第十三話 戦いの後の
改稿済(2026/01/06)
◆side小さなギルドの受付嬢◆
「まったく、最近はこのギルドも騒がしくなったものです……」
今対応していた冒険者、白銀の兜のその少年がギルドから去っていくのを確かめて、やっと一息つく。
少年がやってくるのはまだ二回目です。
だというに、もう面倒くさい実績を立てたようで、まったくなによりなことですね、はんっ。
「さてこの魔石……あの買取屋さんに見せたら絶対あの人たちにも伝わるんでしょうね……」
ここに出張してきている買取屋さんは、本来この小さなギルドでは扱えない代物を代理で買って、別の大きなギルドで卸す許可を持っている人です。
そういう人たちは大体高名な冒険者チームと顔見知りであることが多く。
何故なら大して実力のない冒険者でしたら、小さなギルドでも事足りるから商売相手にならないんです。
でもここに出張してきた買取屋さんは、思惑が外れて最近悩んでいるようですね。
ここを拠点に活動し始めた冒険者チームメグルぽんは、高名ではあれど若手の育成と言って深い階層に潜りませんから。
「まぁ、その分この小さなギルドは儲かるわけですけど」
「ほならウチは出番くるまで茶でも啜ってよか」
やることやったしまた眠ろうかと思えば、早速カウンターの下から顔を出す者が一人。
「……あなたが来てもパートナーがいないのでは? 買取屋さん」
私のその言葉に件の買取屋はケラケラと笑うと、背中に背負うその大きなマジックバックをよっせと降ろします。
この子がここに来た高名な冒険者……メグルぽんと契約した件の買取屋、小人族の霊蓮さんです。
合法ロリとか言って近づく輩は漏れなく無一文にされて捨てられます、ざまぁです。
「いやな、メグルぽんの姐さんたちはまだお休み中なんやけど、そなこと言ったって暇やんこの町。話し相手いないとウチ死んでまうで」
「寂しいと死んじゃう兎かなにかですかあなたは? それに話すと隙あらば毟り取ろうとするくせによく言います」
「それはもうウチの性分やでな、堪忍してや~。ケラケラ」
その小さな身体でカウンターに乗り上げながら笑う霊蓮さん。
ケラケラでもこの小さな女の子が笑うと可愛らしく見えて羨ましいことです……。
私なんてさっきの少年に「如何にもな不健康顔」って絶対思われてますよ……はんっ、別にどうでもいいですけどね。
「それになぁ……疼くんよ、ウチの商売魂が。なぁあるんやろ? 暇も暇、赤字も赤字の可哀そうなおにゃのこにそのネタ恵んだってやぁ~。頼むぅ!」
「はぁ……相変わらず勘の鋭いことです」
急に眼の色を変えて話し出したと思えばコレですか。
やっぱり暇で来たんじゃなくて金の匂いがして来たんですね。
まぁ今回はもともと頼むつもりでしたし、こちらとしても願ったり叶ったりですけど。
「少し大きな案件になるので時間かかりますけど大丈夫ですか? もう夜遅いんですからあなた通報されますよ」
「サツがなんぼのもんじゃいっ! こちとら金も稼げる立派な大人、誰にも商談の邪魔はさせへん!」
私はその商談の後のことを言ってるんですが……帰り道送ってあげましょうかね。
「それじゃまずは現物を見てもらいましょう」
そう言って少年の置いていったもの……守護者の魔石をカウンターに乗せます。
大きさは掌に乗るくらいですけど、十階層以降で取れる一般の魔石よりよっぽど価値のある代物です。
最初ウキウキ笑って待っていた霊蓮さんも、これを見るとその糸目を薄っすらと開き刮目します。
「守護者の魔石やなぁ……まさかここでもう見ることになるとは思わんかったで。メグルぽんちゃうんやろ? てことは噂の騎士くんでも現れたかいな? 大物みたいやなぁ彼。ケラケラ」
「相変わらずの分析力ですね……。個人の情報は伏せますが、違法じゃないのは確認済みです。討伐者の証も見せて貰いました。二階層の守護者ですから純度も大きさも低めですけど、三十万は貰えますよね?」
魔石一つで三十万なんてびっくりな値段ですけど、それだけ守護者の魔石には価値があって、それに反比例して供給は少ないんです。
十層以降の守護者の魔石がオークションにでも出されれば、百万は軽く超えるんですからこれでも安いほうなんですよ。
まぁ、二階層なんて浅い階層のものじゃこの辺りが限界でしょうけど……
「いやいや、そりゃあかん。これに三十万なんてありえへんで」
「え? ……ちょっと、相手と契約結んでいないからと暴利を貪る気ですか?」
それは受付嬢としても、少年から個人的に請け負った業務としても許すことはできないんですけど……。
「ちょちょちょ!? 待って待って!? 誤解やからその殺気堪忍してやぁ! ちゃんと説明するかいな!」
「ん……誤解なんですか? 暴利を貪って私の誇りを侮辱する気ではないんですね?」
「ウチまじでここに墓建てる気なんかないで……おほん! まぁ結論から言うとな、これ……もっと価値あるで」
◆◇◆◇◆
「おはよー」
「おはようにぃに!」
「おはようアイス。ご飯早く食べちゃって」
「ういー」
朝。
昨日は守護者との激闘もあってぐっすりだった。
ギルドに寄ったあと帰ったら母さんもチョコも大層ご立腹で、ご機嫌取りの和菓子を食べながら叱られるという本末転倒な結果にも……。
やっぱり日が暮れる前には帰れるように努力しようと思います。
因みに父さんが帰宅後にご機嫌取りが上手くいかないことを話したら、「俺も通った道だ、道なんだよ……」と、何処かで聞いたような台詞のあと、「ご機嫌取りは説教を逃れるための行為じゃないってこったな」と前何処かで聞いたときには続かなかった助言をちゃんとくれた。
こういうとこだぞ吉沢ァ!
まぁ、怒られることは覚悟して受け入れろってことか。
心配かけたことに違いはないんだから仕方ないんだろうね。
だってダンジョン探索は文字通り命懸けなんだから。
「にぃにー、今日もダンジョン行くのー?」
朝食を食べる俺の横でミルクを飲むチョコが、見上げる形で聞いて来た。
これは上目遣い……いいな……。
「うんうん、チョコは可愛いな~。世界一だ!」
「お母さーん! 今日のお弁当なにー?」
「あぁ、待ってくれチョコ。ダンジョンな、ダンジョンの話が聞きたいんだな。とびっきりのやつを話してやるから戻っておいで!」
最近我が妹のスルー能力が高まってきた気がするんだが、親父、どうすればいいんだ。
また帰ってきたら聞いてみよう。
チョコがミルクのおかわりと共に戻ってきたので改めて。
「今日もダンジョンに潜るんだがなぁ、その前にちょっと予習をする」
「予習? にぃに今までいっぱい予習してきてたよね? 予習っていうか復讐するの? いつかお前をコロスんだよぉ……」
「うん、復習の文字が違うな。チョコお前なんの映画見た? あんまり夜更かししちゃダメだぞ」
「はーい! ククク、こんな時間まで起きてなければ苦しまずに済んだものをぉ……グサァ……」
うむ、返事はしっかりしたものだが、お茶目なところもある我が妹だからな。
あんまり遅くなるようならまたその時注意しよう。
……ところでなんの映画を見たのかお兄ちゃん本当に気になるんだが、教えてくれない?
あ、ダメ?
そっかぁ……今度親衛隊の娘たちから情報収集しよ。
「ま、ダンジョン三階層なんて確かにいっぱい予習済みだが、今回は新しい情報を確認するんだよ。例えば……置き物ブロックを一撃で倒す瞬間、とかね」
俺がそのワードを出すだけでチョコはアホ毛をピンと立たせて凝視してくる。
「ん! それって不破ちゃんの配信!? 一緒に見るー!」
どうやらいつの間にか我が妹は我が宿敵のファンになってしまったようだ。
ちょっと寂しい気持ちもあるが、俺の正体に気付いたときの反応が楽しみでもある。
しかし……
「ダメよチョコ。あなたもう学校行く時間でしょ? 早くしないと咲ちゃんたちもう来ちゃうわよ!」
「咲ちゃん! う~配信は帰ったら見る! 行ってきまーす!」
「気を付けて行くんだぞー!」
「はーい!」
チョコが学校に行く時間である。
登校前に楽しそうな話出したのは悪いことしたかな?
まぁチョコなら学校でも満喫して帰ってくるか。
「さて、と。俺もちゃっちゃと予習しちゃいますかね」
ダンジョン三階層、ゴーレム系統の出現する場所でレアモンスターと認識される置き物ブロック。
それをどのようにして一撃で仕留めたのか、更にそのドロップの瞬間は?
前例があるとなれば見ないわけにもいくまいと、俺は部屋に戻り不破ちゃんの配信画面を開いた。
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