブーストを解き放つ。


花「ま、待ちなさいよッ!!!」


だが追いつけない。

四駆同士でも、R35のストレート性能は怪物。

距離が、雪崩のように開いていく。


若林「オオオォォ!!!抜いたァァァ!!!!

相川律が山吹花をストレートで強奪ッ!!

トップ争いがめちゃくちゃ動いたァァァ!!!!」


フェルリア「完全に読み切ってましたね……

このストレート、花ちゃんのWRXより

R35の方が“伸び”が上なんです……」


花(通信)「クッ……!

アンタ絶対後で抜き返すから……覚悟しとけェェ!!!!」


律(通信)「できるならなァァ!!!」


常磐道の空気が震えたように感じるほど、

二人の火花は熱く、真っ向勝負の匂いを放っていた。


花の青いWRXが一瞬たじろぐ。

タービンが追いつくより早く、相川のR35は前へ縦に伸びるような加速。

花が必死に並びかえそうとするが――

相川のリアがわずかに蛇行し、空気が震える。


相川「よし……一気に突き放す……このまま2番手……!」


だがその瞬間。

背後のミラーに、黒い影が鋭くねじ込む。


相川「は!?なんで後ろからM3が!!??」


背後で白いヘッドライトが点滅した。

E92 M3、古賀加奈子――

あの教師が、容赦なく踏み切ってくる。


古賀(通信)

「相川くん……先生はまだ若い子には負けませんよ……!」


相川「冗談だろ!?

なんだよあのブレーキング……近すぎる……ッ!!」


阿武隈の風が急に冷たくなる。

白いM3が花と相川の間に滑り込みそうな角度で迫る。

花は花で前に出た相川を睨みつけるようにアクセルを踏み増している。


花「相川ァァァ!!待ちなさいよ!!

あんた今抜く位置じゃないでしょォォ!!!」


相川「止まれねえんだよ!!!もう行くしかねえ!!!!」


そして――

相川のR35、花のWRX、古賀のM3。

三つ巴の加速戦が阿武隈の大地を揺らすように巻き上がる。



相川「チッ……!古賀まで来るのかよ……!」

花「抜かれっぱなしで終わるわけないでしょォォ!!」

古賀「来なさいッ!3人まとめて面倒見てあげます!!」


三つ巴が火花を散らす、そのさらに奥。

阿武隈ストレートの向こう――

地鳴りとともに空気が震える。


ズドンッッ!!!


花「……は???」

相川「なんだ、あの音……!」


次の瞬間、後方から途轍もない暴風が巻き起こる。


柳津「どけええええぇぇぇ!!!

内藤が来てるんだよッッ!!!逃げろォォ!!」


M4の直列6気筒が吠え散らかし、

白いボディが蛇のように路面を這いながら前の集団へ飛び込んでくる。


花「柳津……!?速い……ッ!!」

相川「待て!ライン塞ぐなアァァ!!」


そして――

柳津の背後に貼り付く、黄色の悪魔。


内藤セリナ「やっほ〜☆みんなァ☆

追いついちゃったんだけど……どうするぅ〜?

ねぇ、どうするぅぅ???」


その声は可愛い。

けど、速度は化け物。


V10 NAが絶叫し、黄色の閃光がM4のテールに吸い付く。


相川「来るな来るな来るな来るな!!絶対来るなぁぁ!!」

花「ひぃ……!内藤が2台も連れてきた……!!」

古賀「ちょっ……近い近い近い!!!押される!!」


柳津「内藤ッ!!押すなァァァ!!ライン塞ぐから!!!」

内藤「えへへ☆じゃあ押しちゃうねェ☆

フミッパスライダー発動〜☆」


ギュワアアアアアアア!!!


黄R8が空気ごと飲み込み、

M4の後ろを叩きつけるように吸引加速――

ストレートの常識を破壊する勢い。


花「ちょっ……!?何それ!!!?」

相川「ふざけんなあの女ァァ!!危なすぎるだろ!!!」

古賀「先生これ無理!!!止められません!!」


残りの集団が、

R35相川

WRX花

M3古賀

M4柳津

R8内藤

この五重奏状態で一気に密集していく。


ストレートが…狭いッ!!


柳津と内藤が前方集団を丸ごと巻き込んで大混乱。

花も相川も古賀も、全員がラインを譲らずギチギチの状態。


その背後――

空気が変わった。


低く、深く、路面を舐めるような咆哮。

4気筒NAのくせに、獣の呼吸みたいな震えを帯びている。


フェルリア「……来ましたね。腹切カナタくん。」

若林「え!?あの密集地帯に突っ込むんですか!??」


カナタ「……行く。前が混んでる時こそ、チャンスなんだよ。」


赤い戦闘機、トヨタ86前期型!!

阿武隈ストレートを切り裂いて登場ッ!!!


花「はぁッ!?なんでアンタがここで来んのよォォ!?」

相川「ウソだろ…!あの団子に飛び込む気か!?」

柳津「マジで来やがったァァ!?死ぬぞカナタァ!!」

内藤「えへへ☆かわいい子が来たね〜☆じゃま〜〜☆」


カナタは一歩も引かない。

むしろ――

その5台の乱れたラインを、

読んでいる……!


カナタ「花、相川、柳津……全員の癖……覚えてるぞ……!」

伊藤(通信)「カナタァァァ!!やれぇぇぇ!!!」


赤い機体が一瞬沈む。

まるで“滑空”に入る前の戦闘機みたいに。


フェルリア「……ッ!今の荷重の乗せ方……!

まるで、彼――あの天才を思い出す……!」

若林「また出た!!アイツって誰!?」


1位 黒川海斗(ランサーエボリューションIX MR)

2位 相川律(R35 GT-R NISMO)

3位 山吹花(WRX STI VAB)

4位 古賀加奈子(BMW M3 E92)

5位 柳津雄介(BMW M4)

6位 内藤セリナ(アウディ R8 V10 NA)

7位 クレア(R35 GT-R “デビルスタイル”)

8位 岡田大成(GRカローラ)

9位 佐藤大河(コルベットC8)

10位 腹切カナタ(トヨタ86 前期)

11位 柊蒼真(シビックタイプR FL5)

12位 小岩イオリ(フェラーリ812スーパーファスト)

13位 サテラ(ランサーエボリューションVII MR)

14位 伊藤翔太(スイフトスポーツZC33S)

15位 山吹芽衣(ポルシェ911 カレラ)

16位 高村圭吾(フェアレディZ Z33)

17位 霧山トオル(ランボルギーニ ヴェネーノ)

18位 相川美保(R33 GT-R ミッドナイトブルー)

19位 ミルキークイーン(レクサスLC500)

20位 湯川サトル(S2000)

21位 佐藤ジュン(RX-7 FD3S/紅)

22位 川村修一(Kワークス/黄色)



阿武隈ストレートの中盤。

黒川のエボ9MRが黒い影みたいに独走する一方、

2〜7位が地獄みたいに詰まり始めていた。


花「クソッ……!相川のニスモ、直線強すぎっ……!!」

相川「後ろでチンタラしてんなよォ!!対向車線空いてんだろォ!!」

古賀「待って相川くん!危ないから……!」


そこへ

“重低音の魔物”が紛れ込んでくる。


クレア「どけいッ!!!

我が……闇の牙で喰い破るわぁぁぁ!!!!」


デビルスタイルのR35が、

ヘッドライトの奥で赤い閃光を揺らす。


相川「クレアァ!!道ふさぐんじゃねぇよ!!!」

クレア「ほぉ?ニスモごときが、我に吠えるな!」


古賀「みんな落ち着いて!ライン潰しすぎよ!!」


その横を、

柳津のM4がふらりと移動する。

まるで温泉帰りみたいな顔で。


柳津「……あー、やっぱ混戦って疲れるんだよなぁ……」

内藤「ねぇねぇ柳津くん?また私のフミッパスライダー受けたい?えへへ☆」

柳津「いや受けたくねぇよ!!!勘弁してくれよ!!」


そしてその背後、

赤い機体がギラリと角度を変えた。


カナタ「……この混乱、読める……!!

勝手に荒れてろ!全部隙間に変えてやる!!」


フェルリアは息を呑んだ。

あの赤い86の動き……

どこかで見た“消えた天才”の影。


フェルリア「カナタくん……その走り、まるで……」

若林「まるで誰なんですかフェルリアさん!!」


腹切カナタの赤い86が、

乱戦をすり抜けて絶好の射線を取ったその瞬間――


背後で“大気が震えた”。


まるで冷たい岩が大地ごと割れるような音。

812スーパーファストのV12が吠える。


小岩イオリ「行かせないよ……カナタくん……!」

カナタ「ッ……!イオリ……!!」


赤い戦闘機の真後ろに、

“白く薄い霧”がまとわりつく。

あれはイオリ独特の氷気の余波。


カナタ「完全に張り付かれた……ッ!!」

イオリ「ストレートは……どんな車でも……誤魔化せないんだよ……!」


812が角度をつけて迫る。

フェラーリ特有のフロントノーズが地面を舐め、

まるで“獲物を見つけた獣”のフォーム。


フェルリア「来ましたね小岩さん……!

812特有のあの“沈み込み”……!!

本気の加速姿勢ですよ……!!」


若林「既に時速240……いや250!?

86のNAじゃ……厳しいかもッ!!」


カナタはハンドルを握り直す。

左肩に力をためながら、

声に出さず心で吠えた。


カナタ(負けるか……!絶対に抜かせねぇ……!!)


花(通信)「カナタ!ライン閉じろォ!!

アイツの加速、化け物だよ!!」


伊藤(通信)「イオリは躊躇ねぇぞ!喰われる!!」


小岩イオリは涼しい声で続けた。


小岩イオリ「……カナタくん、

あなたの走りは嫌いじゃないけど……

ここは……譲ってもらうよ?」


カナタ「譲らねぇよ!!!!」


赤い86が一瞬だけ“蛇行”。

わずかなライン変更で、

812の差し込みを封鎖。


イオリの目がわずかに細くなる。


小岩イオリ「……そう来るんだね。

なら……強引に行くよ……?」


フェルリア「まずいですよ!!

812が……86の真横に……!」


若林「接触したら終わるぞぉぉぉ!!?」


カナタ(……来いよイオリ!!

負けねぇ。俺は――赤い戦闘機だ!!!!)


812と86が阿武隈のストレートで、

火花のような並走を開始する!!!!


若林「……ん? なんだあれ……!?

レースはもう始まってるのに……岩沼市のスタート地点に1台の白い軽バンが入ってきました!!!?」


カメラがズームする。

揺れるボディ。

どこか“戦場に迷い込んだ家畜”みたいな存在感。


そのサイドには――

大きく堂々と

弁当万歳

の文字。


若林「クリッパー……?いや……配達車……?」

フェルリア「え……いや……このタイミングで……?」


白いクリッパーバンがのそのそと停車。

片側のスライドドアがガラガラと開いた。


石井「ふぅ〜……やっと着いた……

みんなもう走ってるんだよね……?

で、今回は……出てよかったよね……?

申請出したし……許可おりたよね……?」


フェルリア、即答。


フェルリア「ダメです。笑」


石井「え……?」


若林「予選も決勝も全部始まってますからね!!

もうグリッド閉まってます!!!」


石井「えっ……あれ……?

今日こそ出られると思って……

弁当全部届けて急いで来たのに……

あれ……?」


フェルリア「そもそもその車、

参戦車種じゃないですよ。

クリッパーは軽商用車カテゴリで、

安全規格すら満たしていません。

しかも後ろに弁当山ほど積んでますよね?」


石井「あっ……

はい……

今日、24個……」


若林「じゃあ尚更ダメです!!!!」


石井「そっかぁ……

おかしいなぁ……

応募フォーム見た時“何でもOK”って……

スクショ取ってきたんだけど……」


若林「それはフィッシング詐欺です!!

公式じゃないです!!」


石井「えっ……

また……やられたぁ……?」


周囲のピットクルーがザワつく。


観客A「また石井さん来たぞ……」

観客B「毎回クリッパーで参戦しようとしてくる人……」

観客C「今回もアウトか……」

観客D「いや愛されてんな……」


石井は肩を落とし、

しかし気を取り直してこう言った。


石井「じゃあ……

応援だけ……していきます……

みんな……頑張って……

弁当万歳……」


フェルリア「いや最後のテンション!!笑」


若林「とにかく!!レースに乱入しないように!!!

そのままスタッフ通用口から抜けて下さい!!」


石井「わかりました……

次回までに……もっと速い弁当にします……」


フェルリア「弁当の速さ関係ないです!!」


花(通信)「またテメェかァァァァ!!!!

配達員ッッ!!!!」


阿武隈の風すら震わせる怒号が、

通信回線を通じて全選手・全視聴者へ響き渡る。


花「レース中に何やってんだゴラァァァ!!

クリッパーで乱入未遂ってオメェ……

何度目だと思ってんのよォ!!!?」


石井(遠くのスタート地点)「えっ……あ……花さん……?

あ、あの……今回は本当に許可が――」


花「許可なんか出るかァァァ!!

出たとしても潰しとくわァァァ!!!」


伊藤(通信)「おい花!前見ろ前!!

コーナー迫ってんぞ!!死ぬぞ!!」


花「うるせぇぇぇ!!

配達員の声聞いたら集中切れたんだよォ!!!」


石井「ご、ごめんなさい……

弁当……冷めちゃいますよ……?」


花「冷めてんのはお前の頭だァァァ!!!!

そこに居ろッッ!!!

レース終わったらぶっ飛ばしてやっからなァァァ!!!!!」


観客席が一瞬ざわつく。


観客A「また始まった……

花ちゃんの“配達員制裁予告”……」


観客B「石井さん今回も回避不能か……」


観客C「というかレース中に通信入れてくる花ちゃん怖すぎる……」


若林「花選手!通信が……オープンですよ!?

全部聞こえておりますよ!!?」


フェルリア「花さん……

気持ちはわかるんですけど……

怒鳴りながらインを攻めるの危険ですからね??

落ち着いてください……!」


すると――


黒川(通信)「ぶっ飛ばすなら俺が先にやるわァァ!!

クリッパー邪魔だろあんなん!!!」


内藤(通信)「えへへ……☆

石井さん、また来てたんだね〜?」


霧山(通信)「……あの軽バン……海に沈めると可愛いかな……?」


花「やめろォォォ!!

そういうのはレース“後”にしろォォォ!!!!」


フェルリア「いや後でもダメですって!!!」


スタッフ達がスタート地点で石井を誘導する。


石井「ごめんなさい……

邪魔しちゃって……弁当万歳……」


花(通信)「あとで覚悟しとけよォッ!!」


石井「花さん……あの……

よかったら……後で俺の“特製唐揚げ”の……

その……耳フーでも……どう……?」


一瞬、阿武隈の空気が止まった。


花「――嫌だァァァァァァァァァ!!!!!!」


通信越しなのに、

鼓膜が焼けるほどのブチ切れボイスが轟く。


伊藤(通信)「石井ィィ!!お前……命知らずすぎるぞォ!!?」

黒川(通信)「唐揚げの耳フーってなんだよオイ!!!気色わりィィ!!!」

相川律(通信)「石井……お前……帰り道ねぇぞ……?」

霧山(通信)「……唐揚げの耳フー……少し興味あるかも……」

花「変な興味示すなキリヤマァァァ!!!!」


その瞬間、実況席がざわついた。


若林「えー……ただいま、

配達員 石井選手(選手じゃない)が……

常識の限界を突破しております……」


フェルリアは冷静に立ち上がり、

ふわりとピンクの髪を揺らす。


フェルリア「……これは……まずいですね……。

花さんの精神状態が火山の噴火直前……。

仕方ありません」


若林「えっ……フェルリアさん何を……?」


フェルリアはマイクに口元を寄せ、

少しだけ妖しく微笑んだ。


フェルリア「石井さん。

あなた……落ち着かせます。

“ホイップ”の香りでも……浴びていなさい……」


ふわぁぁぁぁぁ……


まるで甘い生クリームを煮詰めたような、

白く柔らかい香気が席から広がった。

観客席までふんわり届くほどの“濃さ”。


石井「~~~ッ!?

な、なんだこの……

甘い……

溶けそうな……

ホイップクリーム……??」


足元がふらつく。

膝がガクガク震える。


石井「……す……すごい……

甘やかされてるみたいで……

これは……

眠……っ……」


バタァァン!!


若林「倒れたぁぁぁぁ!!!!」


フェルリア「大丈夫です。

こういう時のために……

甘い香りは使うんですよ。

ちょっと強烈ですけどね」


花(通信)「助かった!!フェルリアァァァ!!!

あの配達員、毎回意味わかんねぇこと言ってくんのよ!!」


黒川(通信)「さすが七賢人……。敵に回したら終わりだな……」


内藤(通信)「いいにおいだったよ〜?♡」


若林「さぁ!!石井さんが眠ったところで!!

レースは続きます!!

カメラ前方に戻して!!」


若林「ああっ!? 小岩イオリが……ッ!!!

腹切カナタを、ついにオーバーテイクしましたァァァ!!!!」


阿武隈の地鳴りを貫くように叫び声が飛ぶ。


コース上では――

白い“氷岩スーパーファスト”が

赤い“戦闘機86”をかすめ取るように前へ飛び出した。


グワァァァァァン!!!


イオリの812が、

大地を裂くような12気筒の咆哮を放ちながら

完全にフロントを奪う。


フェルリア「これは……極めて自然な……

“V12のえげつない瞬発力”ですね……!

あの速度域では……NAの86は……苦しい……!」


だが――

その後ろで燃えてる男がひとり。


カナタ「……ッ!!

まだ終わっちゃいねぇぞオラァァァ!!!!!」


赤い戦闘機86が

食い千切るようにスリップへ張り付く!!


若林「しかぁし!!!!

腹切カナタも負けんじと食いついていきます!!!

イオリの真後ろから1メートル台の超接近!!

これ抜かれた瞬間に完全に目が覚めてます!!」


フェルリア「この距離……

86とは思えません……!!

彼……本当に反射とライン取りがバケモノ……!!!」


イオリの冷気が

赤いボンネットにまとわりつく。


小岩イオリ「……カナタくん……

まだ追ってくるんだね……。

でも……怖いよ……?

私は……譲らない……」


カナタ「譲らなくていいッ!!

抜くのは“俺”だァァァ!!!!」


スリップに吸われるように

赤い86が812のリアへ突っ込む!!


伊藤(通信)「おおおお!?行った!?行く気かカナタァァ!!?」

花(通信)「その距離はヤバいって!!冷静になれぇぇ!!」


だがカナタは

アクセルから絶対に足を離さない。


カナタ「イオリィィィッ!!!!

次のコーナー……絶対に勝負するぞ……!!」


若林「腹切カナタぁぁ!!

抜かれてもなおッ!!

イオリの812に食らいつくッ!!

この男……一瞬でギアを切り替えたッ!!」


フェルリア「これは……

本当に“化け物級”ですよ……。

イオリ選手もカナタ選手も……

完全にプロの域です」


阿武隈の地面が熱狂で揺れる!!


812 vs 86

V12の絶対王者 vs NAの異端児


若林「フェルリアさん……ひとつ気になってたんですけど……

確か……石井以外にも……“後から”来た人……いましたよね……?

あの……漆黒の……ブガッティ・シロン……」


実況席の空気が一瞬だけ“凍る”。


フェルリアはモニターに目をやり、

静かに息を吸った。


フェルリア「ええ……来ましたよ。

“漆黒の魔王”と呼ばれた……あの男が」


若林「やっぱり……!?」


観客席がざわざわと波打つ。


観客A「え……シロン……?」

観客B「漆黒の魔王って……あの……?」

観客C「また出るのかよ……!?」

観客D「これでレース壊れないか……?」


フェルリア「通しましたよ。

ギリギリでしたけどね……ギリギリ」


若林「ギリギリ……!?」


フェルリア「はい。

到着したのが……スタート5分前。

しかもあの車……音が……“普通じゃない”」


若林「普通じゃないって……?」


フェルリア「ええ。

相馬戦テレビ中継で何度も映っていましたけど……

今回から出場を引退した“絶対王者”のNSX吉田……

その彼と並んで伝説の存在だった男です」


若林「ま、まさか……!!」


フェルリア、淡々と告げる。


フェルリア「MR TA-KA。

またの名を……ゲームストリーマー――

坂田五郎丸」


若林「き、きたァァァァァァ!!!!」


フェルリア「私も驚きましたよ。

本当に本人でしたからね」


若林「え!?そのまんま!?

坂田くん!??

あのレース解説でも出てた坂田五郎丸!??」


フェルリア「彼は“リアルとゲームの両方で魔王”と呼ばれた人。

相馬戦の最終盤でも……吉田選手と互角に並んだ……

あの化け物ですよ」


観客席のどよめきがさらに膨らむ。


観客A「坂田五郎丸が……!?」

観客B「シロンで乱入……?」

観客C「もう終わりだろこの戦い……」

観客D「黒川も花も相川も……全員やられるぞ……」


若林「そ、そのシロンは今どこに……?」


フェルリア「最後尾のさらに後ろ。

まだ“様子を見ている”そうです」


若林「様子を……!?

なんで走らないんですか!?」


フェルリア「彼いわく――

『このレース、面白くなるまで待つ』

だそうです」


若林「魔王かよォォォ!!!!」


フェルリア「そういう方ですよ……

坂田五郎丸は。いつだって……

“トップが面白くなるまで動かない”。

それが魔王の流儀ですので。」


若林「昼飯の流儀ならぬ...魔王の流儀...某ラノベサイトにありそうな、、、」


※これ以上は口が裂けたら嫌なので閉じます笑


モニターの隅に映る――

漆黒のシロン。

静かに、しかし圧倒的な存在で

エーペックスカップを“見下ろしていた”。


フェルリア「しかも……その坂田五郎丸さん……

18歳なんですよね……」


若林「は……?

18……!?

え……嘘でしょ……!?

あの漆黒の魔王が……!?

まだ10代!!???」


観客席、通信、全選手の脳が一瞬フリーズする。


フェルリア「そうです。

18歳。

高校は……ほとんど行ってないそうですけどね。

理由は“レースの修行”だそうで」


若林「ちょ、ちょっと待って!?

16歳の伊藤翔太、

16歳の高村圭吾、

16歳の佐藤大河、

16歳の腹切カナタと……

同世代!!!!???」


実況席どころかコース上すら震えた。


花(通信)「はあああああ!?同世代!?

あんなんと一緒とかやだ!!!」


伊藤(通信)「ちょ、待て待て待て……

坂田五郎丸って……うちらと同世代……??

あの魔王が……?

レース界の化け物が……?

し……信じらんねぇ……」


高村(通信)「なんで……俺たちの世代……こんなバケモンばっかなんだよ……」


佐藤大河(通信)「は……?同世代?ふざけんな。

アイツ……バケモノ枠だろ……」


カナタ(通信)「……マジかよ……

坂田が……うちらの世代……?

そりゃ……強いはずだ……

NSX吉田さんと互角に走ったのに……

まだ18……?」


フェルリア「ええ。

相馬戦最終盤で吉田選手と並んでいたとき……

彼、まだ“17歳”でした」


若林「17で……!?

シロンでNSX吉田に並走……!?

もう世界大会じゃないですか!!」


観客A「魔王の世代……ヤバ……」

観客B「16〜18歳でこの戦力とか国家規模のバケモノだらけ……」

観客C「三春の峠より怖い世代……」

観客D「これ……文化じゃなくて災害じゃね……?」


そして最後に――

フェルリアは淡々と言う。


フェルリア「しかも彼……

“うちのシステム”によると……

まだ本気を出してない

らしいです」


若林「地獄だろォォォ!!!!!!!」


阿武隈の空気が……一段階、重く沈んだ。


若林「なっ……!?

坂田五郎丸が……!!

ついに動いたァァァァ!!!!!!」


コースカメラが震える。

ストレート後方――

“黒い何か”が滑るように迫ってくる。


黒く、深く、底なしの闇みたいな車体。

それは風すら避けるように走る。


漆黒のブガッティ・シロン。

漆黒の魔王。


そのフロントが……

腹切カナタの赤い86にピタァァァァァ!!!


花(通信)「うそでしょオイィィィィィ!?

なんでカナタの後ろなのよアイツーーーー!!!」


伊藤(通信)「これは……ヤバい……

あいつ……並んだら……止まらねぇぞ……!」


フェルリア、静かに呟いた。


フェルリア「よりによってですね……

NAのカナタくんには……

ここから本当に厳しい相手ですよ……

“直線性能の暴力”ですから……あのシロンは……」


そして――

魔王本人が口を開く。


坂田五郎丸「おォ……?

前の赤いやつ……

お前か……?」


声が“妙に鈍い”。

そして、どこか抜けている。


坂田五郎丸「この前……相馬戦のとき……

NSXの兄ちゃんの隣で……なんか赤いのいたよな?

あれ……お前じゃねーの???

違う???」


カナタ(通信)「……あ、ああ……そうだったけど……!!?」


坂田五郎丸「おお、やっぱり?

よかったぁ……間違えて別のやつ追いかけるとこだった……!」


花(通信)「シュールすぎんだよアイツ!!!!」


黒川(通信)「こっわ……何だそのテンション……!」


坂田五郎丸「いやさ……

北斗ってやつに聞いてたんだよ。

『前に赤い86いたら、それカナタだから気をつけろ』って」


フェルリア「北斗さん……情報を……」


坂田五郎丸「でな……北斗が言ってたんだわ。

『息してるだけで抜かれるから、気合いだけは入れとけ』

ってな」


カナタ「言ってねぇだろ絶対それ!!!」


坂田五郎丸「がはは☆

まぁ……俺もさ……

まだ“魔王として”腐ってねぇし」


その瞬間――

シロンのフロントが、

まるで影のように沈み込む。


坂田五郎丸「行くか……?

魔王タイム……?」


アクセルを“ほんの少し”踏む。


グオオオオオオオオオオオ!!!


若林「シ、シロンが……速……!?

いや速いとかのレベルじゃない!?!?

既に音が違う!!!!?」


フェルリア「……あれは……

本当に世界級です。

カナタくん……ここから踏まないと……消えますよ……」


カナタ、ハンドルを握りしめる。


カナタ「……かかってこい……魔王……!!

NAでも……根性は負けねぇッ!!!!」


坂田五郎丸「いいねぇ……

がはは☆

やっぱ10代はこうじゃねぇとな……?」


漆黒の魔王、ついに――

腹切カナタの背中に牙を向けた!!!

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