骸骨塔を破壊するよ
逃げ出したと思った獣機の1体がチーター娘チルタちゃんを襲撃。
獣機のうごきをチェックしていたトンちゃんから映像が送られてくる。
先生! 起動呪を…ああ、氷玉の中だよ、先生。
ヤバい? 駆けつけた方がいいか?
「チルタ殿! 防護魔法を!」
女騎士が剣を抜いて前に出る。
「は、はい! えと、ばんぱーおんばさーきりーく!」
被甲身発動! チルタちゃん、これでしばらくは大丈夫か。
でも女騎士は?
獣機がヘッドアームを開いて女騎士に襲い掛かる。危ない!
ビームで…遠すぎる。そして女騎士と近すぎる。
巻き添えにするおそれがある…ま、それでもいいですけどね。
後から先生に治療してもらえばいいし。
あ、でも鎧とか傷つけたらおやっさんに悪いしなー。
かつん! え?
乾いた音、軽く剣を振ってヘッドアームを逸らす。
獣機は続けて噛み付こうとするが、そのたびに軽い剣撃で逸らされてしまう。
なるほど、考えてみれば獣機の攻撃はヘッドアームが頼り。
それ以外には武器とか内蔵してないもんな。
業を煮やしたようにいったん離れた。
ヘッドアームを閉じて、先端部を回転! ドリルアタック! 突進!
ものともしない、女騎士。逆に前に出た!
突きかかって来たドリルを紙一重でかわすと、肩口、前足の付け根に剣を突き入れる。
がりがりっという異音!
悲鳴のような機械音を上げる獣機。
ヘッドアームを開いた? 180度展開。三本だから120度?
そのまま再度回転させる!
ぶんぶんアタックだ! 風を切ってうなる鋼鉄の風車!
金槌振り回してるも同然。当たったらただじゃ済まない。
横払いして女騎士にぶつけようとする獣機。
女騎士、驚いたことに剣を離し、すいっと後退、軽々とかわす。
大胆不敵、飄々、優雅とも言える身のこなし。
再びふらりと進み出て、まるで置いてあった剣を掴んだかのように柄を逆手に握り直す。
突然!
「きょえええーっ!」
裂帛の気合!
がつんっと地面を踏み込んで突き立った剣を、抉り上げる!
バキバキと関節機構が破損する!
「あぁちょっ!!」
怪鳥音とともに蹴った! 獣機の身体を荒々しく蹴りつけ、反動で剣を引き抜く!
蹴っ飛ばされてよろめく獣機。
「ちぇすとーお!」
腰関節に突き! 深々と剣を突き込む。
魔力変換炉からの動力ケーブルが切断されたらしい。
ぶんぶんヘッドも回転停止。力なくうずくまる獣機!
ちょ! すげ! 破壊剣士!! 掛け声変だけど!
獣機ボディを踏んづけて剣を引き抜く。
顔前にかざして剣を確認する。
「おお、刃こぼれしてない! これが魔法処理!」
「破壊剣士さま、すごい。」
チルタちゃんの称賛にまんざらでもない。でも破壊剣士はなあ…
複雑な表情の嫁入り前女騎士。
犬獣機もすべて撤退。トンちゃんの巡回監視で残敵不在を確認。
オッケー! 状況終了!
氷雪結界の中の先生、自力で出れるかな?
キラすけは無理だったんだよなあ。
おっと、
「震撃掌!」
氷をぶち破って先生が出て来た。破片、俺に当たりましたよ、痛い!
それ、俺の技ですよね?
格下だろうと、弟子だろうと。優れたものはすぐ取り入れる。
次々と新技を繰り出す先生。さすがだ。
「ああおう! 寒む! 寒い、これ!」
周りを見回せば、けっこうな数の獣機の残骸が転がってる。
まあ、時間がたてば合体とかして帰還モードで移動を始めるだろう。
山頂近くだから、中継器を使えば兵機が回収に来れるだろうし。
今は回収とかしてるヒマがない、工房へ運ぶ方法も無いしな。
護衛獣機はすべて撤退し、事実上放棄された基地局。
骸骨塔の破壊に取り掛かろう。まずはビームでアンテナを切り離して…
「ちょっと待て。」
ん? なに? 先生。
「チルタ。」
「ひゃ、はい。」
常識外の戦闘を目の当たりにして唖然としていたチルタちゃん。
「獣機が憎いか?」
「うん…はい。」
「いいか、実は元々は獣機はヒトの味方なんだ」
「え? そ、そんなバカな! 信じられません!」
だろうなあ、親の仇をそんな風に言われても…
「獣機たちはあの塔からの命令で動いている。」
「その命令で無理やり動かされているんだ。」
「あの塔をぶっ壊せばこの辺の獣機はいなくなる。」
「そ、それじゃあ…ホントに悪いのは…塔?」
「お前がぶっ壊すんだ。」
「ええ!? そ、そんなの…」
いや、いくら何でも先生…そりゃ無茶じゃ…
「ハイエート様がこの従機を貸してくださる。」
え?って顔するお兄ちゃんエルフ。
いや俺も、えっ?てなってますがね。
「おほん!」
先生がハイエートをせっつく。
「あ、はいはい、えーと、おほん」
「チルタちゃん…いや、チルタよ!」
「我の従者アイザックを汝に貸し与える。思いのままに命じるがいい。」
神の化身っぽい。なかなかの演技ですよ、お兄ちゃん。
俺も乗って来た。
「オオセ・ノ・ママニ。ゴ命令ヲ、チルタ・サマ」
チーター娘の前にひざまずく。
「さあ、やってやれ! 大きな声で命令するんだ。」
骸骨塔と俺、先生とハイエートを交互に見やるチルタちゃん。
意を決した!
「アイザック! 壊して! あの…あの獣機の塔をぶっ壊して!!」
「オココロノ・ママニ!」
御意!!
「派手にやれよ。」
先生が耳打ち。任せといてください。
ド派手に行きますよ!!
オーバードライブモード移行!!!
『必要ありませんが』
おっと、ヘルプ君! いいんだよ。演出演出。
装甲板がスライド! パワーファイヤが吹き出す!
あ、そういえばこれ、飛行ユニットが推進力として使ってたよね?
だったら…
ヘッド周りに吹き上がるタテガミ、膨れ上がるボディ!
「おおおー!?」
「え、ええー!?」
あ、オーバードライブモード、みんなに見せるの初めてだっけ?
そりゃ、びっくりするよね。
骸骨塔へ突進、助走をつけてジャンプ!
肩甲骨に相当する部分の装甲、球面状関節パーツの下あたりを開き、パワーファイヤ噴射!
ガツンと加速、ブースト! 飛べるんじゃね? これ。
て言うか、事実上飛行してますよね。
骸骨塔の基部に激突する!
直前に、被甲身を前面に展開、ガード!
塔を形づくる鉄骨がばらばらに吹っ飛ぶ!
パイプ状の鉄骨と、接合ジョイントのボルト、ナットがはじけ飛ぶ。
雷神槌!!
雷撃! 稲光でド派手な破壊演出!
コンクリート的な土台部分には回路、電源ボックスが設置されていた。
炎縛鎖!
獄炎が崩れ落ちる塔を紅蓮に包む!!
崩れ落ちるアンテナをぶん殴る!
被甲身パンチ!
これでもか、これでもか!な感じのハリウッド映画系演出!
マイケル・ベイ監督なみのウンザリ濃厚さ!
ジャンプしてみんなのところにもどる。
燃え落ちる骸骨塔をバックに背負い、愕然としているチルタちゃんの前に歩み寄る。
オーバードライブ、終了。
あれー、愕然としてるのチルタちゃんだけじゃないわ。
先生もエルフ兄妹も口あんぐり。女騎士、チビってないよね?
…ちょっとやり過ぎた?
チルタちゃんの前に再びひざまずく。
「ゴ命令ヲ・完了・シマシタ」
え? え?って感じで先生とハイエートを見やるチルタちゃん。
「どうだ! スカッとしたか!?」
先生、いい笑顔ですけど…乱暴だなあ。
「これで、すこしはキミの気が晴れるといいんですけどね。」
ハイエートが膝を折って、身をかがめ、少女の頬に手を添える。
「は、はい…はい!」
泣いてるの? チルタちゃん。
両手を広げるハイエート。
チルタちゃんを抱きしめた。
泣きじゃくる、チルタちゃん。
「お父ちゃん…」
嫉妬深い妹エルフさまもしょうがないな、って顔。
女騎士はもらい泣き。さっきの非情なまでの勇猛さ、どこ行ったの?
先生が俺の耳元にささやいた。
「ぶつかる時、被甲身を使ったな。防護魔法を攻撃に使うとはな。」
お見通しか、先生、さすがだ。
「みんなは先にもどって下さい、私はこの馬獣機を再起動してみます。」
トンちゃんは山頂の上空へ飛んで地形や周辺の基地局のデータを収集してもらう。
このメンバーなら護衛はいらないしな。女騎士の実力も証明されたし。
「じゃあ、先に行く。早く戻れよ…戻れるのか、一人で?」
あ、チルタちゃんなしで村まで?
マッピング機能には記録があるけど…
ろくに道もないこんな山間地でうまくナビ出来るだろうか?
「あたしが残る。」
え? 何言うのデイエート?
「コイツ一人じゃ心配だし。」
ええ?
「そう、じゃ先行くね。」
お兄ちゃんもあっさり認めるのね。
これには先生も驚いてる。
「いいのか? デイエートだって初めての土地だろ?」
「大丈夫ですよ、妹は一度通ったところは間違えませんから。」
マジかよ!? この兄妹、ジーニアス!
結局、俺とデイエートが残って作業することに。
さて、馬型獣機。フォーマット、再インストールするよー。
コネクタはっと… あ、いけね、工具がないとカバー外せないじゃん!
と? 爪が持ち上がってドライバーが出て来た。
ええ? 獣機のネジに合わせた特殊形状ドライバーだよね? これ。
工房の職人衆は専用工具を作るところから始めていたのに。
なんで俺のボディに内蔵されているの?
…もしかして…内蔵されているわけじゃない?
内部で作り出しているとか? あるいはどこかから転送…召喚されて来てるのか?
どこかにある「公式ストア」からアプリもダウンロードされてるみたいだし…
どうなってるの? この機体。どうなの、ヘルプ君?
『該当する項目が有りません』
愛想ない!
根っこ触手に絡みつかれて動けなくなった馬獣機。
最初はもがいていたけど、骸骨塔を破壊した後はほとんど動かなくなった。
これなら動力ケーブルを外さなくても再起動できるか。
後ろ足の間、股間のあたりのカバーを外し、コネクタを接続。
入らないな? 上下逆? 入らない? 元に戻して…入ったわ。
もー!
「そんなとこからねじ回し出てくるんだ? 便利ー。」
デイエート、俺の肩越しに作業を覗き込む。
身体、ぴったりくっついてますよ。って言うか、背中に乗ってますよね?
「時間、かかりそう?」
肩のところにあごを乗せてぐりぐりする。
全身ぐりぐり押し付けて来てますよ。
髪がさわさわ当たるんですけど?
「しばらくかかると思います…お?」
再インストールはあっという間に終わった。
犬型獣機の時は1時間くらいかかったよね?
犬獣機に比べてプログラムサイズが小さいのか。
【ハウンド】ってのは、今決めた。
ヒトや兵機が操縦する乗用獣機だからか?
自律獣機に比べれば必要な判断行動はずいぶん単純だしね。
犬獣機は自律ロボット。馬獣機はオートバイってところだな。
2体とも再起動完了!
ああ、うん。触手剥がすのが大変…関節とか装甲の内側まで入っちゃってるし。
「デイエートさんも手伝ってくれませんか?」
「いやよ! こいつまだ動いてるし。昨日の村長さんみたくなりたくないもん!」
ちっ! 残念。でも、想像はしますよ。んほおおー!
やっとこさ、根っこを取り除くと2体を立たせる。
トンちゃんも回収。
さて、村に戻ろう。
「これ、乗れるのよね?」
デイエートが馬獣機に手をかける。
乗ってくの? 俺、馬なんか乗ったことないですけど。
ためらうことなく、さっと馬獣機にまたがるデイエート。
なんて言うか…体重を感じさせない体さばき。
「ふむふむ、これが手綱替わり…これを握れば、手綱引いたのと同じか…」
「そして、これが…」
馬獣機が歩き出す。あっという間に乗りこなしている。
なんだろうね、コイツ、ほんとに。
俺も乗るの?
ええい、チャレンジだ。
鐙ぽい所に足をかけて背にまたがる!
反対側の鐙にうまく足がかからなくて横倒しに落っこちました。
「あははっはー」
大笑いされました。
馬獣機に乗っていけばミーハ村まですぐ。
と、思ったけどそう簡単にはいかなかった。
四つ足歩行馬獣機は下り坂が苦手。
前のめりになるんで乗っていると怖いし。
そして、俺はうまく乗れないし。
乗ったり、降りて歩いたり。
馬獣機はあっさりいうこと聞いてくれるけど…どうやってご主人認定とかしてるのかな?
頭がついてないので犬獣機に比べると生物感が少ない。
もっとも犬獣機の頭だって、実はアームであって頭じゃないわけで…
人間側の勝手な思い込みで「生きてるっぽい」とか感じてるだけなんだよな。
…はて? 俺はどうなんだろうね?




