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6 飛ばされる星

怪しいヒトの怪しいお話

さわ、さわ、さわ


風が吹いている

心地よい風、見渡せば草原が広がり

わたしの横にはお姉さま


これで気分がよくないわけはない

ないはずなんだけれど


「はいはい、そんな目で見ないでくれるかなぁ

 小父さんとっても傷つきやすいんだからねぇ」

「そうおっしゃられても」

「遥、ギュスターブさんに失礼ですよ?

 むしろ、同行してくださってるのは、ギルドのご厚意

 そう思わなくては」

「そうそう、ところでお嬢、本音はどうなの?」

「早く二人っきりにして頂きたいなぁなぁんて」

「だよねぇ、あぁやっぱり傷つくなぁ

 これでも頑張ったんだよぉ、今回の依頼が無事終わったら

 危険性は低いってことで、監視は終了ってねぇ!」

「まぁ、小父様素敵です」

お姉さまはウインクに星を乗っけて飛ばされる


「あ~、そういう凶悪な技を使う奴はやっぱり怪しいな

 当面、監視を強化せねばと報告しよう、そうしよう」

「失礼いたしましたっ、ギュスターブ監察官殿!」


お姉さまはしゃきぃんと、不動の姿勢で敬礼の真似事をして見せる

「あ~、ねぇねぇハルカちゃん、お嬢ってばさぁ、残念とか言われない?」

「回答を拒否します、断固拒否します」

「はるかぁ?」

ジト目で見られてしまった


とはいえ、少し私も聞いてみることにした


「でもギュスターブさん?お嬢様はとっても良い方なんですけれど

 それでもギルドでは、お目付けさんを付けられたんですよね?

 そこに、私まで加わっちゃって、監視期間延長とかにならないんですかぁ?」

「あ~それね、いやどうせ冒険者なんて、脛に傷の一つや二つあって当然」

「当然なんだ」

「そりゃそうよ、くい詰者が犯罪者に堕ちる寸前の、最後の手がかり足がかり

 その程度の物だよ」

「なら、お嬢様だって私だって」

「普通はね?だけど君らは違うかな?」

「違うんですか?」

「大いに違うわね、自覚がなさそうだからハルカちゃん

 君にもこの際しっかり言っておくけれど、君や、お嬢はおかしいの

 いますよ、そりゃぁたまにはいます、田舎からぽっと出てきて

 2年がほどでランクBとかになった冒険者

 めったにはいないけど、小父さんだって見たことはあります

 いま、そいつは王都で有名なパーティを組んでるわね

 Aランクに昇格したって言ったっけか?

 でもね、そういうのだって最初は駆け出し

 最初はね、このあいだも、一応はしたでしょ

 オオカミや、熊とかの間引きあたりから始めるの

 そのうちぐんぐんぐんと強くなって魔物と戦って、稼ぎも増やして

 それでようやく

 こないだのオーガとか狩れるようになるわけよ

 それも、パーティ組んでなんとかねぇ」


「はぁ、あれはおかしいと?」

「おかしいね、あなた、いくつ?」

「女子に年齢聞くなんて、やだぁ」


こつん

ギュスターブさんのげんこつが軽く私の頭を叩く

いや、叩こうとして肩の防具にそれていったが


「ちっあのおやじ面倒な防具をルーキーなんかに売るんじゃないよ」

「あはは、便利ですよねこれって」

「こほん、君がいくつかは知らないよ?

 でも、この国じゃようやく成人、15かそこらそんなとこでしょ?

 それまでどんな人生歩んだか知らないけど

 君ぐらいの子が年季の入ったオーガの角を、

 魔剣でもないただの切れ味のいい市販品で、切り飛ばしたって?

 お嬢がサポートしたからって無傷で討伐できましたって?

 あの偏屈なドーラスが気に入って、ルーキーにこんな防具まで売ってくれるだって?

 はっ、この眼で見てなきゃわたしだって信じないって」


ふむん、ならば

「お嬢様はどうだったんですか?」と聞いてみる


「ここから遠い田舎だっけ?外国だっけ?

 そこから突然やって来た、見たこともない武具を装備した上品そうな娘さんが

 はぐれた相手を、そうだよ、君を探してますと

 合流できると思いたいので、しばらく滞在したいとね

 つきましては、これくらいなら狩れるんですけど、冒険者に登録できませんかって

 何もってきたと思う?」

「鬼さんとか?」

「さすがに違ったけどね

 『ヨロイ熊』っていってね、熟練の冒険者、うん、Cランク以上のパーティが

 4、5人でひぃひぃいって倒す、固くって面倒な奴がいるのよ

 それを一刀で倒したって刀傷がついてる」

「ははぁ」

「念のため、ちょいとお背なに背負ったあの刀を振ってもらったら

 まぁうちの教官らがほれぼれするレベル」

「さすがです、お嬢さまぁ!」

「そこ、目から星とか出さない!」

「ごめんなさい」

「それに、その装備、どう見ても高価なものに違いないんだけど

 ドーラスの親父がたまたまギルドに来てたから

 見たてさせてもらったわけだけど

 あの親父でも、何の素材か見当もつかないとかいうしね?

 お嬢だって家伝の防具で、とか言うだけで、自分でも素材すら知りもしない

 あげく身分証も持ってないときたもんだ

 せめて密偵とかなら身分証くらい用意するでしょ?

 いや、いっそそうして頂戴な、こっちの手間が省けるんだから

 ってそういう怪しさ大爆発のルーキーさんだったわよ」


なるほどそれは怪しかろう

なんだかギュスターブさんの口調も、怪しくなってる気もするけれど


「で、そこにハルカちゃんよね」

「やっぱりですか?」

「そう、お嬢が私より強いんです、とか

 何の冗談をとか思ったら、これがなるほど納得の腕利きとくるじゃない?

 だからね、ギルドとしちゃぁ、もう通常の対応でって、こうしたわけよ

 どうせまともな奴なんざ、きやしない

 いやいるわよ?貴族の三男坊とかね

 身元はばっちり、高貴なお生まれ、だけど部屋住みは御免蒙るとか

 無理な結婚をさせられるくらいなら、一人で生きますって

 飛び出してくる貴族の娘さんとかね?

 でもまぁ身元の詮索はしない、身分証の確認くらい

 よかったわねぇ、身分証無しでもギルド登録ができてさぁ

 ギルド登録さえちゃんとしてくれるんなら

 そのうち死んだり、行方不明になったりしても、しょうがない

 それが冒険者、

 だけど、この大陸中のどこにいってもギルド証さえ見せれば冒険者で通るしね

 狩った魔物の数や種類、ギルドに預けたお金の額、不正を行ったかどうか

 みんなギルド証にばっちりつきます

 それで一般人やら、冒険者同士に深刻な悪事で迷惑をかけないってなら

 くい詰者の社会対策ってやつよね

 ハルカちゃん達は、ぶっ飛んでるけど、まぁ密偵の線は薄い

 社会転覆とか企むにしては小勢すぎ

 だから、一応ギルドとしては、監視は行った

 後は責任ありませんと、そういうことで

 今回の依頼でお目付けは終了よ

 おあとは二人っきりでなり、パーティ組むなりどうにでもなさい

 面倒事は自分で片を付ける、転んでも泣かない

 自己責任ってやつね?

 ただ、ギルドに入ってくれて、うちのルール内で過ごしてくれてるうちは

 君らの身分の保証はランク付けってやつでしてあげる

 高ランク冒険者ってのは結構なステータスになるのよ?

 どこぞから不当な干渉ってやつを受けたら、そうねCランク以上になってたら

 調整にだって入らせてもらうわよ、もっともこちらも組織ってやつなんで

 常に君らに公正にってのは、担保してあげられない場合もあるかもね

 これは社会の常ってやつとおもって我慢しておくれねぇ」

「ギュスターブさん、ぶっちゃけすぎでは?」


道すがら延々教えてくださったギュスターブさんに、お姉さまは水筒を差し出す

「あ~、ありがとね、お嬢、だけど小父さんは何も言ってないよ?

 ここは草原だし記録官もいない

 君らが何を聞いた気になってるか知らないけどきっとそれって、風の音かもね?」

「うわぁ大人って汚いです」

 

 ともあれそういう事なら、ここは集中、依頼をこなして

 お姉さまと二人っきりを満喫しなくては

 そして、わたしたち一行は今回の目的地

 牧畜に結構な数の被害がでているという『リスケル』なる村にやってきていた


次回、強敵出現?

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