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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
松島編
293/371

松島編第5話 リッジ松島戦開幕

通算265話

若林「皆さん!お待たせしました!!」


若林のマイクが、ピットの喧騒に響き渡った。周囲が一瞬静まり返る。

モニターには、松島湾を跨ぐツインブリッジの映像が映し出され、雲の隙間から差し込む太陽光がきらりと路面に反射していた。


若林「第6戦、松島戦――リッジ松島戦、開幕です!!」

「今回からは、多数のピットクルーが各チームに正式配備され、より安全なレース運営を目指す形となりました!」

「そして最初は“予選”からスタートします!ドライバーは一人ずつコースを走行し、タイムを競います!!」

「その結果により、決勝レースのスターティンググリッドが決定されます!!」


観客席から歓声があがる。

同時に各ピットではエンジンが始動され、空気に焦げたオイルの匂いと振動が満ちていく。


伊藤「マジかよ……」

黄色のスイフトスポーツの前で、伊藤は眉をひそめた。


伊藤「前回までは事故しても、誰も助けに来なかった場合が多かったからな……」


カナタ「本宮戦……大玉村……須賀川……」

赤い86のボンネットに手を置きながら、カナタは低く呟く。


カナタ「相馬戦……そして288戦の予兆か……」


花「っていうかさ!予選制って、なにそのガチ仕様!?なんとなくで導入したんじゃねぇよな!?」


若林「いや、なんとなくじゃないですよおおお!!安全第一、実力勝負のフェアなレース環境作りのためです!!」


カナタ「つまり……この予選次第で、決勝の順位が大きく変わる」


伊藤「ここでタイム出せなきゃ後方スタート確定か……しかもツインブリッジだぞ?抜きにくいに決まってる!」


黒川「ハッ、上等だ。どっからスタートしようが、ブチ抜くだけよ」


ミルキークイーン「うふふ〜……予選という響きだけでもうドキドキしますわ〜♡

どんな匂いの風が吹くのかしら〜」


内藤「よ〜し!みんな〜気合い入れてこーっ☆ いいとこ見せなきゃだしねっ♪」


花「そのノリで速いのホント意味わかんねぇんだけど!!!」


芽衣「でも……予選方式なら、ちゃんとしたタイム管理でスタート順が決まりますし、安全面では安心できますね……」


サテラ「ふん、やっとレースらしくなってきたじゃないか」


ちとせ「もへ〜……おじさんは観戦で正解だったかも〜、予選でコースに1人って、緊張するもんねぇ〜」


伊藤「お前だけのん気すぎんだろ!?」


内藤「さぁてと〜、誰から走るのかな〜☆ あたし早めにいってもいいよぉ〜〜♪」


若林「では、まずは抽選で決まった1人目――」


モニターに映し出された名前に、周囲がざわめく。


若林「1番手、走行者は……黒川海斗!!」


黒川「――上等だ。見てろよ、全員」


アクセルを踏み込むと、黒のEVO9MRが唸りを上げる。ブリッピングだけで、すでに空気が震えた。


伊藤「……こいつが基準タイム出してくるのかよ……」


花「これもう……最初から飛ばしてくるヤツじゃん!!」


ミルキークイーン「ひゅ〜……黒川さん、速くて怖くてワルい香り〜♡」


ちとせ「じゃ、おじさんはおうちで寝て待ってるね〜……えへへ〜♡」


花「ちとせええええええ!!!置いてくなああああ!!!」


ミルキークイーン「ゲスト実況は私ミルキークイーンが、、、、」


花「おおおおおおおああああい!!!!!

やめろォォォォォォ!!!!!」


花の叫びがツインブリッジ中に響き渡る。その声に振り向いた数名のレーサーとクルーたちが、一斉にミルキークイーンの方へ視線を向けた。


花「アンタが実況席にいるとロクなことにならない!!!」


ミルキークイーン「え〜〜……でも〜わたくし〜、前回の実況、割と評判良かったんですのよ〜?あの〜、ぷるんぷるんですわ〜ってところとか〜……」


花「そのせいで伊藤が2周目でクラッシュしかけたんだよ!!集中できるかァ!!!」


伊藤「お、おい!言うなよ!あの時はたまたまだって……!」


ミルキークイーンはふわふわとした笑みを浮かべながら、しれっと首を傾げる。


ミルキークイーン「でも〜実況ってぷるぷるでふーふーして楽しいんですわ〜♡」


花「そーいう問題じゃねええええ!!!誰が耳元で実況されたいんだよォォ!!」


若林「今回は流石に実況席に入れないようにしましたからね?なんせ実況席前にセキュリティを掛けるようになりました!」


その言葉に花は振り返り、勢いよく拳を握った。


花「よくやった若林!!偉いぞ!!この戦、命懸けなんだからな!!!」


若林「ええ。今回は本気の予選ですから。実況も、ミルキークイーンさんはピットの横で見守るだけということで」


ミルキークイーン「え〜〜〜〜……残念ですわ〜……。でも〜レースに出られるなら……うふふ、

むしろそちらが本命ですもの〜……♡」


花「そっちもやめてほしいわァァ!!!」


ツインブリッジに朝の風が吹き抜ける中、花の魂のツッコミが響いた。横で見ていた黒川はにやけ、伊藤は顔を手で覆い、内藤セリナはすでに準備運動を終えマシンへ向かっていた。


そして、ミルキークイーンはふわふわとLC500に乗り込む。


ミルキークイーン「うふふ〜……実況も、レースも、わたくしの魅力ですわ〜……今日はどちらでもぎゅ〜〜っとして差し上げますわ〜♡」


花「いや!!!ぎゅ〜〜〜っととか言うなああああ!!!!走ってる最中に言われたら4ぬ!!!!」


こうして、松島戦の予選直前、花の怒声とミルキークイーンのふわふわが交錯する混沌の中、選手たちは続々とコースインを始めていた――。


ツインブリッジの実況席。その扉にかかっていたセキュリティロックが突然「ピッ」と音を立てて解除され、静かに開いた。


若林「……ん?ロック解除された?」


セキュリティをすり抜ける者はいないはずだったが、足音一つ響かせずに入ってきたのは――


???「失礼します。少し、遅れてしまいました。」


若林「えっ……!?まさか……」


再び扉が自動でロックされ、「ピシィィィ……」と密閉音が鳴る。


若林「お待たせしました!!今回の松島戦、実況席には新たなゲスト解説員が登場です!!」


実況マイクに向き直った若林の声が弾む。


若林「――元レース界隈の“七賢人”とまで呼ばれた、伝説の解説者!フェルリアさんです!!!」


その名を聞いた瞬間、会場のモニター前がどよめいた。


カナタ「七賢人……!?フェルリアって、あの……!!」


伊藤「ちょ、マジかよ……!あの“音速の白き影”……!」


花「え……誰?強いの?」


そこに、実況席の椅子へ優雅に腰掛けた人物が映し出される。


フェルリア「こんにちは。ご紹介に預かりましたフェルリアです。皆さま、よろしくお願い致します。」


その声は透き通るように美しく、凛とした響きがあった。

ピンク色の長髪が肩から流れ、白いハイネックのレース服に身を包んだ姿は、まるで神話から抜け出した精霊のよう。

どこか気品がありながらも、どことなく浮世離れした静けさを纏っていた。


フェルリア「この大会、とても素晴らしいですね……風の流れ、路面温度、選手の鼓動……すべてが語りかけてくる気がします。」


若林「お、おお〜……!!さすがですね……僕たちじゃ気づけないような部分まで……!」


観客席でも騒然とする中、内藤セリナはピットで伸びをしながらモニター越しにぽつり。


内藤「へぇ〜、なんかお嬢様っぽい人だね〜。

でも、ただ者じゃない感じする☆」


黒川「いや、あの人は本当に“ガチ”だ……15年前、ヨーロッパで無敗の記録持ってたって噂の……」


相川「……本物だな。」


芽衣「風が……変わった気がします。」


ちとせ(観客席)「……へぇ〜、フェルリア……。おじさん、どこかで聞いた名前な気がするけど〜……?」


その頃、実況席ではフェルリアが静かにモニターを見つめながらマイクに向かって一言。


フェルリア「……第1走者のタイヤの減衰、あと400メートルで限界が来ますね。次のシケインでリアが抜けます。」


若林「えっ!?いや……ほんとだ!!挙動が怪しい……!!?」


フェルリア「ふふ。レースは予測と、詩と、風の読み……感性の勝負でもあるのです。」


若林「な、なんだこの人……すげえ……!」


こうして、新たな解説者・フェルリアを迎え、松島戦・予選の幕が、静かに、そして確実に上がろうとしていた――。


フェルリアはふと苦笑を浮かべ、指先で髪をひと房、軽く整えると、マイクに向かって静かに語り始めた。


フェルリア「昔は……すごく私、フランクでアホかましてたんですけどね……」


若林「えっ……!?」


彼女の言葉に一瞬、実況席の空気が止まる。


フェルリア「若かったんですよ、本当に。自分の限界も知らず、ただアクセルを踏むことだけが“速さ”だと勘違いしてて……口も悪かったし、よくチームメンバーにも迷惑かけました。」


その瞳が、かすかに遠くを見るように細められる。

過去を悔やむというよりも、懐かしむような温かさがそこにはあった。


フェルリア「でもね……レース界隈に出てから、色んな人と出会って、色んな別れも経験して……それで少し、反省したんです。」


若林「反省……って……」


フェルリア「自分の発言が誰かを傷つけていたことにも、ようやく気づけた。

速さを追い求めるあまり、心を置き去りにしていた。だからこそ、今は――少しでも、“言葉”で誰かの走りを支えたいって思ってるんです。」


若林は言葉を失った。

会場全体が、まるで時間を忘れたかのように静まり返る。


カナタ(……この人、本物だ)


伊藤(すげぇよ……オーラが違う)


芽衣「……強い人って、静かなんですね」


ちとせ(もへ〜……かっこいいなぁ、おじさんも見習わなきゃ〜)


フェルリアはそれ以上多くを語らず、マイクをそっと戻した。


風が、実況席のカーテンをかすかに揺らした。

その一瞬、彼女のピンクの髪が淡く光を返し――

まるで“風そのもの”が語ったような、そんな錯覚を覚えるほどの気配を残していた。


フェルリア「早速ですが……若林さん、私の分析をお伝えしてもよろしいでしょうか?」


若林「はい、もちろん! ……あ、ちなみに予選の1人目は本来、黒川海斗選手の予定でしたが――」


紙を手元の資料からめくる。


若林「レギュレーション違反により、今回は走行をスキップすることが決定しました。」


観客席にざわめきが走る。


フェルリア「……やっぱり、というべきでしょうかね」


少し口元を押さえながら、彼女は柔らかな声で言葉を続ける。


フェルリア「タイヤ……あれ、スリックタイヤでしたよ。今日の路面は半乾き。特別ルールでレインタイヤ義務なのに、完全なレーシングスリックを履いていた。」


若林「えっ、まさか……あの黒川選手が……」


フェルリア「さらにですよ?」


モニターに映された黒川のEVO9MRが、ピットで整備員に止められ項垂れている。

そのリアバンパーには大きく派手な文字が描かれていた。


『俺最強』


フェルリア「ぷっ……くくく……あんなデカール貼ってくるなんて……はぁ〜……笑っちゃいますね……ぷぷぷ……」


若林「フェ、フェルリアさん……!」


フェルリアは笑いながらも、顔を軽く手で隠して何とか平静を保とうとする。


フェルリア「ごめんなさい……でも、レースで“俺最強”はちょっと……逆に不安になっちゃうタイプです、あれは……」


若林「確かに、威勢だけで結果を出すには松島は厳しいですからね」


観客席の一部からも、クスクスとした笑いがこぼれる。


黒川「くそっ……!なんでダメなんだよ……俺のエボが最強なのに……!」


サテラ「最強ねえ……見せるだけ見せて、速さ見せる前に帰宅じゃん?」


内藤セリナ「え〜☆黒川くん、面白すぎるんだけど〜☆あのデカール、ナンバーワンギャグ賞だよ☆」


花「うるさいなァァァ!!!予選なんだからマジメにしろよォォォ!!」


カナタ「はは……でもこれが“いつもの黒川”かもな……」


黒川のエボがピット奥に押し戻されていく。

その後ろ姿を睨みつけながら、花が叫んだ。


花「ちょっと!!黒川ァ!!アンタ何してんのよ!!!」


怒声がピットレーンに響き渡る。

花の目には、怒りと呆れと――少しの心配が滲んでいた。


花「たかがタイヤで……!それに、なんでよ……!?

“俺最強”とかシカトするようなデカール貼ってェェ!!!?」


バンッ、と拳が空気を打つ音。

周囲のメカニックたちも小さく息を呑む。


黒川は、整備員の肩を払って立ち止まった。


黒川「チッ……文句あんなら直接言えよ……!」


花「言ってんでしょうがああああああ!!!!

アンタ、レース出たいんでしょ!?だったら真面目にやれよ!!!」


黒川「俺は……」


うつむいた黒川が、拳を握る。


黒川「俺は……“最強”って言葉にすがんなきゃ、

もう自信が持てねえんだよ……!!」


花「……っ」


黒川「全部あの時みたいに……負けて、奪われて、傷ついて……!

黙ってたら、誰にも相手されなくなって……!」


その声に、一瞬の静寂が訪れた。


黒川「だから俺は……せめて“最強”って名乗って……自分を奮い立たせてたんだよ……!!」


花「…………バッカじゃないの……」


小さくつぶやいて、花は黒川の元まで歩み寄った。


そして。


バシィッ!!!


花の手が、黒川の頬を張った。


黒川「ッ……!」


花「最強って言葉を盾にして逃げてるだけじゃない……!!あんた、昔のあんたなら、ちゃんと自分の走りで見せてたじゃんか!!!」


黒川「…………」


花「帰ってこいよ、“本当の黒川海斗”にィィッ!!!」


その声に、しばらくの間、黒川は目を伏せていた。

だが――小さく肩を震わせると、悔しそうに笑った。


黒川「……相変わらず、口が悪ィな。山吹花」


花「黙りなさいよ!!!」


カナタ「……ははっ」


伊藤「……なんか、始まる前からドラマあんな」


セリナ「え〜〜☆もう青春じゃ〜ん☆黒川くん、立ち直り早いとこは好きだよ〜☆」


若林「……さて、黒川選手の失格により、予選1人目は次の走者にバトンタッチです!!」


フェルリア「……では、次にコースへ出るのは……誰かしら?」


若林「しかも、NA86でこれまでどの大会でも破られなかったコースレコードを樹立しましたァァァ!!!!」


その叫びがスピーカーを通して会場中に響き渡った瞬間、観客席がざわつき、数秒後には爆発するような歓声に包まれる。歓喜と驚愕が入り混じった波のような歓声が、まるで海鳴りのように響いていた。


美保「……!!!」

彼女は拳を握りしめ、唇を震わせながらも、その瞳には確かな感情が宿っていた。信じられない、けれど確かに現実として刻まれた「奇跡」。それを前に、言葉が出てこなかった。


花「は!!!??? コースレコード!?!? ええええええええええええ!!?」


叫び声とともに、ピット奥でモニターを睨みつけていた花が立ち上がる。あまりの衝撃にモニターの前にいた整備士たちも一斉に振り向き、その目を丸くしていた。

花「何よそれ!? NAで!? アンタ、アンタぁあああ!! やりすぎなんだよおおおおおお!!!!!」

全身から迸るような感情。花の表情は怒りと興奮と驚愕が入り混じり、赤くなっていた。


伊藤「すげぇな……。」

ヘルメット越しにも伝わるその呟きは、憧れと敬意を含んだ低い声だった。

伊藤「やっぱあいつ、本物だ……。どこまで行く気だよ、カナタ……!」


霧山「はは、すごいね……。でも、こっちはまだまだ隠し球あるよ?」

霧山は腕を組み、視線をコースの先に送った。だがその目は笑っていなかった。完全に火がついた瞳は、ただ静かに、燃えていた。


ミルキークイーン「あらあら〜……? やりますわね〜、腹切カナタさん……♡」

観客席の上で、優雅に手をたたきながらも、その目は鋭く光っていた。彼女はこの瞬間がくるのを、どこかで予感していたかのように。


そして、実況席に佇む白い服の女性がゆっくりとマイクに手を伸ばす。


フェルリア「…………すごい……。」

彼女の瞳は遠くを見つめていた。

フェルリア「まるで、あいつ……いや……彼を思い出すようなテクを……魅せられてしまいましたら……。」


その声には、かつての栄光を見た者だけが抱ける「尊敬」が滲んでいた。


フェルリア「……カナタくんは、コーナーを……丸々、使ってるんですもの。」

「通常なら、コーナーの“頂点”でしかタイヤをかけないのに……彼は、その前から圧をかけて、抜ける時には一気にトラクションを開放している……。」


フェルリアは指を動かし、空中に描くようにコーナーのラインをなぞった。

フェルリア「まるで、コースそのものと対話してるような……そんな走り方。機械と肉体の境界を溶かした走り。NAなのに、ここまでタイムを出せるなんて……」


その横顔には、驚きと、懐かしさ、そしてわずかな嫉妬さえ混じっていた。


観客席の奥、ある女性がつぶやいた。


観客「……これが、腹切カナタ……」


──セッションONEから、すでに伝説が生まれようとしていた。


若林「続いてコースインするのは……2人目の挑戦者、高村圭吾アアアア!!!」

「車両はフェアレディZ33!伊藤翔太と腹切カナタと同じクラスに通う、若き16歳の才能は今何を見せるのかァァァ!!!」


ザッ……!

タイヤがアスファルトを踏みしめ、Z33がゆっくりとスタートラインに滑り出す。白いボディの中で、彼の瞳だけがぎらつくような鋭さを放っていた。


伊藤「高村か!!!」

ピットの奥で伊藤が立ち上がる。

伊藤「お前……まさか、予選で本気で来る気じゃ……!」


高村「ああ!行ってくるよ、俺!!!」

Z33の窓越しに右手を突き上げ、笑みを浮かべる高村。その顔には16歳とは思えない自信と覇気があった。


若林「……この高村圭吾、車歴は浅いが、街乗り時代から“首都高の獣”とも一部で噂された少年ッッッ!!!」

「果たして!腹切カナタの立てたコースレコードに届くのか!?それとも、その片鱗すら見せられないのかァァァ!!?」


ザンッ!!!!

予選スタートの合図と同時に、Z33が甲高いエキゾーストノートを響かせ、猛然と飛び出す!


ブオォォオオン!!!


その瞬間、ピットのあちこちがどよめく。


花「うそッ!アイツ!1速でリミッター寸前まで回してるじゃない!?」


美保「加速時にギアを入れ替えず、トルクバンドを最大限引き伸ばして……」


霧山「リズム感がいい。アクセルとステアの呼吸が合ってるな……!」


Z33は、重たくも安定したシャシーを巧みに揺らしながら、ツインブリッジ特有の切り返しが激しい複合コーナーに突入していく。


フェルリア「……この子……!」

「リズムで“捻って”ますね。Z33は重心が高めなのに……こんなに滑らかにコーナーを……」


ミルキークイーン「まぁまぁ、しなやかですわね〜♡ おほほほ〜☆」

花「内藤パクるなァァァァ!!!!!」


──セクター1を通過。


若林「速い!!!腹切カナタの区間タイムにわずか0.2秒差で食らいついているぅぅぅ!!!」


フェルリア「信じられない……年齢じゃない。この子は……ちゃんと自分の車の“重さ”と付き合ってきた感覚がある……!」


ザァァァァァ……


風が強まるなか、Z33は最後のS字を華麗に抜ける。タイヤが一瞬だけ浮いたように見えるほど、ギリギリのボディコントロール。


伊藤「バカな……!高村……お前、あんな走りできたのかよ……!」


ブォン!!!

Z33がゴールラインを通過する――


若林「タイムは……腹切カナタには届かずッ!!だが堂々のセカンドタイム!!!Z33での走りとしては驚異的だァァァ!!!」


観客「うおおおお!!」 「Z33であの動き!?」「まだ16歳だろ!?」


高村はピットに戻るとすぐにヘルメットを脱ぎ、髪をかき上げて笑った。


高村「はーっ、めっちゃ緊張した……けど、俺は……戦える!」


花「……今の見た? これが……高校生!?」


カナタ「高村……」


伊藤「まじかよ……やべぇ、アイツ……想像以上だ」


フェルリア「……高村圭吾、恐るべき才能です。まだ粗削りですが……彼は間違いなく“未来”に来る……そんな風に思わされました……」


若林「さああああ!!!予選はまだ始まったばかりですッッッ!!!次は誰だァァァァ!!?」


フェルリア「若いのはいいことですね、、、、私なんてこれよりも元気でしたのでw」


若林「えっ、フェルリアさんがこの年齢の頃って……すでにレースのジュニアクラスで表彰台を総なめにしていたとか……?」


フェルリア「えぇ、懐かしいですね……。でも私、当時はほんっとアホでしたよ。毎回スタート直後にスピンして、でもなぜかそこから優勝しちゃってて……今じゃ考えられないですよね。あの頃の私は感情と本能だけで走ってました。」


若林「今は落ち着いてますよね?」


フェルリア「えぇ、表向きは……でも、こうして若いドライバーの走りを見ると……

内側で、また熱くなってきてしまうんですよねぇ……フフ……」


伊藤「今の聞いた!?なんか、フェルリアさん、

すげぇレジェンドだったみたいな空気出してるぞ……!」


花「知ってるわよ。昔のレース界隈の“七賢人”って呼ばれてたんだから。けどあたしからしたら、その伝説ってやつも実際に走ってナンボだってのよ!!」


ミルキークイーン「あら〜、花ちゃんらしいですわ〜……でも、あの方……只者ではありませんわね……」


ちとせ(実況席のモニターを見ながら)「むむ〜、やっぱフェルリアちゃん、昔よりずっと大人になったんだね〜。おじさん、あのころ彼女と一緒に予選走ったことあるんだよ〜。あの時はまだ……

むにゃ〜……」

「でも...一番密接があるのは....やはり、、、」


フェルリア「さて、高村くんの走り、楽しみですね。彼もまた、将来の“伝説の予感”を感じさせてくれます。」


若林「おおっと、Z33がスタート地点へ向かうようです!次の走者――高村圭吾の走行に注目だぁぁぁ!!!!」



予選

1 腹切カナタ トヨタ86前期型

2 高村圭吾 フェアレディZZ33(これから走る!)

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