第111話 銀色の弾丸
この話で相馬編完結!
――しかし、その間から銀色の弾丸ッ!!!!
観客がどよめいた。豪雨を切り裂き、銀色の光をまとったZ4が立ち上がってきた。
実況「Z4古田がきましたァァァァァァァァ!!!!」
実況「最終コーナーの低速ヘアピンから立ち上がりで追ってきたァァァァ!!!!」
柳津「なに!? この位置から!?」
古田「先にいかせてもらうーーッ!!」
――ドォォォォォンッ!!!!
直6のエキゾーストが豪雨の夜に響き渡る。
フロントから立ち上がる水煙をものともせず、銀の弾丸は異次元のブレーキングでコーナーを切り裂き、さらにトラクションを失わないまま旋回を終える。
その動きはまるでGそのものを手懐けたかのよう。
実況「立ち上がりのGを完璧に操る挙動ッ!!まるで弾丸のようにZ4が染み込んでいく!!!」
解説「古田さん……最終コーナーを異次元のブレーキングとリア旋回で抜けました!!」
前を走る柳津のM4が驚愕に目を見開く。
柳津「バカな……あの速度で……あの重さで……っ!?」
古田は冷静な口調で、だが内心は熱く燃えたぎっていた。
古田「……これが俺の古田ドライブだ。」
銀色の弾丸は、チェッカー目前で一気に順位を塗り替え始める。
後方――中団。
そこでも火花が散っていた。
黒いエボ9MRを操る黒川海斗、チャンピオンイエローのスイスポ伊藤翔太、赤の戦国カローラ岡田大成、そしてR8のセリナ。
さらに遅れてきた相川律のR34 GT-Rまでもが加わり、まさにフルカウンターバトルが勃発していた。
実況「後方中団グループでフルカウンターバトルが勃発しているぞォォ!!??」
解説「新世紀のバトルが、終盤で再び火を噴いてしまいました!!!」
水煙のなか、ラインが絡み合う。
エボ9MRの四駆グリップ、スイスポの軽さ、GRカローラの安定感、そしてセリナのポジティブなフミッパスライダー。
それらが全て豪雨の路面で激突した。
岡田「退けるか……!!俺は赤の戦国カローラだぞ!!」
セリナ「うわぁぁ!滑るけど楽しいーーッ!!」
伊藤「……ここで3位を獲る!!!」
黒川「伊藤ォ!!俺のエボ9MR、次は負けねぇからなァァァ!!!」
実況「チェッカーへの立ち上がりを切り手に入れるのはどっちだァァァァ!!!!」
ゴールライン直前。
ついに順位が確定し始める。
アナウンス「1位、NSX吉田ァァァァァ!!!!」
会場が爆発するような歓声に包まれた。
絶対王者の貫禄。0.01秒差の激闘を制したその姿は、もはや伝説の象徴。
アナウンス「2位、腹切カナタァァァ!!
赤い戦闘機トヨタ86GT!!」
会場は再び大歓声。
SNSは「NAでここまでやるなんて!?」
とコメントで溢れかえる。
そして、驚きの報告。
アナウンス「新たに……3位!
チャンピオンイエロォォ!!!
伊藤翔太ァァァァァァァァァァァ!!!」
伊藤「よっしゃァァァァァァァ!!!!」
伊藤「ゴールしたァァァァァ!!!!」
黄色いスイスポが豪雨を割り、信じられない速さでトップグループへ食い込んだ。
観客「スイスポが……!?」「奇跡だ!!」
続いて――
アナウンス「4位、黒川海斗ォォォォォ!!!」
黒川「伊藤なんかにやられるなんてな……だが
このエボ9MR、次は負けねぇよォォォ!!!」
解説ベルギー「黒川、強烈な意地を見せています!!!」
実況「彼は叫んでいます!!『おまけに紅い戦闘機も何故か中団に落ちたのに戻ってきた!?魔法すぎないかそれッ!?』」
SNSも大爆笑。
「黒川らしいなwww」
「伊藤に抜かれてキレてる」
アナウンス「5位、GT-R相川律!!!」
相川「よっしゃァァァァァ!!!!」
相川「ブガッティが下に落ちてくれて助かった……ッ!!」
豪雨の中、白いR34 GT-Rがチェッカーを受ける。
観客「相川ァァァァァ!!!」
SNS「GT-Rが帰ってきた!」
「シロン落ちたwww」
「シロンざまぁwwwww」
――ゴールライン。
豪雨を切り裂き、それぞれのマシンが全力で駆け抜けた。
絶対王者NSX吉田が1位。
腹切カナタが2位。
奇跡のスイスポ伊藤が3位。
黒川のエボが4位。
相川のGT-Rが5位。
だが、その影で古田の銀色の弾丸は、まだ観客の脳裏に焼き付いていた。
あの一気に世界中で広まって大歓声を披露させた伝説のワード「古田ドライブ」。
最後の最後で全てを賭け、豪雨を抜けて現れたその走りこそ、この夜のレースを伝説へと昇華させた一撃だった。
ピット裏では、仲間たちがモニターを食い入るように見ていた。
花「……すごい……本当にすごい……!」
サテラ「何あれ!?古田って、あんな化け物だったの!?!」
ちとせ「雨で古田ドライブ……狂気の沙汰だよ……」
ミルキー「うふふ……。でも、だからこそ伝説になるのですわ……」
SNSは世界規模で沸騰していた。
「NSX吉田の防衛戦」
「腹切カナタ奇跡の2位」
「スイスポ伊藤の快挙」
「古田ドライブ」
4つのタグが同時に世界トレンド入り。
豪雨が叩きつける最終区間。
チェッカーはもうすぐそこ。だが、最後の最後で戦いは決して終わってはいなかった。
実況「さぁぁぁぁ!!後方で大きくリードを築いた銀色の弾丸Z4古田!!そこに――紅いGRカローラ岡田大成が並んできたァァァァァァ!!!!」
観客総立ち。水煙の中で、2台のマシンがまるで弾丸と火球のように競り合っている。
銀色のZ4と紅いGRカローラ、その距離はわずかに数メートル。
岡田「並んできたッ!?そんな2.0リッターZ4で何ができるッ!??」
声は歪み、ハンドルを握る腕に力がこもる。
岡田「だがッ!!このGRカローラの爆発力を甘く見るなよッ!!!!最後までトコトン付き合ってもらうぜッ!!!!」
その宣言に観客はどよめく。
実況「岡田大成、強烈な叫びだァァァ!!!!」
解説ベルギー「……岡田さんは直線の伸びに絶対の自信を持っています。ターボの加速、そして4WDの爆発力。古田さんのZ4が軽量とはいえ、ここから先は地獄のような攻防になりますよ…」
古田の瞳には、赤い炎が宿っていた。
燃えるように赤いのに、その中心は雪のように白い。
古田「……勝負の時だ。」
彼はパドルシフトを思い切り指で弾く。
Z4の直6ターボが一瞬で高回転へ跳ね上がり、雄叫びを上げる。
ブォォォォォォォォンッッ!!!!
Z4はまるで弾丸が空気を切り裂くように、
岡田のGRカローラに食らいついた。
岡田「なにィィ!? この速度で――ッ!!?」
実況「銀色の弾丸ッ!!岡田の赤いGRカローラに食いついたァァァ!!!!」
解説「両者、完全に限界を超えていますッ!!」
エンジンが吠える。
Z4の直6ターボが獣のように唸り、
GRカローラのターボは爆裂音を撒き散らす。
二つの音が豪雨に混ざり、観客の鼓膜を震わせた。
実況「ブォォォォォンッッ!!!!
ドォォォォォンッッ!!!!」
SNSも荒れ狂う。
「Z4 vs GRカローラ熱すぎる!!!」
「古田ドライブ再び!!!」
「岡田大成、爆発力で迎え撃つのか!?」
路面は限界。
雨で磨かれたアスファルトに、Z4のタイヤがギリギリで食いつく。
水煙が視界を覆い、その向こうに紅いGRカローラの姿が立ち塞がる。
古田「俺のヒールアンドトゥ……この先の最終ヘアピンで使うには十分だッ!!!」
岡田「クルマだけで勝負できると思うなよォォ!!!Z4ォォ!!!!」
実況「残りは最終ヘアピン!!古田のヒールアンドトゥが炸裂するのか!?岡田の爆発力が突き放すのか!?どちらだァァァ!!!!」
最終ヘアピン突入。
Z4はギリギリまで突っ込み、フルブレーキを叩き込む。
だが同時に、右足はアクセルを軽く煽り、クラッチとシンクロ。
――ヒールアンドトゥ。
観客「おおおおおお!!!!」
実況「古田ァァァァァ!!!!雨のなかでまたやったァァァ!!!!」
Z4はリアを大きく振り出し、まるでスケートのようにコーナーを駆け抜ける。
豪雨で滑るはずの路面を、あえて滑らせて加速へと変える――古田ドライブの真骨頂。
岡田「クソッ……バケモンかよッ!!」
GRカローラは四駆の爆発力で立ち上がりを狙う。だが、Z4はすでにインを抜けていた。
チェッカー目前。
銀色の弾丸と紅い戦国カローラが、雨煙を切り裂いて並走する。
観客が総立ちになり、SNSが爆発する。
「並んだ!!」
「Z4とGRカローラ同着か!?」
「心臓が止まるッ!!」
実況「残りわずかァァァ!!!Z4古田か!?
それともGRカローラ岡田か!?
勝つのは...どっちだァァァァァ!!!!」
古田「俺が……勝つ!!!」
岡田「俺が……行くッッ!!!!」
豪雨の直線を、銀と紅が火花を散らしながら
駆け抜けた――
「車だけが勝負じゃねぇぞ岡田ァ……。
俺のZ4!今日は行けるッ!!」
「俺の……スーパー・ヒールアンドトゥ……。
そいつで……何ひとつ曲がれないコーナーはねぇんだよ!!!!」
古田の吠え声と同時に、Z4が仕掛けた。
エンジンの爆音が雨の粒を押しのけるように炸裂する。
――ブレーキィィィィィ!!!!
クラッチ操作とほぼ同時にギアが落ち、回転数が跳ね上がる。
ドギャァァァァァァンッ!!!!
実況「Z4仕掛けたァァァァァァ!!!!ブレーキングとクラッチ操作ほぼ同時ィィ!!並走のまま大型ヘアピンへ突入かァァァァァ!!??」
会場の大歓声。
観客「うわあああ!!!」「死ぬぞ!!」「並んでる並んでる!!!」
しかし――その時。
実況「おおっとォォォ!!!さらにそこへ柳津のM4が巻き込まれたァァァ!!!!」
少し前を走っていたBMW M4柳津が、この三つ巴の戦いに巻き込まれる。
外側から鋭く飛び込み、雨水を豪快に弾き散らして並走する。
柳津「……チッ。新人とおっさんキャラかよ……。それを相手する俺の気持ちも考えろよマジで……」
だがその目は笑っていなかった。獣のように鋭い。
M4のターボ直6が猛獣のような唸りを上げる。
グォォォォォォォッ!!!!!!
解説「柳津選手……これは本気ですね。普段は余裕を見せる彼が……今は牙を剥いています!!!」
実況「BMW対決!さらにGRカローラ!終盤で三つ巴のバトルが勃発ゥゥゥゥゥ!!!!!」
観客総立ち。SNSも爆発。
「Z4 vs M4 vs GRカローラとか熱すぎる!!」
「雨のなかでこれは自殺行為www」
「柳津が本気出した!!!」
Z4か!? GRカローラか!?
それともM4かァァァ!!!??
チェックフラッグはもう目の前。
6位の座を奪い合う、死闘の三台。
実況「チェッカーはこの3台のうち誰だァァァ!!!!」
古田はハンドルを握りしめながら、冷徹な視線を前に向けていた。
古田「……俺のZ4……この雨でも……まだ曲げられるッ!!」
岡田は歯を食いしばり、ステアを握る両腕に力を込める。
岡田「インについた……!普通であればAWDは有利!!立ち上がりは俺の方が速く鋭いッ!!」
岡田「逃げ切りには自信あるぜェェェ!!!!」
柳津は小さく笑った。
柳津「……でも俺はM4だ。お前ら2人と違って、ただの直線加速じゃ終わらせない。」
最終コーナー直前。
雨が路面を叩きつけ、白い水煙が三台を包み込む。
その中を、銀色、紅色、白銀が重なるように飛び込んでいく。
実況「入ったァァァ!!!最終ヘアピンに突入ゥゥゥ!!!!」
解説「ここで古田のヒールアンドトゥが炸裂するか!?それとも岡田のAWD立ち上がりが勝つのか!?柳津のM4が食い破るのかァァァ!!!!」
古田、ブレーキを叩き込みながら右足でアクセルを煽る。
ヒールアンドトゥのリズムが車体を揺さぶり、Z4はリアを振り出す。
雨の中で制御不能になりそうな挙動――だが古田の手で完全に抑え込まれた。
古田「まだ……まだ踏めるッッ!!!!」
岡田は必死に叫ぶ。
岡田「AWDだぞォォォ!!!立ち上がりは俺が有利なんだァァァ!!!!」
カローラの四輪が路面を食らい、直線への加速を始める。
柳津は冷静にギアを落とし、鋭いバブリングを響かせる。
柳津「ハハ……やっぱ俺が決めるんだよな。」
M4の直6ターボが豪雨を切り裂き、イン側から差し込む。
実況「三台同時に立ち上がったァァァァ!!!」
解説「もうこれは……どれが勝つのかわからないッ!!!!」
観客の歓声が最高潮。
「いけぇぇぇ!!!」
「Z4勝て!!!」
「カローラだ!!」
「M4だろ!!!」
SNSは大炎上。
「#Z4」「#GRカローラ」「#M4」三つのハッシュタグが同時にトレンド入りする。
直線。
三台は横並びのまま、チェッカーへ突き進む。
タイヤの水煙が混じり合い、ライトが交錯し、観客には光と影の帯にしか見えなかった。
実況「並んでいるゥゥゥ!!!Z4か!!カローラか!!M4か!!??」
解説「ほんの数メートル差!!これが最後の最後の戦いです!!!!」
古田「……まだ終わっちゃいねぇ!!」
岡田「抜かせねぇぇぇ!!!!」
柳津「……勝つのは俺だ。」
チェッカーフラッグ目前。
三台が同時に駆け抜ける――
観客「うわあああああああ!!!!」
実況「わからないッ!!!これはフォト判定だァァァァァ!!!!」
豪雨の中、三台の轟音が消えていく。
観客もSNSも固唾を呑む。
次の瞬間に出る電光掲示板の表示が、すべてを決めるのだ。
チェッカーはこの3台のうち
6位は誰の手にィィィィ!!???!?
さらにそこからR8内藤も接近!!!?
内藤「そろそろフミッパスライダーでハートを掴ませてあげるんだからァァァァァ!!!!」
「おらあああああああああ!!!!!!」
柳津「また新人とおっさんキャラかよッ......。それを相手する人のコトも考えろマジで......。」
岡田「......インについたが普通であればAWDはこっちの方が有利で立ち上がりが速く鋭いーーッ!
逃げ切りには自信あるぜーーーッ!??」
豪雨の最終ストレート。
銀色の弾丸Z4古田が、チェッカーを目前にしてなお加速を続けていた。
水煙を切り裂く姿に、誰もが「このまま決める」と確信した――その時。
ヴァァァァァァァァァァァンッ!!!!
ドドォォォォォォォンッ!!!!
左右から閃光が走る。
ひとつはレモン色の閃光、アウディR8。
もうひとつは紅の塊、GRカローラ。
実況「な、なにィィィィ!?!?ここで岡田大成のGRカローラ!そして内藤セリナのレモン色R8が、古田のZ4を抜きにかかったァァァァ!!!!」
観客「うわあああ!!!」
「ヤベェ!!!4台横並び!!」
「古田抜かれる!?!?マジかよ!!」
R8の車内で、セリナは笑顔を崩さない。
内藤「……あらー?まだまだ甘いわね!おほほほほっ!!!」
その声がパブリック通信を通じて全員に届いた瞬間、観客席は爆笑と悲鳴が同時に起こった。
SNS「#おほほほほ」「#フミッパスライダー」で瞬時にトレンド入り。
一方、GRカローラの岡田は血走った目で叫ぶ。
岡田「お前と並びたくねぇよおおお!!!!嫌だああああ!!!」
雨を叩く轟音の中で、赤と黄色が並んだ。
必死に追いすがる古田のZ4の前を、二台は一気にかすめ取る。
古田「……まずいな……」
低く絞り出すような声。銀の弾丸は確かに速い、だがこの瞬間、二台の若い力と狂気が前へと踊り出ていた。
柳津のM4が少し後方から冷ややかに状況を眺める。
柳津「……誰がクラッシュするだろ。」
その目は研ぎ澄まされた刃のよう。
雨で滑りやすい直線、四台が同時に全開。クラッシュは必然――だが、誰がその餌食になるのか。
そして――解説席。
ベルギーが目を見開き、マイクを握る。
ベルギー「こ、これは……!古田さんが築いた弾丸ラインを、なんとセリナさんと岡田さんが利用しました!しかも完全に横並びで抜き去ったのです!!!」
隣にいるのは、優雅に微笑むミルキークイーン。
彼女は涼しげに首を傾げながら語った。
ミルキークイーン「みなさま、ご覧ください……。これはただのオーバーテイクではございませんわ……。銀色の経験を踏み台に、若さと勢いが二重に重なった瞬間……。この雨の路面で成し遂げるなど、奇跡以外のなにものでもありません……」
ベルギー「セリナさんは……あの“フミッパスライダー”をここでも発動しています!あのリズムを崩さずに、ここまで制御できるなんて……。ポジティブの権化、まさに嵐のなかで笑う女神!!!」
ミルキークイーン「ですが……爆発力の岡田さんも侮れませんわね。四輪駆動、その立ち上がりの牙はZ4やR8をも凌駕しかねない……。ええ、本当に最後まで目が離せませんわ……!」
ストレートは短い。だがここまで来れば、ほんの数百メートルが永遠に思える。
R8が流れるようなラインで滑り込み、GRカローラが爆発的に蹴り出す。
Z4は必死に食らいつくが、雨で路面を奪われている。
観客「いけぇぇぇ!!!」
「セリナ勝てぇぇぇ!!」
「岡田ァァァ!!!」
「古田ァァァ戻れぇぇぇ!!!」
SNS「おほほほ祭り」「#GRカローラ無双」「#古田まだ終わってない」
Z4古田は歯を食いしばった。
古田「……このまま終わってたまるか……ッ!!!」
右足が再びヒールアンドトゥを刻む。
雨の路面を滑らせ、限界ギリギリの角度でR8とGRカローラのスリップに飛び込む。
だが――セリナは笑顔のまま。
内藤「楽しいね!!雨だって最高じゃん!!!」
再びパブリック通信に響き渡るその声に、緊張していたドライバー達でさえ思わず口元が緩む。
岡田「……ふざけやがってェ!!」
柳津「……マジで笑えるのは誰かだな。」
実況「抜いたァァァァ!!!セリナと岡田がZ4古田を抜き去ったァァァァ!!!!」
ベルギー「これは……伝説の雨中決戦の象徴となるでしょう!」
ミルキークイーン「ええ……“銀の弾丸”すら、笑顔と爆発力には抗えなかった……そう記録されるかもしれませんわね……」
だが、まだチェッカーまでは数十メートル残されていた。
4台は互いに牙を剥き、観客もSNSも叫び続ける。
「最後は誰だァァァ!!!???」
雨と轟音と歓声の渦の中、物語は最高潮へ突き進んでいく――
銀色の弾丸Z4の背後で水煙が大きく裂けた。
そこから赤い閃光と、白い異物が同時に迫ってくる。
さらにーーーッ!!!
ヴァァァァァァァァンッ!!!!
ブォオオオオオオオオンッ!!!!
実況「な、なんだ!?!?Z4古田の後方からッ!!赤い488GTSクリスタ、
それに……白いクリッパーバン石井が接近してきたァァァァァァ!!!!!」
観客「おいおいおい!!!」「弁当バンまだ生きてたのか!!」
「フェラーリと軽バンが同じ画角にいるのおかしいだろ!!」
花はチェッカーを振り下ろしたその手を握りしめ、雨に濡れた髪を振り払う。
花「……あいつ……まだ生きてたのね……」
蒼白な顔で叫ぶ彼女の視線の先には、弁当を積んだ白い軽バン。
「弁当万歳」の文字が雨でにじんでいた。
それでも石井は走っていた。弁当を、そして自分を守るために。
すでにゴールを終えていた伊藤翔太は、ピットで濡れた肩を揺らしながら呟いた。
伊藤「……あいつ……!」
彼の黄色いスイスポは、さっきまで死闘を演じた仲間の証のように泥と水をまとっていた。
だが今、伊藤の心は別の熱で燃えていた。
雨の中を走り続ける白い軽バン。その姿は、何よりも眩しく見えた。
そして絶対王者、NSX吉田。
ピットへゆっくりと戻りながら、ヘルメットを外して笑った。
吉田「おおー。若いのが増えるのはいいねぇー。21なんだろ?あの石井っての。」
その声は静かだが、確かな敬意が込められていた。
絶対王者にさえ、あの姿は“走り屋の魂”として響いていたのだ。
解説席。
ベルギー「石井さん……!普通ならここでリタイアしてもおかしくない……。ですが、彼は弁当を守るためにまだ走っています!!」
ミルキークイーン「ええ……。命よりも大切な“責任”を積んでいるのでしょう。だからこそ彼は走れる……それが彼の武器ですわ……」
観客席もSNSも騒然。
「石井21歳!?」「若すぎるだろwww」
「おっさん古田と対照的すぎて笑える」
「弁当を守る姿、泣ける……」
雨に濡れたサーキット。
その中心で、白い軽バンは必死に走り続けていた。
誰もが祈った――弁当が、そして石井が無事にゴールへ辿り着けることを。
赤い488GTSのコクピットで、クリスタは猛獣のように笑った。
クリスタ「フフッ……まだ勝負は終わってない!Z4、R8、カローラ、M4……その背中に、私の跳ね馬が牙を剥く!!!」
488のV8ツインターボが怒涛の咆哮を上げる。
雨粒を弾き飛ばしながら、フェラーリ特有の甲高いサウンドが豪雨にこだました。
その真後ろで、妙に違和感のある音が混じる。
ブォォォォォンッ……ガラガラッ!!!
白いボディに「弁当万歳」の赤文字。
荷室にはぎっしり弁当を積んだ、商用軽バン・日産クリッパー。
そのハンドルを握る石井の表情は真剣そのものだった。
石井「……弁当は……俺が守る!!誰にだって奪わせねぇ!!!」
サイドに揺れる弁当箱の山が、ガタガタと鳴る。
観客は爆笑と歓声を同時に上げた。
観客「弁当バン来たァァァ!!!」
「お腹空いたぁぁぁ!!!」
「落とすなよ絶対に!!!www」
解説席も混乱していた。
ベルギー「ま、まさか!?弁当を積んだ軽バンが……488フェラーリと同じストレートに並ぶなど……!?!?これはもう常識を超えていますッ!!」
ミルキークイーン「うふふ……。でも、こういう光景こそ“86伝説”の真骨頂ですわ……。庶民の生活と夢の跳ね馬が、同じ雨の戦場で戦っている……。しかも彼は……弁当を守り抜く使命を抱いているのですもの……!」
古田のZ4のミラーに二つの影が迫る。
赤の跳ね馬、そして白い弁当バン。
古田「……まずいな。後ろからクリスタ……そして、まさか石井まで……!?」
クリスタ「退けェェェェ!!!ここで食らいつくのよォォォォ!!!」
石井「退かねぇ……!たとえ潰されようとも、この弁当は届けるッッ!!!!」
雨水が四台の間に吹き荒れ、視界が真っ白に染まる。
観客席からは悲鳴と笑い声が混ざった。
SNS「石井ィィィ!!!」「弁当死守www」「この場面でフェラーリと軽バン並ぶな」
「#弁当万歳」「#跳ね馬の牙」「#Z4包囲網」
最終コーナーへ向けて、古田Z4が必死にラインを守る。
だがクリスタはアウトから差し込み、跳ね馬の力で水煙を切る。
そのさらにインを、信じられないことにクリッパーバンが突っ込んできた。
ベルギー「ま、まさか!?石井がインから行ったァァァ!!!!」
ミルキークイーン「信じられませんわ……!軽バンがフェラーリの内側に……。でも……荷物を守る強さは、時にスーパーカーをも凌駕するものですわ……!」
石井「うおおおおおおお!!!!」
荷室の弁当箱が一斉に傾き、ガラガラと音を立てる。
それでも石井はハンドルを切り、滑るリアを全身で押さえ込んだ。
古田「……クソッ……背中に牙を剥く2台と、弁当バンまで……。本当に……このレースは狂ってる……!」
実況「さぁァァァ!!!!Z4古田を追うのは……赤い488クリスタ!!そして、まさかの弁当バン石井だァァァァァ!!!!!」
実況「雨の最終決戦、誰が生き残るッッ!!!!」
観客「行けェェェェ!!!!」
「石井ェェェ!!!」「弁当落とすな!!!」
「フェラーリ勝て!!!」
ーーしかし!
ここでまさかのチェッカー!!!!!!
ギリギリ前に出たのは岡田大成!!!!
Z4は終盤まさかの大幅に失速してしまいました!!!やはり1.8リッターでは無理がありましたァ!!!!!
7位には、柳津雄介が再開からの怒涛の快進撃ッ!!!!!!
8位内藤!9位濱さん!!10位クリスタ
11位古田!!!!Z4が一瞬でハイパワーに敗北してしまったァァァァァ!!!
終盤、雨に包まれたレース場!!!!!
序盤炎天下の中走り続けたレーサーたちにみなさんからも声援をお願いします!!!!!!
ーーしかし!!
雨を切り裂く最終ストレート、観客が固唾を呑んで見守る中、チェッカーフラッグが振られた瞬間――
実況若林「ここでまさかのチェッカー!!!!!!」
雨煙の中を飛び込んだのは、紅い爆炎をまとった一台。
実況若林「ギリギリ前に出たのは……岡田大成ッッ!!!!!」
観客「うおおおおお!!!!」「岡田ァァァ!!!!」
解説ベルギー「なんと……!!銀色の弾丸Z4古田が、終盤で大幅に失速してしまいました!!やはり1.8リッターターボでは……この雨とハイパワーの壁を超えられなかったかッッ!!」
ミルキークイーン「ええ……。古田さんの走りは見事でしたが、最後に立ちはだかったのはやはり“馬力の現実”……。雨と重圧のなかで、それでも挑み抜いた姿は……決して色褪せませんわ……」
順位が次々と表示される。
電光掲示板が雨の中で輝き、観客が沸き立つ。
実況若林「7位には、柳津雄介!!再開からの怒涛の快進撃ッッ!!!!!」
解説ベルギー「M4が最後に見せた怒りの踏み込み……!あれは彼らしい激しい攻めでした!!」
実況若林「8位は内藤セリナ!!フミッパスライダーを最後まで魅せつけてくれましたァァァ!!!」
ミルキークイーン「ええ……雨のなかでも笑顔を絶やさなかった彼女……。ポジティブさが逆に恐ろしい武器となりましたわね……」
実況若林「9位は濱さん!!粘り強い走りでGR86をここまで運びましたァァ!!!」
解説ベルギー「中盤で沈んだものの、諦めない心が最後に順位を押し上げました……!」
実況若林「10位クリスタ!!フェラーリ488GTS、豪雨で牙を剥くことは叶わず!!!」
観客「うわぁ惜しい!!」
SNS「#跳ね馬涙」「でも存在感すごかった」
実況若林「そして11位……Z4古田!!!!!」
会場「えええええ!!!!!」
ベルギー「一瞬で……!本当に一瞬で、ハイパワー車たちに飲み込まれてしまいました……!」
ミルキークイーン「でも、あの“古田ドライブ”は……今日のレースを象徴する輝きでしたわ……。負けても、伝説を残す走りですのよ……」
チェッカーを受けた車たちは次々に減速していく。
雨はまだ降り続き、濡れた路面をヘッドライトが反射する。
観客は拍手を送り、SNSは大混乱。
「吉田やっぱ王者!!」
「カナタ2位かよ!?奇跡すぎ!」
「伊藤翔太スイスポ3位wwwww」
「黒川も相川も仕事したな」
「古田ァァァ……泣ける」
「セリナ幼稚すぎてトレンド入り」
「弁当は……石井の弁当は……」
そう、最後に電光掲示板に表示されたのは衝撃の文字。
DNF 石井 NV100クリッパー
タイヤのアクシデント
実況若林「な、なんと!!石井は……タイヤトラブルによってリタイアァァァ!!!!!」
観客「うわあああああ!!!!」
「弁当ォォォ!!!
ゴール目の前なのに何してんだあああ!!!」
SNS「#弁当万歳 DNF」
「弁当は守れなかった……」
ベルギー「石井さん……最後の最後まで、弁当を積んで走り抜けましたが……やはり商用バンには酷すぎる戦場でしたか……!」
ミルキークイーン「でも……みなさま忘れないでください。彼が魅せた走り、そして弁当を守るという誇り……それはこの雨の夜に確かに刻まれましたのよ……」
ゴール直後。
花はチェッカーを握り締めたまま、唇を震わせた。
花「……石井……あんた……」
ピットで見守る伊藤は黙り込み、吉田は小さく頷く。
吉田「……若いのが増えるのはいいことだ。あいつ……21なんだろ?石井っての。まだこれからだ……」
――雨に包まれたサーキット、最後の最後。
すべてのドラマを飲み込んできた豪雨の路面を、たった一台のアメリカン・マッスルが力強く駆け抜けていた。
黄色いライトが濡れたアスファルトに反射する。
シボレーC7、ゾフィア。
その姿は疲弊しきっていたが、それでも諦めない意志が車体を前に押し進める。
実況若林「そして!最後の最後にゴールインするのは……シボレーC7ゾフィアだァァァ!!!!!」
観客「うおおおお!!」「最後まで残った!」
チェッカーフラッグが振られる瞬間、ゾフィアは笑みを浮かべた。
ゾフィア「あ! 私の……」
言いかけて、舌を噛みそうになりながらも必死に言葉を探す。
ゾフィア「ふざけないでよね!!!」
彼女の声がパブリック通信に響く。
観客も解説席も一瞬静まりかえった。
だが次の瞬間――
ゾフィア「……クソなんて言葉は失礼だから……こういってあげるわ……」
深呼吸して、マイクに向かって叫ぶ。
ゾフィア「――ウンCォォォォォ!!!!!」
観客「ぶははははは!!!」
「なんだそれェェェ!!!」「やりやがった!!」
SNS「#ウンCォォォォォ」「ゾフィア最後に全部持ってったwww」「#うんC女」
「負けたのに勝った感すごい」「やっぱゾフィアはキャラ強すぎ」
実況若林「ゾ、ゾフィアァァァ!!!
最後にとんでもないセリフを残してラストチェッカーだァァァァァ!!!!!」
解説ベルギー「……え、えへへっ!! これはもう……雨のレースを締めくくる“伝説の迷言”といっていいでしょう!」
ミルキークイーン「……くすっ。本当に最後までお茶目ですわね……。でも……だからこそ愛される存在になるのですわ……」
ゾフィアのC7は大きく息を吐くように排気音を響かせ、ゴール後のスロー走行に入る。
だがそのインパクトは、上位陣に劣らず強烈だった。
ピットで花はチェッカーフラッグを握りしめたまま、口元を押さえて笑っていた。
花「……ぷっ……ウンCォォォって……ッ。
…ほんとふざけすぎ……でも、最後まで走り抜いたのね」
伊藤翔太も隣で笑いながら頷く。
伊藤「……あいつ……最後に全部持ってったじゃねぇか……」
吉田は肩を揺らし、絶対王者らしからぬ大笑いを見せた。
吉田「おおー!ゾフィア!最高だな!!
最後に若いのを全部食ったな!!」
第4戦相馬戦シーサイドPK 総合暫定順位
1吉田 NSXNA1 絶対王者
2腹切カナタ トヨタ86 紅い戦闘機
3伊藤翔太 スイフトスポーツ
4黒川海斗 エボ9MR
5相川 GTRR35
6岡田大成 GRカローラ
7柳津雄介 BMWM4
8内藤セリナ AudiR8
9濱さん GR86
10クリスタ・ニールセン
11古田 BMWZ4
12東條 80スープラ
13MRTAKA ブガッティシロン
14ユナ 86
15陽太 ロードスター
16ゾフィア C7
DNF (配達員)石井 NV100クリッパー
ゴール寸前でタイヤのアクシデント発生し
リタイヤ。
zizizizi..........
花「.....この機械大した次回予告しないのね__?」
伊藤「お前は、、、、、」
カナタ「まさか___!!!!」
次回 第112話 新章開始!