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26 夜 着 戦 闘(パジャマパーティ)

図書館にまだいけない

とて・・・とて・・・・・・とて


近づく気配


はて?と顔を見合すお姉さまとわたし


ここは、宮殿かとみまごう、豪奢な寝室

先程伺ったレイチェル様の『お友達』事情からすれば

こういう変則な宿泊者は多分いないと思うのだが

なにをどう都合をつけたのかは知らないが


天蓋付きの巨大な寝台が二つ

ひとつでも問題ないのに、そうすればお姉さまと

この素敵な寝台で、むふふなどと、想いつつ

近寄る気配に気づかずにはいられないわたしたち


「こつ・・・、こつ、こつ」

ためらいがちなノックの音が

「あ、の・・・もうおやすみでしょうか?」

おや、この展開はちょっと意外だったかも

「どうぞお入りください、まだ起きておりますよ」

お姉さまが答えれば

「失礼します、ね?」

夜着の上にカーディガンをふわり羽織ったレイチェル様が入ってくる


・・・ここはいかがされましたなどと言ってはいけない気がする

「ようこそ、レイチェル様、これから二人で、うふふ、そんな気分でしたの」

「しっ、しつれいしま・・・」

わしっ

たまには、普通の身体でないことが嬉しいことだってある

ほ~れ、お嬢様げっとだぜぇ

「きゃぁ」

「えへへへ、レイチェルさまぁ、夜は長いんですよぅ?

 たのしみですよねぇ、げへへ」

「あ~~れ~~」

ほら、やっぱり、あ~れ~っていうヒトいるじゃない

だれよ、わたしを大根だとか人参だとかいう人は

とふん

ともあれ、ベッドにお座りいただく


「ご、ごっ、強引ですのねっ」

「ええ、それはもう、だって『お友達』ですから、ねぇ、遥?」

「はい、おじょ・・・、はい、『お姉さま』」

「まぁ、それがお二人の呼び方なんですね?」

「わたしがかってに言いはじめたんです

 お姉さまがくすぐったそうな、お顔をされるのがうれしくて

 つい、そう呼び続けちゃってます

 でも、もうほかの呼びかたなんかしたくありません」


ここらで肩の力が抜けたか


「ごめんなさいね、明日から、業務と格闘、そう思いましたら

 名残惜しい気がしまして、もうすこしだけ、その、お話したいなと」

「いいえ、わたくしたちも、いろいろありましたけれど

 旅の最後の夜、あぁ、あの崖の上のがそうだったんでしょうけれど

 ええ、最後の夜を、お呼び頂いた、安穏な暖かい場所で

 そう思いましたら、眼が冴えておりました」

「ほんとうに?」

「うふふ、どうでしょうか?」

「あら、セラ様は意地悪なんですね?」

「うそもなんとか、あぁ、ええとなんていいましたか?

 いい嘘もある、って言い回し」

「あぁ、『女神の衣装を剥ぐのは野暮』ですかしらね?」


ほう、こっちではそういうんだ


「ええと、それで思い出したんですけれど

 うーん、ちょっと失礼なこと聞いても構いませんか?レイチェル様」

「うふ、『レイチェル』で構いませんですよ、ハルカさん?」

「ええ、では、けふん『レイチェル』?」


しゅら

あぁやっぱり

知ってましたよ、レイチェル様の影に潜むようにして

お部屋の中に入ってきてたのは


「アスティナさぁん、レイチェル・・・

 ええとぉ、レイチェル様?がいいっていったんですけどぉ

 その武器ぃ、ええっと、なんていうんですぅ?

 喉にぃあてられるとぉ、こわぃんですけどぉ」


なんだか私の口調もおかしくなってる気がするなぁ

っていうか自分で言ってて、若干ムカツク

もう、これはよしにしよう、そうしよう


忍剣シノビソードと申します」

まんまじゃないか、やっぱりいるのか、ニンジャ、いや、忍者のほう

「こほん、親しき仲にも何とか申します、御自重を」


そういうアスティナさんも、白い柔らかな夜着を着込んでいる

いっそ、くの一装束でも着てきた方が夜の衣装という気がしなくもないが


「ふむ、アスティナさん、そのお姿は?」

「はい、もちろん、『お嬢様』の寝所に侍る姿でございます」

まった、ちょっとまった、い、いや、いろいろいけない気がする

なんですよ、侍るとか、寝所とか


「お嬢様の御眼が固いおりなど、お嬢様の尊いおつむりを

 恐れ多いことながらひざに乗せて、絵本をお読みしたりする折の

 装束でございますが、何か問題でも?」

いいかたぁ

つか、それなの?

い、いや、絵本なんだ


「あは、子供っぽいでしょう?

 お恥ずかしい次第と思いますが、夜にといいますか

 ほんの少し前まで、それこそ1000ステラリアだの

 10000ステラリアを どうするのとか

 だれをどうこうとか、ね?

 そういう話をしていて

 また早朝から、別の相手と・・・、でも、寝なきゃいけない

 けれど眠れない、そういう折に、アスティナの膝枕で

 お伽噺の絵本を・・・」


なんだ、かわいらしいところもあるじゃない、ちょっと安心


「はい、アスティナのあの冷たい声でお伽噺、ええ、ぞくぞくするんです」

「レイチェル、それ、危ない気がする」


しゅらっ

これはお姉さまが指で挟んでおとめ下さった

まぁ来てたらパジャマパーティでなく

パジャマウォーズを開戦させたところだけど


「え、危ないかしら?」

「ま、まぁ人の趣味はいろいろですし、むむっ、アスティナさん、やりますね?」

「セラ様こそ、わたくしけっこう本気で、うふ、ふふふ、だめですか

 ならば、いま少し忍剣に力を・・・」


なんだか絵面はすごいことになっている気がするけれど

わたしはちらりお姉さまと視線を交わす

よし、そっちは、お姉さまにまるっとお任せしよう、そうしよう


「はい、レイチェル、続きですけど」

「またいったぁ」

「ええ、はい、ハルカ、でいいかしら?」

「お嬢様、呼び捨ては私の特権~~~」

「ここはお任せなさい、ハルカ、うふふふふ」

「ええ、レイチェル、あのね

 レイチェルは、ヒトのお話の方向やら、力加減やら

 隠し事やら、わかるんでしょ?」

「したしすぎるぅぅぅ、ええぃ、こ、ここは忍法シノビアーツ・・・」

「させないわ、アスティナさん、これならいかがっ?」

「はい、そうですよ、あぁ、なるほど、ステフのあれ、ですか?」

「ええ、ステファンさんが、本心でそこまで怒ってない

 それがわからないレイチェルじゃないでしょう?

 お姉さまはともかく、鈍いわたしだってすぐわかったんだもの」

「ま、またいうかぁ、えぇぃ、セラ様、その指をおはなし下さい

 りょ、慮外者をここでぇ」

「ふっその慮外者に、だれが付いていると思うのです?

 させません、させませんよ、『アスティナ』?」

「わ、わたしのことまでぇ」

「お友達、違うのですか? くすっ、先ほど『ステファン』さまもそのように」

「ひぃっ、そ、それは卑怯、そ、その名を呼ぶとかぁ」


「お呼びになりましたかな?」


「「「「ぎっくぅ」」」」


「ほっほっほ、美しいお嬢様がたの御戯れ

 もう少し拝見しようかなと思っておりましたが

 少々、お力がこもりすぎではございませんか?

 その寝台は、12代目国王陛下のご息女がお使いのアンティーク

 壊れますと、400年物ゆえ買い直しが効きませんもので

 ともあれ、お茶で一息、いかがでございましょう?」


「し、失礼しました、そんな貴重なものの上で力比べなど

 お恥ずかしい次第です」

「いえいえ、しかし、あまり騒がれるとご息女様が・・・」

「「「「えっ」」」」

「その上で、毎夜毎晩うら若い侍女を責め抜いて、はかなくしたという方が・・・」

「「「「え、え、え」」」」

「おや皆様の後ろに、ご息女様が」

「「「「え、え、ええ、ええ」」」」

「冗談でございます」


しゅら、忍刀一閃

はしっ、お姉さまの神速の手刀


あ~これはかなわないわ

本気でやったらどうだか知らないけれど

ステファンさんって見事間合いを外したものなぁ

え、わたし?

レイチェル様にしがみつかれて身動きできなかったんだよね

うふふ、あ、アスティナさんの眼が怖いや


「ふぅむ、ねぇアスティナ?」

「ああ、もう結構でございますよ、何でしょうか、セ、ラ、様ぁ?」

「あら、取ってくださらないのね、まぁいいでしょう

 ええ、アスティナ、いっそステファンさんにお稽古を?」


うんうん、わたしもそう思う、リンデまで行かなくったって

こんな高レベルのお人がいるじゃない


「付けておりますよ?

 ですが、ギュスターブ殿にかなわないようでは

 わたくしの稽古にこれが付いてこれるはずもなく

 あぁもっとも

 皆伝を頂いたのでしたな、ふむ、これはなかなか愉しみな・・・」


何者なんですかね、この執事さんは


ということで、仕切り直し

わたしたちは

うん、がっちがちに固まっていたけれど

アスティナさんも含めた4人

ステファンさんが淹れてくださったお茶をみなで頂くことになってしまった


「ほっほ、アスティナ?

 無礼講は今宵だけ

 とはいえ、ええ、許可をしますよ、お仲間に入れて頂きなさい

 では皆様ごゆるりと」


その消えかたのお見事なことと言ったら


「なんとなくわかっちゃった気もするけど、レイチェル

 でも、強いってだけじゃないよね?」

「ええ、もともとお父さまのというか、ゼクストレーメ家の執事長

 わたし余計なものが見えるせいで

 小さいころからそれこそ、友達もできないし、ね?

 でも、ステフはわたしの余計な力を知ってからも

 少しも態度が変わらないし

 ええ、私が見ても、裏表はあるのに裏表がない

 おかしな言い方だけれど

 口を極めて、お父様やわたしをこき下ろしても

 ちゃんと情があるの

 ・・・求めるレベルは高すぎるかもしれないけれど、ね?」


なるほど、それはかなうまい、しかもあの達人っぷり


「だから、なにが私に見えたところで、敵わないものは敵わない

 素敵って思うじゃない、こんな人が執事でいてくれたらって

 だから、独立するときに

 援助とかいらないから、ステフを頂戴ってお父様に」

「で、頂けたと」

「違うの、セラ、お父さまはね

 『私は構わんが、ステフに聞いてごらん、あれは、伊達と酔狂で

  うちにいる奴だからな?』って

 で、お願い来てちょうだいっていったのよ

 うん、ちいさいとき、大人になったらステフをうちの執事にしてあげる

 世界一の御金持ちになったら、来てねって?

 ステフだって、それは愉しみなとかいってたのに

 『ほほぅ、お嬢様がわたくしを雇ってくださる?

  それは嬉しいお申し出

  しかし100年お早いと申し上げましょう』ってこれよ」

「でもいらしてますよね?」

「けっきょく、お父さまに泣きつきました

 お父様がね?

 『ひよっこが巣立とうとかいうのだよ、親ばかと叱られるだろうが

  お前がついてくれる、それだけで安心できる

  頼まれてくれないか?』って」

「いいお話じゃないですか」

「って思うでしょ?

 『ほっほぅ、ならば旦那様、御当家はわたくし無しで、回る、と?』

 『回るとも、ま、回るかな、ええと、回るといいなぁ』

 とかこれよ、結局、三月お待ちなさいとステフに言われて

 その間、執事たちも、事業の長たちも、皆絞り抜かれたって

 わたしの方に苦情が来たわ」


それは皆様お気の毒

とはいえ、特別な力というか、それがあるとしても

ともかく自分の足で立とうとされたわけだ

お金を稼ぐだけならば、親がかりでいるほうがよほど楽だと思うのだけど


「はい、ではもう、ここまで話してしまいましたし

 お話します

 でも、その前に、うふふ、目が冴えてしまうかもしれませんが

 アスティナ、もう一杯お茶が欲しいわ」

「少々お待ちを、湯桶の準備はさすがステファンさまのご用意で

 万全でございますから、折角でございます

 茶葉も入れ替えまして、『蜜香』を存分に味わって頂きませんか?」

「『蜜香』?」

「あぁ、先ほどのお茶、少しミルクの様な香りがいたしませんでした?

 あれを『蜜香』と呼んで珍重する向きもいるんです」

「それは愉しみ、リンデにいた時も高級茶葉といわれるものを

 いくつか愉しみましたけど、こちらのものは格別でした

 いいものは、恐ろしいほど高価なのですね?

 マンティコアさんにはせっせと茶葉に化けて頂きましょう

 ねぇ、遥?」

「はい、あ、そうそう、気になっていたんです

 こちらにはもっと、発酵が進んだ、ええと赤い色のお茶はないんですか?」


せっかくだもの、知識がひろいはずのお方に聞くに限る


「あぁ、『赤茶』ですね、ございますよ、ねぇ、アスティナ」

「はい、わたくしなどにはむしろなじみの味、庶民の飲み物

 大量に遠くまで運搬するのに向いているということで

 お茶が流通し始めたころはそちらが主流だったとか

 一部高級品もありますけれど

 貴族様では『赤茶』は変わり者が飲むもの

 そういう扱いですね」

茶器を温め、温度に注意しながらアスティナさんが答えてくれる


うっわ、残念、紅茶好きにはいきにくい世の中だったか

っていうか、「紅茶」ってつけた人はえらいな

「赤茶」っていわれるとちょっと生々しい

でもいいや、変わり者で結構、王都で探すとしよう

ふぅ、と『蜜香』だっけ、薫る甘い香りが喉の奥、鼻の奥をくすぐる

レイチェルさんもそれを楽しまれたのか、それとも何か覚悟を決められるのか


「ええ、申し上げます

 そして、お二人に目を付けた理由も」


商都の夜は、まだ厚く、そして長そうだった


紅茶の話が出たのでサブタイに「紅のお茶」も加えようかと考え

不遜であることに気づきました

ポルコ、あちらに行ったのねぇ

(森山さん、ご冥福をお祈りいたします)

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