骸骨塔を攻略するよ
ミーハ村から山頂の骸骨塔へと向かう。
メンバーは俺、先生、ハイエート兄妹、女騎士。
ぬるぬる女騎士は最初は置いていく予定だった。
元々、案内兼帰りの馬車の護衛なので数には入っていない。
置いていくと言われて愕然となった。
「わわわ、私も行きます!」
でも、あんた、昨夜のアレで鎧も装備も生乾きじゃん。
また、臭くなるぞ。
「戦闘になったらこの娘の護衛に専念します。」
案内人にチーター娘チルダちゃん。
「頼むぞ、チルタ。」
先生に声をかけられて緊張気味のチーター娘。
「骸骨塔が見えるまでは先頭を任せる。」
「二番手はデイエート、索敵を任す。アイザック、クラリオ、わたし、しんがりはハイエート。」
「万が一、戦闘になった場合はチルタは下がってわたしとクラリオの間に入る。」
「いいな。お前の役目はあくまで案内役。」
うなづく、チルタちゃん。
「これを懐に入れておけ。」
護符、被甲身だな。
被甲身は投げるわけじゃないからディスクじゃなくてカード型。
先生特製以外ならこっちが普通らしい。
「護符を使った事は?」
プルプル首を振る。
「起動呪はわたしが唱えるが…万が一ということもある。」
「憶えておけ、『被甲身・オンバサー・キリーク』」
「は、はい!」
先生は昨日チルタちゃんの身の上を聞いている。
その上で案内役に指名したところを見ると、なにやら思うところがあるみたいだ。
出発!
村を囲う柵から出る。
「ハイエート様ー、ばんざーい! ばんざーい! バンザーイ!」
やめてもらえませんかね。村人たち、万歳三唱で見送るの。
なにげに、アトラックさんも混じって万歳してるよ。
まあ、神の化身ハイエート様が獣機を撃退してくれるかも、ということになれば期待する気持ちはわかる。
村は獣機の圏内に入ってはいないが、近くの森や獣道、街道の一部は圏内。
俺みたいに電波を感知できるわけではないから、はっきりした境界線は知りようが無い。
そもそも、電波とか獣機のシステムとかの知識が無い。
村周辺で活動する際は、常に緊張を強いられているのが現状。
流通、輸送の警護の人員コストも馬鹿にならない。
…あれ? 獣機が来なくなったらウェイナさんたち失業?
ま、その辺は俺の知ったこっちゃ無いわけですが。(ひどい)
チルタちゃんの案内で森に入り、山頂を目指す。
獣道だな。上空をトンちゃんが飛行、警戒中。
「整備されてるわね、何度も通ってるの?」
デイエートが、チルタちゃんに話しかける。
「は、はい。苗木とか山菜とか探しに…」
「同じとこを?」
「あ、そ、その…」
「うまいこと、目印とかつけてあるわね。」
感心した様子のデイエート。
俺の目には単なる獣道にしか見えないが…
「何度も骸骨塔の近くまで行ってるのか?」
先生も話しかけてきた。
「え、あ、そのー」
「わたしらには隠さんでいい。」
「あ、あの…はい、何度か、近くまで…」
「そうか。」
チルタちゃん、獣機に父親を殺されているらしい。
仇をとりたいと思ったのだろうか?
骸骨塔に近づいたが、獣機に手が出せるわけが無い。
むなしく引き返して大人たちに保護された。
たぶん、その後は接近を禁止されたんだろう。
でも、あきらめきれずに繰り返していたのか…
最初に出会ったとき、ひとりで森に入っていたのも、森歩きが上達したのもそのせいか…
切ない。
思えば、レガシの街でも被害者が出ている。
再起動で味方になったケルベロスや、ミネルヴァだって、昼間大っぴらに街中を歩くわけには行かないのが現実だ。
傷跡は深い。
森の中を進み、川を渡り、崖を上る。順調だ。
案内がいなかったら、いちいち通れるところを探しながら進まなくてはならなかった。
…それだけに、何度も通ったチルタちゃんの熱意、いや、執念がうかがえる。
危ういな。先生が指名した理由はこれか?
この子のために…何か出来るんだろうか? 俺たちに。
「よよよ、鎧、脱いでくればよかった。重い、暑い!」
うるさいな、ゆでだこ女騎士!
ミーハ村は基地局、骸骨塔のある山のふもとにある。
土地の起伏の関係で電波が届きにくい。
いわゆる「灯台元、暗し」
だが、森の木々が途切れ、本格的に登山っぽくなった所で、完全に電波圏内になった。
「いつも、この辺から獣機がうろついてるよ。」
チルタちゃんが注意してくれる。
そして、見える。骸骨塔。
ズームアップ。
!? 本格的だ。レガシの向う山山頂に作られていた基地局とは構造が違う。
工事現場の足場にアンテナを立てただけ、みたいな感じだった向う山の基地局。
こっちはコンクリート?の基礎に鉄骨で建てた塔。高い!
そして、アンテナの数も多いし電波も強い。
いや、いろんな方向を向いたアンテナが同時に電波を出しているからそう感じるのか?
ハイエートお兄ちゃんも警戒態勢。
そこへ先生が小声で話しかける。
「アイザックにはお前が命令を出してる感じで頼む。」
「え? は、はい。」
何か考えがあるんですか? 先生。
鉄塔周辺を探査、頼むよトンちゃん!
向う山山頂では電波探査に頼りすぎて失敗したからね。
…いるわ、獣機。結構いっぱい居る。
スリープ状態か、電波を出していない。
鉄塔の基部に並んでいる。10体以上いるな。
2足歩行の兵機もいるぞ。背負ってるのは…電波中継器か?
前回は獣機も中継器を担いでいたけど、今回は兵機だけが担いでる。
なるほど、獣機を戦闘に専念させるためか。
もともと兵機が二足歩行なのは作業で手を使うため…戦闘力は低い。
幸い、銃を持っている奴はいない。
おりょ?
見たことない獣機がいるぞ。でかい奴だ。
鉄塔から少し降りたところ、他の獣機と離れて2体。
脚が長い。体のプロポーションは馬みたいだ。
馬型獣機!
だが、首が無い! 妖怪首切れ馬! 日本各地に伝承がある。
首なし騎士デュラハンの乗馬も首なしだと言われている。
いや、首はあるな。無いのは頭。
騎手がいたら、本物の馬より前が見やすいだろうな。
…乗用マシン、乗用獣機か、こいつ!
そういえば、首の脇にバイクのハンドルみたいなものが付いてる。
兵機が乗るのか? いや、今現在は荷物の運搬用に使われてるようだ。
背中の上、鞍のところに荷物を載せている。
振り分け荷物みたいに両側に吊るす感じ。トゲトゲの突き出したような箱型。
アンテナ! 中継器だ! それもかなり大型の。
兵機や犬型獣機では運べない大型の機械を運んできたのか?
どこかにリレーアタックを仕掛けるつもりなのか?
獣機の目的はヒトを襲う事…だとすれば、この辺でヒトの居るところ…
ミーハ村か…関所か…
「やつら、電波中継器を用意しています。」
「村を襲撃するつもりか?」
「このタイミングで来れたって言うのは幸運だと思うべきですかね。」
そのまま、身を隠して目視できる距離まで接近する。
「数が多いわね。」
「変わった奴がいますね。」
「犬型と馬型とヒト型か…呼び分けがめんどくさいな。」
「馬型にはヘッドアームがありません、攻撃力は低いかと。」
お兄ちゃん、背中の矢筒を確認する。
「犬型を打ち抜くには十分ですね。」
「あの、馬型…ケルベロスみたいに味方にできないかな?」
先生、乗ってみたいんですね。
足が長すぎてケルベロスには乗れませんでしたからね。
…確かに、この先の行程を考えても、味方に出来れば助かるが。
「ではまず、ウマ型獣機の動きを止めましょう。」
「これを使うか。」
触手入りの竹筒をポンと叩く。
「まず、ビームで中継器を破壊します。」
「デイエートさんは関節を狙って動きを止めてください。」
「その後、私と先生で馬獣機を捕獲。」
「ハイエートさんは援護をお願いします。」
「クラリオはチルタを守れ、出来るな!?」
「ははは、はい! お任せください!」
方針は決まった。行動開始!
デイエートの放つ矢は的確に馬獣機の関節に突き立った。
ほぼ同時にビーム発射! 馬型獣機に積まれた中継器を打ち抜く!
獣機どもが一斉に電波通信を開始、スリープモードから復帰した。
馬獣機も起動したが、刺さった矢のせいで動きが取れない。
「行きます!」
先生を抱きかかえると、一気に突進。距離を詰める!
こっちに気づいた犬型獣機が2体駆け寄ってくる。
が、その後ろ足の付け根、関節部に金属製の矢が突き立った。
ぶち抜いた、と言った方が的確、ハイエートの矢だ!
前足を1本失なっても戦い続けた獣機だが、腰の関節が破損すると戦闘不能になる。
お兄ちゃん、実は工房に通って獣機の構造をチェックしていた。
弱点を探していたのだと言う。そしてまさに急所を突いた。
たった一本の矢で、足関節の装甲の隙間から腰まで打ち抜いて破壊。
2体とも転倒、前足で地面を掻いてもがくが這いずるのがやっと。
この間に俺と先生は馬獣機に到達。
竹筒からソープの樹の苗木を取り出す。
馬獣機は突き立った矢を関節の動きで振り払おうともがいている。
デイエートの矢は木製、関節を破損するほどの威力はない。
関節の動きですり潰されてすぐに効果を失うだろう。
今のうち! 俺はその腰のあたりに苗木を押し付ける。
「先生!」
「よし!」
「育て育て我が蔓、急々如律令!【促成栽培】」
「【反応促進】!」
え? 何か付け足したね、先生。
錆腐風の一部を構成する反応促進魔法陣!
一瞬で根っこ触手が急成長! 早い! 女豹戦士の3倍速い!
絡みつかれて関節を固定される馬獣機。
脚が長い分重心が高い、たまらず転倒した。
もう一体もすでにデイエートが関節固定済み。
難なく固定、成功。
俺たちを襲おうとした犬型獣機がさらに数体ハイエートの矢に倒れている。
楽だわー、楽勝! 遠距離援護、サイコー!
2体目の馬獣機も固定完了!
追加の犬型が駆けてくる。
「ハイエート!」
先生が声をかける。
「え? あ、そうか。」
「アイザック! やっつけろ!!」
ああ、そんな打ち合わせしてたよね。
アポロン神の化身、ハイエートの命令に応えて獣機を迎え撃つ黒い従機アイザック!
そんな感じで!
でも、先生を守りながらだと…
「あとは、任した!」
とか、言う先生。え?
「被甲身!水筒魔法!被甲身!氷雪虎! 冷たき玉鎧、我を閉ざせ【氷雪結界】」
吹き出した水、二重に展開された被甲身の間に充満、たちまち凍りついて氷の球体に!
「フぉァイヤぁぶぉールぅ」
氷の中でくぐもった声。ぽんぽんぽん!と小っちゃな穴が開く。空気穴。
ああーこれ、キラすけが使ったバリヤー!
え? こんな複雑な手順必要なの? バンパー二重がけとか!
意外とすごいことやってたんだな、あいつ。
そして魔法のネーミングまでキラすけっぽくなってる!
いや、まあ、これで心置きなく戦えますがね。
拳骨シュート!! 戦闘開始!
だが、俺が相手ではかなわないことを学習しているのだろう。
兵機が、まず逃げ出した。数体の獣機が時間稼ぎに攻撃してくる。
妹エルフの援護、連射可能なビーム。
横腹を見せた途端に兄エルフの矢が突き立つ!
もう、敵じゃないね。
だが、逃げたと思った犬獣機の1体が大きく弧を描いて走行。
迂回する形でデイエートの後方にいた女騎士とチルタちゃんに向かった!
同行者を襲うことで、兄妹エルフの注意をそらす。
他の獣機を逃がすためか? いかん!




