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序章 令嬢は婚約破棄宣言を最後まで言わせない主義

頭空っぽにして読んでもらえれば幸いです。


「エウリカ=ルン=アイハーラ公爵令嬢!もはや、数々の貴様の悪行には我慢ならぬ!よって、貴様との婚約を破ブロゲァァァ?!」

 

 何かふざけた事をほざいていた殿下の顔面に拳をめり込ませる。

 鍛えに鍛えた私の拳は、殿下自慢のご尊顔を容赦なく破壊し大いにその身体を吹き飛ばした。

 

 まさにクリティカルヒット!会心の一撃!痛恨の一撃!きんもちぃぃぃぃぃぃ!!

 

 殿下は鼻血を出しながら吹き飛び、背後の壁にぶつかって倒れ伏した。ピクピクと痙攣してるから、一応は生きているようだ。


「婚約破棄承りましたぁぁぁ!じゃあ、死ね!」

 

 倒れ伏す殿下を見下ろしながら叫ぶ。すると、唖然としてた殿下の側近達が鬼の形相で飛びかかってきた。私は素早く拳を構え直し、新たな獲物へと狙いを付ける

 

 まずは、大柄な体格をした騎士団長の息子。

 

「貴様ぁぁ!殿下をよくブコハッ?!」

 

 顎→股関→鼻の順で殴り、地ベタに沈める。

 

「実技で私に一度も勝てなかった木偶の坊が!貴様なぞ、素手で充分じゃああ!」

 

 騎士団長息子にそう吐き捨て、次に眼鏡が特徴の宰相息子に狙いを付ける。彼は分かりやすい程に怯えた表情となった。

 

「ちょ……待て!冷静に話しあブゴブッ?!」

 

 眼鏡→股関→眼鏡の順で殴り、彼のアイデンティティーを奪う。眼鏡キャラから眼鏡を奪ったらただのモブである。

 

「こんな場所で婚約破棄宣言しといて、何が冷静じゃああああ!失せろ糞眼鏡がぁぁ!」

 

 ついでに、今は私達学生の卒業パーティーの最中である。卒業生・在校生は勿論、保護者の方々も来ている晴れの舞台である。そんな場所で婚約破棄しといて、冷静も糞もない。

 

「や、やめろ!こんなこと神がバケフッ?!」

 

「うるせぇ!!ウチの実家からの寄付で成り立っている生臭宗教がぁぁ!援助やめるぞゴラァァ!」

 

 大神官の息子を鼻→股関→鳩尾の順で殴ると、彼は盛大にぶっ飛んで壁にめり込んだ。なんか、ポーズがポーズだけに、ちょっと神聖な感じになった。 彼も本望だろう。というか、寄付はしてるが私自身は神を信じていない。信じられのは己のみよ。

 

 最後に、尻餅をついてビクビクとしている我が弟に目をやる。

 

「ね、姉様……!や、やめてください!僕達は姉だヒデバァァァ?!」

 

「姉より優れた弟など存在しねぇぇぇ!」

 

 股関→股関→股関のラッシュで殴り、彼から未来を紡ぐ可能性を奪う。残酷なことをしたが、後悔も反省もしてない。アイハーラ家の未来は私の子宮に託された!

 

 そんな、殿下と側近四人が失神して倒れる様子を、もう一人の主人公……いや、ヒロインである女性が唖然と見ていた。殿下の最愛の者であるローズ男爵令嬢だ。

 

 私が拳を鳴らしながら近付くと、彼女はハッと我に返った。

 

「あ、あなた!王太子にこんなことしてただで済むゴバハっ?!」

 

 右頬→左頬→右頬からのボディで沈める。ギャアギャア騒いでた男爵令嬢は、静かに崩れ落ちた。

 

「男爵家如きが公爵家に刃向かいおってぇぇ!一族朗党根絶やしにするぞぉぉぉ!!」

 

 倒れ伏す男爵令嬢に渾身の雄叫びを浴びせる。まあ、聞こえているかは知らないが。

 

「おにょれ……きしゃま……きょんなきょとしゅてただでしゅむとおみょっているにょか?」

 

 舌足らずな声に振り向けば、殿下が鼻を抑えながら憎々しげに私を見ていた。

 

「しょけいだ!きさゃまなどしょけ──」


「むう?私が思っていたよりも防御力が高かったようね!さすがは腐っても王族!ならば、アイハーラ家秘伝の必殺技『脛殺し』を喰らいなぁぁぁぁ!」

 

「ちょ?!やめギャバぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 殿下は脛を抑えながら悶絶する。

 

 フッ……。我が家に伝わりし秘技『脛殺し』。あらゆる防御や次元を超越して、確実にダメージを与えるこの技から、逃れる術などない。

 

 転がる殿下に背を向けると、保護者席にいる御母様と目があった。

 

 御母様は親指をグッと立て、目で……。

 

『良くやった。我が娘』

 

 と、誉めてくれていた。

 

 私も親指を立て返した。尚、御母様の隣では青い顔した御父様が、何か言いたそうにしてる。でも、言えないだろう。我が家では女が強いのだ。

 

「ち、ちちうえ~!きょ、きょのおんにゃをしょけいひてくだはい~!」

 

 背後で殿下が父親である陛下にすがり付いていた。

 

 チッ!浅かったか!

 

 私が『脛殺し』の構えをとっていると、陛下に手で制された。

 

「陛下……」

 

 陛下は威厳溢れる顔……で勢いよく頭を下げた。

 

 勢いつけすぎて被ってた王冠(ヅラつき)が飛んでいく。が、陛下は気にした様子もなかった。


「いや、息子が本当に申し訳ない。マジすんません。こいつ、廃嫡して平民に堕とすから。それで勘弁して?もう、王家関係ないから、ウチだけは勘弁してください!」

 

「ひ、ひひうえ?!何を……」

 

 何か言う殿下を、神々しくなった頭を上げた陛下が鬼の形相で睨み付けた。

 

「黙れっ!お前……アイハーラ家に喧嘩売るとかマジか?!ヤバいんだからな?!アイハーラ家、マジでヤバいんだからな?!かつての魔王ですら、泣いて許しを乞うたバリッバリッの武闘派の家だぞ?そこに喧嘩売るって……王家滅ぼすつもりか?!」

 

「ひっ?!ひたいよ、ひひうえ~?!」

 

 陛下が威厳も忘れ、殿下の頭を殴りながら随分と酷いことを仰る。

 

 チラリと陛下を見れば、顔を真っ青にしながら防御姿勢をとっていらっしゃる。我が家は口よりも手が早いことをよくご存知で。

 

 確かに、我がアイハーラ家は先祖代々王国を守ってきた守護の要。始祖であるカオリ様に至っては、魔王すらも葬った益荒女。その血を引く我々一族は、並々ならぬ戦闘力を秘めています(なぜか女だけ)。今回の婚姻も、陛下の方から王家との繋がりを強くしたいとの申し出で受けたものだったのですが……殿下は我が家を随分と舐めてくれていたようですね。

 

 そんなことを考えていますと、騎士団長・宰相・大神官達が私に駆け寄り、一斉に土下座をしてきました。

 

「ウチのボンクラがすみません!!廃嫡し、一兵士からやり直しさせますんで、我が家にはご容赦ぉぉぉ!!」

 

「マジすんませんでしたぁぁ!息子は眼鏡を奪った上で廃嫡しますんで、ご容赦ぉぉぉ!」

 

「神の名に誓い、あの糞餓鬼は永久追放しますんで、援助を切るのだけはご勘弁ぉぉぉ!!」

 

 息子共は馬鹿みたいですが、親達は良識はあったようで。我が家はこの国の要であり、武威だけでなく経済も支えておりますの。始祖様が金にがめつかったらしくてね。そんな、金と武威と名声?ある我が家の後ろ楯が無くなれば、没落する貴族家や商家は、あと知れず。目の前で土下座する彼らも例外ではなくてよ。

 

「よろしくってよ。あのボンクラ共は不快なんで、チ◯チ◯をチョン切ってから放逐しなさいな」

 

「「「仰せの通りにぃぃぃぃ!!」」」

 

 お三方が頭を地面に擦り付ける。愉悦だわ。

 

 すると、今度はふくよかな男性とケバい女性が駆け寄ってきた。

 

「「我が娘がとんでもないことをしまして、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁ!!」」

 

 どうやら、男爵令嬢のご両親のようですね。

 

「我が娘は勘当し、どっかの厳しい修道院に入れます!なので、どうか……どうか我が家を取り潰すのだけはぁぁぁぁ!!」

 

 必死に懇願してくる男爵と夫人。娘はあれだけど、親である彼らは我が家の恐ろしさをよく理解しているようね。

 

「いいですわ。私も鬼じゃありません。許しますわ。ただ、ローズ嬢には永遠に穴掘って埋めるだけの仕事を与えますわ。食事は三食タピオカに塩振ったもので」

 

「「仰せののままにぃぃぃぃ!!」」

 

 フフフ……私って優しいわ。

 

「あら?シェルツには罰はないの?」

 

 自身のあまりの慈愛っぷりに黄昏ていると、いつの間にか御母様に背後を取られていましたわ。さすがは御母様。気配を感じませんでしたわ。ついでに、シェルツとはあの愚弟のことですわ。

 

「そうですわね……。私も最愛の弟に酷い仕打ちはできませんからね。『Come on Baby!』と書いた札を首に掛けて、全裸で『紳士の館』(俗に言うハッテン場)に一週間ほど放り込みましょう」

 

「まあ!なんて素敵なアイディア!あの子は反省して女にうつつを抜かすことはなくなるし、紳士(ゲイ)の方々にも奉仕できる!一石二鳥ね!」

 

 手を叩いて賛同してくれる御母様。罰として、我ながらナイスアイディアだと自負してる。御母様の隣では御父様が全身を震わせて賛同してくれているしね!

 

「さて……では、とっとと、こんな場所からオサラバして、我が家で飲み直しましょう!」

 

「そうですね、御母様!さっさと帰って、新しい婚約者でも選出しましょう!」

 

「あらあら、気が早いこと。ところで、王子に未練はないの?」

 

「ないわ。顔と家柄はいいけど、我が強すぎね。やっぱり、男は顔はほどほど・金は有る。そして、押しが弱くて扱い易い人間が一番みたいですね」

 

「そうよ。御父様みたいなのが一番よ。優しいだけの人間はつまらないなんて言うけど、その優しくて金持ってる男はなかなかいないからね。見つけたら、即ゲットしなさい」

 

「やっぱり、既成事実は作った方がよくて?」

 

「勿論。酒飲ませて部屋連れ込んで、一発かましてから『責任取れ』と言えば、男なんてイチコロよ。あっ、ゴムには穴開けておきなさい。私はそれでゲットしましたから」

 

 と、御母様が誇らしげに御父様の肩を抱く。

(※尚、御父様の身長は165㎝。御母様は185㎝ですわ)

 

 抱かれた御父様は、なんとも言えない複雑そうな表情をしていた。

 

「そうなのね。なら、私も頑張って既成事実を作りましょう!」

 

「頑張りなさいね!」

 

 そう言って、御母様とパーティー会場を後にしましたわ。

 

 

◇◇◇◇

 

 この後、王太子と側近達は揃ってチ◯チ◯をチョン切られた上で廃嫡され平民となったが、そのせいで新たな扉を開いた彼らは、なんだかんだそれぞれが新しい彼氏を見つけ、それなりに幸せに暮らしているらしい。

 

 公爵令嬢の弟であるシェルツは、一週間掘られまくり、すっかり男色に目覚め、今は父親と同い年の彼氏に夢中だと。

 

 男爵令嬢については、今は永遠に穴掘ってうめだけの毎日に加え、毎食タピオカなのですっかり太り、ト◯ロのような見た目になってしまったらしい。

 

 そして、エウリカ公爵令嬢と言えば、都合良さそうな男を探して婚活旅行をしていたが、国内どころか付近の国々の都合の良い男達から警戒され、なかなか婚活が上手く進まなかった。

 

 そのため、母親や始祖の教えにならい、武力行使による婚活を敢行。彼女に忠誠誓う騎士達を引き連れ、これより諸外国を廻ることとなる。


 アンデル帝国周辺に嵐が吹き荒れようとしている。


 

 

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