フラッシュフォワード1
「…これから、ご故人様を火葬炉にお納めいたします。ご遺族の皆さまにとって、最後のお別れの時間です。どうぞ、お見送りください。」
静寂の中、棺がゆっくりと炉の中へ送り込まれる。
遺族たちの視線が、その動きを見つめ続けていた。
「…ご遺族の皆さま、これから火葬を開始いたします。もしよろしければ、このボタンを押していただき、ご家族からの最後のお見送りとなります。どうぞ、お父様、お進みください。」
短い沈黙の後、「カチッ」という小さな音が響く。バックヤードのランプが静かに点灯した。
そのボタンは象徴的な儀式の一環であり、実際の火葬はまだ始まっていない。
「火葬が始まりました。この間、奥の待機所でお待ちください。準備が整い次第、お呼びいたします。」
職員の穏やかな声が響き、遺族たちは深い息をついてその場を去っていった。
その頃、焼き場のバックヤードでは異様な光景が広がっていた。
3人の強盗犯が納入されたばかりの棺を囲み、その手際よい動きで作業を進めていた。
周囲には無力化された職員たちが横たわり、その両手には無機質な結束バンドが食い込んでいる。
合図があったかのように、犯人たちは棺を運び出す準備を開始した。
二人が棺を慎重に持ち上げ、もう一人が電動台のアクセルを操作し、棺を台に載せやすい位置に駐車させる。
棺を台に乗せると、犯人の一人が外へ続くシャッターを肩で持ち上げた。
棺を押し進め、シャッターの隙間を潜り抜けるその瞬間――
「パァァァァァァァァァン!」
鋭い発砲音が焼き場を引き裂いた。
その弾丸はシャッターを支えていた犯人の胸部を撃ち、彼の体は反動で後方に吹き飛ばされた。
「ガシャーン!」
支えを失ったシャッターが閉まる音が響く。
「ッ!?」「何だ!?」
驚愕する犯人たち。
その視界には、盾を構え銃を携えた警官隊が整然と陣形を組んでいる。
「行動開始。戦闘規定を遵守せよ。」
警官の中で冷静な指示が飛ぶ。
「コピー。」
そして――
「ダダダダダダダダダッ!!!」
マシンガンの連続音が鳴り響き、辺りの空気を震わせた。
放たれる弾丸が容赦なく犯人たちを追い詰める。
「引き返して!」
指示を受け、犯人たちは電動台をバックさせながら警官隊に向けて反撃の銃弾を放つ。
倒れていた犯人も苦痛に耐えながら立ち上がり、シャッターを拾い上げると再び戦闘に加わった。
棺と犯人たちは、再びバックヤードの中へと引き返していく。
最後の一人がシャッターを勢いよく閉じる音が響くと、現場には一瞬の静寂が訪れた。
だが、その背後に潜む緊張感は消えることなく、事態はまだ終息から遠い地点にあった。