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手 甲 令 嬢

レイチェルさんのヒミツ

がさがさがさ


ブッシュから3匹の魔獣が飛び出す

左をわたし

右をお姉さま


中を抜ける

抜けたつもりでいたであろう猫型のというか

あちらでなら黒豹とか言う類か

狼よりも二回りほど大きい黒い魔獣


「お通しできかねますな

 いろいろご不憫とは存じますが」


言うが早いか、鞘走るステファンさんの一撃

ちんと鍔音立てて鞘に収められるまで見えてはいる

いるがそれはわたしやお姉さまが常人とは違うから


そして転がる黒豹

抜かれたのは直剣か


黒い奴の時に垣間見た体術、先日見た槍術、そして今日は剣術ときた

これで家政どころか場合によっては企業経営の差配までしておられたという

むぅ、底の見えないお方ではある


そして

警戒はまだ解いていないわたしたちの横合いから

ごぉん

わたしの後方

パーティの左側から一声吠えながら飛び出してきたのは巨大な牛?


「見えていますよ、アスティナ」


暗器を構えるアスティナさんを軽く制して

ゆらり

レイチェルさんが左右に動き

ごとり、ウシ型の大型魔獣が転倒する

レイチェルさんの直前

わたしたちも見慣れた例の転倒現象を引き起こして倒れたのだが


魔獣はその勢いのまま四肢をばたつかせ

背をレイチェルさんに向けたまま地面を滑走

以前のレイチェルさんなら、というか

一般人、あるいは少しくらい動きに自信のあるものであっても

この巨体の滑走だけでかなりの脅威


わたしたちが出会ったマンティコアの突進もそうだが

ヒトの身であれば、この世界の魔物と戦うのなら

冒険者が弁えておかなければならない事実


見えていますよと先程レイチェルさんは言われたが

狩場に入った時からの視線の動き

その場の物に送られる気配

いわゆる目配りという奴か

それがわかると、それだけでパーティの負担が違う


ゆら

レイチェルさんがわずかに動く

またもあの歩調か

ああ、いや、今度のそれは見切りの動き

転倒させた魔獣の挙動

それに、地面の状況、そこまで見えている

見えていた

その上での動きという事か


滑走した魔物はレイチェルさんの左をきわどく抜け

そこであがいたまま停止

ささっと、レイチェルさんは魔獣に接近

その頭部に右手に付けられた金属製の小手を添えられる


ばちり

奔る電撃

魔獣はそのまま絶命


かしゅり

レイチェルさんは左手を添えて小手を操作

すると小手のひじ側から灰色の水晶のようなものが排出され

灰色の物体はそのまま空中でぱきり、塵と化す


レイチェルさんは素早くお腰のポーチから

こちらは透明の水晶を取り出して

小手を再び操作

それを装填される


レイチェルさんもまだ警戒を解いてはいない

無論わたしたちもだが

ごそっ

大きく跳躍して飛び出してきたこれはなんだ

丸いボール?

それが唸りを上げてレイチェルさんに迫るが


「お任せを」


ひやり、冷気を纏う一言が下りて

ごしゅん

アスティナさんがボールに錐形の獲物を突き立てて止める

あちらの古武道というか、暗器の類でなら

鎧通しとかいう奴だろうか


「単純な軌道でお嬢様に向かうとか

 あり得ません」


ぞろり、力をなくし

丸いボール型がほどけ

鎧通しに貫かれているのは

穿山甲せんざんこう

あとで伺ったが、まれにいる魔物で

体当たりされると成人男性でも昏倒、場合によっては落命する

しかも硬いうろこ状の表皮が迂闊な刃物を弾くという

初見殺し、C級の冒険者も場合によってはほぞを噛む

そこそこに危険な魔物であるらしい


これでどうやらひと段落


例の暴走の余波というのか

街の周りでそれまで見ていない多種の魔物が現れており

交替で余波の鎮静、あるいは間引き

そのために有力なパーティが多方に出ているのだが


今回わたしたちとレイチェルさんのパーティとで

数か所の目撃値を巡回

そしていまリンデの街から徒歩で30分

街にかなり近い場所で最後の戦闘となり

それは無事に済んだ


けれど戦闘中

ずっとわたしは背中に何か温かい手が載っているような気配を感じ

お姉さまもそうだったようで

クールダウンののち、リンデに戻ろうというその途次

レイチェルさんたちにお尋ねしたのだが


「なんと申し上げてよいのかわからないのですけれど

 冒険者をしていましたら

 わたくしの、例のね

 ええ、お二人もご存じの、ヒトとヒトとの間に働く力関係

 はい、アレが戦闘中にも見えるなと


 そのうちステフの指導がありまして

 まず視野が広がるとともに

 パーティの支援というんでしょうか?

 わたくしが見た仲間の士気が上がるということに気が付きまして


 見ること、その場を感じることでわたくしの方からも

 見られること、動くことで働きかけられるのだと

 それがわかりましたら

 その次に、視線と動きで敵を誘導

 はい、ここまではすぐにできました


 その時はアスティナとステフの方に

 誘導していればよかったのですが

 それだけでは危険ですぞとまたまたステフに叱られまして

 まぁ仲間に敵意をなすりつけているだけでは

 お荷物を卒業できませんわね?


 それで思いついたというのでしょうか

 視線やわたくしの動きの誘導で二人の方に向かおうとした魔物が

 たまたま肢をもつれさせまして

 その場に倒れたものですから

 その応用で、先ほどのように肢を意図してもつれさせられるように


 ええ

 そこまでできて

 やっとC級の受験をステフが許してくれました


 その後は、きっと暴走の前触れだったのでしょうけれど

 狩場でオーガに連続で、ええとアスティナ何体であったかしら?

 ああ、5体、そうだったわね

 それで運よくB級になれました

 もっとも、わたくしのなんというのでしょう

 力というには貧弱な戦闘方法ですけれど

 地に足のついている相手にしか有用ではないので

 汎用とまでは言い難くてお恥ずかしいのです」


なにをおっしゃるのやら

今伺った内容だけで、物凄いお力ではないか

狩場を見わたし仲間に支援が乗り

近寄るものは地に首を垂れる

それにアスティナさんが付き従い

凄腕としか言いようのないステファンさんとで両翼をとなれば

なるほどそれはB級で通るだろう

というか先日の直感の通り

Aどころかという気がする


そこでついでに伺ってみる


「あのぉ

 士気の上がる仲間って

 どのくらいでしょうか?」


「あぁ、先日の防衛戦では

 視野に入っておられた方にはみんな効果があった様子です」


「それってほとんど将軍とか向きの権能とかになるのでは??」


「うふふ

 それほど便利でもありません

 あの時も皆様にご注意しましたが

 一刻ほどが限界のようです


 合戦ともなれば長ければ1日とかではないのですか?

 名将と呼ばれる方の中には

 演説ひとつで士気を鼓舞して

 まるまる一昼夜の戦いに勝ち抜かれた方もおられたとか

 そのようなたいそうな力ではありませんわ」


いやそれでも凄い

見渡せる範囲にいる味方の

ここぞというときに士気が上がり

普通の人でも普段より力が出せるというのなら

戦争の続く世の中ならば

この方はきっと将軍とかになっていそうだ


「ところであの小手の方は?」


「あぁ、あれはドーラスさんの御作です

 筋力もなく、剣も振れず

 弓など引いたら後ろに跳ぶ始末

 そんなわたくしにも使える武器をと

 ご相談しつつ一点もので製作していただいた物ですの」


あぁあの電撃はやはりそういう事か


「ちなみに抜き差ししてらっしゃったのは魔石ですか、アレ

 使い捨てのように見えましたけど?」


「ですわね

 一度使えばそれきりで

 属性は変えて使えますけれど

 一回使うとお金がねぇ

 稼ぎにならない冒険者でなら大陸一かもしれません」


ころころと笑われるレイチェルさん


「ちなみにおいくらほどで?」


「加工した魔石

 1個が100ギニーでしょうか?」


なぁんだそれほどでも

100ギニーってわたし最初の防具一式のお値段

レイチェル様ってば

ステラ硬貨をお気持ちとして配られる方だものね


・・・って、いっせんまんえん!

それが戦闘ごとにっていうか一撃ごとに使いすてぇ?


「命はお金で買えませんものね?」


さすが世界一のお金持ち冒険者さんは言うことが違う


「そういえばアスティナさんが防衛戦の時

 下水渠げすいきょの柱に魔石を仕掛けられたと仰ってましたが

 あれもそれでしょうか?」

とお姉さま


「ええ、200個ほど設置いたしましたか?」


「300でございます、お嬢様」


あらそうだったかしら

とにこにこされるレイチェルさん


小手に装填される魔石とは同じお値段かどうかは知らないが

それにしても

ええと1個で一千万円なら300個なら

ええと、ええと、さ、三十億ぅ!!

思わずお姉さまとお顔を見合わせてしまう

ええと、それって??


「あぁ、どうせヒドラの売却ではつり合いは取れません

 仕方ありませんわよね?

 たまたまわたくしにお金とそれができる役職が付いていて

 たまたま冒険者としてリンデに居合わせた、それだけのことです」


はいはい、わかりましたとも


などと言いながら

リンデの北門に帰りついてみれば

そこに整列していたのは見覚えのある制服に身を包んだ

騎乗の一団


「久しいな、レイチェル嬢

 元婚約者の麗しいお顔を拝見したく

 テオ・デル・デュプネ参上仕った」


そう、世界の呼び声だった


戦闘ごとにお金を湯水のように使うスタイル

これはレイチェルさんが冒険者になったらと当初から考えていました


え、ドラグレッダー?

知らない子ですねw

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