伊勢貝恋愛
ここは伊勢の海。
伊勢の海にはアコーヤ王国が広がっている。
私はアコーヤ王国第二王女のテンネン・パール。私、昨日お見貝をしたのですけれど、この王国の貴貝にはナイスガイがおりませんの。
お父様にも、嫌だとあれほど言いましたのに、ソノヘンノ・カラー様と無理矢理結婚させられましたの。
お父様は将来有望だとおっしゃりますが、私には何の実りもなさそうなガイにしか見えませんわ。
私の婚約相手は私が決めます。そう思って、私、婚約を破棄してしまいましたの。
そしたら、全く、お父様ったら、お前なんて殻破りだ、って私、追い出されましたのよ。
もういいですわ。それくらい平気な気概はありましたもの。
アコーヤ王国を出て、しばらく進んでおりますと、ドボンと音がして、何かが降りてきました。
そちらを見てみると、沢山のアコーヤ族が吊るされていますの。
私はその貝々からベリーナイスガイを見つけましたの。
そこで私は恋に落ちました。
そのガイに私は近づいていきました。
「あなた、お名前は何とおっしゃりますのですわ?」
「なんと麗しい。自分はヨウショク・パールと申します」
「ヨウショク・パール様......! 良いお名前ですわね」
「ありがとうございます。あなた様はなぜこんな場所におられるのですか?」
私は先程まであったことを包み隠さずお話いたしました。
「なるほど。それはお辛かったでしょう」
「そういえば、ヨウショク様はどうして縛られておられるのでしょう?」
「自分は巨大生物に体をいじられ、この輝きを手にしました。現在はその儀式の最中なのでございます」
「私、聞いたことがありますわ。巨大生物の力を借りた貝はその輝きの対価として、何もかもを奪い取られるのだと」
「名前を聞いていませんでしたね。お名前を教えていただけますか?」
「私は、テンネン・パールですわ」
「テンネン様、自分は今輝いておりますか?」
「ええ、ええ......! 何よりも輝いておりますわ」
「そろそろ、お別れの時間のようです」
ヨウショク様が空へと吸い込まれていきます。
「短い時間でしたが、テンネン様とのお時間、幸せでした」
「待ってくださいまし......!」
私は、地面から離れていく何かに引っかかり、空へと連れていかれました。
「おお、きれいな真珠が沢山取れた。ただ、二つだけ別格だな。これは高く売れそうだ」
巨大生物が知らない言語でしゃべっています。
巨大生物に私はつまみ上げられ、どこかへと連れていかれました。
「ヨウショク様!!」
「テンネン様!! なぜここにおられるのですか?」
「また会えました。今度はどこかに行かないでくださらないかしら?」
「ええ、私はここにおりますよ」
「この二つはセットにして、ネックレスにしようか」
巨大生物がまた何か話しておりますわね。
私とヨウショク様は巨大生物に連れられ、次に気づいたときには、ヨウショク様のぴったりとなりに私がくっついておりました。
「ヨウショク様、これでずっと一緒ですね」
「嬉しいことにそのようですね!」
「私たち、見えない糸でつながっていたんだわ! そうに違いないわよ!!」
数日後、真珠店には、美しいペアパールネックレスが並んだという。