0 お姉さまとわたし
趣味の要素を全部放り込むと、どうなるか
これは、そういう話です
そればっかりで書いていくつもりでもないのですが
百合臭のお嫌いな方はきっと楽しめないと思います
そこにだけはどうぞご容赦を
ほろ、ほろ、ほろ
泣いている、泣いていた
いつの間にか泣いていた
ほんの
そう自分の体感ではほんの一時間ほど前
自分は愛する方に、お慕いするあの方に
あの方の美しいお胸に、光る刃を埋めたというのに
そしてあげくのはて
またしてもその方にかばって頂いて
それでも、それでも
自分の使命は果たせた
もうそれで命を散らして、もうおしまい
たとい他のヒトに気づかれなくとも
自分のような悲劇はもう起こらずに済む
ただそれだけを
ああ、そして最後まで自分を
そう
このわたしを助けてくださった
お慕いするあの方の思い出と、肌身に残る温もりだけを抱きしめて
それで消えるものだ
そう思っていたのに
消滅の瞬間
その直後?
わたしは何もない空間に、ただただ白さが広がる空間に呼ばれて
よくわからない理屈で礼を言われて
もう一度生きてみないかなどと
何か悪魔の取引めいた提案を告げられた
断っていたと思う
もう疲れ果てていたし
命をながらえたところでその挙句、また似たような愚行というか
悲しすぎる選択をするかもなんて、もうもう御免だったし
けれど
取引だか申し出だか知らないが
それを持ちかけてきた巨大な存在は
『あのものとふたりで、でもか?』と、とんでもないことを言い出した
それが誰のことを言っているのか
わたしが言わずともなぜだかわかっていたし
『むろんのことじゃ、ただ、すこしばかり調整がいるな
いや、な
そなたより先に来たあのものもそなたと同じ
ことわってきおったのじゃがな
そなたとふたり、むろんそなたがそれを望むならと
それはしっかり言っておったがな
それなら是非にと話しておったよ』
ならば私が断ることなどありえない
こんど
今度こそあの方に
お慕いするあの方に
今度は守って頂くだけでなくて
あの方の隣に立てる、その願いがかなうかもしれない
いや、かなうなら
ううんかなえたい
なのでわたしは
わたしは
気が付くと
涙を流しながらわたしは森の中に一人で立っていた
『調整がいるぞよ、ふたりでじゃからな
あのものが先じゃな、おぬしはそのあと
なぁに、ここで待つ必要なぞ要らぬ
そこらはサービスじゃ
おぬしらが飛ばされる先で、さようさな
向こうの時間でひと月ほどか
先にあのものが行って、そののちにおぬしが行く
ああ、心配せずとも
これもサービスという奴じゃ、ちゃんと伝わっておるとも
おぬしも行くとな、ひと月ののち、おぬしもそちらに行くとな』
脳裏にあのとんでもない存在の言葉がよみがえる
だので、ここは、そうここがどこだかは知らないが
あの方のいる場所
だからだから、だから
そっと、そっと口に乗せてみた
「お姉さま…」
「お姉さまと一緒
ふたりなら
異世界だって怖くない」