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86伝説エーペックス  作者: さい
第2シリーズ 86伝説再び!!!!相馬編
120/136

第109話 チェッカーに募る雨の音

レース残り1キロメートル!!!!!!

トップはMRタカのブガッティシロン!!

このまま、絶対王者NSX吉田!

絶対王者から陥落かァァァァァァァ!!??!?


吉田「くっ....!!こんなはずでは_」

MRタカ「悪ぃな、絶対王者。

大したことなかったぜ...1位はもらったぜェ!」

吉田「でも、そうはいかないんだよね〜......」

ブリィィィンッ!!!!

ヴァアアアアアアン!!!!


NSXが横に並んでいく!!

漆黒のブガッティシロンと黒いNSXが勝負!

2台並走状態で中速コーナーへ...!!!


MRタカ「......ッ!!離せぇぇ!! いかせてくれェェェ!!」

MRタカのブガッティシロンは、ラインをクロスさせた絶対王者であるNSX吉田が黒いボディを被せていく。

それは、実況席からもまるで筆を動かすかのような芸術を見ているかのようだった。


ベルギー「ええ...今のとんでもない荒業ですね......!」

実況「...と言いますと何が起こったんでしょうか?私にはさっぱり分かりませんでしたーー。」


解説がライブの音声からも響き渡る。

ベルギー「恐らくですが...あえて事前にフェンイトをしてからですね、

鋭くブレーキングを掛けます...。そこから外側から回り込んでそのまま__」

実況「あ、つまりそのままOBしたということですね__。」


先頭のトップは、MRタカのブガッティシロンだ。 漆黒の魔王とも言われているMRタカのブガッティシロンからはW16エンジンが唸りを上げている。このまま漆黒の魔王が先にフィニッシュとなるのだろうか。 絶対王者と呼ばれてきたNSX吉田が王手を掛けられている状態に陥ってしまう。


吉田「...少し誤算の結果だが、、、このまま逃げ切りそうだな....ッ!」

「一瞬でも慌てさせたことは褒めてやるッ!

だがな...こっちにもプライドってモンがあるからにはーーッ!!!」

MRタカ「おお...見せてもらうぞ、、、!

ブガッティシロンに乗れるだけの知識、技能が全て俺に備わってることをな.....!!」


観客の目は釘付けだ。雨のしぶきが舞い上がり、視界を奪う。だがその先で繰り広げられるのは、ただの直線勝負ではない。魂と魂の激突。二台の咆哮が重なり、アスファルトを震わせる。


MRタカ「悪いな……! ここからは俺のシロンの独壇場だッ!!」 ヴァァァァァァァン!!!! 1500馬力の怪物が牙を剥く。四輪駆動の暴力的な加速が、雨粒を弾丸のように吹き飛ばす。


だが――吉田の瞳は揺るがない。

吉田「……そう思うなら、もう少し夢を見ててくれよ。」


ブリィィィィィン!!! ヴァァァァァァン!!!!

NSXが吠えた。魂を削るようなヒール&トゥでシフトダウン。路面に吸いつくような鋭い挙動で、シロンの死角を突く!


実況「きたあああああッ!!!!!NSX吉田!!

誰もが恐れる絶対王者!!ブガッティ・シロンに襲いかかるゥゥゥゥ!!!!」

MRタカ「なにっ……!? 速すぎるだと……!?」


シロンのリヤにぴたりと張り付くNSX。その動きは一瞬の迷いもなく、まるで運命を決められたかのような軌跡を描く。雨のヘアピンを抜けた瞬間、吉田は迷わずアクセルを踏み込んだ。


吉田「俺のフィニッシュは……ここだッ!!」

ギャァァァァァァッ!!! ヴォォォォォン!!!!

NSXが弾丸のように飛び出す! そのままシロンのイン側へ飛び込み、土砂降りの中を切り裂く――!


MRタカ「うおおおおおッ!?

1500馬力が……押し負けていく!? この俺のシロンが……!!!」


実況「オオオオオオオオ!!!!!!信じられない光景だァァァァ!!!!

NSX吉田が……絶対的モンスター、ブガッティ・シロンを抜き去ったァァァァ!!!!」


吉田のマシンが前へ躍り出る。観客の悲鳴、雨音、エンジンの咆哮、すべてを切り裂いて――

吉田「これが、絶対王者の走りだッ!!!」


残り数百メートル、シロンは必死に追撃を試みる。だがその巨体は雨に足を取られ、進路を乱す。NSXはただ前を見据え、光の矢のようにゴールを目指す――!


路面は雨で光を反射していた。アスファルトを叩く雨粒の音がリズムを刻むなか、赤いGRカローラとアウディR8が互いを睨む。

アクセルの煽りでエンジンが吠える。


セリナ「……楽しい!大成くん、もっと本気で来て!」

岡田「言われなくてもだ。セリナ……この雨でも、俺は止まらない。」


スタートの合図もない。ただ視線とアクセルで交わす意思表示。R8が軽快にリアを振り、四輪駆動を生かした安定感でコーナーを切り裂く。だが、GRカローラも四駆の牙を剥く。


岡田「セリナのライン取り……速え。雨なのに怖さがないのかよ……!」

セリナ「怖さより楽しさ!この濡れた路面、光っててキレイなんだもん!」


水しぶきが舞い上がり、ブレーキランプが霧の中に赤く光る。R8のV10が轟音を響かせる。セリナのドライビングは正確かつ大胆。滑るはずの路面でトラクションを使い切り、微笑むようにハンドルを切る。


セリナ「この区間、右抜けるよっ!」

岡田「させるかァァァァ!」


GRカローラがわずかにインを締める。だが、セリナは視界の端にあった側溝のギリギリを突き、トルクを抜きながら減速。すかさず加速し、大成のカローラの外へ飛び出す。


岡田「くっ……インを狙ってたのに、外からか!?」

セリナ「外の景色のほうが好きなんだ。見てて気持ちいいよ!」


雨粒をまとったR8が前に出る。だが岡田も諦めない。高速S字に差し掛かり、リアを流しながらも車を押し込む。

岡田「まだ終わらせねぇ……!」

セリナ「なら、もっと遊ぼ?」


二人の車はまるで互いの挑発に笑っているかのように、夜の峠で雨を裂く。

タイヤの水膜を切り裂く音と、二人の鼓動だけが世界を満たしていた。


実況「素早いヒールアンドトゥを駆使して見事なオーバーテイクでしたーーッ!!!!」

「NSX吉田がついに漆黒の魔王MRタカをオーバーテイク成立!!!

さらに後方では、GRカローラ岡田とR8内藤が大混戦!!!波乱の終盤戦が巻き起こっているゥゥ!!!!」


空気が張り詰めた。

まるで時間が一瞬だけ止まったかのような錯覚――だが現実は、メーターの針が恐ろしい速度を刻み、足元ではタイヤがアスファルトを削り取っている。

腹切カナタの赤い戦闘機――トヨタ86前期型。軽快で鋭いが、直線的な馬力では敵わない。


そして、迫り来る白い閃光。

内藤セリナのアウディR8。

雨を弾き、まるでステージのスポットライトを浴びて踊るような車体の動き。コーナー手前で一瞬の減速を見せたかと思えば、次の瞬間にはトラクションを完全に支配し、86のテールを追い詰める。


カナタ「……クソ……!

視界に映ってるだけで圧がすげぇ……!」


バックミラーに映るヘッドライト。その光は真っ直ぐではない。生き物のように揺れ、捕食者の目つきで獲物を狙っていた。

カナタの指先はハンドルを固く握りしめる。

汗が滲み、レザーが湿る。

――来る。


その予感を裏切ることなく、内藤セリナがラインを変えた。

コーナー外側から大胆に振り、濡れた路面を信じ切ったままブレーキを残しつつ切り込む。


セリナ「カナタくん……私の“フミッパスライダー”……味わいたいの?」

その声が、雨音の向こうから響くかのように鮮明だった。

挑発でもあり、誘いでもある。軽く弾むようなトーンに、底知れぬ自信が混ざる。


カナタ「……ふざけんな……!これ以上前はやらねぇ!!」

しかし、状況は容赦ない。

R8の加速が鋭い。ミッドシップの重量バランスが雨のS字で牙を剥く。

カナタの86はFR――後輪駆動の限界を知っている。路面が滑れば、ほんの少しのカウンター遅れが命取り。


――そして、セリナの技。

彼女が足をペダルに叩きつけた瞬間、車体が異様な角度でコーナーへ滑り込む。

外から見れば、それは“踏み込み+スライド”の同時発動。まるで路面の摩擦を意図的に解き放ち、制御不能に見える角度でインへ突っ込む。

しかし制御されていた。R8はまるで氷上を舞うように滑り、タイヤが水を散らす音すらリズムの一部になる。


セリナ「……さあ、追いついた!」

視界の端に白が飛び込む。

右から、左から――カナタの86のテールをなぞるように迫る。

追撃は止まらない。セリナのR8はまるで生き物のように、逃げ道を消していく。


カナタ「くそ……このままじゃ……やられる!!!」

次のコーナーは高速右。外に逃げれば水膜。内に寄せれば路面が荒れている。

ブレーキをいつ切るか、一瞬の判断で全てが変わる。


――だがセリナはもう動いていた。


ステアを切り、R8のノーズが赤い86のリアを追い詰める。外からインに切り替えることでラインを重ね、さらには加速を残したまま車体を振り抜く。

白い閃光が視界を横切る。

その軌道は予測できない。だが確かに、美しかった。


セリナ「カナタくん……楽しいよね?」

カナタ「……うるせぇよッ!今に見てろォッ!」


ブレーキランプが赤く光る。

その瞬間、双方のマシンが火花を散らすように進入。水しぶきが宙に舞う。

ミリ単位の距離。

86のテールがわずかに流れ、カナタはカウンターを当てる。R8がすかさず外側から重なる。


――抜かれるか?それとも――守れるか?


数秒にも満たない攻防の中で、心臓は鼓動を倍速にした。

カナタは歯を食いしばり、声を絞り出す。


カナタ「……まだだ……まだ俺の道は終わらねぇッ!!!」


アクセル全開。

FRの限界を押し込み、後輪にトラクションを乗せる。86が尻を振りながらも前へ飛び出す。

しかし、セリナも負けない。フミッパスライダーの余韻を残したまま、R8がスピードを乗せて追う。


二人のマシンは、雨の峠を切り裂き、夜を焦がす二条の光となった。


ものすごい速さで抜けていくーーーッ。

あれが絶対王者なのかーーー!!???

こんなに悔しいと思ったことは初めてだ。1500馬力の、、、俺のシロンがーー。堕ちていくッ.......負けていくッ!!!!!!


濡れたアスファルトの匂いが鼻を突く。夜の峠、終盤の勝負区間。

2台のBMWが唸り声を上げる。

白い巨体――M4。直6ツインターボの怒涛のトルクを背負い、まるで獣のような存在感。

そして、銀色の刃――Z4。軽さと機動性で対抗するスポーツカーの象徴。

年齢を重ねた2人の男。だが、その目は若いドライバー顔負けの鋭さを宿していた。


柳津「……古田さん。まだ余裕なんですか?」

古田「おう。オッサンってのはな、余裕を装ってナンボだ。」


わずかな笑みと共に、Z4のテールが小さく揺れた。その挙動だけで柳津は理解する。

――仕掛ける気だ。


次の右コーナー、イン側は路面が荒れている。

アウトに逃げるか、内を突くか。

M4の重量が仇となる可能性もあったが、柳津はブレーキを残しながら突っ込む。


柳津「インはもらう!」

古田「甘いな!」


Z4が、軽さを武器に逆サイドから切り込む。まるで矢のように進入し、M4のフロントをかすめる。

火花が散る。

2台の距離は紙一重。


古田「この速さ……ついてこれるか!」

柳津「まだ…こっちはブーストを残してるんですよ!」


白いM4が再加速。

路面を蹴り上げるタイヤの音が響き、直線で重い車体を力で押し出す。

だがZ4は身軽だ。ラインを外しても加速の落ち込みが少ない。


古田「若い頃みたいにはいかねぇが……今が一番面白ぇ!」

柳津「オッサン同士の意地の張り合いですか……望むところです!」


次は高速S字。

スピードは落とせない。

M4のパワーを殺さず、かつコントロールを失わずに行くしかない。

柳津の瞳が鋭く細まる。

アクセルを抜かずにブレーキを踏む。足先の繊細な操作が必要だ。


柳津「重さなんか関係ない……力で曲げる!」


車体がわずかにスライド。白い塊が路面を押しつける。

Z4も負けない。古田はギリギリまで攻め、外から滑らかに差し込む。


古田「ほらほら……どうした雄介ぇ!」

柳津「まだ終わりませんよ……ッ!!」

2台のマシンが夜空に火花を散らし、S字を抜ける。

だが、ゴールはまだ先。

そして、最後のストレートへ向けて、緊張が高まる。


古田「次のブラインドコーナー……命を賭けられるか?」

柳津「……その問い、笑わせますね。」


ブレーキの光が瞬き、心臓が跳ねる。

銀の弾丸と白い獣。

互いの生き様を背負い、峠を削る。

――勝負は、まだ終わらない。



その瞬間!!!!

ブガッティシロンを一瞬にして抜き去る紅いスターライトがキラリと刹那に煌めいてNSXに並ぶーーーッ。


ブォォォォォォォォンッ!!!!!

ズドォォオォォンッ!!!!!

ギュアアアアアアアア!!!!!


アアッッ!!!????

紅い戦闘機がドリフトしながらNSX吉田のフロントにボディを被さるゥゥゥ!!!!!!

そのまま、被せてゴールインすれば腹切カナタが1位になり優勝ッ!!!!!!


闇夜を切り裂く光の矢が二条、いや三条に増えた。

国道を揺らすほどの重低音が重なり合う。まるで世界がその轟音に震え、全てが車の挙動に支配されているようだった。


その中心にいたのは――赤い戦闘機、腹切カナタのトヨタ86前期型。

たとえパワーで劣っても、彼のライン取りと瞬発力は神業に等しい。


背後には、獰猛な獣のような咆哮。

ブガッティシロン、MRタカ。1600馬力の怪物が息を荒げ、冷たい空気を切り裂く。


そして、目の前には――NSX吉田。

流麗なミッドシップ、理想的な重心でコーナーを刻むシルエット。


ブレーキランプが赤く点滅した瞬間、世界は一度スローモーションになった。

カナタ「……ここだッ!」


右足がアクセルを深く抑え込み、クラッチとシフトが連動する。

スロットルボディが開き、空気とガソリンが混ざり合う音が車内に響いた。

後輪が滑るように地面を蹴り、そのまま横へ。


赤い機体が、まるで夜空に描く閃光のようにドリフトを開始。

タイヤスモークと水しぶきが交錯し、光を反射する。


その一瞬――シロンが襲いかかる。


MRタカ「チッ……!行かせるかよ!」


ギアを一段落とし、シロンが獣の叫びを上げる。

ギュオオオオオッッ!!

エキゾーストが爆発音を吐き出し、巨体が矢のように加速する。

圧倒的なトルク。わずかなアクセル開度でも路面を抉る。


しかし、その巨体は油断を許さない。

カナタの赤い86は、まるで舞う蝶のように軽やかだ。

ラインを外しながらも、加速を殺さず、シロンの前をかすめて抜ける。


ブォォォォォォオンッッ!!!

ギャアアアアアア!!!!!


次の瞬間、赤い閃光がシロンをかわし、NSXの背後に迫った。


吉田「まさか……!? 86がこの領域に!!?」


バックミラーに映るのは赤。

青白い街灯の下、鮮烈に輝くスターライトが吉田の視界を覆う。

息を呑む余裕もない。

目の前のコーナーを、どう抜けるか。


だが、その間にもMRタカは追ってくる。

MRタカ「ちょこまかすんなァァァ!!」


シロンの直線加速は異次元だ。

後方から雷鳴のような音が轟き、瞬く間に距離を詰める。

タイヤのグリップが音を立て、重い車体が突進する様はまるで怪獣のよう。


だが――

カナタ「捕まるかよ……ッ!!!」


彼はフロントを振り、赤い戦闘機を横に滑らせた。

NSX吉田のすぐ横、ドリフトで体勢を保ちながらラインを奪う。

フロントバンパーがNSXに迫り、火花が散る寸前の距離。


吉田「アァッ……!? この距離で差し込むのかよ!!」


シロンも外側から襲い掛かる。

三台がほぼ同じコーナーで重なった瞬間、世界が止まったかのように感じられた。


――三つ巴。

赤い閃光、白い流星、銀の巨獣。

ゴールまではまだ距離がある。

誰が最初にスロットルを開け切るか。


吉田「負けられねぇ……!」

MRタカ「潰すぞォォォ!」

カナタ「踏み込むしかねぇ……ッ!!!」


三者三様の叫びと共に、エンジンが吠えた。

アスファルトに火花が散り、雨粒が弾ける。

コーナー出口で三台が横一線に並んだ。


――ゴールまで残りわずか。

路面は濡れたまんまでタイヤが悲鳴を上げてきた。


ゴールまで残りわずか

路面は突然のゲリラ豪雨に濡れ、タイヤが悲鳴を上げている。アスファルトの黒が光り、ヘッドライトの反射で路面がまるで鏡のように輝く。


実況「ゴールまであと数百メートル……

しかし!この豪雨で視界は最悪だ!」


ヴァァァンッ!!!!

岡田「くそ!ゴールまでこの状態かよッ!

ふざけんなッ!!!」

内藤「ふ〜ん☆ま、私には関係ないけどね〜?

うふふ。」

伊藤「持てよタイヤああああ!!!

あと少しだぞおおお!?!」

相川「序盤でタイヤ酷使しすぎたなぁ......。

やっちまった、、、、、、、。」


エンジン音と水しぶきが混ざる中、誰もが息を呑む。その頃、コンビニの店内では――。


サテラ「え?マジ?」

???「あれ?姉さんはーー?」


4人のざわめきが走る。レースをモニター越しに追っていたメンバーが、花の姿がないことに気付く。椅子の上に置かれた手紙。それは花らしい丸い文字でこう書かれていた。

『いってくる』


ちとせ「ほぉ〜?いってきな花ちゃんーー。」

サテラ「花、行ったの……?」


その瞬間、外から聞こえるのはボクサーエンジンの重低音。

ドロロロロロロッ!!!!

コンビニ前の駐車場を飛び出す純白の影――花のWRX STI。

青い電撃をまとったように妖しく光るボディライン。フロントリップから滴る雨が水飛沫に変わる。


実況「おっとおおおお!!!ここで山吹花選手だぁあああ!!!」


花「……待たせたね、みんな。」

ブースト計が振り切れる。花はステアを握りしめ、濡れた路面に果敢に挑む。


終盤戦のゴール前

コース上では腹切カナタの赤い86が必死のラインを守り、MRタカのシロン、吉田のNSXが並走。雨の勢いは止まらない。


実況「ゴールまで100メートル!!!!!

熾烈な最終決戦!!!!」


その背後から――。

ギャアアアアアアアアアア!!!!

WRX STIのエキゾーストが吠える。

花の車はスプラッシュを撒き散らし、

まるで豪雨の精霊のように飛び込んでくる。


花「カナタァァァァ!!!!!

伊藤ォォォォォォ!!!!

いッッッけぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!」


インカム越しに叫ぶ声が雨音に混ざり響く。

カナタの視界には、豪雨を割って走る白と青の閃光。


実況「チェックカーを持つのは……誰だ!?

いや違うぞ!!!今回はいつもの係ではない!!!」


そこに現れたのはコースサイド、

チェッカーフラッグを掲げる山吹花。

レースだけでなく、仲間のために旗を振る彼女の姿がモニターに映る。

豪雨の中、長い髪も服もびしょ濡れ。

だが表情は力強い笑み。


花「カナタ……!勝ってぇぇぇぇ!!!!」

フラッグが宙を舞う。雨粒が旗に当たり、小さな水滴が光る。実況席も沸き上がる。


実況「まさかの……チェッカーは山吹花!!

ゲリラ豪雨の中でも彼女は走者を鼓舞しているぅうう!!!」


エンジン音、水煙、観客の歓声。

カナタ、シロン、NSX……そして花のWRX STI。

ゴールはもう目の前。


運営「えー...どうやら、いつものチェッカー担当さんがゲリラ豪雨の中は嫌だとのことなので山吹花さんに変えろと...ある方からご報告がありましてーー。」

実況「そうでしたか......」

ミルキー「でも、、、あの子、、、、、、」


まるで遥か遠くの先ーー。

腹切カナタの紅い戦闘機が

NSXと並んだぞ!!???

シフトダウンによる急加速で並んできましたァァァァァ!!!!!!


吉田「おおー、若いの...速くなってるねー。少し老いてきたかなー......?」

カナタ「このまま...吉田さんに並べるッ!!!」


ゴールまでわずか!!!!!!!

二台並走したまま............まさかのここで

ーーチェッカァァァァァ!!!!!!!!!


15秒後ーーー

そこに電光掲示板とライブ映像に出てきたテロップが『暫定順位審査中』と書いてあった......。

雨の中、髪の毛や服が濡れながら辛辣な顔をしてスマホのライブ映像を見ていた、、、、、。

実際、近くにいるのに、、、通り過ぎてしまうと

もう見れないと思ってしまったのだろうか。


山吹花「......カナ...タ......。」

ライブ映像のコメントからも

驚いてるかのようなコメントが、、、、


「まさか、カナタ1位無理だった!?」

「どうなったんだ!??」

「今、86、シロン、NSX、スイスポにエボがほぼ同時にゴールしたよな!!??」



次回第110話想いを込めたチェッカー

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