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唯一無双の現代ダンジョン  作者: 歌歌犬犬
第二章 宝物殿
24/29

第一話 突然の勧誘

投稿再開します。

ここから第二章スタートです。

週一ででも投稿するのでよろしくお願いします。



 ザシュッ、ザシュザシュザシュ……


 刃が肉を絶ち血が噴き出る。

 その光景は、そしてその音は、このダンジョンという場所においては日常である。


 白銀のオーラを身に纏い、また同色の兜、マント、腰当てを身に着けた俺はデカいアルマジロのような魔物、それを斬り続ける。

 

 五階層ボス部屋の主、ローリングアルマジロ。


 それが、今この俺こと、一ノ瀬アイスが相対している魔物の名称だった。


「まぁこうなるだろうとは思っていたが、【勇気(ブレイブハート)】だけで十分すぎる相手だな。【応答剣(アンサラー)】も剣の強度増加に役立ってはいるが、いまいち気が昂らんのよなぁ……」


 突撃を繰り返すローリングアルマジロの巨体を軽く避けながら、また一閃その身体に刃を振るう。


 もともと五階層のローリングアルマジロといえばダンジョンで最初に戦うことになるボスであるが、それはここまでの階層を十分な余裕をもって突破できる実力があるならそう苦戦する相手ではない。

 二階層で培われる単純な武装ゴブリンの突撃は、ここでローリングアルマジロがする突撃を対処するのにいい予習となったことだろう。

 三階層にてゴーレムの硬い防御を突破する力があるのなら、このローリングアルマジロの外殻もなんとかなるはずだ。

 そして四階層のステップウルフたちの巧みな機動力に連携……ここに至っては単体のローリングアルマジロはむしろ彼らより劣るのでは?というレベルである。


「現状の俺に足りない能力はここで計れない、と。それがわかっただけで十分」


 五階層に至るまでの階層で自分に足りないものはなかった……それを実感できた段階で、俺は【応答剣(アンサラー)】にて未だ突撃を繰り返すローリングアルマジロを両断した――……。



 ◆◇◆◇◆



 ダンジョンからの帰り道。

 近寄る魔物を斬り捨てながらここ最近で立てた目標を達成した今、次になにをするかを考えた。

 学園占有ダンジョンの五階層突破はただ我が宿敵(ライバル)である不破ちゃんが達成していたからやっただけのこと。

 正直なところこれを達成したからと言って大した興奮もないんだよな。


「そもそも今宿敵(ライバル)たる不破ちゃんはどの辺を攻略してるんだか……。最近慌ただしかったから配信も見れてないんだよなぁ」


 慌ただしかった理由はもちろん、少し前に学園で起こったスタンピードが関係している。

 あの事件での死者はたったの一名。

 それは起点となった階層がチュートリアルと名高い一階層だったこともあるが、必ず現れるはずのネームドと言われる個体が出現しなかったこともまた大きい。


 ……実際はその一人の犠牲で以って、ネームドと思われる個体は俺が倒していたのだが。


「……応えろ」


 試しに発動している【勇気(ブレイブハート)】を【応答剣(アンサラー)】のオーラと融合させる。

 そこから更に念を送れば、俺が手に持つ剣は【応答剣(アンサラー)】の輝きから異なるオーラを纏い、その姿を見る者魅了する〝聖剣〟へと変貌させた。

 まぁ、変貌と言っても纏わりつくオーラがそう見せるだけなのだが……。



 ―――【聖剣フラガラッハ】



 それが、俺が新たにあの窮地で獲得した力の名だ。

 それは【勇気】と【応答剣】が組み合わさって初めて顕現する。

 威力のほどは、まぁスタンピードのネームドを一撃で仕留められるくらい……と言ってもいいのかな?

 如何せん元が【応答剣】であるが故に、俺の感情次第でこの聖剣もその能力を上下させるきらいがある。

 最低値の出力でも【応答剣】を凌駕するからいまいち把握しにくいんだけどな……。


 ともあれ。


 あのスタンピードの最中ダンジョン内にいた俺は学園から色々事情聴取を受ける羽目になり、またそこで判明したある光景がまだ話題を呼んで拘束されて……と、今日ようやくダンジョンに潜ることができたというわけだ。


「あのときの出来事なんか途中から覚えてないってのに、あれこれ質問されても答えようがねぇんだって。相も変わらずこの学園の教師陣は俺らを舐めてるよなぁ」


 俺ら――というのは〈勇気クラス〉、更に詳しくいうなら≪ギフトホルダー≫。

 まぁその辺のいざこざを今改めて考える必要はねぇか……。


 それに……さっきチラっといったある光景のせいで、ある種考え方に柔軟性がでてきてる輩もいるわけだしな……。


 そんなことを思いながらダンジョン出口から外に出て、ギルドの受付嬢である奈落さんのもとへと向かう。

 あの人もまた相変わらずにこにこして出てきた俺を見てるが、それちょっと怖いんだって!

 せめてにこにこしながら「おかえりなさい」とか言ってくれたら逆に凄い癒しになるんだけどなぁ……。


「換金お願いします、奈落さん。それと無言でにこにここっち見るの怖いんでやめて貰っていいすか……」


「にこにこ」


 これだよもうぉ!

 まじでこの学園一癖も二癖もある奴が多すぎるんだよな。

 それでいてこの人同様仕事とかはきっちりこなすから頼るのをやめられない。

 ……そう考えると地元の寂れたギルドにいる受付嬢瑠璃桜はまだマシなほうだったのか……?

 なんとなく気に入らん奴ではあるが、今度行くときにはまた和菓子でも持って行ってやるかね……。


 まだ無言でにこにこしながら換金作業や装備品の預かりなどをこなす奈落さんだが、それらが一区切りつきそう、という辺りで口を開いた。

 ……なんか嫌な予感。


「アイスくん、あちらにあなたに用があるという人が来ていますよ? 君が出てくるまでずっとあそこで待ってたんです。にこにこ」


「その最後ににこにこってつけるのやめてもらっていいですか⁉ ずっと同じ空間で気まずかったのはわかりましたから……!!」


 この場合の奈落さんのにこにこは意訳するとこうだ。

 「もっと早く帰ってこい……」(マジギレ寸前)

 末恐ろしいな。


 しかし、あの奈落さんが共にいて気まずさを感じる生命体などいるのだろうか?

 その待ち人とは一体何者……?


 ダンジョン後の諸々を終えその待ち人のところに視線を向けると、


「待っていたわ、一ノ瀬アイス。こちらに来なさい」


 執事のようなおじさまを侍らせ、優雅に茶を御供に本を読む銀髪の美少女がそこにいた。

 誰やねん。

 場違いな空気纏いすぎててそりゃ奈落さんも気まずさ感じますわな。

 やっぱこの学園、まともな奴って少ないんだなぁ……。


 そんな問題児に呼ばれることに辟易しながらも見え隠れする権力に俺はその美少女へと近づくしかなかった。


「それで、えーっと……」


天宝院飛鳥(テンホウインアスカ)よ。まさか知らないなんて言わないわよね?」


「も、もちろん」


 知らないよ?

 知ってるわけねぇだろどんだけ自己肯定感高いんだよ。

 まぁこの光景見てれば相当なお嬢様なんだろなってことは察せられるが。


「それで天宝院さんは俺になんの用で?」


「………まぁいいわ。あなたに聞きたいことがあったのよ。例のスタンピードでできたっていう、()()()()()()()()()()()について」


 ……またその話か。

 

 このお嬢様がいう亀裂とは、今はもうダンジョンの自動修復機能で見ることはできない、が。

 修復が完了されるまでにそれなりの時間があったので、学園の教師陣含め目にした者は多いのだ。

 そしてそれは人為的に造られた跡であると予想され、一階層でいったいなにが?という疑問に繋がった。


 色んな考察がされているが、実はネームドがいたにしろ他の何者かがやったにしろ、地上に出てきたのは俺だけであったため「ネームドはどうなった?」とか「君もしかしてアーティファクト持ってる?」とかいうことを散々聞かれる羽目になったのだ、俺が。


 俺が。


「ご足労の上申し訳ないんですけど、あの時のことはよく覚えていないんです。とても恐ろしい体験でしたので……えぇ本当に申し訳ないんですけどね」


 ようやく教師陣の面倒な聴取から解放されたと思ったら、今度はどこぞのお嬢様だぁ?

 はんっ、そんなの聴取歴戦の猛者である俺を前にしてなんぼのもんだってんじゃい!


「急にしおらしくなったわね。いいのよ、私たち同じ一年生じゃない。さっきみたいに砕けた口調でたくさんお話しましょ」


「自分何分今ダンジョンから出たばかりで、消耗しているんです……」


「セバス! 最高級の疲労回復薬を彼に。あと彼の席も用意して。紅茶はいつも私が飲んでるのと同じものを」


「かしこまりましたお嬢様。すぐに」


「ごめんなさい全然元気です何が聞きたいんですか?」


 俺は所詮聴取歴戦の猛者(経歴十日程)だからなぁ。

 お嬢様歴=人生のお方には到底敵わないってわけだ、とほほ。


「素直な子は好きよ。さぁ、座りなさい」


「どうも……。あーでもまじで記憶がないのは本当のことなんだ。そこは加味して聞いてくれよな」


「えぇ、理解しているわ。そもそも一目見てわかったからもういいの。そうね、単刀直入にいうけれど、あなた……」


 ごくり。


「私の部下になりなさい」


 …………。


 ……にこにこ。

 

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