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暴 走(スタンピート)

投げっぱの回収ができますやら

出たとこ勝負は相変わらず、ご寛恕願わしゅう

がららがらら


馬車が街道を疾走してゆく


台数は2台、また3台

すべて、リンデから南へと向かっている


どの馬車の馭者も追い立てられているかのようにみな血相が変わっているし

どの馬車も満載とひと目でわかる


これは?

街道脇に寄せた乗馬を止めたままお姉さまとわたしは顔を見合わせる


リンデまであと一時間というところだろうか

最後の宿駅を出た直後から

2台3台とやはり乗客、荷物満載の馬車を見てはいたのだが

事情を聞きそびれ

後方に見送るばかりだったわたしたち


もうここまでくれば

さすがに大事が出来したと嫌でもわかる

わたしたちはリンデの南門から入ろうとしたのだけれど


「お嬢、それに嬢ちゃんじゃないか

 ギルドの知らせが王都に届いたのかい?

 あ、いや、そんなわけねぇな

 里帰りにはまずい時に来ちまったな

 ここを通るのはちょいと待ちな」


顔見知りの門衛ホフマンさんに止められてしまった


「え、入れないんですかホフマンさん」

とわたしが聞けば


「いんや、入れるぜ

 だがよ、二人は冒険者

 ここを通れば、否が応でもギルマスの強制クエストに参加ってことになる

 ここから引き返すなら

 参加の義務はねぇ、どうするよ?」


「ホフマンさん、宜しければご事情をお教えくださいませんか?

 さすがに事情も伺わず引き返えすには

 私達はこちらにご縁がありますもの」


「そうか、お嬢、なら言うぜ

 暴走スタンピートだ、20年ぶりのな」


暴走・・・冒険者生活を続ける中で

わたしたちもこれの怖さは聞いている

いまだヒトと自然、ヒトと魔物とがせめぎ合うこの世界

辺境の開拓地で時折起こるこの災害


そう、強大な魔物の出現がきっかけだったり

あるいは、何かの拍子で魔物や動物が増えすぎたり

はたまた、捕食対象の激減であったり

それらが原因で起こる魔物の暴走


ヒトと魔物の領域が接する場所でそれは起こり

多くの場合、ヒトの拠点を飲み込んで魔物の

いや自然の領域を回復しようとする働きの一つ


だからといってそれを見過ごせるほど

わたしたちは超然としていられる存在ではないし

ましてここリンデには縁が多すぎた


二人顔を見合わせうなずき合うわたしたち


「ではギルドに伺いますね」


覚悟の替わりにギルドカードをホフマンさんにあえて示すと

わたしたちは乗馬のまま

日中というのにがらんとしたリンデの街を

冒険者ギルドに向かって走る

そして馬止めに、からり、手綱をからげ

ギルドの建物に掛け入ってみれば

受付卓に向かっていたのは

受付嬢さんでなくギュスターブさん


「うわぁ、お嬢、嬢ちゃん、なんて時に帰ってくるのよ

 っていうか、南門から来たんでしょ?

 ホフマンの野郎、帰れって言わなかったの?

 入ってきちゃったら

 みんなの手前、あんたたち返すわけにいかないんだけど」


「伺いましたよ、スタンピートでしょう?

 なら私どもも多少の戦力になるのでは?」


「ありがたいわよ、そりゃぁもう

 願ってもない増援だわよ

 けど、命の保証は全くないし

 報酬は一律10ギニー

 まぁ討伐した魔物はこちらの手数料なし

 参加者で分配だけどね」

 と呆れ顔のギュスターブさんから言われたが


「狩り放題、稼ぎ放題、そういう事でしょう?

 結構なお話です

 で、暴走の規模と防衛側の状況は?

 それとギルドメンバーはどの程度?」


「まずオークが200匹くらい、これの動きで今回の暴走がわかったのね

 その背後に大型魔獣が10頭はいると思うわね

 少なくとも1頭はオーガが入っているのは判ってる

 もっともだけじゃない気もするんだけどねぇ


 守備兵は100名

 とはいえ、あの人たちって魔物を狩るのは慣れてないしねぇ

 外壁の上で守備と、大型弩弓の運用に回ってもらってる

 あとは門の開閉もだわね


 ギルドメンバーはまず外で一戦

 叩けるだけ外で叩いて

 あとは防壁でというのがこういう時の定石だわね

 

 もっとも今回は冒険者のリーダーさんが

 ちょいと趣向を凝らすそうだけどね


 で、肝心のギルドのメンバーだけど

 D以下は後衛 20人ほどいるわね

 Cクラスが3組 5人組ふた組と3人組がひと組

 Bクラスが一組 これは3人組よ

 Aクラスが一組 5人組、ハインツたちね

 であんたたちは?」


「Cのままです

 そこそこ狩りましたけれど、それより旅が愉しかったですしね?」


「あは、お姉さまといろいろ見るのが楽しくって」


「あんたたちらしくって何より

 で、参加してくれるってなら

 今回の防衛戦のリーダーはBクラスのパーティが務めるの

 それがみんなの総意なんでね

 大将も了承してるわよ」


へぇ、ギルド長か、さもなければハインツさんがリーダーかと思ったのだが

Bクラスが務めるとかよほど人徳でもあるのだろうか


「あんたたちも知ってるパーティだわよ

 んじゃ北門の外に集合してるわ

 あたしも後から行くからね」


はて、顔見知りにはBクラスはいなかったが、誰か昇格したのかしらん?

お姉さまと疑問符を目顔で交換しつつ

ふたり北門に急ぐ

今は日中、リンデの街、その市場でも人通りがあるはずだが

今日は人気ひとけが全くないし、屋台も出ていないうえ商家の窓には鎧戸が下りている


家々の奥に潜んでみな息を殺しているのか、さもなくば、子供や老人を先ほどであった馬車で

逃がしてしまった、そういうことだろう


そして、北門の内側

そこが異様に開けていて、私たちは息をのむ


正確には開けているというのとは違う

そこにあるはず、あったはずの建物が取り払われ

瓦礫は北門内側に小さな広場を作るように積み上げられている

これは、何か防御施設を作ろうとして間に合わなかった

そういうことだろうか?


そして出向いた北門の外

さわ、ざわ、さわと低クラスの冒険者たちが小声で昂揚を

あるいは秘かな不安を分かち合っていたり

C以上の者たちは急造でしつらえたであろう壇上に立つものの

最終指示を静かに待っているようだが


皆の注視するその壇上に上がったのは

なるほどわたしたちも知る相手


「こほん、では皆様、そろそろ始めましょうか」 


印象的なエメラルドグリーンの衣装を身にまとい

両手を腰に当て

にっこりほほ笑むレイチェルさんだった


ということで再開いたします

なまあたたかく見守ってやってくださいませ。

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