2 鬼物破損(きぶつはそん)
まずは、決着
しゅるしゅるしゅる
音などはしないけれど
先程捉えた火球を愛刀にまとわりつかせながら
お姉さまは手品のように回す
「オーガの弱点は角よ
角がなくなれば魔法も使えない
再生が面倒らしいけれどそれも止まる
そうなれば、ただの獣
できるわね?」
振り向きもせずお姉さまが言う
「はいっ!」
なら変身を
「これを使いなさい
それはいまはいらないわ」
やはり振り向きもせず
お姉さまの愛刀ではなく、御腰に付けていた
もう一振りの直剣をわたしに投げてよこされる
変身は無用か
お姉さまがおっしゃるのなら、それに間違いなどあろうはずもない
「はい」
お応えしてわたしはしゅらり、鞘を払う
「行きますっ」
ダッシュ
ただのダッシュではまぁない
すぃ、する、しゅん、する
すべて間隔も速さも違う
さらに右、左、また左へと方向だって変則に振っている
ジグザグダッシュで一瞬で近寄ると
ひゅん
わたしがオーガにとびかかるその瞬間
わたしの横を
轟
お姉さまが捉えていた火球が私の接近に注目していたオーガの顔面に炸裂する
したが
オーガは堪えていない
「自らの炎などで死にはせぬ
我の力を見くびる・・・」
「見くびってなどいないわよ、本命は違うもの
もうあなた終わっているのだし」
お姉さまが宣告を下す
「何を」
とここまで言ってオーガは気づいたようだった
背後に降り立った私がオーガの角を切り飛ばしていることに
「ごわぁぁぁぁぁ」
角に手を、手を伸ばそうとして叫ぶオーガ
「許せぬぅ、小娘ども、しねぇぇ」
けれどわたしも振り向かずにこういった
「さよなら鬼さん、相手が悪かったわね?」
「な、なにを・・・・・・」
ごとり
オーガは最後に見たかもしれない
自分が自分の胴体を地面から見上げる映像を
瞬間にその身長が半分になり
胴体がずれ落ちてゆく様を
首
袈裟懸け
一瞬で二撃、お姉さまが入れておられたのを
わたしは背後で感じていたが
首をおとし
更に完璧な胴切りにまでしておられたとは
「遥」
「お姉さま」
多少血なまぐさかったかは知らないが
それもわたしたちにはふさわしい再開なのかもしれない
くずおれたオーガの前で
わたしたちは抱き合って
それから
口づけを交わしていた
ふたり
ふたり
泣きながら
次回、街へ