次々とぶっ飛ばされるトム
妹とカレー屋さんに行った。店員のトムは、英語しか話せなかったが、大体こんなことを喋ってくれた。
「あなたたちは、前世でとても良いことにしたに違いない。だって、こんなに平和な国に生まれることができたのだから。日本は、素晴らしい国です。」
涙ながらに語るトム。
私が見ていないところで、妹に、
「あなたのお姉さんは、美人ですね。彼氏はいますか?」
と聞いてきたらしい。したたかなやつである。
妹は、肉体的にも精神的にも、人類最強と言っていいレベルで強い。得意技は、タックルである。トムは、色んな意味で妹にぶっ飛ばされた。
朝、マックでコーヒーを飲んでいたら、いきなり、「Hi.」と声をかけられた。
「僕は六本木のバーで働いているんだ。見て。これらは、僕さ。」
次々とiPhoneで画像を見せてくれた。ビビットなカラーのカクテル。きらびやかな照明。
「これが僕の在日カードだよ。」
…名前、分からん。英語話してくれてるけど、英語圏出身じゃない。名前が見たことない文字。だから、トムと呼ぶことにした。
トムは、明け方に仕事が終わり、バーを閉めてきたらしい。
「これから、六本木の僕のバーに行かないか?」
なんでだよ!(笑)
いまバー閉めて来たんだろうが!(笑)
私は、来世で縁があったらねと言い残して、マックを去った。トムは、「オ〜!」と叫んで撃沈した。
また全く別の日。セブンイレブンの前で、声をかけられた。
「いま、僕と目が合ったよね。どうしてだい?」
いや、知らねーよ!(笑)
目、合ってないよ!(笑)
名前が長くて覚えられなかった。トムと呼ぶことにした。
「あなたの名前はトムですか?トムですね?トム。私は、あなたの言っていることが、何にも分かりません。」
そう告げたら、トムは膝から崩れ落ちた。
「オゥマイガーッッッ!!」
トムの絶叫が、セブンイレブンの駐車場に響いた。
こんなことが日々、バンバン起こる。ただ、外国人男性からだけではない。国籍問わず、老若男女に話しかけられる。
3人のトムは、ふらちな輩だ。だが、基本的には、困っている人に声をかけられることが多い。
あと、『相手が英語、私が日本語』。それでもちゃんと話が通じる。
とにかく不思議で仕方ない。占星術を極めている人がいたら、聞いてみたい。
「私は一体、どういう星の下に生まれたんですか?」と。