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鬱小説  作者: 烏籠
3/15

落ちても、今度は飛べるようになるから



私は、鳥が好き


小さくて可愛い


もちろん大きな鳥も好き


大空を、悠々と飛ぶ姿は素敵


どっちかっていうと小さい方が好きだけどね


ピョコピョコ歩いたり目がつぶらでギュってしたくなる


わかるかな?


前まではそんな意味で純粋に好きだった


でも、最近は別の事に興味を持つようになった


鳥が、死ぬところ


あ、やっぱり変かな?


でもちゃんと理由があるんだ


今から1年くらい前、私が中2の頃の話


学校が休みだったから、日曜だったと思う


珍しく早起きしてなんだか気分よくて、それで外に散歩に出掛けた


もともと散歩するの好きだから


空を見上げて流れる雲を眺めたり、自由に飛びまわる鳥達を観察したりする


歩いてるだけで楽しくなる


目的もなく歩きまわったせいかちょっと遠くまで来ちゃって


滅多に来ない公園に辿りついた


幽霊が出るって噂の公園


そろそろ帰ろうかなって時にそれは起こった


ドンッ!


突然、背後から凄い音がした


もしかして幽霊?


なんて思いながら振り返った


そーっとね


私の後ろには公衆電話があった


ううん、そんなもの最初は見えなかった


たくさんの羽が宙を舞っていた


フワフワといくつもの羽が舞い落ちる光景は幻想的でとても綺麗だった


最後の1枚が落ちるまでみとれていた


その頃になってやっとわかった


一羽の鳥が倒れていることに


公衆電話にぶつかったらしく、羽がガラスに貼りついてた


おそるおそる近付くとその鳥はまだ生きてるみたいで、痙攣するみたいにビクビクと動いていた。


どうしようってすごく焦った


助けてあげたいけど何をすればいいのか解らない


そうしているうちにも鳥の動きも次第に小さくなってゆく


頭の片隅でもう助からないんじゃないかって気持ちがよぎった


私は諦めることにした


そのかわりにせめてこの鳥の最期の瞬間を見届けよう


コートのポケットから携帯を取り出し、カメラを動画に切り替えて携帯を鳥に近付けて撮影開始


いくつか撮ってるうちにどんどん動きが小さくなって、そして動かなくなった


今度は写真に切り替えて何枚か撮影


撮り終えてから携帯をポケットにしまって、改めてまじまじと鳥を見る


薄く目を開いたまま地面に横たわる小さな体はやっぱり動かないままだった


そっと体に触れると、ふわふわして暖かった


目を閉じて手を合わせる


助けられなくてごめんね


その日から毎日様子を見に来ては鳥の死体を眺めた


ただ4日後には数枚の羽を残してどこかに行ってしまったけどね


猫にでも持って行かれたかな


それ以来鳥が何かにぶつかってしまうなんてこと見たことない


こうゆうことってよくあることなのかな?


わかんないけど



あの公園には時々足を運ぶようになった


鳥電話(鳥がぶつかった公衆電話だから、勝手に呼んでます)の周りをうろうろして帰る


実は昨日も行ってきちゃった


何もなかったし、最期の最後まで幽霊も出なかった


ま、いっか


その幽霊さんには後で挨拶にでも行こう


なんだか長くなっちゃったね


今読み返したら訳わかんないし、意味不明


要するに気付いちゃったんだ


私は死そのものに惹かれたんだってこと


だって、あんなに綺麗な光景今まで見たことなかったもん


何もかも振り切って自分の気持ちをぶつけるみたいに


あの鳥が何を考えてたなんかわかんないけど


ここから飛び降りたらどうなるかな?


きっとあの鳥みたいに綺麗な死体にはなれないよね


ま、別にいいけど


死んだ後のことなんて興味ないし


あ、でも自縛霊ってのになろうかな


あの幽霊公園の鳥電話の




それじゃ、


さよなら






今から私は、鳥になる。










羽取 つぐみ













「……っと、こんな感じでいいかな」


ふう、と一息ついて顔を上げた。

地べたに直接同じ姿勢でずっと座ってたから足がすっかり冷たくなってて、おまけに少し痺れてた。


「よいしょ……っと」


ゆっくり立ち上がり、おもいっきり伸びをする。


「よし、行きますか!」


足元に置いてある紙を拾い上げる。

さっきまで書いていた遺書だ。

全然遺書っぽいことなんて書いてないけど。

でも、さよならってちゃんと書いたし、まいっか。

それにしても今から死ぬって考えると、なんだか夢みたい。

すごいふわふわした気持ちっていうか、わくわくするっていうか。

テンション高いし、不思議な感じ。

そんな感じのまま屋上の手すりに手をかけて、向こう側に降りる。

ギリギリのとこに立つといよいよだなって気になった。

おお、絶景!

って、うわぁ、結構高いな。

さすがに廃ビルの周りに人なんかいないな。

ちょっと後ろを振り返る。

「靴、揃えてるよね。手紙、ちゃんと置いた。よし、OK!準備万端!」



さあ、行こうか。






5秒前、


よん、


さん、


にー、


いち、






手すりから手を離す。




後ろに倒れる。




空が見える。




遠ざかる、青。







バイバイ、空。


次、生まれ変わったら絶対飛んでやるんだから。

前回の後書きで全く関係ない話と書いておきながら、一話目の話を匂わすような内容がこっそり入ってます。

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