第95話SP 欧州車とAWDの見せ場/柳津の過去
制作 7/2 2025
公開 8/9 2025
注意
この回では、東日本大震災を思わせる描写があります。
本当は出そうか迷っていた回ですが教訓の為に出させていただきました。ご注意ください。
今後もこのようなシーンを作者はムラなく出していきます。というか、この先ほとんどこんなシーンばかりです。
避けたいのなら第94話であなたにとって86伝説エーペックスは最終回ということにしてください。
それでもいいと言う方はこれからも見ていただけると幸いです。
そして――ッななめ後方ッ!!!
中団グループ前半の5位争い!!!
四駆対決が引き続き続いております!!!!
先程、岡田に抜かれ、悔しさを噛み殺していた相川律のR35が……異常な伸びを見せて再加速中!!!!
波乱の展開が巻き起こっていますッ!!!!
タービンが空気を引き裂く甲高い音を響かせ、車体全体が低く沈み込む!!
アウト側から一気に角度をつけて――
柳津雄介のM4へ、オーバースピードで襲いかかったァァァァ!!!!
R35のヘッドライトが、M4のリアバンパーを真後ろから照らす……いや、もう照らすというより飲み込む距離ッ!!
コーナー進入寸前、両者のリアとフロントがわずか数センチまで迫る……!
「ッッ……!!」柳津の目が鋭く光り、ミラー越しにR35の鋭いノーズが迫ってくるのを捉える。
衝突寸前の張り詰めた空気……
R35の排気音が爆発するたびに、M4のリアが微かに揺れるほどの圧!!
観客席の誰もが息を呑み――
この距離、この角度、このスピード……
一歩間違えれば、両者ともコース外へ吹き飛ぶ地獄のシナリオッ!!!
柳津「……来るかよ、相川……ッ!!」
相川「絶対に……食らいつくッ!!!!」
さああああ――次の瞬間、どちらが仕掛け、どちらが耐えるのか!?
この先、二台は完全に命を懸けたブレーキング勝負へ突入するッ!!!
実況席に二人が戻ってくるーー。
どこかに消えたはずだったが
何事もなかったかのように戻ってきた。
実況の若林が急に戻ってきた二人に驚く。
……え!?お二人さん!?
今までどこへ?何かご不満な点でもあったのかと......??
ベルギー「あ...すみません。トイレに行ってたんです。…それと待合室のモニターの方が大きかったのでーー」
ミルキー「確かにパソコンのモニター越しじゃ〜見にくいよね〜?
迫力もなくなっちゃうよ〜?」
おっと!!!?ここで岡田が行くのかァァァ!!??
19歳の紅い戦国GRカローラのオーラは只者じゃない!!これが凄まじい戦国の大名のような貫禄を帯びた若武者なのかァァァ!!!??
先程よりも4台距離が安定してきた模様......。
しかし、GRカローラ岡田がBMWM4柳津に接近しているぞ!!!
柳津雄介35歳!!!!岩手県陸前高田市出身の温泉大好きおじさん!!!!
ですが、そんな彼ですが...。
15年前の災害で家も家族も失った過去があります。
15年前の話になる。
柳津は、その時自分の家を無くした。
15年前海沿いで起こった出来事で......。
――15年前。
あの日、海はいつもと違う唸り声をあげていた。
まだ冬の冷たさを残す潮風が、やけに湿って重い。空は灰色で、海沿いの家々がその影の下で不気味に沈黙している。
柳津雄介は、その異様さに胸の奥がざわついていた。
「……なんだ、この音……?」
ゴォォォォ……遠くから、まるで山が崩れるような低く重い轟音が響いてくる。
彼の視線の先、水平線が盛り上がっていた。
白い泡が線のように広がり、その背後には黒々とした壁――いや、それは水の塊だった。
柳津「おかあ!!にげろ!!やばいのが来る!!!」
声が裏返るほど叫び、裸足のまま玄関へ駆け込む。
母が振り返るその瞬間には、もう家の前の道路まで海水が押し寄せ、足元の砂利をさらっていく冷たさが感じられた。
潮の匂いが異様に強い。
波頭はすでに砕け、白い水しぶきが空中を舞っている。頬に当たるその飛沫は、冬の雨より冷たく、そして重い。
木の家の柱がきしむ。
「走れ!後ろ振り向くな!」
地元の人の遠くからの声を聞いた柳津は母の手を掴み、土手に向かって全力で走る。背後で轟音が膨れ上がり、地面が震えた。
そのわずか数秒後、黒い海の壁が家を呑み込み、屋根が、窓が、家具が、あっという間に引き裂かれていった。
振り返る暇もなく、ただ母の手の温もりを確かめることだけが、柳津の意識を繋ぎ止めていた――。
この出来事で、彼はすべてを失った。
家も、思い出も、そして……二度と戻らない平穏な日常も。
……そんな過去があったようなんです。
観客席や視聴者のざわめきが一瞬だけ静まり、解説席の空気が重く沈む。
ベルギー(解説員)「いえ……私達も関係ない訳ではありません。あの日の光景は、誰の中にも深く刻まれている……。いつか来るその時まで、私達は走り続けるしかないんです……」
その声には、静かな決意とわずかな震えが混じっていた。
ミルキー「そうよね〜……」
いつも柔らかな声色の彼女も、この時ばかりは笑みを見せない。目は真っ直ぐにコースを見つめ、柳津のBMW M4がL字コーナーへと飛び込む姿を追っていた。
空気は再び熱を帯びる。
失った過去を背負いながら、それでもアクセルを踏み抜く柳津の走り――それは、ただの順位争いではなく、自分自身との戦いだった。
さぁーーレースに戻ります!!!
GRカローラ岡田がBMWM4柳津に接近中!!!!
岡田の紅いGRカローラが、まるで獲物を狙う猛禽のように車体を沈めてL字コーナー出口から一気に踏み込んだ!
ターボが唸り、直噴エンジンの咆哮が夜の山間を震わせる。
岡田「ここで抜かなきゃ俺じゃない……!!!見せてやるぜ!!!GR魂!!!この戦を統一するのはこの戦国のGRカローラだってな……!!!」
後方で唸るその音に、M4のステアリングを握る柳津の眉間がピクリと動いた。
柳津「後ろから……GRカローラか……!!!まさか、ここで来るか……!」
ヘアピンへ向けてのアプローチ、柳津はいつものようにアウト寄りでスムーズに入ろうとするが、そのイン側のラインに鋭く切り込んでくる紅の機影――まるで前輪ごと地面に吸い付くような旋回性能だ!
ブレーキランプが一瞬赤く灯ると同時に、岡田は左足で微妙に姿勢を作り、右足でアクセルをジワリと開け始める。
凄いペースで進撃を始めたぞGRカローラァァァ!!!
M4柳津、どうする!?どう防ぐ!?
このままではインを食われるぞ!!!
柳津「行かせるかああああ!!!!!」
怒号と共に右足がアクセルペダルという床を叩きつける!M4の直6ツインターボが一瞬で全開に吹け上がり、甲高い金属音と共に怒涛のトルクがリアタイヤを蹴り飛ばす!!
後輪が白煙を上げ、アスファルトをえぐるようにスライド!そのまま車体をわずかにアウトへ振り、岡田のインへの突入ラインを容赦なく塞ぎ込むッ!!
岡田「なに……!!??」
目前の隙間が、まるで重厚な鋼鉄のシャッターのようにバァンと閉じられた!!
GRカローラの鼻先はたった数十センチの距離で動きを封じられ、サスペンションが一瞬沈み込むほどの制動!
紅いボディが上下に揺れ、路面を掴むミシュランのトレッドがギュウウウウと引き裂かれるような悲鳴を上げる!!
ミルキークイーン「んーとね……気になることあるんだけど〜……映像見る限り、岡田くん……左脚でブレーキしてますね〜?」
実況席が一瞬ざわつく。
確かにオンボード映像では、シフトダウンの瞬間も右足はアクセルに残したまま、左足が素早くブレーキペダルを踏み込んでいる。
一般的なドライバーなら右足でブレーキとアクセルを踏み替えるが、岡田はコーナー進入でブレーキを踏みながら右足をアクセルに添え、ブレーキを落とさないまま旋回へと持ち込んでいた。
ベルギー「ほぉ……やりますね。これは“左足ブレーキ”といって、ラリーやタイムアタックで使われる高度なテクニックです。
減速しながらも駆動力を切らさない……特に下りの低速コーナーで絶大な効果を発揮します。」
ミルキークイーン「なるほどね〜……でもこれって、タイミング間違えたら、すぐリアが滑っちゃうんでしょ〜?」
ベルギー「ええ、だからこそ、岡田くんの車の動き……相当練習してる証拠ですよ。」
ミルキークイーン「そういえば……吉田さんも左脚ブレーキでしたね〜……。500馬力のミッドシップで……大したものだよね〜?」
ベルギー「ええ……あれは正直、普通の人間がやることじゃないですね。」
解説席の声が少し低くなる。
NSX NA1──ミッドシップ特有のピーキーな挙動は、加速と旋回性能こそ異次元だが、ブレーキ中に荷重移動を誤れば一瞬でスピンに陥る。
ましてや500馬力まで引き上げられたモンスター仕様ともなれば、アクセルオフだけでも後輪が軽く流れ出す代物だ。
ベルギー「左脚でブレーキを踏みつつ、右足はスロットルを絶妙に保つ……あの人は減速と加速の境界を常に遊んでいるんです。ミッドシップでそれをやるなんて……本当に恐ろしい技量ですよ。」
ミルキークイーン「ふふ〜……なんか見てるだけで足つっちゃいそうだよね〜……。」
視聴者からも「吉田すげぇ……」というざわめきが広がる。
M4のテールからは僅かに火花が散り、排気管からは青白い炎が吹き出す。
岡田の視界いっぱいに、ワイドなM4のリアフェンダーが立ちはだかり、まるで「ここから先は通さん」と言わんばかりに仁王立ちする!!
次の低速右バンクに向け、両者のブレーキランプが同時に閃光を放つ――その瞬間、重力すら歪むような減速Gが車内を襲った!!!
岡田「......だが、この先はパワーセクション!絶対に、、、追いついてみせるッ!!!!!!」
次の低速右バンクに向け、両者のブレーキランプが同時に閃光を放つ――その刹那、
タイヤとアスファルトが擦れ合う耳を裂く悲鳴!
車体前部が一気に沈み込み、シートベルトが胸を抉るほどの張力で食い込む!!
視界の端がわずかに暗くなり、重力すらねじ曲げられたような猛烈な減速Gが車内を襲いかかる!!!
サスペンションがうねる音と、ブレーキローターが真っ赤に焼ける匂いが車内を満たす。
M4柳津のリアがわずかに左右に揺れ、しかしその揺れすらコントロール下に置いたかのように、鋭くエーペックス(クリッピングポイント)を射抜いていく!!!!!
岡田「……だが、この先はパワーセクション!絶対に…追いついてみせるッッッ!!!!」
紅いGRカローラのエンジンが獣の咆哮を轟かせ、ギアダウンと同時にターボの過給音が甲高く響く!
タービンが全開で吸い込む空気の圧が車体を押し出し、岡田の背中をシートへと叩きつけた!!
柳津「そろそろ、いくかーー。
……戦の始まりだ……ッ!!!!」
低く呟く声と同時に、M4のリアタイヤがバンク出口で火花を散らし、2台のマシンは次の勝負区間へ向けて獣のように飛び出していった――!!
……そういえば、スポーツカーの欧州車と国産車って、中身ではどんな違いがあるんでしょうね?
何かわかりますか?ベルギーさん……。
ベルギー「いいところに気がつきましたね……。欧州車と国産車、そのスポーツカーの違い……それは……思想なんですよ。」
思想……ですか?
確かに車には様々な文化がありますけどーー?
ベルギー「そう、それぞれの国が持つ歴史、気候、道路事情、そして人々の価値観が、そのまま車作りに染み込んでいるんです。
例えばドイツやイタリアでは、ただ速いだけじゃなく、美しさや哲学を兼ね備えている風格の車が多いですよね……。
ドイツ車は、アウトバーンの無制限区間を前提に、時速200キロを超えても安定するための剛性と、何十年も走れる耐久性を持っています。
一方、イタリア車は感性と情熱の塊……。ステアリングを握った瞬間から、『走ることそのもの』を楽しませる魔法をかけてくる。」
へぇ……じゃあ国産車は?
ベルギー「国産車はね……とにかく実用と精密さを極限まで磨き上げるんです。
毎日の通勤、渋滞、雨、雪、狭い峠道、全部想定した上で、誰でも扱いやすく、それでいて限界域では牙を剥く-そんな二面性を持っている。
例えばこのレースに出ている86やGRカローラなんて、まさにそう。限界まで攻めれば欧州車にも負けないパフォーマンスを出せるのに、街乗りでは驚くほど素直。」
……思想の違いが、そのまま走りの性格になるってことですか。
ベルギー「ええ。そしてその思想は、マシンとドライバーの関係性にも表れます。
欧州車は“あなたを導く師匠”のような存在。
国産車は“共に戦う相棒”……。
同じサーキットを走っても、その感覚はまるで別物なんです。」
あ、言われてみれば確かに。
クリスタニールセンの488GTSやタカさんのブガッティシロンなどは列記とした欧州車です。
ベルギー「...中でもブガッティシロンは排気量は8リッターでW16のクアドロターボ。最高出力は1500馬力で値段も3億円をもオーバーしているんです......。」
ーーしかし!なぜあの腹切カナタは...あの紅い戦闘機がなぜ今!!!そのブガッティシロンに張り付いているんですかァァァ!???
ミルキー「それは私が説明するわねー?」
……簡単にいうとねーダウンフォースを下りのダウンヒルのポイントでうまく追い詰めて高速ベッドでも圧倒的に86が有利なの〜。
ーー高馬力のシロンちゃんとカナタくんの86ちゃんだとフィーリングや扱いやすさは圧倒的に86なのよ〜。
……これ、本当なんでしょうかね?
さぁ!実況席も3人に戻りましたところでレースの画面を再び映していきます!!!
岡田が視線を一瞬だけでも下に逸らすと、そこにはGRカローラのタイヤとエンジンの動力がジワジワと伝わってくるーー。アスファルトを蹴り出すような感覚を感じたのか少しだけ顔がニヤリとするーー。
ドライビングテクニックはAWDが至高だーー。
AWDこそ4WDの進化ってヤツだからなッーー......。
電子制御であっという間にトルク配分を割り切ってくれるーー!!
岡田「これが俺の脚だーー!
次元の違う速度をこのトルクで叩き込めるんだーー。」
「見てろよ...この全輪で全てを叩く脚の猛進撃の瞬間をな!!」
ーーそんなGRカローラ岡田の更なる後方からBMW Z4使いの古田が接近中ーーー!
スラリといつの間にか岡田の後方を走っているぞーーー!
今にも張りつきそうな勢いで低速バンクのコーナーから飛び出してきましたァァァ!!!
古田「....いいねーその走り。最高じゃないかーー。Z4に相応しいライバルになりそうだなーー。腕試しといこうじゃないか......!!」
岡田「勝負はこれからだ___!
とくと味わってもらうぞッ!俺のカローラをなァ!!!!」
Z4が大外から滑り出して仕掛けたァァァァァーーーー!!!!
6位走行中の岡田大成に柳津のM4と古田のZ4が襲いかかるゥゥゥーーーーッ!!!!!
岡田「くっ!!!!!」
古田「甘いね......先、行くよ?」
灰色のZ4が仕掛けたァァァァァ!!!!
凄まじいキレのあるオープンクーペコーナリングッ!!!!
古田のりあき!56歳!!!!
北海道から来たNSX吉田と同世代のおじさんルーキーが2.0リッター180馬力のZ4で300馬力のGRカローラの前に滑り込もうとしているゥゥゥーーーーー!!!
6位行けるかァァァァ!!!?!
岡田「AWDこそ雪道にも最強のハズなのにーーなぜFRに食いつかれてしまう!??」
古田「...あえて車は程よい馬力やハンドリングのZ4にしたのが正解だったーーー。コーナー回ればスープラのように思う存分立ち上がりで加速してくれる......。
「Z4を甘く見るなよ。
そこらの車よりも速いぞーー?
BMWの底力ってヤツを...お前には見せてやる....ッ!!!」
十分見ましたw
速くカナタや伊藤達の出番をッ。
BMW Z4は直6ツインクロスターボォォ!
ーーまさにこの人物は次世代絶対王者候補でしょう!!!
NSX吉田と並ぶか!??
それとも腹切カナタとも対峙していくのか!?コイツから目が離せないぞ!!!
そして、後方から一気にあのフミッパの華麗なる少女がついに帰還しようとしていたのであったーー。
岡田「こんな時にR8かよッ......!!
ローパワーになんて.:..負けてたまるかッ......!!」
古田「R8か......!いいだろう、来い!!!!
まとめて相手してやるッ!!!!」
内藤「やっと追いついた......!!」
「見せてあげるわッ!!!今度こそ私のフミッパをね、、、、、!!!!」
……もういいですw
内藤がその後方からニヤリと笑いを浮かべている。まるで獲物を捉えたかのようだった。
茶髪のポニーテールを揺らしながらギアをシフトダウンしてきて襲いかかる......ッ!!
さああああ!!!
後方で静かに牙を研いでいたZ4古田が、ついに牙を剥くッ!!!
内藤のR8、そして柳津のM4、その背中をまるでロックオンするように射程圏へ収めてきたぁぁぁ!!!!
Z4のエンジンが獣のように唸る。低く重い排気音に混じって、わずかにタイヤが路面を噛む高音が響く。
その瞬間、古田の視線が鋭く細まる――まるで獲物を狙う鷹だ。
古田「見せてやる……ドリキン直伝のドリフト走法って奴をな……ッ!!!」
ハンドルを握る手に力がこもり、右足は迷いなくアクセルを踏み抜く。
次の進入――わずかにアウトに膨らみ、急激なカウンターと共にリアが流れる!!!
スモークが弧を描き、Z4は異様なまでに鋭い角度でコーナーへ飛び込んでいくッ!!!
柳津「な……あの角度で入ってくるだと!?」
内藤「やべぇ……食われるッ!!!」
観客席からは悲鳴と歓声が入り混じる!!
Z4古田、まるで地面を滑る刃のように、後方の空間を削り取りながら2台に迫る――!!
ヴァアアアアアアアアア!!!!
内藤のR8が、まるで怒り狂った獣のように咆哮を上げるッ!!!
Z4古田が描く鋭いドリフトラインに、内藤は一切怯まない!!
内藤「させるかああああ!!!!」
右足、アクセル全開――!!ターボの過給音が一瞬でピークに達し、マフラーからは鋭いバックファイア!!
内藤「私のフミッパスライダーを……舐めるなアアアアアアア!!!!!!」
R8の車体がギュンッと横へ張り出す!
路面を抉るようにタイヤが悲鳴を上げ、そのまま外周へスライドッ!!
カウンターと同時にフロントが狙うのは――古田Z4の横腹ッ!!!
古田「ほぉ……来るか!!!」
スモークが混ざり合う!! 二台のスライド角度がぶつかり合い、まるで氷上でぶつかる流氷のように火花が散る!!
柳津「うおおっ……この二人、マジで殺る気だ!!」
観客席からは轟音と焦げたラバーの匂いが押し寄せ、目の前の光景に全員が息を飲む――!!
内藤「Z4!アンタにもこのフミッパ……味あわせてあげる、、、、、、、!!!」
言葉と同時に、R8のリアが爆発的にスライド!!
タイヤが路面を引っ掻く甲高い悲鳴、焦げたゴムの匂い、そして視界を覆う白煙――
内藤「後悔しても遅いんだからあああああああ!!!!!」
ステアを切り返すたび、R8は獰猛な獣のように跳ね回り、スモークのベールを裂いてZ4の背後へ急接近!!
後悔しないしホント幼稚www
古田「くっ……この切り返し速度、化け物かよ!」
Z4のテールランプが一瞬揺らぐ、その刹那――
R8のフロントがイン側を狙い撃ち、フミッパスライダーの角度が限界まで鋭くなる!!
柳津「やべぇ……見えなくなるッ、古田さん走ってッ!!」
観客の視線が一点に集中、誰もが次の瞬間を見逃すまいと息を殺す!!
視界の先、黒煙を撒き散らしながら加速していくR8のテールランプが、コーナーの奥へと吸い込まれるように消えていく――。
内藤「うふふ……気が付かなかったの? どうせ私に勝てないんでしょー?」
挑発混じりの声が、無線越しでも鋭く突き刺さる。
「このまま……フミッパだけで優勝よおおお!!!!!」
その瞬間、R8のリアが再び路面を抉り、白煙の壁を築きながら、狂ったように加速を重ねる!!!
古田「……イカれてるな……」
スモークの中で、Z4の視界はほぼゼロ。
だが、その背中を追う決意だけは、タイヤのスキール音に刻まれていた――。
そして――気付けば観客席からどよめきが広がる!!
しれっと、内藤R8と古田Z4の間に割り込んでいるのは……あのクリッパーバン石井だああああ!!!
白い車体の側面いっぱいに踊る「弁当万歳」のサイドステッカー!!
達筆すぎるその筆文字は、まるで戦国武将の軍旗のごとく風を切り、鈍重に見えるバンの存在感を何倍にも膨らませている!!
高速コーナーに差し掛かっても、荷室に積んだ弁当箱が揺れる音まで聞こえてきそうな迫力……しかしライン取りは驚くほど正確!!
古田「……は? なんであの箱バンがここにいる……!?」
内藤「ふふっ……いいじゃない、こういうの。混戦の方が燃えるでしょ?」
弁当バンが吐き出す軽いタイヤスモークと、重たい車体が生む低く腹に響くエンジン音――その奇妙な組み合わせが、周囲のレーサー達の集中力を削ぎ落としていく!!!
古田のZ4が、一瞬のスリップを見逃さず弾丸のように飛び出した!!!
アウトいっぱいまでマシンを寄せ、高重心から生まれる慣性を逆手に取った鋭い切り返し――まるで山道のドリフト練習で磨き上げた軌道が、そのままサーキットに移植されたかのようだ!!
石井「く……! マジか!!」
古田「思い出したぜ……さっき抜けていったよな……? でもよ、巻き返させてもらうぜ! FRのオープンクーペが、いつまでもしゃぶってる訳にはいかねェんだよ!!!」
Z4のタイヤが悲鳴を上げ、外側のフェンダーがかすかに沈み込む!!
そのままアウトラインから石井のバンを包み込むように迫り――視界を完全に覆い尽くす!!!
高重心の優位を見せつけるこのアタックに、解説席のベルギーが思わず声を上げる。
「さすがですね……! アウト側はどうしてもグリップが逃げやすいんですが、高重心車はロールを使ってイン側タイヤに荷重を集中させられる。古田選手はそれを完全に読み切ってます!」
観客席からは歓声と悲鳴が入り混じる!!
Z4のオープンボディが風を切り、弁当万歳の文字がサイドテールに描かれたクリッパーバンを飲み込もうとしていた――!!
黒い絶対王者NSX吉田、そして闇を纏うブガッティ・シロンMRTAKA!!
二台は、夜のサーキットを切り裂くように疾走する。
吉田のNSXは艶やかな漆黒、そのボディはライトの反射で刃物のような光を放ち、ミッドシップ特有の低く構えたシルエットが獲物を狙う黒豹を思わせる。リヤから覗くカーボンディフューザーが空気を切り裂き、排気管からは獰猛な咆哮と火花が散る。
一方、MRTAKAのブガッティ・シロンはまるで闇そのもの。艶消しの黒に塗り込められたボディは光を飲み込み、巨大なリアウィングが夜の闇と一体化して迫力を倍増させていた。16気筒クワッドターボが低く重い音を響かせ、まるで大地を揺らす戦鼓のようだ。
バックストレート――風圧で観客席の旗がちぎれんばかりに揺れ、二台の後方に長く伸びたテールランプの残像が赤い彗星の軌跡のように残る。
吉田はシロンのわずかなブレーキの入りを見逃さない。
左脚がブレーキペダルを一瞬踏み込み、ノーズを沈めた瞬間、ステアリングが鋭く切り込まれる――!
ミッドシップの重量配分と鬼のようなトラクションが、闇の獣を撃ち抜くための刃へと変貌する!!
「……行くぞ、MRTAKA。勝負しようぜッ...!」
吉田の低い声がヘルメットの中で響いたその時、黒いNSXは影を裂くようにシロンのリアへ接近――
二台の間に漂う緊張は、まるで深海のように重く、しかし次の瞬間には破裂寸前の爆薬のように弾け飛びそうだった。
先程の黒川のシーンは、直ぐ様パブリック通信に全員に響き渡っていた......。
――その音声は全車両のパブリック通信にも漏れた。
相川(R35)「(吹き出しながら)おいおい…実況より笑わせるじゃねぇか」
柳津(M4)「……あれは完全に隙だ」目を細め、ミラーの中のEVO9をロックオン。
岡田(GRカローラ)「ふふっ……今の乱れ、確実にもらう」シフトノブを叩き込む。
内藤(R8)「あははっ!集中切らしてんじゃないわよ〜、海斗ォ!」
古田(Z4)「……今しかねえな」アクセルをジワリと踏み増す。
おっとォ!?黒川海斗、大きく集中を欠いた!背後にはR35相川、M4柳津、そして紅のGRカローラ岡田までもが射程圏内だ!!これは包囲網だァァァ!!!
視聴者コメント(世界同時チャット)
視聴者1「wwwwwwwww」
視聴者2「探知機『この先ピンチです』←誰がこんなセリフ仕込んだんだよww」
視聴者3「てか全員に聞こえてるの草」
視聴者4「黒川集中力ゼロじゃんwww」
視聴者5「R35もM4もカローラも近い!これ絶対次で抜かれるぞ!」
視聴者6「いやこれ配信的には神回www」
視聴者7「黒川キレ芸炸裂w」
ミラーの奥、光の暴風が押し寄せて吹き荒れてくる。その中で黒川の瞳がギラリと光った。
「……まだだ。俺はここじゃ死なねぇ」
「こっちが見せてやるぜ、、、!旋風決めてやるッ!!!!」
そして、黒川の目の前に見えてきたぞ、、、!!!
FFカテゴリークラス優勝3連覇達成!
腹切カナタ同様の高校生にして同じクラスメイトのこの少年!!!伊藤翔太の黄色いチャンピオンイエローのスイスポがあらわになってきたアアアアアアア!!!!!!
黒いカラスの帝王が....ベスト4入りを再び果たすことは出来るのかァァァ!!!!!!
山吹花 「今度は伊藤がピンチに!!!
黒川ふざけんな!逃げて!伊藤くん!!!」
そこに謎の男が復活!!!??
次回第96話低重心対高重心