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唯一無双の現代ダンジョン  作者: 歌歌犬犬
第二章 宝物殿
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第三話 意志表明と決意の決意



「……で、意気込んで宣言して、断っちゃったのね。馬鹿なんじゃない?」


「馬鹿じゃの! 阿呆じゃのぅ! かかかっ」


「……うるせっ」


 なんちゃら家のお嬢様との話が終わり、〈勇気クラス〉の教室に戻った俺はクラスメイトの猫と古月に「こんなことがな~」と話した。

 そしたら罵倒された、解せん。


「あんたねぇ、天宝院飛鳥の名前を知らないなんてもぐりを通り越してモグラよ! 冒険者を志すなら天宝院家の名前くらい聞いたことあるでしょ?」


「ないね、残念ながら」


「かっこつけんなッ!」


「まぁ猫よ、落ち着くのじゃ。授業をさぼって連日ダンジョンに潜るような狂人に外界の常識を説いても通用せんじゃろて。ここで天宝院家の誘いを断ったことの意味を教えて絶望の表情を堪能しようぞ」


「う、うん……そうだね古月ちゃん……」


「ちょっと引くのやめてもらっていいかの? 冗談じゃから」


 ちょっとではなくかなり引いてるようにも見えたが、まぁそこはいい。

 古月がそこまで言う天宝院家とやらの話、聞かせて貰おうじゃないか。


「はぁ。まぁ簡単にいうとじゃな、冒険者界隈で超スーパーウルトラのつく重鎮一家じゃよ。この学園とも深い繋がりがあるようでの、学園理事長でも頭が上がらない雲の上の一族じゃ。誘いを受けておったら冒険者として成功するのは確実、その上で≪ギフトホルダー≫汚名返上からなにまで力になってくれたろうなぁ。勿体ない限りじゃて」


「へー、そんな凄いお嬢様だったのか、あいつ」


「……一応聞いておくんじゃがため口なんかきいておらんじゃろうな? 首が飛ぶぞ、ダンジョン内で」


「………まさかまさか」


「……間が気になるのぅ」


 まさか首が飛ぶなんて、まさかまさかだよ。

 ため口?

 めっちゃきいたけど??


 ……しばらく背後には気を付けよ。




◆一方その頃、天宝院飛鳥は……◆


 私の誘いを断った愚か者が去っていった。

 冒険者、ましてやこの学園に通う生徒で天宝院家の誘いを断るなんて、一周回って大物とすら思えるわ。


「処分致しますか? お嬢様」


「あらセバス、駄目よそんなこと。彼はただ己が芯を通しただけだもの。むしろそこを曲げる者なら最初から勧誘などしていないわ」


 静かに殺意立つ執事のセバスを窘める。

 我が天宝院家に忠義を尽くしてくれるのは嬉しいけれど、こういう行き過ぎたのはダメね。


「失礼致しましたお嬢様。しかし、今のお言葉、お嬢様はこうなるとわかった上で勧誘されたのですか?」


 綺麗に腰を直角に曲げて謝るセバスの問い。

 断られるのが予想済みだったかですって?


「ふふ、それは実のところ期待と信用で半々だったわ。誘いを受けて私に尽くして欲しかったし、でも彼はきっとそうしないんだろうなぁって予感はしてた」


 私の答えにセバスは難しい顔をして黙った。

 天宝院家の娘として冒険者に断られることはあまりよろしくない。

 でも一執事の立場で私の決めた勧誘の意思を否定もできない。

 それに勧誘を断られたのは()()()()()()ですものね。


「ふふ……不破ちゃんといいあの宿敵くんといい、やはりこの時代に頭角を現す«ギフトホルダー»は面白い。二人揃って私の勧誘を断るんだもの、尚更目を離せなくなっちゃうわ」


 あるいはそれはただの好奇心では終わらない、時代の変わり目の観測者になるのかも……。


「……見ているだけで終わらせるつもりもないけれど……ね」


 だって私は、天宝院飛鳥だもの。



 ◆◇◆◇◆



「なんだか背中に悪寒が走ったな……風邪か?」


 いやなんだろな、この粘りつくような正体不明の感覚は。

 古月があんなこと言って脅すからちょっと神経質になり過ぎてんのかね。


「なんだアイス、風邪なのか? お腹は温めとけよ」


「お前のその腹痛への拘りはなんなんだ吉沢……」


 俺がダンジョンから出てお嬢様との話を終えたのがさっき。

 まだ下校には早いということで久しぶりに俺も吉沢の授業に参加することにした。

 ……これを授業と言っていいのかは甚だ疑問が残るがな。

 楽しけりゃいいんだ!


「アイスがいるのは珍しいからメグルぽんの配信にすっか。途中からだとあれだし冒頭の意志表明だけでも聞いてけよ~」


 そういった吉沢は現在のライブ配信ではなく過去のアーカイブからメグルぽんの動画を再生した。

 正直不破ちゃんの現状を知りたいから今何階層で戦ってるのかを見たいところだが……意思表明、ね。

 確かに聞いてみたくもある。

 流石吉沢、布教活動にも余念がないな。


『やほやほやっほ~メグルぽんだよ~。下種共元気にしてたかな~?』


 冒頭というだけあって最初はやっぱこの人だよな。

 メグルぽんのリーダー、ソラさん。

 今話題のメンバーは不破ちゃんであれど、そもそもこの人もかなり深くまで潜れる上位冒険者だ。

 不破ちゃん育成に切り替えてからは浅い階層にしか潜ってないが、それでも冒険者の心得などアドバイスが役に立つと人気だ。

 すげー下種下種言ってる人ではあるけどな、そこはもうご愛嬌だ。


『今私たちは亡者の王国を攻略中! あ、亡者の王国ってのは六階層から十階層までのことを言うんだねぇ~。アンデッドしかでないから、あそこ』


 亡者の王国。

 六階層はスケルトン、これは以前不破ちゃんの攻略を配信で見たな。

 的確に頭を潰さないと合体して超大型スケルトンがしゃどくろに……しかしそれは不破ちゃんによって新たな攻略法となり下がった、良い子は真似しないように。


 七階層は確かゴーストで、八階層がゾンビ、九階層がリッチだったか。

 ここまでアンデットで揃えられた後の十階層最終ボスもまたアンデットだが、それがなんとなんと……ドラゴンなのだ。

 あれを倒せてようやく冒険者の始まりって感じの最初の関門だな。


 ……そういや不破ちゃんはそこをどう攻略するのだろうか?


 普通に考えればメグルぽんのメンバーと協力して、だが如何せんレベル差が酷い。

 彼女らが参戦したら勝ち確のヌルゲーになるが、それをあの不破ちゃんが良しとするのか。


「なぁ吉沢、メグルぽんはもう十階層突破したのか?」


「ん? いやまだだぜ、まぁ続き見てろって」


 気になって聞いてみたが答えはこの冒頭映像にあるという。

 意志表明……まさかね。


 そのまま冒頭でのあれこれが流れていき、遂に話はこれからの不破ちゃん育成方針へと移った。


『みんなも気になってると思うけど、これまでの五階層までと違い亡者の王国からはソロで探索なんて自殺行為もいいところ。なら高レベルの私たちが参戦するのかって思うでしょ? ……ま、まずはこの娘の意志を聞いてあげて』


 ソラのその発言でカメラはこれまで一言も話さなかった不破ちゃんへと向けられる。

 魔女のローブにでっかい鎌……相変わらずちぐはぐな装備だ。

 しかしカメラに向けられる彼女の眼は、そんなちぐはぐさなど欠片も感じさせない、芯の通った強いものだった。


 口を開く。


『……私は、強くなりたい。冒険者になれるのは、ダンジョンに潜るのは……≪ギフト≫を持たない者達だけ。そんな世間の風評を変えたくて、私はソラ姉たちメグルぽんに加入した。───最初は、ね。でももう気付いたの、私の後追いをする≪ギフトホルダー≫たちは世間の風評通りで、みんなは間違っていなかった。だから……私は勝手に、≪ギフトホルダー≫で一番を取る。≪ギフト≫のあるなしに関わらず、私が最高で最強の冒険者になる。一番の冒険者が≪ギフトホルダー≫だってこと、世界に知らしめる。だからみんな、見てて』


 そこで不破ちゃんの演説は一度止まった。


「……最高で最強の冒険者に……?」


 誰が、不破ちゃんが?

 いいや違うね、それは俺の至る景色であるはずだ、勇者とはそうでなくてはならない。


 つまりまぁ……なんだ。


「やっぱただの宿敵(ライバル)か、不破……!!」


 俺はお前を越えるぞ。

 俺はお前を置いていく。


『───宿敵。ダンジョン学園にいるらしいね。小規模だけどスタンピードも起きたって。ネームド、倒したんでしょ? 私もやるから。私はあなたを越えていくから。私はあなたを置いていくから。十階層アンデットドラゴン、私は()()()討伐する。……見ててね』


 言いたいことは言い終えたか、不破ちゃんはカメラの外へと出て行った。


 はっ、十階層のアンデットドラゴンをソロ討伐?

 それがどれだけの自殺行為か理解していないのか?

 メグルぽんの支援なんて微塵も求めないのも見てりゃわかる。

 バカだね!

 正真正銘のバカだ!


「嬉しそうだな、アイス」


「嬉しそうじゃない、アイス!」


「めっちゃ嬉しそうじゃのぅ~アイス」


 あ?

 そりゃ嬉しいさ。

 勇者ケンジがその姿を見せなくなって以来、こんなバカはなかなかお目にかかれない。


「バカはいつだっているもんだなぁ、ったく」


「そういうお前は十階層どうすんだ? 俺と行くか?」


 吉沢のアホは放っておくとして。


「ソロ討伐。もとよりそのつもりだ。その上で、俺はすべての守護者を討伐する!」


 決まった決意が更に決まる。


 俺の後ろをついてこい、不破。



「………一番のバカはこいつじゃね?」


「シッ! いいのよこいつはこれで面白いから」


「なんだかんだ言って実力あるしの、宿敵くんは。……っと、儂はなんも気付いとらん気付いとらん」


「大丈夫よ古月ちゃん、こいつバカだからもうこっち見えてないわ」


「楽しくなってきたねぇ!」

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