悪役令嬢たちのスローライフ〜自然豊かな国に国外追放されたので、悪役令嬢のご友人と自給自足しております
悪役令嬢の世直し伝の番外編となります。
よろしければ、そちらもご覧ください。どちらも短めの短編です。
こちらのみでもお読みいただける内容となっております。
同日同時刻にそれぞれの国で、婚約者である王子に、悪役令嬢として断罪され、婚約破棄された二人。
国外追放先に選ばれたユカト王国で二人は出会う。
「わ、私、これからどうすればいいんでしょうか……?」
色白で黒髪のストレートロングヘアの、おとなしそうな容姿のリリアールは、国外追放先で涙をこぼす。
「私、自給自足ってやつに憧れていたのよね。憧れすぎて、屋敷の庭園に小屋を作ったりして、親父にぶん殴られたわ」
勝ち気な、少し釣り上がった瞳に、堂々たる佇まい。くるくるロールな金髪ツインテールのマリアナは、そう期待に胸膨らませる。
偶然出会った二人は、共に暮らすことに決めるのであった。
「この街の隅っこの方なら、勝手に小屋でも建てていいみたい。私たち、一緒に暮らさない?」
「私、何もできないんですが……いいんですか?」
「二人でいた方が楽しいじゃない! リリアールは、何かやったことのあることはないの?」
「平民の暮らしを知るために、掃除洗濯料理裁縫くらいなら、したことがあります……」
「すごい戦力じゃない! そうと決まれば、急いで小屋を作って寝る場所を確保しましょ?」
「は、はい!」
このようにして始まった悪役令嬢二人のスローライフだった。
ーーーー
「見て見て! リリアール、いいウサギが獲れたわ!」
「ま、マリアナさん。血抜きはできる限り森で済ましてきてくださいと、言いましたよね?」
ポタポタと血が垂れるウサギを掴んで走ってきたマリアナを、リリアールが注意する。
「ごっめーん! でも、見て? すごい肉付きよ!」
「本当ですね……ちょうど、ハーブがたくさん育っているので、ハーブ焼きにしますか……?」
「美味しそうー! 任せたわ! リリアール! 私、きのことか採ってくるわね!!」
「ま、マリアナさん! お待ちください! お料理から逃げないでください!」
リリアールの叫び声も虚しく、マリアナは森へと逃げ出した。そもそも、リリアールの小さな声では、マリアナの耳まで届いたのか、疑問だが。
「……マリアナさんは、ちゃんと毒キノコ以外を採ってくることができるようになったのでしょうか?」
「……」
「どう? 今回は自信あるの!」
「……すごいです」
「やっぱり? このピンクのキノコとか、絶対美味しそうだと思ったのよ!」
「いえ。それはほんのひとかけらで十人くらい殺せる毒を持つキノコです。マリアナさんの採ったきのこは、今回も全て毒キノコです。す、すごいです。ここまで毒のあるものだけを集めることができるなんて……」
毒薬でも作りますか? と、リリアールは首を傾げる。
「んもー! 今回は自信あったのに! 仕方ないわ。リリアールの育ててくれた野菜でスープを作るわね!」
「マリアナさんのお料理の中で、スープ作りだけは、天才的にお上手ですものね」
マリアナがぐつぐつとスープを煮込む横で、リリアールはウサギ肉のハーブ焼きを作る。
「あ、サラダも作りますね」
「うへー。生野菜嫌い」
「特製ドレッシングも作りましょうか……?」
「やったー! リリアールのドレッシング大好き!」
「あ、そうでした。マリアナさん、食材を収納する棚が欲しいです」
「そういうことなら、マリアナにまっかせなさーい!」
どんと胸を叩いたマリアナは、急いでスープ作りを済ませると、木材を取りに行く。
「どんな感じにする?」
「扉がほしいです。あ、下の方に大きめの壺を入れたいです」
「大きさはこれくらい?」
「は、はい」
「よっしゃ! 作るよー!」
プロの家具職人のような早さで棚を仕上げるマリアナ。横でデザートのパイを作りながら、リリアールはマリアナを見つめる。
「い、いつもながら、本当にすごいですね。マリアナさんは」
「えー! ありがとう! 私からするとなんでもできるリリアールの方がすごいと思うけどね」
「あ、ありがとうございます」
「その木の実! 美味しいやつだ! パイに入れるの? 楽しみ!」
「マリアナさんは、この実がお好きですものね。また、この実を使ったデザート作りますね?」
「ありがとうー! リリアール大好き!」
「て、照れちゃいますー」
「「いただきます!」」
「やば、いつもながらすっごく美味しいわ!」
「マリアナさんのスープもすごくおいしいです。ウサギもおいしいですね」
「ええ!」
二人ののんびりスローライフは、このように充実していったのだった。
「リリアールー! 熊、捕まえたー!」
「ま、マリアナさん!? 熊ですか!? どうやって!? って、だから、血抜きは、森でできる限り済ませてきてくださいって、何度も!」
「ごっめーん!」
「で、では、私も血抜きと解体、手伝いますね?」
「え? リリアール、血抜きとか解体、できるの?」
解体される動物を見たら、ぱたりと倒れてしまいそうな外見のリリアールだが、想像以上に戦力であったようだ。マリアナも、挙動さえなければ、麗しき乙女なのだが。
「は、はい。領地のお祭りで毎年経験させていただきましたから」
「え。まって。リリアール、はや! うま!」
「マリアナさんは、こちらをお願いしますね?」
二人の解体した熊は、森の中で必要以上に動物を殺して遊んでいた森の暴君であった。このようにして、森にも平和が訪れたのだった。
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