第99話-2 土壇場からの陥落/黒川の作戦始動!!!!
第89話から大量ボリュームで書いてきましたが
さすがの作者も疲れてしまうし書きたいものはかけたので第100話からここからしばらく1話700文字から1000文字でお送りします。
――陽光、海鳴り、焦げたブレーキの匂い。
四つの鼓動が、同じテンポで最終区間へ駆け上がっていく。
誰かの名が、次のコーナーで書き換わる。
その瞬間まで、誰もアクセルを戻さない。
実況「凄いぞ岡田大成、19歳ッ!!!!!!
そして内藤セリナ17歳ッ!!!!!
さらに先頭では腹切カナタ16歳が!!!!
5位にはスイスポ伊藤15歳や
6位の相川律も19歳!!!!!!」
「若手のファイターがーー
このエーペックスカップで成熟しようとしているゥゥゥ!!!!!!!」
……そして嬉しい情報です!!!!
なんと、ブガッティシロンを操るMRTAKAも内藤セリナや腹切カナタと同世代であることがとある事務所によって判明しましたァァァァァ!!!!
内藤「.......ッはい?」
黒川「あのブガッティシロン高校生だったのか!!???」
「ふざけんなァァァァァ!!!!!!」
ドゴォォォォンーーーー!!!!!
実況「おおおおおっとぉぉ!!??
それを聞いたクロカラスが怒り浸透大爆発ゥゥゥーーーー!!!!
その状態で腹切カナタに急接近かァーー!??」
黒川「うるせエエエエ!!!!」
カナタ「まずい....!!!追いつかれるッ!!!!」
ーーこの先はストレートだッ!!!!
エボ9がドカン!と加速してきたら
ブガッティや吉田さんにももう追いつけないッーーーー!!!!
何か手を打っていきたい......!!!!
伊藤がスイスポから黒川とカナタを前方の視界に捉えてきたーーー!!!
運良く黒川の視界から消え去り4位をキープしているチャンピオンイエローのスイスポ。
伊藤「カナタッーー!やっと出会え.....
….アイツ黒川か!??」
「逃げろォォ!!!!!カナタァァ!!!」
黒川「今度こそ逃がさねェ!!!
腹切カナタァァ!!!!」
3台のマシンが、真昼の陽炎が揺らぐ海沿いの直線に飛び出した。
左右は松川浦と太平洋――ガードレールの向こうは、荒々しい波が白い飛沫を立てて岩を叩きつける。
幅はわずか2車線。ひとたびラインを外せば、そこは即死の奈落だ。
内藤のレモン色のR8が、真ん中のレーンを一直線にぶっ飛ばす。
V10が金切り声をあげ、タコメーターの針がレッドゾーンを突き破らんばかりに跳ね上がる。
「私のフミッパスライダー、また食らいたいの〜? さっきのは本気じゃなかったのにぃ〜」
挑発するように声を張り上げると、さらに笑いが混じる。
「じゃあ……さっきよりも強いスライダー、作ってあげようかぁ〜?」
岡田の紅いGRカローラが即座に反応。
「やってやるッ……! インに振り込むんだ!!」
渾身のブレーキングで前輪がギリギリまで路面を噛み、車体が一瞬でイン側へ切れ込む。
「格上だけど、俺ならいけるぞ……俺のカローラッ!!!」
1.6リッターターボの咆哮が響き、岡田はラインを死守する気満々だ。
だが、柳津の白いM4は迷わない。
「なら……俺はお得意のアウトだ」
直線の先のコーナーを読み切り、ブレーキタイミングをギリギリまで遅らせる。
「お前のくだらない技は……さっき見切ったァーーッ!!!」
ターボが唸り、M4は外側から勢いよく回り込むようにしてR8とカローラを同時に射程に入れた。
エンジン音とタイヤの悲鳴が絡み合い、海風が巻き上がる。
潮の匂いと灼熱のアスファルトが混ざった匂いが、車内まで入り込んでくる。
どうやら――この三つ巴の決戦は、この炎天下、左右に松川浦と太平洋を望む大海原の高速サイドで決まるらしい。
太陽が真上から照りつけ、路面のアスファルトはじりじりと熱を帯びている。
しかし海から吹き付ける潮混じりの風が、ほんのわずかに車体の熱を奪っていく。
海沿いの高速道、その両脇はフェンス越しに一面の太平洋。
波が岩を砕く低い轟音すら、今はエンジンの咆哮とタイヤのスキールにかき消されていた。
11位――濱さんのGR86が、緩やかな左カーブを抜けながら低く身をかがめるように加速。
2リッターNAの自然吸気エンジンが唸りを上げ、軽量ボディが海風を切り裂く。
「……ここからは、抜かせんぞ」
その声は小さくても、ハンドルを握る手には揺るがぬ決意が宿っていた。
背後から迫るのは12位、石井和久のNV100クリッパー。
軽バンとは思えぬ突進力、エンジンの回転数を限界まで引っ張り、直線の度に必死で86を追い詰める。
「へへっ……舐めんなよ。軽だろうが関係ねぇ……ッ!」
短いホイールベースを活かし、コーナーの進入で信じられないほど深く踏み込んでくる。
そのたびにGR86のリアバンパーがミラーいっぱいに膨れ上がり、濱さんの心拍数を引き上げる。
さらに後方、13位にはクリスタニールセンのフェラーリ488GTS。
ミッドシップに積まれたV8ツインターボが、低い咆哮とともに空気を切り裂く。
「このままじゃ……退屈だな」
豪快にシフトダウンし、タービンが一瞬唸ったあと――爆発的な加速で、石井のクリッパーとの距離を一気に詰める。
陽光を反射して輝く赤いボディは、まるで海辺を滑る紅い稲妻だ。
14位、東條ヒカルの80スープラも黙ってはいない。
直6ターボ特有の重厚な吹け上がりが背後から迫り、488GTSのテールを虎視眈々と狙う。
「……まだ終わらせねぇぞ。俺はずっと、ただ負けてきたわけじゃない」
サーキットで培ったライン取りを駆使し、フェラーリの死角を突くべく徐々にポジションを上げていく。
海沿いのストレートに差し掛かった瞬間――戦いは一気に過熱した。
濱さんのGR86が先頭でスロットル全開、乾いたNAサウンドが突き抜ける。
すぐ後ろで石井のクリッパーが、タコメーターを真っ赤に振り切りながら必死に食らいつく。
だが直線では排気量差が響く、少しずつ距離が開き始める。
「クソッ……ここじゃ無理だ、コーナーで……!」
石井は早くも次の右カーブに照準を合わせ、アクセルを微妙に緩め始めた。
その隙を逃さず、488GTSのクリスタが猛然と接近。
「軽バン相手なら……一瞬で終わる」
ブレーキングのポイントをギリギリまで引き延ばし、クリッパーのイン側にノーズをねじ込む。
NV100のサイドミラーに、真紅のフェラーリのフロントマスクが大写しになった瞬間――
「やらせるかよぉぉぉ!!!」
石井がステアリングをわずかに切り、フェラーリの侵入をブロックする。
ミラー越しに睨み合う二人、その間を切り裂くように波しぶきの音が響く。
後方ではスープラの東條が二台の争いを見定めていた。
「潰し合え……そしたら一気に抜く」
コーナーの外側いっぱいを使い、ターボの過給圧を高めたまま踏み込む。
80スープラの直6が吠え、タイヤがアスファルトを引っかく音が甲高く響いた。
次の区間はタイトなS字。
ここからが、この4台の真価を問われる場面だった。
濱さんのGR86は軽快なターンインで、S字の第一コーナーを軽くいなす。
後ろの三台がミラーに映るたび、ブレーキングポイントをほんの少し変え、ペースを乱す作戦だ。
「さぁ……ついてこられるか?」
石井は軽バンの利点――車体の軽さを活かし、ギリギリまでブレーキを我慢して飛び込む。
ボディが左右に揺さぶられ、荷重が大きく移動するたびにタイヤが悲鳴を上げる。
だが彼の顔は笑っていた。
「これが……俺の戦い方だッ!」
そのイン側、フェラーリが再び牙を剥く。
クリスタはS字の中で無駄のないステア操作、ミッドシップならではの旋回力で一気に石井に並びかける。
タイヤスモークが立ち上り、観客席から歓声が上がった。
「やらせねぇって言ってんだろッ!」
石井は体を大きく前に倒し、必死でステアリングを押さえ込む。
だがフェラーリの加速は一瞬、NV100を半車身抜き去った――その背後から、スープラがさらに襲い掛かる。
東條はクリスタの背後に吸い付き、そのまま外側から並びかける。
「どけよ……!」
ブーストが一気にかかり、直6ターボが咆哮。
S字の出口で、フェラーリとスープラがほぼ同時に石井を追い抜いた。
順位は11位 濱さんGR86、12位クリスタ488GTS、13位東條スープラ、14位石井NV100に入れ替わる。
しかし石井は諦めない。
次の直線に入った瞬間、全開でシフトアップ、軽バン特有の軽やかな加速でスープラのリアに再び食いつく。
「面白ぇ……!」
東條がミラーを見やり、口元をわずかに吊り上げた。
その前ではフェラーリのクリスタが、濱さんを射程に捉えようとじわじわと詰め寄る。
海沿いの高速、視界の隅に波しぶきが弧を描き、灼けたアスファルトの匂いがキャビンに入り込む――。
まだ誰一人、ブレーキを踏むつもりはなかった。
レースはすでに中盤を越え、各所で激しい順位争いが繰り広げられている。
しかし、その中で一人だけ、他の騒がしさから切り離された存在があった。
――6位、相川律。
純白のR35 GT-R。
太陽光を受けて、ボディは海辺の白波のようにきらりと反射する。
彼は前後のマシンから距離を取り、まるで別世界にいるように単独で走り続けていた。
なぜここまで存在感が薄いのか。
単純に映像に映る機会が少ないだけではない。
彼の走りは派手さがない。
タイヤを鳴かせず、過剰なオーバーステアもせず、ただ一定のテンションでコーナーを抜ける。
無駄がない――いや、無駄を徹底的に削ぎ落とした走りだった。
結果として、カメラマンたちの目を引くような見せ場が生まれない。
しかし、それこそが相川律という男のスタイルでもあった。
海沿いの県道は、左手に太平洋の蒼が広がっている。
昼の陽光に照らされ、波が細かく砕けるたび、銀色の粒が瞬く。
遠くには白いカモメが舞い、風に乗ってゆったりと旋回していた。
だが、R35のコクピットからはそんな情景を眺める余裕はない。
海から吹きつける横風が、時折マシンの姿勢をわずかに揺らす。
律は左手でステアリングを支えつつ、右手でパドルを軽く引き、ギアを落とす。
「……悪くない」
低くつぶやくと同時に、V6 3.8Lツインターボが咆哮を上げた。
ブースト計の針が鋭く跳ね上がり、背中を押す加速が全身をシートに沈める。
海風が強まる。
白波が防波堤を叩き、しぶきが細かな霧となって空中に舞う。
それが光を反射して、まるで路面が白く煙っているように見える瞬間があった。
律はほんの一瞬だけアクセルを緩め、タイヤの接地感を確かめる。
「グリップはまだ生きてる……よし」
ペダルを再び踏み込み、GT-Rは爆発的なトルクを路面に叩きつけた。
背後には誰もいない――単独走行の特権だ。
自分のラインを好きなように使える。
その自由を、律は存分に活かしていた。
コーナー進入前、ブレーキランプは灯らない。
代わりに軽くトレイルブレーキを使い、ステアリングの舵角を最小限に抑える。
白いR35は、まるで巨大な質量を感じさせないほど滑らかにターンインし、 apex をなぞるように抜けていく。
その一部始終は、派手さはないが圧倒的に安定していた。
実況席でも、今さらのようにその存在が話題に上る。
実況『……あれ? 相川選手、ずっと6位をキープしてますが、かなりラップタイム安定してませんか?』
ベルギー『ええ、平均速度は上位陣とほぼ互角です。単独なので映る機会が少なかっただけですね。...しかし、単独ということは彼には余裕ができてきたのでしょう......。』
映像が切り替わり、カメラがようやくR35のリアバンパーを追い始める。
昼光に輝く純白のボディ、その後方に尾を引く熱気の揺らめきが美しかった。
律の手は汗ひとつかいていない。
それどころか、指先は冷静そのもので、ステアリングの感触を確かめながら僅かな修正を繰り返す。
彼はアクセルワークも極端に滑らかだ。
オンとオフの境目を感じさせず、常に荷重移動が穏やかに繋がっている。
これが、彼が「存在感が薄い」と言われる理由でもある。
派手なアクションがない。
しかし、それは同時に「崩れない」という意味だった。
右に海、左に切り立った岩壁。
その間を縫うように敷かれた海沿いの高速区間は、昼でも独特の薄暗さを纏っている。
岩壁の影が路面にまだら模様を作り、その中を白いGT-Rが影を滑らせながら進む。
V6ターボの唸りとタービンの「シューッ」という吐息が、波音と混じり合って響く。
その音のリズムは、律にとって心拍のようなものだ。
一定のビートを刻みながら、走りはただ前へと進む。
相川「美保に…おばあ……」
声がほんのわずかに震えた。
視線はただ前を向いているのに、脳裏には家の情景がよみがえる。
小さな団地の一室。
薄いカーテン越しに差し込む午後の光の中、ちゃぶ台を囲んで笑う妹の美保と、背を丸めたままゆっくりとお茶をすする祖母。
あの小さな食卓に、賞金で買ったごちそうを並べたい。
いつも安売りの惣菜しか食べさせられないあの二人に、温かい、湯気の立つ料理を食べさせたい。
相川「お兄ちゃん必ず…賞金持って帰ってやるからな…!」
低く、だが確かな決意を込めてつぶやく。
その瞬間、右足は自然とさらに深くアクセルを踏み込んでいた。
ターボが吠え、R35のV6が怒涛のような加速を生み出す。
相川「それだけは――!」
叫びに似た息がヘルメットの中で反響し、鼓動とエンジン音が一体化する。
前方にはまだ距離がある。
だが、彼にとってゴールは単なる順位の線ではなかった。
家族の笑顔、そのための約束が、彼を突き動かしていた。
R35の排気音は、他の車たちの甲高いNAサウンドとは異なる重低音だ。
「ドウゥゥン……」と地を這うようなターボの唸り。
それが海沿いの防波堤や岩壁に反響し、何層にも重なった重低音が律の耳を満たす。
まるで海底から響き上がってくるクジラの鳴き声のようでもあった。
その響きが、彼の集中力をさらに研ぎ澄ませていく。
前を走るのは5位の伊藤翔太のスイフトスポーツ。
コンパクトなボディでコーナーを切り裂くような走りをしているが、この長いストレートでは分が悪い。
律は距離計をちらと見やる――まだ仕掛けるには遠い。
だが、彼の瞳には焦りはなかった。
「慌てる必要はない……相手がミスするタイミングだけ、狙えばいい」
単独を走るのは相川律!!!!!
3位スタートだったものの前半戦による場面により腹切カナタ、伊藤翔太、黒川海斗にオーバーテイクされてしまったが逆転なるかァァァァ!!????
R8と同じ620馬力のモンスターが....
再び、加速していくゥゥゥーーーー!!!!
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!
R35の加速音が唸り出してくるゥゥゥーーー!!!!
再び、前半戦のような勢いを見せつけることはできるのかァァ!!???
相川「存在感は薄いけどよッ....!
それでも腹切と伊藤やユナとは同じ高校の先輩だッーーー!!」
「しかもそんなに順位下がってねぇよなァ......!
ここから追いつけないくらい追い上げしていくぜッ!!!どこまでついてこられるッ!!???」
山吹花、サテラ、フード被る謎の少女、ちとせがテレビで見守る中、花が呟く。
山吹花「というかこの試合もう29話やってるんだけどーーやっと終わるんだーー。」
「しかも、石井まだ生きてたんだ。」
「それにしても黒川...何か仕掛けようとしてるわね......?」
サテラ「黒川くんっていつもこういう時路面や道路の周りの状況考えていつも何か企むんだよねー。悪知恵働いてるよね〜?」
店員「......あの目つき。悪者。」
「それにしても内藤さんと岡田くんがさっきよりも追い上げてきてるーー。」
ちとせ「岡田く〜ん♪いけ〜!!!」
「今度こそ順位による賞金手に入れてね〜!!」
カウンターの奥、薄い暖簾をくぐった先にある畳敷きの小さな茶の間は、表のコンビニの喧騒とは別世界だった。
窓からは昼下がりの柔らかな日差しが射し込み、湯気を立てる急須と湯のみがちゃぶ台の上に並んでいる。
壁際には小さなテレビが置かれ、地元ニュースと天気予報が流れていたが、誰も真剣には見ていない。
ただ、画面の光と声がこの空間の心地よいBGMになっている。
「お待たせ〜!」
暖簾の向こうから、ちとせが勢いよく顔を出した。
両手に抱えた白い紙袋から、ほかほかと湯気が立ち上っている。
ちとせ「エッチッチチキン4人分だよ〜!!!」
山吹花「わーい!!!」
一番に反応したのは山吹花。
ぱあっと顔を輝かせ、ちゃぶ台の上の湯のみを避けてちとせの前にスペースを空ける。
「今日はもう、これだけで幸せ〜!」
少女「いただきます……」
カウンターの制服を着たままの店員は、少し遠慮がちに手を合わせる。
それでも、ちらちらと袋から覗くチキンの黄金色に視線が吸い寄せられていた。
サテラ「お言葉に甘えて失礼〜」
サテラは余裕の笑みを浮かべながら、長い指先で紙袋をそっと探る。
ちとせ「ふふ、熱が指先から伝わってくる……いい予感しかしないわね〜うへ〜。」
ちとせが袋の口を開くと、立ちのぼる香りが一気に部屋を包み込んだ。
それはただのチキンの香りではなかった。
外側は香ばしい揚げ油の匂い、そこにスパイスの刺激と、甘じょっぱいタレの香りが重なる。
鼻の奥に届くと同時に、胃袋が反射的に動き出すような、抗いがたい香りだ。
ちとせ「はい、花ちゃんの分ッッ〜!」
山吹花「ありがと〜!」
手渡されたチキンは驚くほど大きい。
外側は柔らかな衣に包まれ、指で押すとわずかに弾力を感じる。
山吹花がそっとかぶりつくと――
「んっ……!?」
次の瞬間、彼女の目がまん丸になる。
外側は想像以上に柔らかく、噛んだ瞬間に肉汁がじゅわっと溢れ出す。
しかし内側は全く違う食感だ。
まるで細かく砕いた唐揚げをぎっしりと敷き詰めたような、カリッ、バリッという歯触りが重なってくる。
「なにこれ……外ふわなのに、中バリバリ……!?」
「でしょ〜?」
ちとせが得意げに笑う。
「骨付きなのにね、串の骨、全部軟骨なんだよ〜!丸ごと食べられるの〜!」
少女もおそるおそるひと口。
彼女は普段から淡白な反応しかしないが、
口に入れた瞬間、眉尻がわずかに下がった。
「……すごい。噛むたびに、外と中が交互に……あ、軟骨も柔らかい……」
コリッと噛み切れる感触が新鮮だったのか、芽衣はもう一口、そしてもう一口と箸を止められなくなっていく。
サテラは逆に、最初のひと口を時間をかけて味わっていた。
山吹花「ふふ……これは完全に計算されてるわね」
衣の柔らかさが舌を撫でた瞬間、内側のバリッとした層が歯に心地よく響く。
その間にも、軟骨が「コリッ」と優しい音を立てる。
少女「外は包み込み、中は攻める……これは料理というより、戦術ね」
そう言って唇の端を上げ、またひと口。
彼女は手元の皿より、手づかみの方が合うと判断したらしく、指先でしっかりと握って豪快にかぶりつく。
「花ちゃんはどう?」
ちとせが笑いながら聞くと、花はもぐもぐしながら親指を立てる。
山吹花「サクサクとふわふわ、同時に来るの反則〜!あ、骨まで食べられるのほんと嬉しい……ッ!!」
少女は黙々と食べ進めながらも、時折小さくうなずいていた。
「……おいしい……おいしすぎて……仕事忘れそう」
制服の胸ポケットからペンが覗いているのに、完全に客としてくつろいでいる。
テレビでは、近くの港町で行われている祭りの映像が流れていた。
太鼓の音と、遠くで鳴る波の音が混じり合い、まるで海辺の屋台にいるかのような気分になる。
その雰囲気が、この熱々のチキンをさらに美味しく感じさせた。
「そういえば、このチキン……」
ちとせが骨をかじりながら言う。
「揚げる前に一晩、唐揚げ用の小片を中にぎゅうぎゅう詰めるんだって。だから中がバリバリなんだよ〜」
「へぇ〜!」と花とサテラが同時に声を上げる。
少女も興味深そうに頷き、手元の骨をじっと見つめる。
確かに、普通の骨付き肉よりもずっと食べ応えがある。
食事は自然とスピードが落ち、誰もが最後の一口を惜しむようになった。
指先にはタレの照りが残り、唇の端には衣のかけらがついている。
湯のみのお茶で口をすすぐと、今度は衣の香ばしさがほんのりと後を引く。
「……これ、またやろうね」
花がぽつりと言うと、ちとせがニッと笑った。
「もちろん!次はもっと山盛り持ってくるよ〜!」
サテラも満足げに腕を組み、「その時は、私も何か差し入れを用意するわ」と約束する。
少女は相変わらず多くは語らないが、
小さく「……また、食べたい」と呟いた。
その一言だけで、全員が顔を見合わせ、笑顔になった。
外では、午後の光が少しずつ傾き始めていた。
茶の間に流れるテレビの音は変わらず、香ばしい匂いだけが余韻として残っている。
この日、この小さなコンビニの奥で交わされた食卓は、4人の心に温かい記憶として焼き付いていくのだった。
その瞬間ーーーーーーッ!!!!!!
ドカァァァァァァァァッッッンン!!!!!!!!!
車を叩きつける衝撃音がレース上に走るッーーーー!!!!
遠隔通信にもその音が強く響き渡るーー。とても残酷な音ッーーー!!
柳津「.....なんだ?ブガッティとNSXの音してた方からものすごい音が......!!!」
内藤「えッ......!?」
相川「お前に何があったんだよッ!???」
ユナ「ーーーカナタくんッ!!???」
クリスタ「何!?ハラキリが!??」
ゾフィア「このうんCォッ!何してんのよぉ!」
伊藤「......カナタ...!ウソだろ!!??」
…何が起こったんでしょうか!???
単独で走っていたはずの腹切カナタにアクシデントがあったようですッーーー!!!!
花もテレビで見た全貌に耐えきれず叫ぶ。カナタに心からでも聴こえるように。
「うわアアアアアアアアア!!???」
黒川海斗のエボ9MRが一気に腹切カナタの前に出てその直後にブレーキング!!!!!!!!!
アウト側にラインを黒川が意図的に変えて中速コーナーでオーバーテイク!!!!!
腹切カナタが場外の芝生サイドに突き落とされてしまうゥゥゥーーーー!!!!
腹切カナタは...紅い戦闘機は、
戻れるのか!!!??!!???
花「......カナ.....タ.......
カナタァァァァァッ!!!!!!!」
次回予告
腹切カナタが3位を走っているぞ!!!!!
上位勢に絡むほどの力!!!!
2リッター NAが3位にいるんですよ!!??ベルギーさんッ!!!!!
再びブガッティシロンが紅い86を県道の高速区間でオーバーテイク!!!!
ブガッティシロンに腹切カナタが張り付いているゥゥゥーーー!!!!!!
パギャアアアアアアアアアアン!!!!!!!
RVカップのあの電撃の桜狼である山吹花や氷雪のちとせなどとバトルで互角の戦闘力でしょうーー。と...言いたかったんですけど
こういうストレートでは現実的にさらに落ちますーーーー。
黒川「どけどけェ!!!
邪魔だァァァァァ!!!!!!」
ドカァァァァァァァァンンッッ!!!!
花「......カナ.....タ.......カナタァァァァァッ!!!!!!!」
次回祝第100話きみに 本日夜公開!