表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬱小説  作者: 烏籠
6/15

最も美しい歌声を。

鬱度はかなり高めです。精神的に不安定になりやすい方、自傷に走りやすい方はご注意くださいませ。





「あのさぁ、もっと声出ないわけ?」


みんなの視線が、私に集中する。


「ご、ごめんなさい……」


「今のトコ、ちょっと一人で歌ってよ」


私が口を開く前にピアノの伴奏が始まる。

仕方なく私は、周りの視線を気にしながら歌い出した。


「あー、もういいよ」


伴奏が止まり、教室中がしん、と静まる。


「……はぁ〜。こんなこと言いたくないんだけどさ、やる気あんの?」


「……あります」


クラスメイト相手に敬語を話す私。

昔からそうだった。

他人相手にはずっとそうしてきたから。


「ぜんっぜん声出てないじゃん、何回やっても声ちっちゃいし口開かないし。いい加減ちゃんとやってよ!」


教室中の空気がピリピリと殺気立つ。

周りにいるみんなも、もう何度も繰り返されたやり取りにうんざりしている。

どれもこれも私のせいなんだ。


「ああもうイライラするっ、何でわかんないかなぁ。優勝できなかったらあんたのせいだからね!」


「――――っ、ごめんなさいっ………!」


教室を飛び出した。

背後でみんなが飽きれ返っているのが、嫌でもわかった。





私の学校では年に一度、合唱会が行われる。

全学年のクラスがそれぞれ課題曲を選び、全校生の前で発表する。

体育祭と並ぶイベントで、誰もが力を入れて練習を重ねる。

私はこの合唱会が嫌いだった。

歌を歌うのが嫌いなわけじゃない。

人前で歌うのが嫌で、それ以前に他人と話すのも苦手だった。

でも大勢クラスメイトがいる中で私の声が小さくても、ほとんど目立つ事はなかった。

一年の頃はそれでよかった。

でも二年生になった今年、それは通用しなかった。

最初の練習のとき、私は声が小さいとクラスメイトの一人に指摘された。

はっきりと物を言う人で、私は苦手だった。

一度指摘されてしまうと目立ってしまうもので、それ以来何度も注意された。

声が小さい。

口が開いてない。

やる気が感じられない。

何度も何度も。

毎日毎日怒られた。


どうして?

私は一生懸命やってるのに。

ちゃんと頑張ってるのに。努力してるのに。


「これ以上どうすればいいの……?」


誰もいない教室で泣いた。泣き続けた。

机に爪を立てながら、

額を擦りつけながら、

声を押し殺して泣いた。







「はいみんな並んでー」


先生の指示に従い、みんなそれぞれの場所に並ぶ。

合唱会の日が近くなると、音楽の授業はこの練習だけに費やされる。

伴奏が始まり、みんながそれぞれのパートを歌い始めた。

私は必死に声を張り上げた。

口も大きく開いた。

もうみんなの足を引っ張りたくなかった。

それおかげか、私はその時一回も注意される事はなかった。


「本番までもう時間ないからみんな頑張ってね。放課後練習するんなら、あんまり遅くならないように。じゃ、今日はここまで」


起立、礼。

先生が教室を出て行く。

私はやっと肩の力を抜く事ができた。

これで放課後の練習も大丈夫。

そう思っていた。




そして放課後。

クラスのみんなが再び音楽室に集まる。

私はいつもよりも軽い足取りで音楽室に向かった。

少しざわつきながら、みんなが定位置につく。

私もそれに倣って並ぶ。

ピアノ伴奏が始まるとざわつきは収まり、自然と静まり返る。

そして、ピアノに乗せて歌い始める。

大きく口を開けて、

精一杯声を出して、


「止めて」


一言。

しん、と静まり返る音楽室。クラスメイト達。


「もうダメ。かなりキレそうなんだけど」


おそるおそる隣を見ると、やはりその人は私を見ていた。


「ほんっとありえない。ここまで言って無理ってどうなの」


「ごめんなさい、ごめんなさい……」


いつになく彼女は怒っていた。

あからさまな敵意をぶつけられ恐怖で声が震える。


「謝って済むと思ってんの?みんなにメーワクかけてさぁー」


「ッ、………」


何も言えずに俯く。

顔を上げる勇気もなかった。

ずっと黙ったまま。

そんな私の様子に彼女は痺れを切らした。



「だあーーもうムカつく!口がねェーのかよっ!」


















声が

話たくない

キライ


馬鹿

た 死

だ ネ


一人ぼっち










「―――――――ァ!」


飛び出した、


逃げ出した、


いつものように、


悲しみで、


溢れる心で、


たったひとつ違うのは、





憎しみ憎悪黒く死衝動赤い残像死破壊死暴力的死死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねあんなやつ死ね死ね死ね私も死ね死死ね死ねよ死ねみんな死ね死ね死ね死ね死ね死ね死死死死ね死死死死死死んでしまえ死死死死死死死みんな死死ね死ね死ね死ね死ね死死ね死死死死死ねよみぃーーーんな死んじゃえぇぇぇーーーーー















「――――わああああああっ!!」


カッターナイフを腕に突き立てる。

血、

肉、

痛みなど関係ない。

刺すんだ。


嫌悪。

自分が嫌だ。

私は何を考えていた!?

とても恐ろしい、

罪深いことをだ。


あああ何て事を、

考えいるんだ私はァ!








いやだいやだいやだ。

醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い!

どうすれば

どうすればいい

もう何もかも厭だ

あああああああああああ

醜い自分が憎い

憎い憎い憎い憎い醜い醜い醜い醜い醜い醜い憎い醜い醜い憎い醜い醜い醜い憎い憎い憎い憎い醜い憎い

いやだ何で

こ んな こ と に

つ だ

あいつのせい

私は


もう駄目だ


もう、

















『次は2年×組の発表です』



「あれ?あの子何やってんだ」


「さぁ?遅れて来たのかもな」


「ねぇ、何か様子おかしくない?」


「……え。おいあれ、」


「――――きゃああああああああ!!」









会場中に溢れるメロディー。


赤色の旋律。


ああなんて美しいの。


だってほら、


あんなに醜かったカタマリが真っ赤に染まったら


いくつもの悲鳴を誘うの。


なんて美しい。


もっと、


もっと聴かせて。



嗚呼、


あんなにも醜かった世界が


こんなに美しく輝くなんて。






「生まれてきて、よかった」




そんなことを、始めて思った。




私は走る。


その輝きを求めて。


生きたい、と


叫ぶ人々を。




もっとも美しい歌声を奏でる瞬間を求めて。

また一段と酷い内容……。勢いに任せて書き殴りました。読んでくださるか心配です。感想よろしくお願いします。以上、作者のトラウマを大幅に捏造してお送りいたしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ