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38 再 戦

結局間が開きまして、申し訳ありません

とりあえず第1部の終局まであと1話?

かた、かた、かた


「目標を確認、降下します」


操縦席に座った?ヘレネさんが操作卓を叩きつつ伝えてくる


無論、実体がないヘレネさんのこと

そこに立体映像が浮かんでいるのに過ぎないが

インカム付きのヘッドセットを身に付け

近未来風と、わたしやお姉さまには見える

パイロットスーツまで着込んでいるし、彼女?の本体が

この飛翔船アベムナビスを遠隔操縦しているのだけれど


わざとらしいほどにパネルやら、操縦桿?やらを操作しているし

見ている分にはヘレネさんの操作に機器や機体が追従しているように見えるところが

これも芸が細かいというかなんというのか


と、これに乗せてもらうまでもいろいろあった

黒い奴を追撃しよう

お姉さまとそう決意したときも、ふたりでそのまま出発しようとしても

そもそも、ヘレネさんはこの飛翔船の存在を教えてくれなかった


結局、出発間際になり


シーレ様が


「ヘレネ?

もうセラの登録は済ませたのでしょ?

意地悪をせずに、鳥舟アベムナビスを出してあげて」


「奥様、意地悪とはあまりの言いよう

 わたくしは、権限者たるセラ様のご命令をお待ちしていたにすぎません

 機械のわたくしにそのようなことが・・・」


「できるでしょ?

 わたくしと侯爵様を張り合ってどちらがお起しするのかを

 じゃんけん勝負で決めましょうって言ってきたときから

 あなたを奉仕するだけの機械などと思ったことはありませんよ?」


「むぅ、奥様

 千年前の恥をここでおっしゃるなどと」


「あいにくと、呪いのおかげでボケも来ていないようよ

 わたしの行動を予測して見せるとか言っておきながら

 10連敗して涙目だったのもしっかり覚えていますとも

 さ、出し惜しみをしないで上げて」


揃えた両手を口元にあてて頬を上気させるヘレネさん

いやぁアバターとはいえほんとに良くできている

あちらの世界に持ち込んだなら一部の人が狂喜乱舞する技術に違いない


「お母様、鳥船とは、ひょっとして空を飛ぶ船のようなものですか?」


「セラ、わたしはほとんど使ったことがないのです

 けれど、侯爵様がファラスネスの故地を一度見せてやろうと

 そうおっしゃって、十日ほどもかかるものと思っていたら

 半時もかからずについてしまったのよ

 あのお船は侯爵様がこちらに置いて行かれたはず

 あれでいけばあなたたちの探す黒い聖鎧騎士の元にすぐにもたどり着けるでしょう

 場所はヘレネが教えてくれるでしょうし」


「ヘレネ、わたくしからもお願いするわ

 黒い聖鎧騎士は危険です、彼を止める必要があります

 手を貸して頂戴」


このやり取りの間

いつもならわたしから、いえわたしこそお願いをしていたと思う

けれど

なんとなく、ヘレネさんの想いが判ってしまったので

わたしはちらりヘレネさん(のアバター)と視線を合わせると

俯いてしまっていた


「ハルカ様でしたか?

 あなたからはわたくしに何もないのですか?」


「・・・」


「お願いできる立場でないとか、そういうおつもりですか?」


「う、あ、あの」


「あなたとわたくしの行動原理が一致するか否か

 それが問題かと、かように考えますが?」


「はいっ、ヘレナさんおねがいします

 お姉さま、ええ、セラ様はお強いけれど

 お一人では万が一、お怪我をされるかもしれません

 乗せて頂けるならお願いしますっ」


「結構です、ハルカさん

 では、セラ様をお守りし、セラ様のなされることをお助けする

 その限りにおいて、同志ということでいかがでしょう?」


ヘレナさんが片手を差し出す

うん、この世界にも握手という風習はある

実体があるかないか、相手がヒトか機械かなどは関係ない

意志を持って行動し、同じ目的で動くなら

わたしたちは共闘者、同志、それでいい

ヘレナさんがそう認めてくれるなら

わたしも片手を差し出し

無論実体はそこにないのだが

握った片手がなんとなく温かくなった気がしたのだった


そして、いま


鳥船が風切音さえも船内に感じさせず速度をおとし

打ち合わせ通り

人が歩く速度ほどに速度を落とした鳥船から地上に向かって飛び出した


ちらり、背後を振り返ると

鳥船の搭乗口だけが一瞬だけ虚空に浮かんでいて

扉が閉まると同時にそれも消え失せた


光学迷彩という奴だろう

まぁ、仇であるわたしの搭乗もさることながら

この世界に異質な科学技術を持ち込みたくないという

侯爵様の意志を尊重する気持ちはわかる


それにしてもすごい技術ではある

わたしが邪魔をしなければそれが目的だったのかどうかは知らないが

単純な武力による世界征服など簡単にできたのではあるまいか

もっとも、侯爵様の配下が圧倒的に少なすぎたから

支配がどうなるのかは知らない

そもそも、それが目的だったのだろうか?


などと考えつつ

わたしは初めての地上降下に少しだけばたついたものの何とか着地

そのまま疾走を開始する

むろん、お姉さまがわたしなどより優雅に舞い降り

わたしの横を走っておられるのは言うまでもない


そして

ふたり歩みを止め

お姉さまは懐中から例の王立図書館の紋章入りカードを取り出す

そこに浮かぶのは

わたしたちの位置と、黒いあいつの位置

そう、あのカードはあちらの世界で言うならスマホともいうべき

いやもっと発達を遂げたデバイスだった

シーレ様はそもそも

親子の名乗りができなくとも、お姉さまの身を案じて

これをお渡しになろうとわたしたちにお声を掛けられたと仰っていた


光点の接近を見つめることしばし

肯いたお姉さまはカードを操作して光点を消すとそれをおしまいになり

ふたり木陰からあたりを伺えば


よろ、よろ、よろりと鈍い足取りで黒いあいつが現れる

胸元を押さえるようにしているが

あの折の最後の一太刀が浅かったとしても、ブレイブアローの熱線が

胸に深手を残している

そういうことだろう


「どこに行こうというのです

 手負いとなっては昨夜のような無体はもう働けないでしょう

 あなたも侯爵の、ええ、ファラスネスの衣鉢を継ぐというのなら

 いかがです、本来の守護騎士としての役割に立ち戻り

 民を守るものとして働きませんか?」


これが最後の説得の機会

思い定められたお姉さまがその姿をあらわにされ、黒いあいつの前に立ちはだかる


鳥船の中でお姉さまはわたしに胸中を明かしてくださった


そう、わたしが同類である?かも知れない「聖鎧騎士」がこちらの世界にいる

それが今もなお暗躍しているのでは?

そう思ったとき

わたしは正直怖かった

同類がいるかもしれないことの嬉しさよりも

自分の知らない自分の過去、自分の因縁が捨ててきたはずのあちらの世界から

まだ追いかけてくるのでは?


そして、あろうことか

そもそも事の始まりはこちらの世界で起こったことと

それを知って

お姉さまに励まされた折の

「わたしたちの運命はわたしたちで決める」

その決意を新たにしたのだけれど


逆にお姉さまはわずかながらに聞き知っていたお父様の故郷

それがこちらで知ったファラスネスの伝説と何か重なるものがあると

そのことで胸の不安を膨らませていらっしゃったのだと

そして

自らの身にわたしの剣を受けることで少しなりとも

精算したつもり、詫びたつもりででいらしたの同胞への裏切り

それをまたもやしてしまうのではないか

そのお気持ちが黒いあいつの鎧を切り裂かなかった

いえ、切り裂けなかったのだとそう告白された


「けれど、もう大丈夫

 裏切る裏切らない、そういうことより

 せめて父がこちらの民を守ろうとしていたのなら

 その想いは果たしてあげたいの

 お母様から教えて頂いたあれこれで

 わたしはそれがレザ将軍達へのせめてもの慰めとそう思ったのよ」


そこまでの決意をされたお姉さまが、まず説得をとされるのは

わたしにも得心が行くし

わたしにしても、過去の因縁はどうあれ

同類を機会も与えず倒す、それにはやはり抵抗もあった


「くっ、どうやったかは知らないが、やはり聖鎧騎士には

 聖鎧騎士の位置は判るという事かっ」


「そうよ、あんたの知らない聖鎧騎士七つの秘密の一つだわ!」


いやそんなヒミツは言ってるわたしも知りはしないが

いまここで真相を知らせることもあるまい


「もう一度だけ言います

 あなたの犯した罪を裁けるものはこの大陸のどこにもいないでしょう

 けれど、強さというだけならば

 わたしたち二人であなたを倒すことならできます

 昨夜仰っていた、強いものが世界を握るというお理屈ならば

 あなたはわたしたちより弱い


 どうです

 そういうことにされて

 わたしたちを倒せるまで、もう一度修行なり

 罪滅ぼしなりを致しませんか?

 そのためのご協力ならさせて頂きます」


「断る

 そもそも王者たるこの俺が膝を曲げる相手などおらん

 斬れるというなら斬ればよい

 倒せるというなら倒せばよい

 お前らのような苦労知らずに俺の何がわかるっ」


「・・・『コンソール』」


わたしは黒い奴のことばを聞くとベルトを呼び出す

苦労知らずとは言ってくれる

あちらでわたしとお姉さまとが流した涙を知りもしないで

ヒトを恨むことしか知らない、知りたくないというのなら

こいつの持つ力は害悪にしかなるまい


「くぅ、『ケンソル』っ」


黒い奴もベルトを呼び出す


「変身っ」


「『サンクトゥス アルミス』っ」


わたしと奴の周りに光が渦巻き

そして、再び白と黒の聖鎧騎士が向かい合う


「お待ちなさい、はるか、彼を倒すのはわたしの仕事

 あなた、弔う前に聞いてあげましょう

 墓碑銘はなんと?」


「ふ

 『世界の王、タルク、100年の治世ののちここに眠る』

 俺がそう刻ませるとも

 王に逆らう下郎ども、ここで果てるがいいっ」


タルクと名乗ったそいつは

いきなり黒いオーラを噴出させる

やはりだが体調は戻っていないのだろう

早期の決着を狙ってのこの行動、それに違いない


そして黒いオーラの噴出が収まらない中

漆黒の鎧となったタルクが突進してくる

その両手には、すでにぎらつく断罪の光



体調万全だったはずの昨夜でさえわたしに破られたこいつが

浅かったとはいえつい先ほど斬られたばかり

油断すらせず、互いに決意を高め合ったわたしたちに敵うはずがない


タルクが先手を取って突進

交差させた断罪の光剣は胸の前に構えたままだ

速さを活かして距離を詰め、二本の光剣を捌きあぐねたところに

双剣を一気に展開させて

お姉さまを狙おう、そういう動きだろう


させるものか


わたしもすかさず距離を詰め、断罪剣をタルクのやや左側面から打ち込めば


がしり

仕方無くタルクは交差させたままでわたしの断罪剣を受け止める


昨夜の過信のままならば

片手でわたしを制止、そのままお姉さまを牽制なり、狙うなりをしたはず



奴の脳裏には昨夜の私の一撃が染みついているに違いない

わたしの一撃を受け止めながら

じりり左側に回り込み

わたしの身体でお姉さまの一撃を防ぐ盾にしようと動く

そして

ここを先途と一気にパワーを爆発させて、そのままわたしを押しつぶし気味に

切り裂こうとする


「貴様、貴様、貴様

 貴様さえ現れなければ

 秘奥に至った俺が負けるはずなどないものを

 邪魔、邪魔、邪魔だぁっ!」


やはりこいつには見えていない

なぜ自分が圧倒されたのか

なぜ自分が負けたのかを


「貴様を倒したら、あとは何とでもなるっ、死ねぇ」


だが


「がふっ」


奴の脇腹にお姉さまの宝剣が突き立っている


無論わたしの脇腹をかすめるようにしてお姉さまが放たれた必殺の突き


「がわっ

 何故、なぜだぁ」


所詮、奴とわたしたちとではくぐった死線の数が違う

この変身後の姿でさえ死と背中合わせに戦い抜いたわたし

そして、わたしをお導きになりながらも研鑽を続けられ

最終局面では

わたしと死を挟んで切り結ばれたお姉さま


昨夜、手加減されていたのをタルクには知るすべもないが

奴と同等のわたしの装甲をも切り裂かれたのがいま奴を貫いている宝剣だ


変身が解け

ベルトが外れて落下し

脇腹をえぐられたままタルクが呻く



即死はしていない

お姉さまの慈悲のおわざの冴え

そしてベルトが果たす大ダメージを受けた時のブレーカーとしての働きが

かろうじて奴の命を散らせていない


くずおれるタルクの頭上には

わたしの構えたままの断罪剣

このまま断罪剣を振り下ろせばそれですべては終わる、終わるのだが


呼吸はぴたり

お姉さまが最後、本当に最後のお声をかけられる


「タルク、これが最後の機会です

 あなたは負けました、わたしたちの元でやり直しなさい

 先ほども申しましたが、これは勝者の権利

 受け入れなさい」


「いやだ、いやだ、いやだぁ、助けろ、だれか、だれかぁ」


これまでか

わたしは断罪剣を振り下ろす



わたしたちの背後、そう、タルクが向かおうとしていた方向に

突然大きな魔力の揺らぎが現れたかと思うと


どむ


かろうじて魔力の接近に身をひるがえしたわたしとお姉さまは

何かの塊に3mほど後ろに飛ばされる


飛来した魔力隗をふぁさり、マントの一振りでいなされたお姉さま

そしてもとより聖鎧騎士の姿であるわたし

二人とも傷など負ってはいないが


わたしたちに魔力の塊をぶつけたやつは

わたしたちとタルクとを切り離すことがそもそもの目的だったに違いない


「殿下、お待たせいたしました、それっ殿下をこちらに」


声を上げたのは優男に見えるが

先程わたしたちにぶつけた魔力弾のはやさ、強さ

そして隠蔽だったのか、まさか転移なのか

この場にわたしたちの気配察知を躱して現れたその手並み

油断できない相手、それに違いない


声とともに数名の屈強な男がタルクに駆け寄り

タルクと、もちろんベルトも回収して、先程声を上げたものの方に向かう


やはり協力者がいたのか

しかし、殿下?

王を称していたのでないのか?


「下郎ども、大陸を統べる王におなりになる殿下を傷つけるなど

 下郎どもには許されぬ、下がるがよい」


ははぁ、それで殿下か、いずれにせよ微妙な称号ではある


「ほ、ホルセっ、お、遅かったではないかっ

 だ、だが、だが、かろうじて間に合ったな

 その働きに免じて、このたびは許してやろう

 さ、早く早く俺を、俺を連れ帰るのだっ」


瀕死のはずだが、まだこんな口が聞けるとは

タルクとしてはよほどうれしかったに違いない


ホルセと呼ばれた男の顔にやさしげな微笑みが浮かぶ


「殿下ここまでの御働き御苦労さまでした、このホルセ厚く御礼申し上げます」


「な、なにを今頃、礼など後でよい

 早く、早く俺を逃がせ

 俺、俺さえいれば、再起はかなうのだ、早くっ」


「では」


ごぼっ


ホルセの配下がタルクの脇腹に円筒のようなものを突き立てている


タルクの喉から血と最後の息とが混じり合ったものがこぼれ

タルクの眼から光が消える


「おさらばです、殿下、このケンソルでしたか?

 それと殿下の血肉の幾分か

 我らの力となりましょう、では永遠に・・・」


その声と同時に

再び彼らの背後に魔力の揺らぎが生じ


ぎぁぁぁぁぁ


わたしたちに向かって牙をうならせる

巨大な骨


骨と腐肉


怖気を振るいたくなるような

骨と腐肉の巨大な龍が現れた


活動報告にも書きましたが

お見捨てなく、チェックしていて頂きましたことありがとうございました。

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