第十七話 独白
改稿済(2026/01/10)
三階層。
以前不破ちゃんの配信でチラと触れたが、ここはゴーレム系統の魔物が出現する階層だ。
ゴーレムの特徴はとにかく硬く、一撃が重たいこと。
しかし岩石で造られたその体は緩慢な動きしかできず、また関節を上手く狙えばその自重で自壊させるなんてことも可能。
……まぁ、そこまでのことができるのは相当な腕を持った熟練だけだが。
ともあれ、この階層では必要なある能力が満たされていれば、難なく進むことができたりする。
いやむしろその能力を満たさずして挑むべき階層ではないのかも、というほどだ。
そのある能力とは即ち、火力だ。
階層によってゴーレムも強度は変わるが、この三階層に出現するゴーレムはある二個体を除いて皆同じ。
一体でも倒せるなら「何匹来ようと同じことだ……」を現実に再現できたりするある種の男の夢を叶えるための階層ともいう。
なお言っているのは一部の層だけだとも言っておく。
まぁ最初のうちは楽しめるから、飽きたら次の階層に進むのがオススメだぞ!
オススメ☆DA☆ZO☆!
「飽きた」
オススメの忠告を無視して三階層に留まった結果、俺、無事飽きる。
単純な作業となりつつある三階層で、流石に無理があったようだ。
いや、考えても見て欲しい。
ここ三階層のゴーレムは二階層のゴブリンと違って碌な動きをしやしない。
ただその身体の防御力を当てにしてブンブン腕を振り回すだけ、しかもそれが遅い。
彼ら自慢の防御力を突破できる火力持ちなら、ここの魔物を狩るのなんて案山子を斬るより楽かもしれない。
俺はそんな作業を繰り返すだけの階層で、レアモンスターという極めて見つけにくい個体を、見つけるまで永遠と探し続けなければならないのだ。
これを苦行と言わずなんと言う……。
「少し楽しいことでもしてみるか」
暇な時間は人をダメにする。
そのいい例を自らで証明でもするように、俺はゴーレムのトレインを始めた。
「ははは。見よ、これが俺のゴーレム軍団ぞ」
一言でいえば、しょーもなかった。
足の遅いゴーレムの特性を利用して、敢えて倒さず背後にゴーレムを従えていく。
いや決して従えているわけではないし、他に人がいるダンジョンでこんなことやったら即お縄行きなのだが、悲しいのか喜ばしいのかここに誰もいないのはギルドで確認済みだった。
もはや倒す手間も面倒になった俺はそのまま探索を再開する。
後ろにどんどんゴーレムが増えていくが、どうせ追いつくなんてできない鈍足な彼(?)らだ、構う必要もあるまい。
一つ欠点があるとすれば大群の行進で地響きがうるさいことくらいだが、これはこれで強者感があって俺は嫌いじゃなかった。
「この軍団をドラゴンと戦わせてみたいなー。きっとドラゴンのかっこいい蹂躙劇が見られるぞぉ」
どんどん大きくなる地響きで自分でも聞こえない独り言を呟き、この場に似合わぬ鼻歌も歌う。
もちろんそれも後ろのドドドドド……という行進の音で聞こえやしないのだが、今の俺には気にならなかった。
それからしばしの時間、俺は後ろのゴーレムと歩調を合わせた、ゆっくりとした散歩を楽しんだ。
散歩をしながら置き物ブロックを探しつつ、三階層を適当に歩き回る。
なにも楽しい要素なんかないはずなのに、俺は何処かこの時間が好きだった。
「……宝を求めダンジョンを歩き回る、か……これも冒険、冒険なんだよな」
ふと自分で呟いた言葉に、俺ははたと自覚する。
――俺は冒険者になったんだ
それは思えば嬉しいことで、幼少の頃より想い続けた夢が脳裏に浮かんだ。
俺が憧れたあの勇者は、今頃どこで何をしているのだろうか――……
◆~かつての記憶~◆
俺は生まれながらのスキル持ち、俗にいう『ギフトホルダー』らしかった。
その事実は今でこそ長所として受け入れているが、あの頃……俺がまだ幼かった頃には、聞いたとき大きなショックを受けたのを今でも覚えている。
「どうして僕は『ギフトホルダー』なの……? 生まれ持ったスキルってなに? 神様からの贈り物ってなに!? みんなダンジョンに行けばもっといっぱいスキル貰えるのに、生まれたときの一個だけなんてそんなの、神様から嫌われてるだけじゃないかっ!」
世間で『ギフトホルダー』がどう見られているかも知っていた俺は、そんな他所の目もあって自分のことが大嫌いだった。
冒険者になりたかった。
冒険者に憧れていた。
物語のような冒険をしたかった。
そんな幼い故の憧れは、自分の中の劣等感に無理だと全否定された。
当時の世間の風潮から見ても、それは納得するしかない現実だったのだ。
――しかしそんな幼き俺の心に転機が訪れる。
ある日の夜、子供たちは寝静まる時間に俺は、小さな端末でダンジョン配信を見ていた。
俺が自分を無価値だ無能だと嘆いていた頃なので、両親も幼き妹ですらも、俺の前でダンジョンの話は出さなかったのに、だ。
憧れ故だった。
いくら自分で自分を認められなくても、俺は冒険が好きで、冒険者が好きだった。
その想いだけは自分の劣等感などでは否定できず、俺は長らく我慢していたダンジョン配信を見始めたのだ。
いや、俺の感覚では長かったが、実際はそんなに我慢できていなかったのかもしれない。
しかし見始めたところでそれは自分の劣等感を自覚する燃料になるだけ……そのはずだった。
『エェクスカリバァァァァッ!!』
輝いていた。
全身を白銀の鎧で覆ったその冒険者は、その立ち姿も、手に持つ剣も、纏うオーラでさえも、なにもかもが輝いて見えた。
「……勇者だぁ」
この日、俺は勇者ケンジという存在を知った。
翌日から俺は木の枝を振り回し始めた。
それは子供のチャンバラなどではなく、頭に焼き付いて離れない勇者の剣を夢想して。
周りの大人たちはそんな俺を哀れんだ目で見ていた。
きっと未練がどうしても取り除けないのだろうとでも思っていたに違いない。
確かに冒険者という憧れは消えず、むしろ俺の中では前より熱く燃え滾っていた。
しかしそれは決して、決して未練などという言葉で表していい熱ではなかった。
俺が見た勇者は、本物の勇者だ。
この世には勇者がいて、物語が存在するのだと知った。
いずれ魔王を倒すその瞬間も、必ず訪れるに違いないのだ、と。
魔王なんて知らない、いるかもわからない。
でもそのときの俺は、自分も物語の舞台に立つんだという気持ちで一杯だった。
未練などではない。
それを俺は「夢」と呼ぶ。
◆◇◆◇◆
「……夢を追い続けて、こんなところで一人歩いてる。これが俺の夢を追う正しき道であるのだと、あんたなら認めてくれるかな、勇者ケンジ……」
かつての記憶を呼び起こし、勇者という憧れを夢想した。
俺は自らが『ギフトホルダー』である事実など、正直なところどうでもよかった。
そうであってもなくても、どの道俺はこの道を進んでいたに違いないと、今ならはっきり言えるから。
冒険者に憧れて、ダンジョンに憑りつかれて、勇者に夢想したあの瞬間が存在する限り、俺はどこからでもこの道に戻ってくる。
「……あんたがいたからだよ、勇者ケンジ。今何処でなにしてるか知らないが、俺はいつかあんたも追い抜くぞ」
自分が認めた存在を追い抜く。
それも確かな冒険の軌跡となるだろうと、夢想して。
抜剣。
気付けば眼前には探し求めていたレアモンスターが鎮座している。
ダンジョンの意思か、それとも勇者が認めてくれた証なのか、それはわからない。
ただ今の俺にはこれに出会えた喜びよりも、これから刻む己の冒険を見せてやりたい気持ちで一杯だった。
誰あろう、勇者ケンジに。
背後からは未だゴーレムの大軍が俺を潰さんと迫り来ているが、構わず剣を構える。
「一撃だ」
己の誇る、最強の一撃で斬る。
遅くとも確かに近づく背後の地響きを耳で捉えながらも、心に揺らぎは存在しない。
それは自分のギフトスキルに自信があるからか?
それは不破ちゃんという前例を知っているからか?
否。
勇者ケンジという本物が紡ぐ物語に、夢想しているからだ。
「【剣斬】」
あの日見た勇者の一撃を想起して、剣を振るった。
【……三階層番兵『宝物守護像』の討伐を確認】
【……『ギフト』による一撃討伐と判明】
【……宝物殿から対象に古代遺物【勇気】を贈呈します】
【……【勇気】と対象の『ギフト』との適応を確認】
【ギフト【剣斬】を【応答剣】へと昇華します】
【条件達成】
【――【聖剣】スキルを解放します――】
【読んでくださった人へのお願い】
この小説を面白い!と感じてくださいましたら『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に
はーくそつまんな…と感じましたら『☆☆☆☆☆』を『★☆☆☆☆』にでも評価していただけると作者大変うれしいです!
いいね!や感想なども受け付けておりますので、そっちでも貰えたら大歓喜します!
どんな評価でも執筆の励みになりますので、どうかご協力お願いします。
何卒ぉ……m(_ _)m




