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22 旅立ち、博労(ばくろう)、ときどき女優

何とか今日中に出せた!

追記:博労さん、馬喰とも書きますね

お馬さんの仲介業者さんと言うことで

騎馬でうろうろする野盗団どもが身分を偽った

ということです。

劉備一行に初期投資をしてくれたのも

馬と塩を扱う商団の方々だったとか。

きゅ、ぎゅ、ぼふん


交わされる握手、抱擁、そして背なに一撃


旅立ちの日がやって来た


決まってしまえば、2日後などあっというま


アスティナさんは、主従の分の食糧やら、消耗品その他は

もうすでに手配を終えていたようだが

わたしたちはというと、初めての遠征ということもあり

はっきり言って、駈けずりまわる羽目になった


もちろん、宿駅での購入も当然考えに入れているが

護衛がそのたびお買い物に走りまわっているようでは

ものの役には立つまい


依頼者側のアスティナさんと調整に入り

大休止、小休止をどこで取るのか

などなどなどを勘案したうえで、物資を用意しておかなくてはならない


そんな時、力になってくれたのが

正体バレというか、ばらしというのか

あの日、ドーラス工房のご近所で声をかけてこられた

チューリング商会のご主人

さすが、ギルド長に親しげな声をおかけになるだけのことはある

聞けばギルド御用達というか、冒険者御用達というか

ギルドから上がる魔物素材の買い取りをはじめ、

手広く、冒険者に関わるなにくれを扱う商会だったようで

遠征用の保存食から、嗜好品

携帯用日用品、天幕の類、その他諸々一式を手早く確実にそろえてくださった


正直、マジックボックスとチューリング商会の尽力がなければ

出発の日を伸ばしてほしいと情けなくも泣きつく羽目になるところだった

そして、リンデ

わたしで、およそひと月、お姉さまがふた月過ごした、このリンデ


とんぼ返りしたとしても、3か月ほど

いや、わたしたちはそのあとの彷徨さすらいまでを想えば

しばらくここには帰れまい


そう、たとえここが、最初に流れ着いただけの街にすぎないとしても

もう、なんとなく、ここがわたしたちの、ホームタウン

そんな気がしていたのだから


「また、泊りにおいで、黒いのを用意しておくからねぇ」

出発の日、朝食の席でおかみさんから言われ

むせと一緒に目ににじんだのは、まぁ感傷的だけれど

そういうことに違いない


ルックナーギルド長、ギュスターブさん

そしてもちろんドーラスさん、さらには『オーロラ』のご一党まで

前日のうちに御挨拶に伺ったのだが

その日は残念、皆様所要ありということでお目に掛かれず

これも冒険者の宿命ってやつかななどと、お姉さまとすこし

感傷的になっていたのだが


出発の日

皆さま顔をそろえてくださったとこういうことになった


「あー、なんだ、これもギュスターブの仕込み、本当に悪い奴だなぁ」


「大将!!、はぁ、もう、そうしておいて、これで胃薬が減るかしらね

 とはいえ、久々に面白かったかもねぇ、元気でね」


「ま、そのうち、帰ったらみやげ話でもたのまぁ

 あと、王都に行ったら、入用ならここに行きな、おいらの兄貴の店だ

 ほい、紹介状ってやつになる」


「お嬢、嬢ちゃんそのうちどこぞの狩場でまた会うだろうぜ

 そのときゃよろしくたのまぁ

 うちと、五分のパーティができたって、もうこのあたりじゃ

 噂になってるらしいぜ、それも、何かの足しにゃぁなるだろう

 じゃ、な」


「あたしが子育ての時には、すけに入ってもらう気でいたんだけどねぇ

 ま、仕方ないやね、もうその頃は格上してるかもだしねぇ

 ともかく、だ、二人はあたしとハインツのキューピッド

 少々物騒で、腕が立つキューピッドそういう事さね、また会おうねぇ」


そしてぼっふんとこうなった


や、泣きませんでしたよ、これで泣いてちゃ冒険者なんて

務まりませんって

少々眼から水が垂れて止まんなかっただけですって

お姉さまがハンケチを貸してくださったけれど

そういうお姉さまだって・・・


ともかくも、顔見知りになったヘルマンさんはじめ門衛の方々には

笑顔で挨拶できたから

門出にどうこうは言わせない、言わせないったら言わせない


さて、レイチェル様・・・今回の雇い主だしね

うん、レイチェル様でいいだろう、「さん」とかうかつに言うと

ニンジャさんが怖いし


そう、レイチェル様が来られる時には

あえて、高級ではあるが乗り合いを選ばれたという

それが災いしたのではと、言っておられた


つまり、背景は確認できず、そういうことだろう


もしもだが、背景「あり」で再度の襲撃となった場合

今度は前回のようなわけにはいかない可能性もある

そして、乗り合いは、日程も容易に予測されやすい

そういうことで、今回は、購入された2頭立ての馬車


アスティナさんと、お姉さまが交代で馭者をし

お姉さまが馭者を務められる時には、わたしがお姉さまと馭者席

たまに、わたしがレイチェル様のお相手で

馭者役のどちらかが中で休憩

とこういうシフトになった


基本宿駅

時々野宿


アスティナさんが野宿に慣れているのは、まぁ想像の範囲内だが

レイチェル様のほうも、馴れているというか

粗食・・・まぁ品質の方は豪華だとは思うけれど、旅の粗食にも

場合によっては馬車での就寝も辞さない

むしろ楽しんでおられるというのはちょっとだけ意外だったかもしれない


そして、旅程は順調に消化されていくのだが

「ありそうですね、アスティナさん」

「さようですね、セラ様、ハルカ様、今宵あたりでしょうかしら?」

「たのしみねぇ」

「「「それは」ございません」ないです」善処いたしましょう」

いやいやいや、このニンジャさんは何を善処する気でいるんですかね


「前回は、血の雨をお見せできませんでしたので」

やめてほしい

っていうか、ここの世界のニンジャさんはどういう職業なんだろうか?


ともあれ、そういう話になったのは

いるのだ

ちらり、しばらく視界から消えては、また半刻、ちらり


別に野盗のなりをしてはいない

視界にはいる相手も同じではない

が、確認しては消えていくという風な相手を昨日から3度も見れば

悲しい経験を積んでしまったお姉さまとわたしの勘には

警報が鳴っているし

馭者席でこっそりエリアサーチをしてみれば

大回りをして

前や後ろに走り去る騎馬の動きも見えている


実はもとより

このあたりがと

あるとすればとそういう話になっていた


宿駅が離れてしまう場所が、道中何か所か、やはりある

さらに、地形が、ある程度に見通しが効き

そして、襲撃する気になれば、それなりの人数も隠す場所がある

逆に言えば、そういう場所は街道筋ともなれば結構少ないわけで


その近辺で先ほどのような動きがとなれば

どうやら、今夜


だが

こちらも、ただで襲われてやるつもりなどありはしない


エリアサーチで見張りが接近していないことを確認すると

わたしたちは、街道筋を離れ森の中に踏み込む

馬車を小枝で覆い

わだちをその時ついでに落とした木の枝で

アスティナさんとわたしとで、掃いて回り

ついでに、アスティナさんの替えの衣装を貸していただいた


「よろしいですか、レイチェル様

 血の雨をお見せは出来かねますが

 それもこちらの仕事ということでお許しください」

「観戦も、不可でしょうか?」

「それは、契約に含まれておりませんでしたので」

と、にっこり笑うお姉さま

「こほん、『レイチェルお嬢様』、アスティナ先輩がここにいらっしゃる

 それだけで、わたしたちが自由に動けるんですから

 我慢なさってください、何でしたら、首を10くらいは・・・」

「無用です、あと、アスティナほどには似合っておりませんよ?」

むぅ残念、メイドのお仕事は不得意でも

残骸でよければお見せできるというのに


「では、行ってまいります」


そしてふたりで街道筋に戻り

道脇で伏せて待つことしばし


ざく、ざく、ざく

北側、すなわち、リンデの方向から10騎

「いないじゃねぇか」

「いや、そんなはずが」


かつ、かつ、かつ

南側、王都の方角から20騎

「おい、どうなってやがる、おめえら、ガセを俺たちに売ったってなら

 ただじゃおかねぇ」

などと物騒な連中が集まる


顔を見合わせるわたしたち


わたしは、転がるように、街道に駆け上がると

「お助け、おたすけくださいっ

 馬が、馬が暴れてっ、お嬢様の馬車がぁ」

とわめいて見せる

にやり笑った両グループの頭目どもの顔と言ったら

逢魔がどきだからよかったようなものの

善良な市民やお子様などにはとてもお見せできない代物だった


「おう、ちょうど良かったなぁ

 俺たちは、博労ばくろうだぜぇい

 王都に馬を売りに行こうってところだぁ

 あぁん、馬車はどうなったってぇんだ?」

「は、はい、う、馬が暴れてあち、あ、あちらの奥に突っ込みまして

 そのまま、あそこ、あそこの奥で転がってぇ

 護衛さんたちも大けがをっ

 お嬢様、お嬢様がぁ、おたすけ、お助け下さいませっ」


「おっしゃ、小間使いさんよ、案内しな、おい、お前ら10人ほどで付いていきな

 助けがいるようだったら、呼ぶがいいぜ」

「ありがとうございますっ、こちら、こちら、こちらですっ」

ちぇ、10人しか寄越さないのか、けち臭い頭目だ

「あぁん?」

「い、いえ、お早く、お早くねがいますっ」


森の奥に走り込むわたし


「おじょうさまぁ~いままいりますぅ、おたすけがまいりましたぁ~~」

わたわたと

馬車に向かうが

馬車の姿が見えたその時

「おい騒ぐんじゃねぇ、案内ありがとよ」

わたしの肩に汚い手が載せられ

そして振り向くわたしの首筋を掻き切ろうとする白刃が


くるん

むなしく空を切り


「げぼっ」

しゃがみざま、みぞおちに一撃

あまり手加減はしていない

あ~、そこらの樹に当たったか、むしろそっちのがダメージが大きいかも


「やだぁ博労さんって、こんなもの使うなんてぇ」

つまみあげたナイフを投擲

かいん

良い音したなぁ

次の奴のこめかみに、ナイフのこじりが大当たり

あれは脳震盪で済めばいいなぁ

ひょっとすると命にかかわっているかも


「小娘、きさまっ」

小娘でも貴様でもないんだけれど

まぁ小娘かもしれないよね

くい詰者のおっちゃん達からすればだけど


夜目も利いていないのに、夕暮れ時に

こんなところに入り込むのが無謀というものだ

ちゃんとした救助者さんなら

松明なり、灯りなりともしてくるだろうに

いそぎの始末って奴かしら

まぁ、始末されるのはあんたたちなんだけれど


結局、刃物は使わずに済み

全員のばして縛り上げてやった

縛り上げるほうは、アスティナさんが手際よく手伝ってくれたし

ついでに、全員、意識を落としてくださったが

さすが活殺自在、ニンジャの面目躍如ってところだろうか


さっくり、片が付いたところで

もう一声

「あ~~~れ~~~~~」と叫べば

「ハルカ様、女優の道はお諦め下さいませ」

むぅ、ここの世界の舞台はレベルが高いのかしら?


「では女優はあきらめて、本業の方にいそしんでまいります

 もう少々お待ちを」


窓からにこやかに手を振るレイチェル様に見送られ

街道筋に戻るわたし


先程の、名演技につられてくれたか

それとも、もうじれて、後詰めに入ったか

今度は松明を付けた連中が

3人、5人と4つほどの隊に分かれて


「おおい、返事をしやがれ、どこだぁ」

などと言いながらこちらに近づいてくる


そして

どうやら、街道の上では

先程の頭目たちがこちらは騎馬の上で

まだあたりを伺っている様子


あ~、かわいそうに、今無言で落馬したなぁ

むろん、お姉さまの御働き

よしここからは、ふたりで挟み撃ち

前に向かってきたものは

すべて急所に、先ほど轍隠しに伐採した枝から葉を払ったものを

即席の棍棒にして叩き伏せてやり


逃げ出すやつらは

お姉さまが、すべて峰うち・・・

いやあ、峰うちって怖いよねぇ


金属でできた棒きれで

それも面積を小さくした方でそれなりのスピードで殴られるんだもの

無慮数名さんは、手やら肢やらがあさっての方を向いていたし


そんなこんなで

結局小一時間で始末、ううん始末はついたんだけれど

馬車を戻しながら

どうしたものかと考えることしばし

レイチェル様以外のわたしたちにははっきりわかる気配が


「増援ってやつでしょうか?」

「どうも、気配がしっかり固まっております

 慮外者どもにしては、整然としすぎておりますね」とアスティナさん

「ともあれ、街道に馬車をだすのは、確認後にしましょう」とお姉さま


まぁ、この3名なら少々のことではレイチェル様の身に何かは起せまいが

これ以上の面倒はいやだな

アスティナさんたちがいなければ、いろいろ調べられるのになどと

思っていると


松明か、ランタンか

整然とした光の列がやってくる


「我々は、街道巡検隊の隊士

 俺は隊長の『テオ・デル・デュプネ』

 これは何か、事情を説明できるものはいるか?」

馬上から声がかかる

なるほど、制服に身を包んだ、精悍な連中が

ぴたり、隊列を揃え、警戒の為かこちらと距離を取りながら

その場に停止する


「お役目ご苦労様でございます

 これは

 『レイチェル・レ・ステラリア』様とその護衛

 わたくしは、ステラリア家の小間使い

 先ほど、胡乱の者が襲ってまいりましたが

 護衛のお二人の御働きで

 みなそこらに転がされたと、こういう次第でございます」

アスティナさんが頭を下げる


「ステラリア? 

 あぁ、ゼクストレーメの走り使いのステラリアか

 金の匂いをさせるから悪い、

 そちらは、みな無事なのだな?

 よかろう、胡乱の者はこちらで引き取る

 何名いるのだ?

 30名?それはまた

 ふむ、護衛の者たち、済まぬがギルド証の確認だけは

 させてもらおう

 副官、確認させてもらえ」


確認されてしまった


「ほう、リンデになにやら腕利きが出たとか聞いたが

 貴公らか、手間を取らせたな

 野盗どもの討伐の報酬が出るが、王都の巡検隊の本署に来るがよい

 あぁ、こ奴らの護送料は、報酬の2割、それが嫌なら

 自分でとなるが?、そうか、ではこれを見せるがよい」

テオ様とやらは何やら用紙に一筆したためると

それを副官に持たせて寄越す


その後、隊士たちが馬車を街道に引き上げるのを手伝ってくれ


「まぁ、無用とは思うが、つぎの宿場まで護衛がいるか?」

と一応は声をかけてはくれる

「では、さらばだ、これ以上の騒ぎはなるべく起こさぬよう

 そうそう、ステラリアの当主に伝えるがいい

 ゼクストレーメが伯爵位に叙せられるそうだぞ

 そうなれば、ステラリアの価値も失せよう

 早目に、つぎを探すがいいと、な

 はははっ」


その声を聴きつつ

わたしたちは馬車を走らせる


「んもぅ、なんですかあのにいちゃ、けふん

テオさんだか何だか知りませんが、ヒトのおうちの事情にごちゃごちゃいうなんて」


「うふふ、ハルカさん、わたくしの為に怒ってくださるのですね?

 なんということもありませんわよ

 あの方の仰るように、世間には聞こえさせておりますからね

 それに・・・」

「それに?」

「わたくしの、元、婚約者候補ということになっておりましたからね?」

「え、因縁持ちさんですか?」


「因縁と申しますか、ねぇ

 ステラリア家は貧乏ながらも候爵位を拝領いたしておりましてね

 あの方は、伯爵様のご次男

 あの方の想いはあったのかなかったのか存じませんが

 ちょうど良い、お相手ということになったらしいのですよ

 ええ、『レイチェル・レ・ステラリア』が実在すれば、ですが」

「うぇぇ?」


「うふふ、で、それはいろいろ困るもので

 世間からいろいろと、障害が起こるように、ええ、ま、そういうことなのです」


「だから嫌味を?」

「嫌味なのでしょうかしらねぇ、あの方にすれば

 ねじくれてはおりますけれど、精一杯のご厚意、ご忠告という奴では

 ございませんでしょうか?

 それと、ね?」

「はい」

「あの方は、あれで、まっとうなほうの方なんですよ?」

「あ、れ、でぇ?」


「うふふふ、だってハルカさん

 まず、被害者側の安全を確認された

 つぎに、わいろなどいやしいものを御取りにならない

 普通なら、隊士を付けてやる替わりに何百ギニーか

 ご請求になるのではないでしょうか

 いやだといっても付けてこられますわね、金の匂いがするわけですしね?

 もう一つあるとすれば、庶民にすぎない、お二人に

 あぁ実はとか言われても困りますよ、ええ

 だとしても、です、一応庶民にすぎないことになっている

 一介の冒険者さんに、それなりのご挨拶をされておられませんでしたか?

 貴族という奴には、なかなかにできないこととおもいます

 もちろん、護送の手数料もまっとうどころかお安いのでは?

 ですから、まっとうなほう、ですのよ?」


ころころころと、わらわれるレイチェル様

ううむ、お勉強はまだまだ続くという事だろう


続きは出きれば日曜にでも(首のしまる音)

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