第99話 土壇場からの陥落/黒川の作戦始動!!!!
第4戦 シーサイドPK
福島県相馬市松川浦
レース 最終5/5ラップ突入時点
総合暫定順位
1 吉田ノリアキ NSX NA1 絶対王者
2 MRTAKA ブガッティシロン
3腹切カナタ トヨタ86 紅い戦闘機
4黒川海斗 エボ9MR クロカラス
5伊藤翔太 スイスポ ZC33S
6相川律 GT-RR35
7柳津雄介 BMW M4
8内藤セリナ Audi R8
9,10岡田大成対古田のりあき
GRカローラ対BMW Z4
11濱さん GR86
12石井和久 NV100クリッパー
13クリスタニールセン 488GTS
14東條ヒカル 80スープラ
15ユナ トヨタ86 白
16陽太 ロードスター
17Rゾフィア シボレーC7
全てのレーサーが――ついに最終ラップへ突入だぁぁぁぁッ!!!
スタンドの観客席からも、パブリックビューイングの広場からも、割れんばかりの歓声と悲鳴が入り交じる!
コース上には灼けたアスファルトの匂い、焦げるブレーキパッドの煙、そして海風が混ざり合い、まるで地平線ごと燃え上がっているかのようだ!!
「悔やんでも泣いても残り――15キロォォォォォ!!!
この15キロで、この長かったレースが――ついに、ついに完結しますッッッ!!!」
実況の声が割れるほど響き渡り、モニターには残り距離のカウントが真っ赤に点滅している。
だがその瞬間――カメラがズームイン!!
海沿いの長い右カーブ、ガードレールすれすれを攻めるシルバーの閃光……!!
古田のBMW Z4だぁぁぁぁ!!!
狙うは――目の前を走るGRカローラ岡田のイン!!
ブレーキランプが二台同時に赤く光る!
古田、ここで渾身のヒールアンドトゥを決め、インへ突っ込む体勢ッッ!!
……だがッ!!!
Z4のノーズがわずかに跳ねた!?
外から吹きつけた海風が、舵角をほんの数度だけ狂わせたか!?
アウト側にタイヤが一瞬だけ白線を踏み――わずかにグリップを失う!!
「うおおおおっと!!
ここで古田のりあき……まさかのオーバーテイク失敗ぃぃぃぃッッ!!!!」
スタンドが揺れる!
海風が波頭を叩き、しぶきがミストのようにコースへ舞い込む!
そのわずかな“自然の罠”に、古田の鋭い刃がほんの一瞬止められた……!
岡田はその隙を逃さず、四駆の蹴り出しで前へと突き放すッ!!!
――残り15キロ。
勝負は、まだ終わらない。
だが、この失敗が9位争いの天秤を大きく傾けたのは間違いないッ……!!
そして――きたぁぁぁぁぁッ!!!!
コース全域がざわめく!
NSX吉田だああああああああ!!!
絶対王者――その異名の通り、数々の死闘を制してきた男が、混戦をすり抜け……ついに1位の座へ復帰ィィィ!!
真紅の夕陽を背に受け、そのホワイトパールのボディが煌めき、低く唸るV6ターボの咆哮が海辺のガードレールを震わせる。
フロントライトの鋭い光が、まるで先頭を照らす王者のサーチライトのようだ。
「単独走行に入ったぁぁぁ!!!」実況の声が限界まで割れる。
しかし……後方、海沿いの直線の向こう側――!
真紅の閃光が迫る!!
腹切カナタの紅い戦闘機、TOYOTA86前期だああああッ!!!
ボディ全体が陽光を反射して、まるで炎そのものがコースを疾走しているよう!
マフラーからは高音の乾いた咆哮、シフトアップの度に爆ぜるブリッピング音が鼓膜を焼く!
「腹切カナタァァ!!追いつくことは……
できるのかぁぁぁぁッ!?
王者NSX吉田と――紅い戦闘機の一騎打ちだあああああああ!!!!」
海風が二台を包み、潮の香りが混じった熱気が観客席まで押し寄せる。
この残り区間、直線は少ない……だがその分、テクニカルなコーナーで攻め抜くチャンスはある!
NSX吉田は冷静にラインを刻み、カナタはインを狙う鋭い進入でじりじりと距離を削る。
海と空と観客が見守る中、最終決戦が、ここから幕を開けるッ……!!
海沿いの高速区間――!
轟音が重なり、潮風がタイヤスモークと混じって舞い上がる!!
前を行くのは、漆黒の怪物――ブガッティ・シロン。
MRタカの両手はステアリングをわし掴みにし、低く抑え込むようにフル加速!!
ターボの過給音が獣の唸り声のように響き渡る……が――
そのミラーに、真紅の閃光が映る。
「……なっ……!?」
腹切カナタの紅い戦闘機――TOYOTA86前期が、恐るべきスピードで迫ってくる!!
直線で劣るはずのマシンが、まるで空気を裂くように距離をゼロへと縮めていく……!
エンジンの高音域は限界を超え、シフトダウンからの一撃的な加速がシロンのテールに牙を突き立てるッ!!!
そして――!
コーナー進入のわずかなラインの乱れを見逃さず、カナタはインへマシンをねじ込む!!!
タイヤが悲鳴を上げ、アスファルトを削りながら……紅い機体が、漆黒の怪物を撃ち抜いた!!!
MRタカ「なぜ……86でそこまで……!!??
俺の……ブガッティシロンだぞ……ッ!!!」
背後へ追いやられたMRタカの視界から、紅い炎のような86が遠ざかっていく。
そのテールランプは、まるで挑戦状のように赤く光り続けていた……!
MRタカ「ありえない……!嘘だろッ!!? 1500馬力の……俺のシロンが!?」
目の奥が熱を帯び、ステアリングを握る指に力がこもる。
計器の針は振り切れ寸前――漆黒の怪物ブガッティ・シロンが、ストレートで牙を剥く!!
MRタカ「でも……!
ストレートなら……追いつける……ッ!!!」
シロンのW16クアッドターボが咆哮し、海沿いの直線に獰猛な轟音が反響する。
黒い影が徐々に、紅いテールへ食らいつこうと伸びる――
カナタ「くっ……!!!」
喉の奥から低く漏れた声。
ミラーの奥で、黒い怪物の存在感がどんどん膨らんでくる。
だが、カナタの瞳に宿る光は消えない。
カナタ(いや……まだだ……!
コーナーは……こっちが速いッ!!!)
次のコーナー進入――
紅い戦闘機TOYOTA86前期が、滑り込むようにステアリングを切り込む。
ターンインの瞬間、車体が吸い込まれるように apexへ一直線!!
荷重移動が完璧に決まり、4輪全てがアスファルトを噛みながら最小限の減速で旋回する!!!
ライブからも、実況席からもどよめきが起きる。
ベルギー「……カナタくんの86……コーナー速いですね……。本当の速さ、極めてますね……」
彼の目は細められ、まるで職人の芸を見るような鋭い眼差し。言葉の奥にはレーサーとしての敬意と少しの驚きが滲んでいた。
ミルキークイーン「うふふ……これって……まるで氷の上を滑るスケーターね……」
おっとりとした声がマイクから響く。
彼女の周囲に、白く甘い冷気がゆっくりと漂い、解説席のスタッフたちの背筋をひやりと撫でる。
「86の足さばきが……氷の上みたいに軽やかで、でも確実に掴んでる……そんな感じ……うふふ」
カナタの紅い86は、コーナー出口でまるで弾かれた矢のように加速――
一瞬でMRタカのシロンを視界から振り切る!!
MRタカ「クソッ……! ストレートで詰めても……コーナーじゃ……まるで別の次元じゃねぇか……ッ!!!」
彼の握るハンドルがきしみ、胸の奥で悔しさと焦燥が燃え上がる。
「ーーしかもここで岡田大成のGRカローラが再びZ4をオーバーテイクしましたァァァ!!!!
その直後、古田のりあきのシルバー色のBMW Z4がまさかのオーバーテイク失敗です!!!!」
古田「マジかッ......!!!」
ーーせっかく5話分戦闘使わせておいてこれかよッーーー!!!!
オレの物語はここじゃねぇのかよ......!!!!
岡田「ごめんなさい。古田さんーー。
しかし、ここは順位とバトルを次の機会に預けさせてもらいますよ。」
「俺はこんなもんじゃ収まりませんからね?」
ミルキー「いや〜...惜しかったわよね〜。もう一滴垂らせば良かったくらいに惜しかったけどリアが変な方向に全て出して岡田くんには違和感を感じたのよーー。」
「その岡田くんの感覚が勝利に導いたんじゃないかな〜?」
「そしてーー岡田大成のGRカローラも
いよいよ7位グループに迫ってきましたァァ!!!!!!」
続々とチェッカーフラグに向けて歩み出していたレーサーとその相棒のレーシングカーたち。
最終決戦が始まる。
7位争いグループ
7柳津雄介 BMW M4 白色
8内藤セリナ Audi R8 黄色
9岡田大成 GRカローラ 紅色
10古田のりあき BMWZ4 銀色
内藤「もう一度アレ見せようか?フミッパーー」
内藤がM4をオーバーテイクする。
その一瞬は抜かりもない程アクセルをベタ踏みで突っ走っていく。横に広がる海辺が荒々しいような雰囲気だ。
柳津「...... お前のくだらないフミッパなんとか....は飽きたわーー。」
「そろそろ目の前から消えろッ......!!
聞かないなら退けて貰おうか......?」
M4がシフトダウンしながら内藤のR8を強く引き離そうとする。
それにーーすぐ後方からものすごいスピードでGRカローラが迫っている......!!!
海の照り返しが横一線に白く伸びる。潮の匂いが熱に混じり、ガードレールの向こうは群青の壁。
7位争いのパックが、陽炎の帯を引きずって現れる。
先頭は白いBMW M4――柳津雄介。背後にレモン色のAudi R8――内藤セリナ。そこへ紅いGRカローラ――岡田大成。さらに銀のBMW Z4――古田のりあきが縫い込む。四つ巴、全員が“次の一手”を置きにいく。
内藤「今度こそ……私のフミッパスライダーの虜にしてあげるわあああああああ!!!」
ヴァァァァァァン! 5.2LのV10が息を飲むほど滑らかに回り、吸気の低い唸りがトンネルのような海風に乗って増幅される。
ゴオオオオオ――。R8はアウトに膨らんでから、ステアを一拍だけ遅らせて入れる“フェイント”。フロントがわずかに外を向く瞬間、右足は踏み抜いたまま。電子制御が限界まで滑りを許し、四輪のベクトルが一斉に“前へ”揃う。
車体が“斜めのまま加速”する。フミッパスライダー――進入で作った姿勢を、アクセルオンでそのまま矢へ変える内藤の必殺。
柳津「……お前のくだらないフミッパなんとかは飽きたわ。そろそろ目の前から消えろッ...!」
M4は7速DCTを連続ダウン。バキュン、バキュンと射撃のようなシフト音。直6ターボの咆哮が一段深くなり、カーボンルーフの下で横Gが膝を締め付ける。
柳津はフロントに荷重を残したままステアを切り増す“強引な引き寄せ”で内藤の鼻先を押し返す。白いM4が内を死守、R8のレモン色が外から刺し返す。
二台の間を、潮のミストが白糸のように千切れて飛んだ。
更に後方――赤い矢が風を裂く。
岡田「俺は一人っ子だ……。
頼れるのは、今のこの右足だけだ!」
左足ブレーキを“点”で触れてノーズを沈め、GR-FOURの配分が前へ寄る瞬間に、右足は半開のまま。トラクションライトがチ、と点いて即消灯。赤いGRカローラは縁石と白線の“影”を舐めるラインで速度を落とさず詰める。
古田のZ4はその外から鋭く切り込み、長いボンネットの矢がカローラのテールへ食い込む。
古田「まだまだだ、岡田!
俺の...ヒール&トゥ、ここからだ!」
踵が踊り、ブォン!と回転が吸い付いて2速。FRの尻が鞭のようにしなる。銀の矢が赤の真横へ――。
実況「7位争い、横一線だぁぁ!! 海沿いの高速Sを四台が同時にくぐる! 内藤が外、柳津が内、そこに岡田と古田がドア一枚ぶん!!」
ベルギー「内藤選手のR8、やはりコーナリングが速い。進入の迷いが全くないですね……。あれは“止めないで曲げる”走らせ方。荷重の矢印を最初から出口に向けてる」
ミルキークイーン「うふふ……氷の上でエッジを立てたまま滑っていくみたい……でも、M4の横剛性は生半可じゃないのよね〜。押し返す力が強い……」
L字の右。ブレーキボード200――150――100。
四台のブレーキランプが同時に燃える。
柳津は“奥”。内藤は“遅らせ舵”。岡田は“残すブレーキ”。古田は“踵の魔術”。
路面の継ぎ目を拾うたび、サスペンションのストロークが腹へ響く。海は光の刃をひらめかせ、塩の香りがヘルメットの中へ侵入する。
クリップ。
M4がインに沈む。
R8は外からスライド加速。
GRカローラは最短距離で角を噛む。
Z4は姿勢を軽くして、出口勝負に照準。
――立ち上がり。
四本の咆哮が一斉に解き放たれる。
「ギャアアアアアァン!」
V10の長い声、直6ターボの怒号、直4ターボの鋭い叫び、そしてシルキーな直6NAの伸び。音が層になって空を裂く。
内藤「ほら、ね?
この“まま”で抜けるのが、フミッパよ!」
R8はヨーを残したまま全開へ。トラクションがわずかに空転を許し、それでも止まらず前へ押し切る。
柳津「フミッパで悦ってろ。ここは俺のテリトリーだ!」
M4はDCTが最短経路でギアを投げ、電子制御が前後左右の“怒り”を一点にまとめる。白い塊がレモン色をラインで縛る。
両者のドアミラーが、風圧で震えながら重なった。空気の壁が砕ける音が耳に刺さる。
直線の手前、赤と銀が同時に鼻先を入れ替え。
古田「もらったぁぁぁぁ!占めたァァッ!!」
外へ振ってから切り返し、インへ斬り込む“クロス”。
岡田「させるか……!」
白線の内側、さらに薄いグレーの“影ライン”へ前輪を載せる。
摩擦の強い帯を四駆が噛み、赤いカローラが銀の矢を押し戻す。
二台はミラー一枚の距離で並走、潮のミストを巻き上げて次の右へ。
実況「岡田が耐える! 古田が噛みつく! その前では内藤と柳津が肩を並べたまま高速ベッド突入!!」
ベルギー「岡田選手、ラインの使い方が巧い。電子制御の“気持ち”を理解してますね。踏み方でシステムに命令を出してる」
ミルキークイーン「うふふ……それぞれの車に、それぞれの心拍があるの……四台ぜんぶ鼓動が違う。今は同じテンポで鳴ってるけど、誰か一人が外れたら……雪崩のように崩れるわ〜」
海沿いの高速ベッドへ。
ガードレールの向こう、白い線を引く漁船。
空は高く、陽炎が路面を波立てる。
四台は一直線。速度は、上がるしかない。
ブレーキボード300――200――150。
“踏むのは誰が最後か”。
柳津は100で踏み、内藤は90で踏み、岡田は80で踏み、古田は――70で踏んだ。
Z4の踵が回る。ブォン! 回転が吸い付く。
FRの軽い尻が“意図した分だけ”外を向き、鼻先は矢のようにインへ。
古田の銀が赤へ“刃”を入れた瞬間――
内藤「甘いのよ、それ」
レモン色が外から“もう一枚外”を使って舵を入れ直す。
横滑りの矢印を“前”へ回すアクセル。
フミッパの変形――外外進入・内内脱出。
出口でR8が白いM4のドアに並ぶ。
柳津「鬱陶しい……!」
白いボディがわずかに寄せる。
レモン色は怯まず踏み続ける。
二台の間に、風が悲鳴をあげた。
その後ろ、赤と銀。
岡田は電子制御のランプが点る瞬間に踏み方を変え、四駆の“後ろ脚”を押し出す。
古田は踵で“もう一声”。回転をひとつ上へ送り、トルクの谷を消す。
赤が半車体前、銀が半車体後――
次の左で、再び入れ替わる。
若さの数字が脳裏に踊る。
岡田19歳。内藤17歳。腹切カナタ16歳。
伊藤15歳。相川19歳。
海風は容赦なく吹き付け、太陽は遠慮なく照りつける。
だが、彼らの手のひらは汗で滑らない。意志が、ハンドルを乾かしている。
内藤「ね、柳津。あなたも――虜になってきたでしょ?」
柳津「誰が、だ。……でも“そこ”は褒めてやる」
M4が直線で肩を並べ、R8の影を踏む。
二台のエキゾーストが共鳴し、海鳥が驚いて空へ散る。
「まだ……終わらせない」
後方、岡田の独白が熱を帯びる。
岡田「一人っ子で、勝ち負けはいつも自分の責任だった。だから――負けない。誰のせいにも、したくない!」
赤いカローラが、縁石を“触るだけ”で切り返す。
古田「上等だ!」
銀のZ4はアウトへ大きく振り、視界の白い灯台を基準に舵を“遅らせる”。
クロスさせて、内。
内へ――刃が入る。
だが、赤が消えない。
四駆の蹴り出しが、銀の“軽さ”を噛み砕く。
ミラー一枚。
息一個分。
――それでも、古田は踵を止めない。
「ブォン!」
もう一度。
足先の魔術が、直6を歌わせる。
銀が、じりじりと赤の鼻先に被さっていく。
実況「まだだ、まだ決まらない! 七位争いは四台のまま海沿いへ戻る! 左、右、また左! 誰か一人が僅かに外した瞬間、列は崩れるぞ!」
ベルギー「内藤選手、次の低速バンクで二段目のフェイントを使うはずです。柳津選手のブレーキリリースのリズム、完全に読んでいる……」
ミルキークイーン「ふふ……風が変わる。潮の匂いが強くなった……。海がざわめく時はね、だれかが“落ちる”。でも今日は――まだ、だれも落ちない気がするの。みんな、まだ登ってる」
低速バンク下り勾配。
四台のブレーキランプが紅い花を咲かせ、減速Gが胸骨を押し潰す。
内藤は舵を切る直前、視線だけで“もう一枚”外を見る。
そして、わざと半拍遅らせて切り込む。
ヨーが増え、姿勢は深く、でも怖くない。
踏む。
踏み切る。
R8が“横向きのまま前へ”出る。
柳津「チッ……!」
M4のDCTが忙しなく唸り、白い車体がレモン色へ寄る。
接触寸前――風だけが擦れた。
背後では、赤と銀が同時に“刺す”。
岡田は白線の更に内、アスファルトの粗い“影”を使って角を噛み、四駆の押しで半車体。
古田はヒール&トゥで回転を合わせ、FRの尾を小さく滑らせ一気に直線姿勢へ。
再び並ぶ。
再び入れ替わる。
一瞬の優劣に、観客席が波のように沸き立つ。
内藤「虜に、なった?」
柳津「答えは――ゴールで言う」
その言葉に重なるように、海面が一段濃い青へ変わる。風の向きが少しだけ北寄り。
最後の高速ベッド、そして橋前のクランクが迫る。
四台は、まだ“縮まったまま”。
誰の目にも、勝者の姿だけは見えない。だから目を逸らせない。
岡田「行くぞ……GR!」
古田「踵はまだ、歌える!」
内藤「もっと、速く☆」
柳津「もっと、強く!」