少女は語る
思い切り扉をぶつけてしまうっていう最悪な出会い方をしてしまったお隣さんから突然お願いされたのは、
「アタシのサポートをしてくれませんかっ!」
という、全く意味がわからないことだった。
「サポート?ってなんですか?そもそも、初対面であなたのことを何も知らないですし……僕高2ですよ?」
「あっ……そう、ですよねっ。なんの説明もなくいきなり言われても意味がわからないですよねっ」
彼女は、ようやく冷静さを取り戻したみたいだ。
そして、僕にそんな突拍子もないことを言った理由を話し始める。
「アタシ、こう見えてもアイドルやっててっ!まだ駆け出しなんですけど、最近は時々テレビにも出られるようになってっ」
そう言われてよく顔を見て見ると、とんでもないことがわかってしまった。
「えっ、もしかして『Starlight』の天城星乃さん……?」
初対面だと思っていた相手は、僕が密かに推しているアイドルだった。
えっ、どうしよう。
「アタシのこと知ってくれてるんですかっ!!」
「えーっと……知ってるっていうか、推してるっていうか……」
「そうなんですかっ!!嬉しいですっ!!」
そう言って笑顔でこちらを見てる星乃さんのことを、僕は直視できなかった。
なので、顔を逸らすというなんとも失礼な体勢のまま、話を続ける。
「それで、そんな星乃さんがなんでサポート?のお願いを、しかも初対面の僕に?」
「それには、深い理由が……あるわけじゃないんですけど」
「ないのかよっ!」
「とても優しそうだな、って思ったのと、年齢が近そうだったので一緒に楽しくやっていけそうな気がしたんですっ!」
「近そうも何も星乃さんも高2だったら同い年ですよね?」
「本当だっ!!えへへっ、同い年だったらより頼りやすいですっ!!私の周りのスタッフさんはみんな年上だから、中々馴染めなくって……だから、今まで寮にみんなといたんですけど、事務所の社長さんになんとかお願いしてオートロックでセキュリティがしっかりしてるこのアパートを借りてもらったんですっ!」
「なるほど、事情は理解しました。でも、いいんですか?僕、あなたのファンなわけで。変な事するかもしれませんよ?」
そんなことするつもりは1ミリもないけれど、星乃さんはあまりにも警戒心に欠けるから少し脅しをかけてみる。だけど、その顔は、アイドル天城星乃のオーラを纏ったその顔には、一点の曇りもなかった。
「あなたがもし、そういうタイプのファンだったとしたら、もっと早くアタシのことに気付くはずですしっ、わかった瞬間にこんな絶好の機会なんですから手を出すはずです。でも、あなたはそれをしなかった。それだけでも信頼には値しますよっ?それに……」
「それに?」
「さっきぶつけられたお詫び、ってことでどうでしょうかっ?」
「うっ……それを出されると何も言えないよ僕は」
「えへへっ!じゃあ決定ですねっ!!」
「えぇぇ、本当?」
「はいっ!本当ですっ!」
「……はぁ…………覚悟決めるしかないのかぁ」
「そうですよっ!と、いうわけでこれからよろしくお願いしますっ!!えっと……」
「あ、そっか。僕の名前言ってなかったんだっけ。僕は咲良春樹です。これからよろしく」
「じゃあ、春樹くん、ですねっ!これからよろしくお願いしますっ!!」
そう言って弾けるような笑顔を見せる星乃さんとは対照的に僕の顔は苦笑いだった。
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