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鬱小説  作者: 烏籠
7/15

鬱脳ヲ潰セ

鬱。そのまんまの内容です。暗い心理描写ばかりですので影響されないよう、お気をつけて。





鬱病は心の風邪、なんてよく言われるが、実際は脳の病気らしい。



私とこの病気との付き合いは今年の春、大学生活とともに始まった。

それ以前……高校生のころから、多少鬱っぽい感じではあった。

少なくともその頃から『死』を意識するようになったのは確かだから。

でも、本格的に鬱状態になってしまったのは、やはり大学生活が原因なのだろう。

急激な環境の変化。

知らない土地での一人暮らし。

何もかもが新しく、慣れるだけで精一杯の日々。

それでも私は、もう子どもじゃないんだからと、甘えの気持ちを振り切るように一人張り切っていた。

憧れの幼稚園の先生になるために。

今までの暗くで人前で喋れない私を捨てるんだ―――そう、心に決めた。




でも、駄目だった。

私はいつまでたっても、駄目なままの私だった。

周囲にうまく溶け込めない私は、やっぱり一人になってしまった。

別に仲のいい友達なんて作らなくていい……昔からクラスの中で友達がいなくてもやってこれた。

だからいいんだ。

私はそう思う事にした。


そんな事より、私はやらなきゃいけない事があるでしょ?

課題は来週までに出さないといけないし、これの他にあと三つもあるんだから、遊んでる暇ない。

ピアノも練習しないといけない。

どうしよう、上手く弾けない。

何度やっても弾けない。

駄目なやつ。

ああもう何で出来ないの馬鹿。

他の人は出来てるのに、本当に馬鹿。

時間がない。

やらなきゃ。

早く、早く早くはやく。

終わらさなきゃ。

なんで、こんなに駄目なの。

何時もいつも。何やっても駄目で 甘えるな

時間ないはやくやれよ

逃げたい、馬鹿。

駄目だダメだめ

どうして、

なんでこんなに、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!?

ああぁああぁぁあーーーーもういやだぁああああ!









私は、動かなくなった。


ベッドから降りられない、降りたくない。


起きたくない。


朝、

嫌になった。


もうどうでもよくなって、無断欠席。


部屋も散らかり放題。


どうでもよかった。


死ねば、楽になれる。


でも、

動きたくなかった。


動けなかった。


死ぬ気力さえ無かった。



携帯が鳴っている。


私の好きなアヴェ・マリア。


オルゴール調で気に入っていた。


もう私のことなんか、放っておいてよ。


もう何もかも厭なんだから








結局、大学は辞めた。




私は自分が嫌いだった。

少し動くようになった私は、自傷行為にはまった。

手首を切って、

痛みに呻き、

流れる血と白い肉に酔った。

なんて幸せなことだろう――――私は、思った。

抑えがたい衝動に耐えかね、腕に拳を叩きつけた。

痛い……それでも、自分を保つために必要な事だった。


そうでもしないとどうにかなってしまいそうで、


自分が自分じゃなくなるみたいで、


私は自分を傷つけることを止められなかった。









こつっ、こつっ……


頭をぶつける音。

規則正しいリズムを刻みながら、頭を壁に何度もぶつける。


鬱は、脳の病気。


この脳が悪い。


「悪いのは、私の頭」


ごつっ、ごつっ……


「この、脳が悪い」


ごつ、ごつ、ごつ……


「こんな悪い脳、いらない」


ごつっ、ごっ……


「脳が悪い、脳が、頭が頭が頭がこの頭が、脳が、脳が脳が脳が悪い脳が脳が脳脳脳脳脳脳脳脳脳悪い脳脳脳が脳、脳、脳

脳が

脳が

脳が

脳が

脳、脳

ノウガ

・」


ごんっ!ごんっ!


「いらないいらないいらない!

お前なんか、頭が悪いお前なんか!

いらないんだよ、死ね!

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね、

死ね、

死ね、

死ね!」


ごんっ!!







ふらつく身体のまま、

部屋を飛び出した。


どこか高い所を目指して、

知らない建物の中、


屋上まで駆け上がった。


握りしめた携帯が鳴り続けていた。


ここに来るまでのあいだ友達に、わけのわからない事を叫ぶように話していたんだったっけ。


絶えず鳴り続ける携帯。


アヴェ・マリアのメロディー。




私は冷たい風を感じながら、


空を見上げ、


地上を見下ろし、


頭から、





落ちた。













これで、悪い頭は潰れた。

良い子は真似をしないでください、特に頭は危険です。まぁ、私が言っても説得力ないですが。

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