第24話 そのもの名の
決勝レース、腹切カナタの86はついにNSX吉田宜明の背中を捉えた。
レース終盤、カナタは心臓の音すら聞こえるほど集中していた。前を走る黒い絶対王者のNSXの挙動は、どこか落ち着き払っていた。カナタの挙動よりも落ち着いてるーー。
後ろから煽っても、焦った様子がまったくあるように見えなかった。
──ピット無線
「相変わらず、吉田さんは悠然としてるなぁ......」
サンシェード越しに見えた吉田の横顔は、笑っているとも、真剣ともつかない表情が目立つ。
サンバイザーの下からちらりとカナタの方を気にしては、コクっと頷く姿もどこか“おじさん”の風格だった。
吉田「ついてきなよ...若いのーー....楽しいクライマックスにしようかー...」
カナタ「このおじさん....ブレーキングも立ち上がりも上手すぎる!....スキがない.....!!!」
来たアァ!!!
NSX吉田のストレートドリフトオオオ!!!
腹切カナタ、これに追いつけなアァァい!
速すぎる!!ブレーキングも圧倒的に絶妙だ.....!!こんな人を相手にうちは勝てるのだろうかーー?
ギュアアアアアアア!!!
ブオオオオオアァァァン!!!!
吉田 若いの.....ここが君の始まりだ....。
今よーく見ておきな....。
君はいつか.....♡!!
ドギャアアアアアアン!!!
いや!?並んだア!?
紅いルーキーが絶対王者に並んだア!!!!
L字コーナー!両方ドリフトを仕掛けるが吉田の方が一足先に動いたーー!!
カナタ 「すげェ...やっぱり速いよ!吉田さん!!!」
吉田 ......こいつは、物凄く強いやつになるぞーー。うちでも勝てないくらいの伝説に...な......。
彼は、とてつもなく速くコーナーをねじるように走らせていた__。
彼はこう言った_。その名は__。
吉田「吉田ノリアキだ__。」
その後方では、3人の攻防戦が激しく、激しく繰り広げられていた__!!
BMW M4柳津 VSC7 ゾフィア VS EVO9MR 黒川 VS 80SUPRA 東條____!!
パパンッッ!パアアアァァァァンンッッ!!!
ギュアアアァァァァ!!!
ゴォォォォォ_....!!
黒川「どけぇ!俺が先だ____!!」
柳津「__君、少し静かにしたほうがいいよ?氷みたいに__」
ゾフィア「だれが相手だろうと負けない__!思い知りなさい!!!」
ドギャンッッ!!
さァ!コルベットがとびだした___!!!
しかし、M4は譲らない!完全なブロック体制だ___!!
ゴウンゴウンッドゴォォンーー!!
東條「黒川ーー!!柳津ゥゥゥ!そして生意気にすり抜けたお前らァ___!!
この後、どうなるかわかってんだろうなァー!!!?」
4人が一斉に並ぶがそこはゴールまではL字型ストリート!!
一番インと外にいた車がすり抜けていくゥゥゥ!!!
東條輝と黒川海斗が上位表彰台圏内に復帰だアァァッァアァ!!!
さらにその後方から伊藤も接近しようとするも、
L字型コーナーで翻弄されて思うように動けない状態だ__!!
伊藤 アイツら__速い!カナタは先に行ったのか!??
なんてやつだ__!あの
M4やクロカラスまで抜くとは___。だけど、ずっと続くわけないんだ__!
カナタだってオレだってずっとは続かない__!
アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
腹切カナタアアアアアアアアアァァァァァ!!!
ーーー私達ですら見過ごしていましたァ!
柳津 なにかあったのか?
伊藤 まさか_____!
黒川 「へッ.....ザマァねぇな!そのままもう一度スマッシュしてぶつけてやんよォ!!」
ゾフィア「なに?」
相川 あいつ___!無茶しやがって......!
ーーーついにこのときが来てしまいましたーーー!!
なんと腹切カナタがクラッシュしてしまったアアァァァァ!!!!
岩永がニヤリとした顔を浮かべる。まるで神の遊戯のように____。
そして、どのレーサーでもないこの試合にもいない一人の声がした___。
カナタ クラッシュしちゃった......。結構、警戒してたのに__。
黒川海斗___。
君は俺の因縁と化するだろう______。
SNSの反応
・吉田さん、やさしすぎるW
・吉田さんの車サンシェードあるの熱すぎ!
・東條が黒川にボコされてるの笑う
店員2「どうしたんだアアアァァァァァ!カナタアアアァァァァ!!((泣))」
黒川 にやり......。
吉田 人の夢を___壊しやがって__。
伊藤「カナタアァァァァーーーーー!」
次回 第25話 屈辱




