天空からのお告げ
ヨルムンガンド様とリヴァイアサン様を案内し終えて、少し安心していると、
「魔王ちゃん。一緒に少し話できるかな?」
と声をかけられた。
「はい。もちろんです。インノミナンドゥム様。」
この方は、気生藻の一種の雲海藻と呼ばれる生物種に含まれる方である。
一見すると凄まじく大きく育った藻が絡まったような外見である。
世界で一番大きい雲には、この方が中に住んでいらっしゃるらしい。
「魔王ちゃん。半年ぐらい前に、人間界の近くに狩りに行かなかった?」
「はい。五ヶ月ほど前に、鷲狩りに。」
なぜ最近狩りに行ったことがわかったのだろう?
インノミナンドゥム様は雨の日には雨雲で、晴れている日には時々見ることがある、細長い雲を世界中に張り巡らし、この星の全て出来事を常に見ているという噂があるのだが、本当だったのだろうか。
「いや、実はね。。」
なんだろうか。僕はその時の鷲狩りでの出来事を思い出していたが、さしてまずいことをしてしまった記憶はない。
「人間界の比較的近くで虹引鷲に信号を送った時があったでしょう。」
「やあやあ。魔王君に、インノミさん。虹引鷲がどうしたって?」
いきなり後ろから話しかけてきたのは鳳凰様だ。
この方があの伝説の鳥か、と一目でわかるような風格をしている。
虹引鷲は鳳凰様がくださった、通ったところに虹がかかる世にも奇妙な鳥なのだ。
「鳳凰さん。こんにちは。実はですね、この前魔王君が人間界の近くに鷲狩りに行ったのですよ。」
「ほう。」
「そしたら、虹引鷲が人間界の城壁の近くまで行ってしまったので、彼は呼び戻しの信号を出したんですよ。」
「ああ、城壁ってあれか、魔物から人間界を守るための壁ね。」
ここでいう信号というのはテレパシーとかいうめんどくさいものではない。もっと単純な方法である。
鷲さんに行ってもらいたい方向に出す微小な魔力のである。
「そしたら、信号を出した瞬間、城壁の周りを守っていた、周辺のゴーレムが全部壊れてしまってね。本人が気づいているかどうか聞きたくてね。」
えぇ?それはないはずである。魔力は微弱だったはずだ。
いくら全世界を見渡しているからと言っても、それは何か別の要因との見間違いに違いない。
「インノミナンドゥム様。それは何か別の要因との見間違いではないでしょうか。」
「いや、それはないね。確実に君の魔力が発した刹那起こったことだからね。」
「それはないです。鳳凰様。お助けください。」
「。。。魔王君。ここに抜けそうな羽があるんだが、そのあたりにその時の信号を放ってくれないか?」
えぇ。会場でそんなことしていいのか戸惑うが仕方がない。
「はい。」
周りの邪魔にならないよう、そっと放つ。
シュッ
鳳凰様の体から、一枚の羽が落ちた。
「つまりそういうこと。わかったかね?」
鳳凰様はそういうが、僕にはまだよく分からない。。
「魔王ちゃん。よく分かってなさそうなので、説明しますけど、鳳凰様の羽は特に抜け落ちないことで有名なのですよ。」
「なんかそれ、立毛筋だけが取り柄みたいな言い方やな。」
「つまり、あなたのただの信号は、かなり魔力が強いのですよ。」
「でも、ここにいらっしゃる皆様方は先程の魔力放出に気づいていませんでしたがそれは?」
「それは、皆さんが強すぎるのでさきほどの魔力の放出にも全く気にかけていないからです。」
「そうなのですね。」
「なので、次に人間界の近くに行く時は気をつけてくださいね。」
「承知しました。今度から気をつけます。」
なんとか、事実を飲み込むことはできたが、いまいち、まだよく理解できなかった。今度外出するときに周辺の魔物と魔力をもっと綿密に比較してみよう。