第十五話 どこからどう見ても
改稿済(2026/01/09)
またもや不破ちゃんに感化された俺はダンジョンを目指して走り出す。
三階層だ。
まずは三階層でレアモンスター置き物ブロックを討伐する。
そこで俺もアーティファクトを手に入れられるようなら最高、だがもし手に入らなかったら?
「……その時は順当な道を歩むしかない、か? 順当な道を進んで俺は何になる? いったい何になれる……」
わかっている、これは焦りだ。
焦りからくる否定的な思考のはずなのだ。
ただそれでも。
漠然と、持ってるこのギフトスキルを進化させていけば勇者の一撃に届くのではないかと、そんな浅い目線で夢を追ってはいなかったか……?
自問すればするほど、俺は俺の歩き方に疑問を抱き始める。
不破ちゃんを見ていて俺のこれは違うのではないかと思い始めたのだ。
俺の在り方は決定的に、なにかが足りないんじゃないかって。
ギフトスキルを進化させる?
【剣斬】を進化させれば強力な一撃を放てるようになる?
そうだな、それはきっと順当に強力な一撃となることだろう。
だが俺がギフトスキルを進化させるのは『ギフトホルダー』として当たり前の道、つまりは普通のことだ。
「普通の先にある勇者、か。話題性はありそうだが、そりゃなんだかな」
なんだか俺の想う勇者とは違うと断言できる。
勇者には波乱万丈の過去が必要だとか思ってるわけじゃないが、俺はこと一撃に関しては拘るほうだ。
というか勇者が普通なことよりも、かっこいい一撃を放ったのに普通の勇者と思われることのほうが納得いかないだろう。
「結局一撃だよな。アーティファクトだろうがなんだろうが、俺の一撃を高められる要素を全部集めてから、俺は勇者と呼ばれたい」
ギフトスキルの【剣斬】を進化させるのは当たり前の大前提、そこに足すなにかを手に入れるのが今後の目標になりそうだ。
そういったアイテムを手に入れるにはやっぱりアーティファクトやガチャガチャドロップに頼るしか浮かばないが……そうそう手に入るもんでもないからなぁ。
「……まずは三階層で置き物ブロックに期待だな。それ次第では今後の動き方も変わるかもしれん……」
そうこう言ってるうちにダンジョン近くのギルドまでやってきた。
さっさと装備取り出して三階層目指すか、と小さなギルドの扉を開ける。
するといつもは閑散としているギルド内に、受付嬢以外の人物が一人いた。
「珍しいな……ていうかあんな子供この町に住んでたか?」
俺の目線の先では白髪の幼女が大きなリュックの側で茶を飲んでいた。
なにやら名も知らぬあの受付嬢と仲良さげに話しているが、あいつあんな幼子を連れてきて話し相手にするとか正直見損なったぞ。
そんな俺の軽蔑の視線に気付いた受付嬢は……あいつ鼻で笑いやがったぞ、許せん。
せっかく和菓子持ってきてやったのに、もう幼女のほうに渡すからな。
「いつもこうやって暇潰ししてるのか? みっともないぞ。あと装備の取り出し頼む」
近づきながらさっさと用件を伝える。
装備を取り出したら俺はダンジョン三階層でレアモンスターを探さなきゃならんのだ。
あと名も知らぬ幼女よ、これあげる。
この辺境の町で割と人気の高い和菓子屋の特製たい焼きだ。
シンプル餡子に抹茶餡子の二パターンを楽しめるぞ。
「あなたこそいつもそうやって幼女を誑かしているんですか? 変態ですね通報します」
「ばーか。こいつはただの在庫処理だ。大体今時こんなあからさまな手口に引っかかる子供が何処に――」
「ねぇお兄ちゃん! もっとちょーだい! 私ね、ゆーえんち行きたい! 連れてって!」
「まじかよ俺このまま捕まるのか? おい待て通報するな俺は無実だって!」
「あーはいはい。いつかやると思ってました」
「犯人の同級生が言う定番台詞ヤメロ! 大体俺はまだ学生だっての!」
くそ、こいつまじで携帯端末いじってやがる。
冗談だとは思うがこの状況は笑えないぜ。
早いとここの幼女を親御さんの下に送り返さないと……
「……ぷっ。ぬわっはははは! いやーおもろい反応するなぁニーサン! ウチ気に入ったで! 合格やわ! ケラケラケラ!」
「……え?」
よ、幼女が……喋った⁉
いや混乱しているな、幼女はもともと喋る生き物だ。
しかしこの流暢な喋り方、全然幼女って感じがしないんだが。
それにさっきから気になってはいたけどこの幼女の飲んでる茶、めちゃくちゃ渋いやつだな?
「お前本当に幼女なのか……?」
「見た通りやでー。ウチがボンキュッボンのお姉さんに見えるかいな? どこからどう見てもロリの姿したお姉さんやろがい」
「いやどこからどう見てもただの幼女だよ外見は。しかしそうか、小人族ってやつか? それにそのリュック、もしやあんたがここに来てるっていう買取屋か?」
名も知らぬ受付嬢から機会があればお願いするとは聞いていたが、まさか昨日の今日でその機会がやってくるとは。
この買取屋と契約してる冒険者がよっぽどダンジョン攻略に精を出しているのだろう。
おこぼれで魔石を買い取ってもらう立場としてはその冒険者にも感謝だな。
……そういえばその冒険者ってまさかとは思うんだがメグル……いやいやまさかな、まさかまさか。
「メグルぽんの姐さんたちから話は聞いとるでー、宿敵くん。ホンマに不破たんと歳変わらへんのなぁ。ケラケラケラ」
はいやっぱりメグルぽんですよね知ってたよネタバレありがとうございます。
そりゃここで不破ちゃんと出会ったんだからその可能性が一番高いとは思ってたよ。
でもそうか、俺もここを利用してたらいつかまた出くわすことになるのか……。
「……あんたメグルぽんの買取屋なんだよな? ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「魔石の件やろー? ええでええで、守護者の魔石だったら喜んで買い取らせてもらうわ」
「いや、それもなんだが……」
「?」
言い出しといてなんだが、やっぱり話すの恥ずかしいな……。
いや、俺のくだらないプライドの話だからなんかこう……ええいっ、漢は度胸!
「メグルぽんに、不破ちゃんいるだろ? 今はまだ彼女とは会いたくないんだ。だから俺のことは伏せておいてくれないか……頼む!」
そう言って俺は幼女に頭を下げた。
受付の方からパシャパシャ音がするがあいつは後でしばくとして。
今はこの買取屋に俺のくだらない頼みを聞いてもらえるかどうかだ。
頭を下げながらチラとその買取屋を見れば、きょとんとした顔で首を傾げていた。
まぁ宿敵なんて呼ばれてるのにこんな逃げるような真似、聞いてた話と大分違うと思われるのも仕方のないことだ……。
「ほーん。理由聞いてもええ? 不破たんがちょっとアブナイ空気持ってる子なんは知っとるけど、それと関係あるん?」
「いや、彼女がアブナイ空気持ってるのは否定しないけど、それは関係ない。……ただ……次に会った時に失望されたくないというか、むしろ実力に差をつけてぎゃふんと言わせてやりたいというか……ごにょごにょ……」
なんだか自分でも言っててわかんなくなってきたな。
俺はただ、今の不破ちゃんに会ってももう前みたいに対等の関係ではいられないんじゃないかと、それがただただ嫌なだけなんだ。
多分俺は彼女に認められたいんじゃない、彼女と認め合える仲に、なりたんだ。
「……そうだな。俺は不破ちゃんという人間の宿敵であり続けたい。どっちか一方が認めるのではなく、互いに認め合える関係でありたいんだと思う」
言葉に出して納得した。
俺はなんだかんだ言って不破ちゃんの隣で戦えるような、そんな冒険者になりたいんだ。
「……くっ。ぬははははは! なんやただ惚れた女に嫌われたない男の我儘かいな! ええでええで! ウチそういうの大好物やねん! 協力したるわ! ケラケラケラ」
「いや別に惚れたってわけじゃないんだが……まぁでも、協力してくれるならありがたいよ。ありがとう……っと、名前聞いてなかったな」
「霊蓮や。小人族の霊蓮。よろしゅうなぁ宿敵のおニーサン」
「アイスだ。こちらこそよろしく頼むよ、霊蓮」
互いに名乗り合った俺たちは、その場で固い握手を交わした。
きっとこの霊蓮とは長い付き合いになる、そんな予感がした。
「こほん。私の存在忘れてませんかお二方」
「「あ」」
そういえばここ受付の真ん前だった。
霊蓮がここで茶を飲んでたからなんも感じず話し込んでしまったよ。
受付で眠たそうな顔をする名も知らぬ彼女は、白けた目で俺たち……というか俺を見ている。
なんで俺限定でそんな目を送ってくるのか甚だ疑問だが、受付前で関係ない話を持ち出したのも事実。
だが俺はこいつに素直に謝りたくない。
ていうかさっき俺が幼女に頭下げてるの盗み撮った写真消せよゴラ。
「はんっ。眠たそうな顔してるから居眠りでもしてるんだと思ってたぜ。あと装備の取り出しよろしく」
「はんっ。対象の状態も満足に見極められない盲目眼で冒険者なんて続けないことです。あと装備はいつものをもう取り出してそこに置いてあります」
「「………!」」
バチバチ……と擬音でもつけたくなるような、そんな空気。
「「はんっ!」」
やっぱり俺はこいつとは馬が合わないんだ。
それを再認識した。
「いやなんでそない仲悪いねん。バチバチやんかあんたら」
俺と受付嬢の会話を聞いた霊蓮が苦笑いしながら突っ込む。
しかしなんでと聞かれてもそれはなんとなく合わないんだとしか言い様がない。
こればっかりはもう神様がそういう風に決めたと思って諦めて欲しい。
「そんなことより霊蓮さん。丁度三人揃っていることですし件の魔石の話をしませんか?」
「そうだぞ霊蓮。もっと建設的な話をしよう」
「こういうときだけ呼吸合わせおってからに……しゃーないなー。ほなら商談の時間といこか。アイスはんが持ってきた魔石、ウチは六十万で買い取るで」
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