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唯一無双の現代ダンジョン  作者: 歌歌犬犬
第一章 聖剣解放
18/29

第十八話 新たな力

改稿済(2026/01/12)



 置き物ブロックを倒した。

 一撃だった。


「またなんか聞こえた気がするが……今は先にやることやるか」


 しかし折角の目標達成の喜びも、背後から迫る大群の行進音が気になって冷めてしまう。

 これではゆっくり浸ることもできないと、俺は振り返って後ろを見やった。


「おー……物思いに耽ってるうちに随分増えたな。もしや階層中のゴーレム引き連れてしまったか? ……まぁ、今はこれでちょうどいい」


 視界を埋め尽くすその大軍に、物怖じする心はもう持ち合わせていなかった。

 それは相手がゴーレムだからではなく、何が相手であろうと同じことを言える自信が今の俺にはある。



 人は元来この心をこう呼んだ。



「――【勇気(ブレイブハート)】」



 白銀のオーラがこの身を覆う。

 それは荒れ狂う暴風のように、それは静かなる歌声のように。


 胸の奥から湧き上がるこの力が、俺が手にしたアーティファクトということになるのだろう。

 形もなく、目にも見えないそれを果たしてアーティファクトという分類で括っていいのか定かではないが、今はただ、この勇気と共に戦いたい。


 そんな俺の想いに応えるように、オーラは咆哮を上げるように逆立ち、手に持つ剣が輝きを放つ。


 いつの間にか眼前の大軍はその足を止め、静止した状態でこちらを窺うように立っていた。

 それはまるで岩石でできたゴーレムにも心があるのだと主張するように、俺との間に距離を取っていた。


「……恐怖か? 自慢の身体を以てしても、その内側に宿る心までは守れないのか?」


 意図した俺の挑発に、言葉の意味を理解しているのかと疑いたくなるような動作を見せる。

 動揺。

 今この三階層で大軍に囲まれる男が一人、されど喰らわれる側は果たして俺なのか?

 その答えを求めるように、俺は戦いに身を投じる。



「参る!」



 ――軽く、踏み込んだだけだった。

 だが数秒も経たずうちに俺の剣は百以上のゴーレムを斬り砕いていた。

 密集していたというのも勿論あるが、それにしても凄まじい力だ。


 足を止めた俺に近くのゴーレムが腕を振るう、がまるで動いているように見えない。

 この三階層に降りてから見てきたゴーレムと、明らかに違う。

 再度踏み込めばまたゴーレムであった岩の破片が宙を舞う。

 走り、駆け抜け、剣を振るう。

 ただそれだけで大軍はなにもできずに崩壊していく。


 わかっている。

 ゴーレムが弱くなったわけでも俺の剣術が冴えたわけでもないということは。

 これはただ純粋なる、相手を圧倒する力の押し付けだ。


 だからこそ、俺は嬉しい。


 俺が求める一撃必殺の根幹は、そもそもがその押し付けなのだ。

 単純明快、それでいい。

 俺が求めた力は、そういうものであったのだから。



「これが、【勇気(ブレイブハート)】。新たな力か!」



 そして十分後。

 そこにもはやゴーレムと呼べる魔物は存在しなかった。

 俺がやったのだ。

 俺がすべて斬り砕いたのだ。


 魔石がゴロゴロと転がる辺りの惨状を見渡しながら、とりあえず拾うかと動き出す。

 全部は拾いきれないかもしれないが、時間の許す限り集めようと思う。

 それは俺の中で先程手に入れたこの力について、考える時間が欲しかったからでもあった。


 魔石を拾いながら思案する。

 俺が置き物ブロックを【剣斬】のもと一撃で屠ったのはしっかりと見ていた。

 その数瞬後、なにがドロップするかと考える間もなく光が現れ、それが俺の胸へと吸い込まれたのだ。


「そういえばあの時、なにか声が聞こえた気がするんだけど……気のせいだったか?」


 前にも似たようなことがあった気がするのだが、よく思い出せない。

 きっと思い違いであろうと片付ける。

 それより問題は頭に浮かぶこの力の詳細だ。

 光の球体が胸に入った瞬間、俺の心が熱く灯ったのを感じた。

 精神が強化されたとでも言うべきか、心の在りようが変わったとでも言うべきか。

 思えば先程の挑発もちょっと俺らしくなかった。

 武士っぽいというか、騎士っぽいというか、そんな感じの誇りある精神で満たされていたように思う。

 言葉にするなら「俺は強い!」ではなく「私は強い」みたいな?

 

 あれは戦いに臆さない為の【勇気】の力の一つなのだろうか?


 考えることはまだある。

 本能に従い【勇気(ブレイブハート)】と唱えた瞬間の、あのオーラと漲る力だ。

 オーラに物理的な干渉力はないだろう。

 あれは俺の心を具現化しているだけのように思えるが、果たして意味があるのか?

 漲る力に関しては、直感的なものだがレベルがあがった……ような感じだろうか?

 実際にレベルアップしたというより、それくらいに肉体が強化されたと言いたいわけだが、そもそもまだレベルアップを経験したことのない俺にはよくわからんことでもある。


「あと気になるのはスキルのほうだな……【応答剣(アンサラー)】」


 唱えれば剣が応えるように輝く。

 しかしそれだけのような気もする……?

 先程戦ったときのような力強い感覚は伝わってこなかった。


「ぅん? 【剣斬】……は、やっぱり使えないし、ギフトスキルが進化したってことでいいんだろうが、まだ頭が混乱しててよくわからん。なんだ? 想いに応えるって……?」


 スキルが進化したことに間違いはない。

 そのことはかつてのスキル【剣斬】が使えないことで明らかだ。

 しかし新たなスキル【応答剣(アンサラー)】の情報は「想いに応える」ということのみ。

 それしか頭に浮かんでこないし、なんとなく意味もわかりはするのだが、今はごちゃごちゃしてて頭が回らない。

 

「後回し」


 結論、後回し。

 俺は魔石集めを続行しながら、今一度【勇気(ブレイブハート)】のことを考える。


「……ふふふ」


 純粋に嬉しい、という、それだけなのだが。


 つまり結局のところ、俺は強くなったということだ。

 もちろんレベル一での範囲でだが、今ならレベル二が相手でもなんとかなる気がする。


「そういえばレベルアップはしなかったんだよな。まぁそんな簡単にこんな短期間で上がるもんでもないか……。でも【勇気】もあるし、まだ始まったばかりだけど学園に戻ってもいいかもしれない」


 俺のうちに灯った【勇気】は、なにも唱えずとも俺に強い精神力を齎している。

 これは所謂パッシブスキルのようなものだろうと勝手に解釈しているが、やはりアーティファクトとはなんか違うなとも思う。


「形もなく見せて証明できるもんでもないし、報告はいいか……。いや手の内を隠すのは当然だが、何人かにはいずれ話してもいいかもな。ま、それより今は……っと」


 一旦魔石を集める作業をやめ、集まった()()()()をわくわくした目で見つめる。

 それは丸い飴玉みたいな球体……ガチャドロップ。


「これだけ倒せば一個くらい手に入るかもとは思ってたんだ。それが二個も……! 今日は本当についてる」


 手に入ったガチャドロップは二個。

 まだ探せばあるかもしれないが、正直時間も迫っているし何より飽きた。

 今日のところはこのガチャドロップをガチャガチャドロップに変えたら撤収することにしよう。


「何がでるかな♪ 何がでるかな♪ いざ!」


 まずは一個、ガチャドロップを天に捧げる。

 俺がこの階層で成したことをダンジョンの神が見ていてくれたのなら、きっと良い物をくれるはずだ。

 当たり前だよな!


 そして結果は……


「短剣か……でもなんかギルドの販売所で割と安く売られてるの見たことあるような……きっと気のせいだな」


 得られたそれをこれ以上深く観察するのをやめ、俺はそっとそれをポーチにしまった。


「さて次だ。一回目は俺が自分の力を理解できてなかったのが悪い。あるじゃないか、想いに応えてくれる最高の剣が!」


 じっ、と握った剣を見つめる。

 無茶苦茶言うなとどこかから突っ込みでも入るかと思ったが、ないようなのでいけるみたいだ。

 今こそ俺の想いに応える時だぞ、【応答剣(アンサラー)】ァァァッ!!


 そして天より授け物現る。


「おかしいよこれ。全然俺の想いに応えてくれないんだもんな。やっぱり慣れるまで時間が必要か」


 手にしたものは腰当てだった。

 騎士シリーズでこそないものの、幸いなのかなんなのか、色合いは兜やマントと同じだ。

 しかしそこを揃えるならもう騎士シリーズくれよと言いたい、切に。


 ガチャ結果がなんとも微妙なものだったことを自らのギフトスキルに愚痴りながら、俺はダンジョンの外を目指し歩き出した。



◆◇◆◇◆



 ダンジョンの外は夕刻といったところ。

 これなら今日は家族に怒られることもないだろうと、安心してギルドの受付を目指す。

 まずは手に入れた大量の魔石を売るつもりだ。

 この小さなギルドで対応できるのかは知らないが、今の俺には霊蓮という頼もしい知り合いがいる。

 問題ない。

 

 短剣と腰当ては自分で使うことにしよう。

 短剣を手放さないのは何かあった時の保険であって、売値を知るのが怖いからではないと、念のため言っておく。

 言っておく。


「瑠璃桜ー。魔石買い取ってくれー。無理なら霊蓮に回してくれー」

「舐めないでください。三階層の魔石程度、いくらでも買い取る予算がここにもあります。……で、如何ほどですか?」

「声震えてんじゃねーか。無理すんなよ……」


 少し罪悪感を感じながら取ってきた魔石をゴロゴロと取り出す。

 俺も適当に拾ってたし、考え事もしてたせいで何個とかはわからん。


 小さな受付前が魔石の山で埋まるころには瑠璃桜の姿はなかった。

 何処に行ったのだろうと探せばその手に大きな箱を持って戻ってくるところのようだ。


「なんそれ?」

「魔石計測器です。今回みたいに大量の魔石を持ち帰る冒険者は特段珍しくないんですよ? マジックバックなんかのアイテムもありますからね。ふふふ、残念でした」

「なにが残念なのか知らないが……めっちゃ埃被ってないかそれ? 今までに何回使われたんだよ?」

「さ、作業に取り掛かりましょう。手伝いなさい」

「無視する上に俺にも手伝えと……ま、いいけど」


 くだらないやり取りをしながら魔石をその箱に入れると、なんとマジックバックと同じように大量に入るようであっという間に収納は完了した。


「おー。で、結果はどうなんだ?」

「三階層、ゴーレムの魔石が252個で75600円ですね。なんだ楽勝じゃないですか。浅い階層の魔石は安いのに、緊張して損しました。今度和菓子持ってきなさい」

「学生の俺からすればこれでも大金だけどな。和菓子は持ってこない」


 これで一先ずの要件は終わり、俺も家族に怒られないうちに帰ろうと歩き出す。

 だがギルドを出る直前になってふと思い出す。

 そういえば霊蓮に不破ちゃんと今は会いたくないとお願いをしていたな、と。

 今朝お願いしたばかりで悪いのだが、あれもういいだろう。

 勇気に後押しされてるのもそうだが、俺もいつまでも彼女の影に囚われてもいられないと気付いた。


 やりたいことが、見つかったからな。


「瑠璃桜。伝言頼んでいいか? 霊蓮に」

「なんです? 和菓子を持ってきてくれない宿敵さん」

「わかった今度持ってくる。いや、一日経たずで撤回して悪いんだけど、もう不破ちゃんどうこうは気にしないでくれ。それだけだ」

「……それは、つまり」

「俺も自分のやりたいこと思い出してさ。じゃあ頼んだぞー」


 まさか今日一日で目標達成するとは思っていなかっただろう瑠璃桜が目をパチクリするが、構わず今度こそギルドを出た。


 さぁて、帰ったら今後の計画でも立てますか。

【読んでくださった人へのお願い】


この小説を面白い!と感じてくださいましたら『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に

はーくそつまんな…と感じましたら『☆☆☆☆☆』を『★☆☆☆☆』にでも評価していただけると作者大変うれしいです!


いいね!や感想なども受け付けておりますので、そっちでも貰えたら大歓喜します!


どんな評価でも執筆の励みになりますので、どうかご協力お願いします。

何卒ぉ……m(_ _)m

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