第四話 勇気クラス
ユートピア学園登校二日目。
今日からクラスでの授業が始まる。
「ほいじゃお前ら、簡単に自己紹介してけー。俺はクラス担任の吉沢な。じゃまず右端のお前から」
無精ヒゲに皺のよった服、そしてだるそうな顔で担任らしい吉沢は俺を指さす。
どうやら俺がトップバッターのようだが、先に一つ言っておくことがある。
「吉沢先生、俺たちもう互いに自己紹介は済ませてるんです。だってこのクラス……生徒が三人しかいないから」
そう、朝登校してびっくりしたが、なんと〈勇気クラス〉には俺含め三人しか生徒が在籍していないという驚異の過疎っぷりを見せたのだ。
そんなもんだから互いの自己紹介もあっという間に終了。
一つ問題があるとすれば俺以外の二人が両方女子なので、会話に入っていきづらいということくらいだ。
「なんだお前らもう仲良しか? じゃあこの中で生徒の名前知らないの俺だけかよ。やべーなこりゃ」
ホントにやべーよ。
なんで三人しか生徒のいないクラスの担任が名前把握できてないんだよ。
さては吉沢先生あんた自分のために自己紹介させようとしてたな?
俺らに対する悪感情は見えないけど、すっげえだらしないぞこの担任。
「はぁ…一ノ瀬アイスです。目標は勇者。よろしく頼んます」
仕方がないので簡潔に自己紹介をする。
これで覚えなかったらもう知らん。
もともと〈勇気クラス〉に配属される先生に期待はしてなかったが、予想外に悪感情のない人が来たので一応の義理だ。
「猫乃女 鈴音よ。そのぼさぼさ頭に叩き込んどきなさい!」
隣の女生徒もツンケンしながら自己紹介した。
純白の猫耳ツインテ、これで気が強いとか属性濃すぎませんか?
黒髪黒目のノーマルな俺の存在感のなさよ。
「儂は古月ルイじゃ。頼れるところもなさそうじゃが、よろしく頼むぞ」
だから俺の存在感がさっ!
エルフでロリババとか何処のアニメ世界だ⁉
いや彼女も同年代だから婆ってことはないんだろうけど、こうなると俺もなにかしらないと埋もれちまうぞ、地面に……。
「おう覚えたぞー、アイスに猫に古月な。またキャラぶっ濃いのが来たもんだなー。流石、≪ギフトホルダー≫でダンジョン学園に来るだけはあるぜ……ん? どうしたアイスー? 腹痛いか?」
「腹は痛くないです……。いや、俺だけ影薄いなーって思っただけですよ。やっぱダン学に集まる≪ギフトホルダー≫はみんな癖が強いですね」
「「「………???」」」
…え、なにその「おまいう」みたいな顔は。
まるで珍獣を見るかのようなその眼を止めて頂けませんか?
……痛々しいものを見る眼もやめてください!
いったいなんだって言うんだ……。
「あんた本気で言ってんの?」
「自分だけはマトモじゃと思っとる奴が一番狂っとるアレじゃな、アレ」
「えぇ…? 言っている意味がわからないぞ……マトモなのは僕だけか⁉」
「カタツムリ発見じゃー」
いや流れでネタぶっこんでみたけど本気でわからんぞ?
俺は至って普通のうら若き青年だろ?
お前ら珍獣と同一視しないで欲しい。
「あのなぁアイス。張り切るでもなく、臆するでもなく、至って平常でそれが当たり前かのように「目標は勇者」とか言うやつがマトモなわけないだろ? メンタル化け物かっての」
……?
その言葉では全然納得できないが、言いたいことはわかった。
俺はマトモだが、周りからはそうは見えないらしい……やっぱわっかんねぇな?
勇者を目指す冒険者なんて珍しくもないと思うんだが、謎だ。
「ま、要するにだ。このクラスでマトモなのは担任の俺だけってことだな。ったく」
「「「それはない」」」
吉沢のイカれた発言に生徒全員の声がはもる。
なんだ、結局〈勇気クラス〉はヤベー奴しかいないのか。
これは俺が空気作っていかないと魔窟が出来上がるな。
けど……存外楽しめそうでオラわくわくすっぞ。
「んじゃ、自己紹介も終わったところで最初の授業を始めるぞー」
吉沢はそう言ってでっかいモニターを俺たちの前に設置した。
最初の授業からそんなもん使うのか…って思ったけど、この担任なら黒板に文字書く労力嫌がりそうだもんな、と思ったら途端に納得できた罠。
「おい吉沢。無理して授業せんでもええぞ? 儂はちょっくらダンジョン行ってくるからの」
「それいいわね! 感謝なさい吉沢! 授業免除してあげる!」
「だー! ちょっと待ってろ、これから俺の楽しいひと時が始まるんだからよ……」
「「「?」」」
吉沢の言ってることはわからないが、もう誰も吉沢を先生呼びしないことはわかった。
よかったな吉沢、出会ってすぐの女子高生に呼び捨てして貰えるなんて、ウラヤマシーゾー。
それと猫、授業免除は普通教員側が使う言葉じゃないか?
逆逆。
「おーし、セッティング完了、よく聞けお前ら。これからはこの授業でダンジョン知識を蓄えて貰うことになる。だからしかと刮目せよ…! 俺最推しのダンジョン配信者、メグルぽんを!」
『はーい皆さん今日もこんにちー! ダンジョンに咲く可憐な華! メグルぽんでーす!』
「「「……は?」」」
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