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18 ウロボロス と 黄金

こんな雨なら降られてみたい

ざら、ざら、ざら


わたしの脳内に雨が降っている

もっとも、降っているのは金貨の雨で

たまに、先日初めて見た星晶貨が混じっているようだが


ギルド側、それに得たくもないが、まだ御意を得てない、リンデの領主さま

そして、商業、工業などなどの各ギルドのお偉いさん方は

このイベントに期するところがあるようで

政庁の議場などを提供したわけだし

他の冒険者さんの獲物やら

わたしたちの最近の獲物、ハインツさんたちが狩った獲物

などなどなどを、目玉として出している


オーガの角の片割れなんか、ドーラス工房がすでに所有していたのだが

未使用だったのを幸い、相応の値で主催であるリンデ商工会が買い上げて

まだ売れずにいたギルド所有の片割れと合体

「オーガの双角」としてオークションに掛けられた


わたしたちが、ギルドから当初頂いた買い取り値は

例の鬼さん一式で150ギニーだったと思うが


「双角」一対で200ギニーの値がついていた

鬼さんの他の部位は、希少ではあるが

それほどの人気はなく、ただ、魔法を使いこなすほどの

大物オーガとなると、体内に生成される『魔石』これはさすがに高額

100ギニーから競売が始まったが

最終的に400ギニーで落札されていた


競売価格と、わたしたちが手にした報酬の差をどう思うかは

人の立場によって違うと思うが

わたしは、妥当、なんとなくそう思う

即金、または、ギルドカードへの振り込み、というか記入で

明日をも知れない冒険者が、今日その場で得られるなら

市場価格のおよそ3割から4割前後であれば、まぁ妥当

そう考えてしまうのは、「しほんしゅぎ」ってやつに

あちらで毒され切っているのかもしれない


ともあれ、こういう場を作って頂けるとなれば

先日のマンティコア、それに、例の共同狩猟で手に入れた

ワイバーン3頭分などは、それなりに期待をしても良いのかもしれない


ちなみに、討伐報酬自体は安かった

メンバー1人当たり10ギニーと必要経費だけだもの

これは実力者に対して、ギルド長が発令する

拒否不可の義務だから、そういう額になるわけで

もちろん狩ったワイバーンの売却益は、すべてわたしたちに来る

今回のようにオークション開催が決定されているのなら

そちらに掛けるほうが当然お得とこうなる


そして、ブランドになるからとわたしたち狩猟団パーティの名をと言われたけれど

ギュスターブさんが出してきた例は

『比翼の連理』だの『闇の双星』だの14歳ごろに黒いノートに書きそうなものばかり


「ハインツさん、『暁のオーロラ』って素敵なお名前なんですけれど

 どうやってお決めになったんです?」

「あ、あれかい、俺が13の時にだな、俺がこっそり書いて・・・」

「失礼しました」

「おーい、嬢ちゃん、聞いておいてそりゃあんまりだろうが!」


お姉さまと二人考え込んでしまったが

『ウロボロス』と適当に決めてしまった

世界を飲み干しそうだけど

中二病かなとも思ったけれど、向こうでも、不思議にこちらでも

良くある図案の名前だったし

過去に二人で食いあったわたしたちには、なんとなく会う気がしたのだ


ちなみに、1匹で完結するほうじゃなく、2匹タイプの図案が

二人の脳内には浮かんでいる


「では、出品番号15番、16番、17番 大型ワイバーンの競売にまいります

 これは10日前の『暁のオーロラ』と『ウロボロス』の共同狩猟による

 討伐対象品です・・・」


これは、わぉ、すごい

わたしたちの狩った順で出ているが

お姉さまが胴を両断した奴が500ギニー

ハインツさんがとどめを刺した奴が600ギニー

わたしが喉首をかっ切った奴は状態よしで1000ギニーで落とされた

脳内に、星晶貨ステラギニーの流れ星がはしる


ちなみに、ワイバーンの精算はパーティ単位で山分けになる


ハインツさんからは例の星晶貨の分配後

「お嬢、嬢ちゃん、結婚祝いと俺たちパーティへの義理立て

 ありがたく頂いた、

 だけどよ、これから俺たちとお前さんたちは

 5分の付き合いにしようじゃないか

 先輩を立ててくれるのは嬉しいぜ?

 だけど、お前さんたちは、ランクはどうあれ

 お宝の分配で対等の条件を飲ませたんだ

 それで、俺たちもありがたく受けた


 な、これはもう対等の付き合いをしたってことさ

 ワイバーンの換金は、『オーロラ』と『ウロボロス』で半ぶんこだ

 うちが5名だからってもう気にしちゃダメだぜ?」

そう申し出られてしまったのだから


お姉さまと二人、しまったと視線を合わせたけれど

たしかにもう遅い

「失礼しましたハインツさん

 生意気な後輩で申し訳ありません」

またまたしてしまった『お勉強』に二人頭を下げたのだが


ばっふん

ぼっふん

二人の背中に強烈な一撃

「なぁにいってるんだぃ、ふたりとも、しけた顔するんじゃないわ

 いいかい、冒険者で生きていくってなら

 腕ときっぷの良さが信条ってもんだ

 うちの連中の顔見てみなよ

 みんな二人を認めてるんだからねぇ」


お姉さまと、わたしが涙目だったのは

きっと組長姐さんの一撃のせい

うんきっとそう、そういうことにしておこう

そう決めて、お姉さまと涙目で笑いあったのだった

 

そしてワイバーンの高値で湧き上がった熱気が

最後の商品の登場に最高潮に跳ね上がる


「では、最後の商品となります

 商品番号18番 これは期待の新星『ウロボロス』が狩ったもの

 棘穿核は『暁のオーロラ』のリーダー、ハインツ氏の戦鎚

 そうです、『極滅の暗槌』に!」

会場にどよめきが上がり、ハインツさんが立ち上がって漆黒の戦鎚を掲げて見せる


「穿槍尾は『ウロボロス』のメンバーの革鎧の装甲材になっております」

え、わたし?

わたしは、え、遠慮を


ばっふん

し、しまった、組長姐さんのポジションに注意をしてないとか

前に出されて仕方なく

ぺこり一礼したわたしに、ひゅうひゅうひゅうと歓声が飛ぶ


「そのため、残念ながら穿槍尾一式は今回含まれておりませんが

 それ以外の部位はほぼ完全な状態です

 貴族の方々、恐れ多くも王侯がたのコート素材として垂涎の的である毛皮

 美食家の夢であるその肉

 そして、魔獣の証しである超大型といってよいこの魔石

 狩猟後およそひと月過ぎておりますが

 狩猟日から本日まで、ギルドの冷凍庫で保管されておりました

 保管状況を証する書類一式、こちらにございます

 今朝がたの内見会にて皆様、商品の状態はご確認と存じます

 では

 大型成獣マンティコア1式・・・

  

 10000ギニーからスタートいたします!」


「100万ギニー」

 直後響いた静かな声に会場が一瞬で凍りつき


かつーん

「100万ギニー! 落札者は・・・」

聞くまでもなかった

手を上げていたのはレイチェル様


轟々轟と再び響く歓声


どうやらわたしたちの旅立ちは黄金の土砂降りでスタートするようだった


これもぜんぶステラリアってやつのせ(ry

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