表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

Sweet and Sour

Chapter 2,


戦争が始まったとき、経済的に余裕のある西側の国達は、このあたりに居る少数民族や西側に友好的な勢力に対し、じゃぶじゃぶと無償で武器供給を行ったらしい。


だからここらへんでは西側の武器をよく見かける。


私の国も経済的援助という名目で、大金を西側諸国へポンプしていたし、今もしているそうだ。

平和を金で買っている、血で経済を回しているとよくニュースでやっている。


私はお金に興味はない。

でも生きていくためには必要だから、汚い仕事もやるしかない。


本当に正しいと信じていることがあるなら、自分の手を汚してでもやり遂げるべきだと思う。

だから私はここに海を渡って来たし、人だって殺す。


「ねぇ、こっから遠いの?!」


めがねの耳元で私は叫んだ。

走行風がうるさい。


「そうでもないよ」


「めがねは運転してるからいいよ。ただ乗るのはひまだよ」


「楽しくないの?」


「楽しいけど、ひまだよ」


「しゃべると舌を噛むよ」


「わっ」


一瞬体が垂直に蹴飛ばされる。

さっきまでダートの上だったのに、いつの間にか舗装された道を走っていた。


「もうすぐ第4軍区だよ」


「めがね何持ってきた?」


「マカロフ」


「アンティークだね。私はグロックだけど」


「けど?」


「壊れてる」


「西側の武器はプラスチックのおもちゃだね。四角くて嫌い」


「ポリマーは強いんだよ?それにフレームの問題じゃないもん」


「じゃなに」


「リコイルスプリング」


めがねが笑いながら答える。


「じゃあ一発一発コッキングすれば撃てるね」


「かっこわるいよ」


「かっこわるくても生きてるほうが100倍いいよ」


「なおしたいな。。。」


「なおせるの?」


「お金ないからなぁ。。。」


「そこらへんに落ちてるんだから拾ったの使いなよ」


「やだ。これがいい」


これは初めての戦闘で鹵獲した思い出深い道具だから。

初めて人を撃ち殺したのもこれだった。


「あっ!!」


めがねが急に電気自転車を減速させた。


「どうしたの」


「前方、人がいる」


「歩哨かな」


「でも軍服じゃないし、一人だよ?」


「しかもデニムのショーツ」


「おしゃれして来るところじゃないのに」


「金髪だね、西側の人っぽいよ」


「どうする?」


「このままだとあの人、防衛線に直行だよ」


「あそこの兵隊はカスばかりだよ。難癖付けられてヤられちゃうよ」


「それはいけない。同じ種族として教えてあげよう」


「めがねは西側の言葉喋れるでしょ」


めがねが大きな声で何かを言い始めた。

向こうもこちら見ながら何か言っている。


「なんて?」


「どこに行くか聞いた」


「で?」


「私たちと同じ場所だ」


「じゃぁ仲間かな」


「わからない。近づくけど変な真似したら撃とう」


「撃とう撃とう」


くたくたのスライドを引き、握り拳でスライドのお尻を叩いて装弾する。


「これやってみたかったんだよねぇ。暴発しそう」


「暴発したらどうするの」


「私の指が飛ぶ」


「私のじゃなくてよかった」


めがねが指でスロットルを締める。電気自転車の重心がグンとリアにかかった。

だんだんと近づいてくる人の形をじっと見つめる。


「こんなところにはもったいない見た目だね」


「あんなんじゃすぐに捕まって廻されるよ」


「自分探しのヒッピーじゃないかな。めがねの嫌いな」


「大嫌いね」


嫌いなのに助けようとする。

だから私はめがねが好きだ。


だけど私はめがねと同じで、ヒッピーは嫌いだ。


平和のおいしいところだけを吸って、安全な場所から理想を語ることしかしないゴミくずだ。


「こんにちわ」


赤い唇が目を引いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ