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21 老師と胃薬と旅立ちと

サブタイをつけると前書きに困ることを発見

さく、さく、さく


戦い済んで、陽は、ぜんぜん暮れてはないが

お話とやらの方を伺うために

先程、立ち合いを行ったギルドの訓練場から

ギルド長のお部屋に向かうわたしたち


いや、向かおうとしたら

「散らかしたらお片付けしなさいってお母さんに言われなかったのぉ?」

ギュスターブさんからお声がかかる

はいはい、手伝いましたよ、わたしたちも


「アスティナさぁん、昨日の夜、これ仕込んだんですってぇ?」

むぅ鋼線を拾うのは地味に手間だったり

「左様です、お手伝い有難うございます、あ、そこ見落としておりますよ?」

「はいはい、ところでアスティナさん、仕込む時間はどれくらいで?」

「目立たないように

 少なくとも、目立たないことが不自然でないようにわたしが意図して仕掛けているなと

 老師に見える程度には気を付けましたので

 小一時間ほどでございましょうか?」


ん?老師?


「皆伝を頂きましたので、先ほどからギュスーブ様はわたくしにとって

 老師の座におつきになりました」

「いやぁぁぁ、それはじじぃの方にしておきなさい!」

「それは老師、従いかねます」

ははぁ

これからはギュス老師とお呼びしよう、うん、そうしよう

「ハルカちゃぁん、なんか不穏な気配がするわよぉ」


「老師の御気のせいですって、あはは・・・、そのナイフですか?

 短刀ですか、しまってくださいよぅ

 けふん

 で、アスティナさん、さっきレイチェル様のお世話が一番って仰ってましたよね?」

「もちろんでございます

 お嬢様の、御身のご安全と快適を専一に考える

 お嬢様の道具であるメイド、はい、わたくしの勤めでございますから」


ふぅむ


「仕込みの間、レイチェル様はお宿でしょう?ご安全のほうは?」

「あぁ、問題ございません、恐れ多いことながら

 ご就寝中のお嬢様を背負わせていただき、お嬢様の尊い体温を感じながら

 うふふ・・・」


聞くんじゃなかった

というか、そんな怪しい体制で作業をしてたのか

ギルドの訓練場はそれなりに広いし、夜間覗く人はまぁいないと思うけれど

っていうか、ギュス老師に見られてるし

ん?見られるようにしてたっていってたなぁ・・・

いやぁ、ハイレベルの駆け引きすぎて、一周まわって間抜けな気もする

「ハルカちゃぁん、どうも不穏な気配が・・・」

「してませんちっともしてません、老師の気のせ・・・、うっわ」

一閃、二閃

「月夜の晩ばっかりだといいわねぇ、ハルカちゃぁん?」

こわっ


というわけで

皆が落ち着いた執務室

予想はついたが、付いてこられたレイチェル様主従


ラックナーギルド長、ギュスターブさん、そしてなぜだか

ドーラスさんまで先にギルド長と一杯やっておられたご様子


「ともあれ、おめでとうだな、アスティナ、窓から見せてもらったぜ

 悪魔の顔も三度とか言うしな、これでギュスターブも狙われなくて済む

 こいつの胃薬も少しは減るだろうさ」

「ギュスターブ老師にも、ご迷惑をおかけしました

 ほとんど堕落しかけも致しましたが、お嬢様の御救いと

 それに老師の技量の高さが、わたくしを導き、高めてくださったと

 そのように存じます」

「老師はやめなさいって言ったわよねぇ?」

「いいじゃねぇか、ギュス公、いやぁギュス老師だなぁ」

やたら嬉しそうなドーラスさん


げふ、い、いや踏みとどまった、うん、きっと

『老師様』の眼が怖いけど、言ってないったら言ってない


「ま、お嬢、嬢ちゃん

 なんとなくわかったかもしれないが、アスティナの師匠ってのは

 俺たちと知り合いでな、むろんギュスターブの以前からの知り合いだな

 人生最後に、逸材見つけたってなぁ

 それがアスティナ

 だけど自分じゃ皆伝の試練を与えてやれるほど、もう体力がないってな

 このままじゃ、せっかくの逸材が腐れるのがたまらんとさ

 んで、ギュスターブに一本勝てたらそれで皆伝だとよ」


「あんの、因業じじい、面倒なこと任せるんだから」

はき捨てるギュス老師だが

ドーラスさんのにやにや笑いは止まらない


「はっ、とか言いながら初回のアレはひどかったよなぁ

 まぁ、アスティナ嬢ちゃんだってよぉ

 鼻っ柱ばかり強い娘っこじゃぁいたが

 ギュス公の手厳しいことったら

 なんとまぁお優しいことだって、大将も俺も思っちゃいたがよ」

「思い上がりと、非力さと、絶望を知りました」

ちろり、アスティナさんの眼に、暗い光が奔って消える


「そんなこんなで、二度目の時にはもうレイチェルのメイドになってたな

 随分雰囲気が変わったとは思ったが

 そん時はなんだ、ギュスターブと自分と何が違ってどれだけ差があるのか

 確認に来たって感じだったがな」

「恐れ多いことでした、今も、全く近づけたとも思っておりません」

ぺこり、頭を下げるアスティナさん


「いいんじゃないか? 

 目指すものが見えてるうちは、もう間違いもするまいさ

 いいか悪いか知らねえが、生涯の道ってやつを見つけたようだし

 というわけで、まぁ俺たちはレイチェルとは別の縁もあるんだが

 そうだな、こんな奴も世間には、いる

 それだけでもお勉強にはなるだろう


 で、だ

 今ギルドに一つ依頼が入ってる

 『ウロボロス』の指名依頼にしたいご希望だそうだが

 『ウロボロス』のご意向もうかがってほしいとな

 ご承諾頂けるなら、指名依頼にしたいとさ」


「ギルド長、御断りは可能、そう解してよろしいのですか?」

聞き返すお姉さまの声音は平穏そのもの

もちろん、『依頼人さん』であろうお方をご覧になることもない

 

「あぁ構わんよ、出発を10日ほど待ってもらえるなら

 『ウロボロス』並みか、それ以上の手利きが空くからな」

「・・・『オーロラ』の一味さんですね?」

「よくわかるな、というほどでもないか、まぁ新婚さんを

 すぐに駆り出すってのは、ちっとかわいそうだろうぜ」

「大将、その気遣いの半分でも

 かわいい部下に回しちゃもらえませんかしらねぇ?」

胃のあたりを押さえながら呻く、ろう・・・いや、ギュスターブさん


「おう?回しちゃいるぜぇ、かわいい部下の仕事が切れないようになぁ」

「鬼・・・、胃袋殺し、薬屋の回し者!」

「大将、新しい2つ名が増えたようで、めでてぇな」

「はっはっは、いやぁ照れるぜ」

お二人がグラスを上げ

ギュスターブさんが両手を広げて見せる


「さきに、お仕事の内容を伺ってもよろしいでしょうか?」

「おぅ、それも構わねぇと依頼者さんからのご伝言だ

 『リンデから、商都まで護衛の依頼

  護衛はそこで終了

  だが『ウロボロス』が 依頼を承諾した際に限り

  護衛終了後、王都の王立図書館での非戦闘の依頼を行いたい

  追加の依頼拘束期間は王都到着後5日間を予定

  護衛達成時に本体分の依頼料は全額即日支払

  追加依頼の詳細は商都到着時に手渡し』

 ああ、商都から王都までは1日くらいか

 商都はリンデから見て

 街道を沿いに王都に向かえば王都到着の1日前には着く、そういう場所だな

 およそこんなところだな」


「図書館です、か、興味はありますが、風変わりなご依頼に見えますね?

 ギルド長

 ご返事の期限はいつまで、あとご出発のご希望はいつでしょうか?」

「おう、返答は今日の夕刻、日の入りまでとしようじゃないか

 あと、2刻後ってところだな

 出発のご希望日は2日後、まぁお前さんらが断れば10日後になるだろうさ」


「わたくしども、『ウロボロス』の意見統一もございますので

 ご返事はその折に、とはいえ、ギルド長

 わたくしどもは、まだ仮免許同然の身の上、

 年長者としてのアドバイスはございませんか?」


にっこり笑うお姉さま

にやりと返すギルド長


「ほっほう、そう来たか、そうさなぁ

 マイナス部分は、お前らから見て依頼者の腹が見えねぇ

 これじゃねぇか?

 それと護衛対象には強力な護衛が一人ついてるらしいが

 対象に含まれるブツが高額だよなぁ

 100万ギニー相当のお宝らしいぜ


 平和なはずの街道筋とはいえ、悪心おこす奴らが、湧くかもしれねぇな

 そっちは、まぁ『ウロボロス』なら心配あるまいさ

 

 ふむ、俺の見るところ

 依頼人は悪い奴じゃぁねぇ

 少なくとも俺はそう思っちゃいる、いるが、な

 悪くなくても、そいつと係ることで、お前らに何かがってことはあるわなぁ

 が、これはどこにもあることだぜ

 はっは、こんな稼業だしな


 だがよ、いきなりで、ちょいと厄介な依頼人と係ることにゃぁなるだろうが

 お勉強ってなら、最高じゃねぇか

 仮免許のひよっこにゃぁ、ちぃとレベルが高いかもしれねぇがなぁ


 ま、これくらい、だな


 これもお勉強

 そのあとこっちにかえるもよし

 そのまま世間を見て回るもよし

 自由にやんな

 それがしたいことじゃねぇのかい?」


「ありがとうございます、ギルド長、皆様

 では、いずれにしましても夕刻に

 うふ、遥、行きましょうか?」

「はい、おね・・・こほん『お嬢様』」


どうやら、巣立ちの日がもうそこまで来ているらしかった


やっと最初の街を旅立つふたり?

あぁ、ふたりっきりには、なれませんねぇ

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