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8 断 罪 !

初変身!

ばさ、ばさ、ばさ


突然

少女の頭上に影が差した


「なっ」


じつは、こちらに来てからいろいろ確認をして

「エリアサーチ」ほど便利にはできないのだけれど

いわゆる「気配察知」の類を常時発動というか

普段からできるようになっていることがわかっていた

前世というか、元の世界であまりにも危険と背中合わせにしていた

そのせいかもしれない

初めてこちらに来たとき、「エリアサーチ」を行う気になったのもそう

虫の知らせ

その類といっていい


が、いま影が差して

少女を襲おうとしているモノ

いや、巨大な獣?

それの接近は全く察知ができなかった

虚空から躍り出たといっていい


が、驚愕は一瞬、いや驚愕より先にわたしの身体は反応し

「きゃぁ」

むしろわたしの行動に

自分が抱きかかえられた衝撃に、そのまま横跳びに二人で跳んだその衝撃に

叫んだだけでその子は影からふたりで離れられた


そしてその影

いや逆光の今も、もうはっきりと見える

巨大な獣、有翼の獅子?これは、これはまるで

さらに、その後ろから何か巨大で鋭いものが・・・


がいん

獣の背後から槍のように伸びてきたこれは尾か?

それを一閃、そらせてくださったのは、言うまでもなくお姉さま

「遥っその子を!」

言われるまでもなく

わたしはその子をギュスターブさんに預けると

「ここは二人で防ぎますっ、村長さんとこの子を!」

そびらを返して巨獣へと向き直る


「無理しちゃだめよ?

そいつはマンティコア、A級以上のパーティが複数で挑むやつ

 確認はこれでできたから討伐は求めない、死んでも手当は出ないわよっ!」

わたしたちに背を向け、村長さんをかばいながら走るギュスターブさんに躊躇はない


わたしたちに助言はした

依頼人の保護と、調査結果をギルドに伝え、警報を送るのがギュスターブさんの職務だ

駆け出しのわたしたちが生きようが死のうが、それはこの際問題ではない

それが彼の職務で、そして残ったわたしたちに職務があるとすれば

無事に逃げだすことだろう


のはず、のはずだったのだけれど

わたしに少女を助ける隙を造るため

ほんの少し、ほんの少しだけお姉さまは深く、長く踏み込みをしてしまった

跳ね除けた巨大槍のような尾

集中してみれば、それはサソリの尾のよう

なるほどマンティコア

わたしたちの世界では有翼の獅子、場合によっては人面で、サソリの尾、はたまた

蛇の尾の怪物

神話の世界にいるやつか、あるいは日本でならぬえと呼ばれる凶獣だろう

その蠍の尾が軌道を変えてお姉さまを突くのではなく叩きつけた


「かふっ」

寸前、お姉さまはマントを広げ、さらには頭上にはね上げた愛刀で

尾の直撃はわずかにお避けになったはず

が、さらなる追撃

前肢を

どう見ても必殺の一撃をお姉さまに振り下ろそうとしている


「変身っ!」

すでに『コンソール』は、ギュスターブさんに背を向けた時に呼び出してあった

わたしの身体が二重三重の虹色の光に包まれ

しゅん

光の中から私は飛び出す


白銀色のフルアーマー

赤のメタルラインが肩章のように肩から手首まで走り

同様に体側にも走って輝く

わたしの顔は兜どころか、完全に身体と同色の金属マスクに覆われ

眼は、赤く輝く複眼と化している


これがわたし

変身したわたしだが

あちらでの名乗りなどはセカイの向こうに置いてきた


ごぼん

ヒトの及ばない速度でマンティコアに接近

そのスピードのまま

わたしから無防備に胴をさらしたマンティコアに強烈なタックルを放つ


「ごあぁぁぁぁぁぁ」

これはさすがに効いたか

マンティコアは飛び退ってお姉さまとの距離を開けた


だがっ

だが、だが、だが、だが、だがっ!!

これで許しなんかしない

いやもう許さない

わたしのわたしのわたしのっ

わたしのお姉さまを傷つけるとかっ!


断罪剣ディバイン・ブレードっ!」

叫びに応えてコンソールの脇から飛び出したグリップを、わたしは引きぬいて走る


ブレードの名はついているがこれはそもそも剣などではなかろう

ちゃきりと伸びたグリップの先、特殊警棒のような金属の円柱が鈍く光る


だが、これがわたしの剣

あえて言うなら光りの刃


ぶぅんとセカイをわずかに震わせて円柱が唸り、そして唸りが高まって不意に消える

消えた後には光が、青い光が輝きを増す

そう、これがわたしの剣


いや

発光しているから光の刃のように見えるかもしれないが

わたしの手の先にあるのは、わたしの身体から供給されるエネルギーで運用される

超振動の力場

それがわたしの必殺の武器の一つ


怒りは頂点に達していたが

すぃ

ブレードを引き抜いた右手を頭上に掲げ

左手を添えて大上段の構えを取った瞬間

わたしのなかはすっかり冴えて

わたしの眼にはただ、ただ

断罪の刃が辿るべき軌道

それしか見えていなかった


断罪ディバイン!」


袈裟懸けの一閃

剣の本体はおよそ60センチほど

だが、形成された超振動の力場は掛け声とともに剣体を離れ

跳びながら拡大し、湾曲し、巨大な刃となってマンティコアの身体を襲う


やったか!


やったか!


次回も明日に

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