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唯一無双の現代ダンジョン  作者: 歌歌犬犬
第一章 聖剣解放
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第二話 初・ダンジョンダイブ

本日二話目

 


 長く、しかし有意義であった入学式を終え、その日は解散となった。 

 俺はそのまま〈勇気クラス〉の面々に挨拶だけでもしようかと思ったが、誰にも会えず帰路についている現在。

 探せど探せど何処にもいないんだから、もしや〈勇気クラス〉って俺だけ?と心配にもなったものだ。

 まぁその懸念は通りすがりの先生の「きっと彼らは一刻も早く帰りたかったのよ。()()()()絡まれたくないから」というお言葉で無事払拭できた。

 ここユートピア学園じゃ変なのなんて珍しくもないのだから、クラスメイトには早く適応して貰いたい。

 なんなら俺が一緒に行動して風除けになってやろうともしたのが、その呟きを聞いた先生に「やめたげてよぉ!」と言われたのでやめておく。

 ……はて?


 少し寂しい気持ちで帰路を歩く俺だが、学園の寮は利用していないので向かうは駅だ。

 自宅からの通学となるが、駅に設置された転移陣のおかげで通学はスムーズ。

 百年前までは転移などという代物は空想上のものでしかなく、その頃は電車なるもので移動をしていたと言うのだから驚きだ。

 そもそもダンジョンから得られる魔石やそれを用いた技術――魔道具と呼ばれる物が普及したのは八十年程前かららしいので、やはりダンジョン出現で齎された影響は強かったということだろう。


 百年前にダンジョンが現れて世界は変わった。

 それまで主流であった科学は魔学という魔力を用いた研究へと。

 世界に溢れる魔力は人の生態系にまで影響し、エルフや獣人といった身体的特徴の強い人間も生まれるようになった。

 一説では≪ギフトホルダー≫も魔力の影響を受けて誕生したものだと言われているが、諸説あるしどうでもいいことだ。

 俺は自分の夢を追うスキルが手に入ったというその事実だけで十分だった。


 俺は魔学の発展で作られた転移陣に乗り、学園から遠く離れた地元へと帰り着く。

 魔学の力があれば離れた場所であろうと通勤や通学にかかる時間は変わらない。

 国外でさえ専用の駅に行けばあっという間にはい到着だ。

 めっちゃお高いらしいけどね。


「ただいまー」


 家の玄関で呼びかけるとすぐにドタドタと階段を駆け下りてくる音が聞こえる。


「おかえりにぃに! 早かったじゃん!」


「まぁな。今日は入学式だけだったし、クラスメイトにも会えなかったから。チョコは学校まだだっけか?」


 駆け寄ってきた我が妹、一ノ瀬チョコの頭を撫でながら問い返す。

 チョコは俺の一個下で今は中学三年、にもうすぐなる予定。

 始業式がまだだから今日も家で寛いでいたのだろう。


「うん、始業式は明後日だよ。あ~チョコも早くにぃにと同じ学園行きたいな~。変なのに絡まれてたらにぃにが可哀そうだもん」


「おいおい、栄えあるユートピア学園にそんな変な奴なんているわけないだろ?? 皆、冒険者という夢を追って集まった同士なんだから」


 俺は入学式で既に絡まれた後だということも、先程先生が言った変なのの存在も忘却の彼方に投げ捨てて、妹に笑いかける。

 俺の可愛い妹に汚れた世界なんて見せてたまるかってんだ!

 チョコに絡む変な奴は俺が一撃でぶっ飛ばす……。


「そうだ、最近チョコはお友達と仲良くやれてるか? 冬休みでしばらく会えてないって訳でもないんだろ? ほら、新学年で交流の形が変わるとかあるから」


 話題変更でチョコのお友達の話を聞く。

 彼女たちがこの最高の我が妹との仲を悪くするなんて考えられないが、新しい学年でクラス替えもあるだろうから少し心配だ。

 チョコは可愛い上に優しく、天然であることも相まって町でも学校でも人気の的なのだ。

 言い寄るケダモノが現れないとは限らない。

 実際昔はその対処で俺も忙しかったが、親衛隊が結成されてからは彼女たちがチョコを守ってくれる。

 新学年でのその辺の事情を俺は聞きたかったのだが……


「咲ちゃんたち? 毎日グループ通話で楽しくお話してるよ。一緒に遊びにも行くし、みんな仲良し!」


「そうか、よかったな」


 勿論のこと親衛隊の事をチョコは知らない。

 だから時々こうして聞きたいことが聞き出せないことはあるが、まぁそれは折を見て親衛隊の娘たちに直接聞きに行けばいいだろう。


「あら、アイスおかえりなさい。お昼まだよね? 一緒に食べましょ」


「ただいま母さん。午後はダンジョンに行くつもりだから、腹八分で済ませるよ」


 玄関でチョコと談笑してたら母さんもやってきた。

 我が家の家族仲は至って良好なので、休日はここに父さんも加わることになる。

 今日はお仕事で不在だけどね。


 そうそう、アイスってのが俺の名前だ、一ノ瀬アイス。

 チョコの名前といい俺の名前といい、名付けのセンスが一般と異なるのは理解しているが、俺もチョコもこの名前を気に入っている。

 ……幼少の頃俺はアイスなんて名前で嫌だった時期があるが、幼いチョコが「あいすにぃ、あいすにぃ」と呼んで後ろをついてくるのが可愛くて、気付いたら自分の名前が大好きになってたんだよな。

 もちろんチョコの名前も大好きです。


 まぁ名前のことはこの辺にしておいて、揃ってリビングに移動した俺は早速チョコに絡まれる。


「にぃに! ダンジョン行くんだよね? 誰かと一緒に潜るの?」


「いんや、ソロで潜るつもりだよ。そもそも≪ギフトホルダー≫と一緒に潜りたいって奴はそうそういないからなぁ」


「む~! チョコが十五才だったらにぃにと一緒に潜るのに~!!」


「はは、気持ちはありがたいけどチョコはお友達と一緒に潜る約束してるだろ? 友達は大切にな」


 その後も初めて潜るダンジョンについてあれこれチョコと話した。

 ユートピア学園に入学を果たした生徒ととしては、勝手にダンジョンに入ることにいい顔をされないというのはわかっている。

 が、学園側も〈勇気クラス〉を真面目に指導するつもりなどないという話だし、初めからいい顔されてないのが一周回ってアルカイックスマイルになるだけなので、別にいいのではないだろうか。


「にぃに、その顔なにー?」


「アルカイックスマイル」


「? 行ってらっしゃーい!」


 チョコの見送りを受け俺は家を出る。

 純粋ゆえのスルーにお兄ちゃん少し涙が出そうだが、これから向かうはダンジョン――戦場だ。

 気持ちを入れ替え近場のダンジョンへと歩を進める。


 これから潜るダンジョンは『日本辺境:0011ダンジョン』というところで、ここを拠点にする冒険者は地元の者以外いやしない。

 基本ダンジョンの中は何処も同じ造りなので、わざわざこんな辺鄙な場所まで来て潜る奴もいないのだ。


 ダンジョン近くの建物――ギルドと呼ばれるものだが、そこに到着した俺は早速受付に向かい預けていた武器を受け取る。

 これは冒険者登録した者であれば誰でも利用できるシステムで、預けておけば何処のギルドからでも自由に取り出せる。

 冒険者登録は学園入学時に済ませているし、これでいよいよ初ダンジョンダイブの準備は整った。


「――じゃ、行きますか、ダンジョン」


 腰に吊るした剣に手を当て、いつでも抜剣できるようにして中へと進む。

 宙に浮かぶ白い渦のようなそれを潜り抜けた先には、第一階層のフィールドである草原が広がっていた。


「情報通りのフィールドだ。ここがダンジョンか……」


 見上げた空にはどういう理屈か太陽のような光点が見え、目の前の草原も終わりが見えないほどに広い。

 正に異次元。

 ダンジョンが地球とは別世界に存在すると言われる所以を、垣間見た気がした。


「……おっと、突っ立ってても仕方ない」


 冷めやらぬ興奮をなんとか抑え、草原に目を凝らす。

 この一階層に出現する魔物は角ウサギ、ゴブリン、スライムだ。

 ここからでもよくよく観察すればぽつぽつとそれらしき個体を散見できる。

 俺はまず小手調べとゴブリンに挑むことに決めた。


「スライムは討伐非推奨だし、角ウサギは殺傷力がゴブリンより強いからなぁ」


 ダンジョンの掃除屋スライムちゃんに、角での突進攻撃がえぐい角ウサギ特攻兵。

 その点一階層のゴブリンは人型であるということ以外、大した武器も持っていない雑兵である。

 初めてダンジョンに潜る初心者はまずゴブリンで生き物を殺す感覚を覚えろ、というのが熟練冒険者総意のアドバイスだ。


 それに従って十数メートル先に見えるゴブリンに狙いを定める。

 彼に恨みはないが、ダンジョンに住まう魔物と人間は相いれない立場にあるのだから、仕方ない。

 それにゴブリンに関しては、やけに女性に対する執着が強い傾向があるしな……特に性的に襲ったりするわけではないらしいが。


 背中を向けるゴブリンにゆっくりと忍び寄り、ある程度まで近づいたところで一気に走り出す。

 草を踏みつける音でゴブリンも振り向くが、既に抜剣は完了している。


「――【剣斬】!!」


 持ち前の≪ギフトスキル≫を発動し、頭に向かって剣を振り下ろす。

 ゴブリンがこちらを振り返った瞬間には、決着はついていた。


「――ふぅっ。初めて生き物に【剣斬】を放ったけど、これはオーバーキルが過ぎるな……グロ」


 転がるゴブリンの亡骸には頭と呼べるものが見当たらず、胴体も中心を境に左右で分かれている。

 もともとゴブリンは武器さえ持っていればスキルなしで殺せる相手でしかないので、【剣斬】使用は明らかな過剰攻撃であると言えるだろう。


 だが無残なゴブリンの亡骸になにか思うわけでもなく、俺はこれからの立ち回りを考えていた。


「ダンジョンの一階層は一般にチュートリアルと言われているし、実際実戦の経験を積むにはちょうどいい。ならこの階層では【剣斬】の使用は控えるか……? 特訓の成果も確かめたいしな」


 幼い頃から冒険者になる決意を固め、≪ギフトスキル≫でどう戦うかも想定できていた俺は幼少より特訓をしていた。

 毎日時間を見つけては剣を振るい、肉体造りにも余念がなかった。

 ≪ギフトホルダー≫に教えをくれてやろうなんて剣の先生は見つからなかったため、特訓は全て独学と研鑽だ。


 その成果を、この一階層で試したい。


 早速新たな目標が見つかってウキウキした気分になる。

 が……


「まずは、初討伐のガチャガチャドロップを貰うか」


 ゴブリンの残した一つの球体を見て、別の意味でウキウキしだす俺であった。

【読んでくださった人へのお願い】


この小説を面白い!と感じてくださいましたら『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に

はーくそつまんな…と感じましたら『☆☆☆☆☆』を『★☆☆☆☆』にでも評価していただけると作者大変うれしいです!


いいね!や感想なども受け付けておりますので、そっちでも貰えたら大歓喜します!


どんな評価でも執筆の励みになりますので、どうかご協力お願いします。

何卒ぉ……m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹さん、可愛いですね。 育成学園の生徒がプライベートで既にダンジョンに入れるのは驚きの設定でしたね。初めて見ましたが、理由があるのはいい事ですね。 [気になる点] ちょっとギャグ風味もある…
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