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会議するよ


さて、兄エルフやタモン兄貴と情報交換。

二人は山向こうの「塚」骸骨塔基地局の建設進行状況を見張っていた。

獣機たちが山を越えて動き始めたことから骸骨塔の完成を知る。

獣機たちはまっすぐ街の見える山に向かってきた。

「明らかにレガシの街を狙ってたよね。」

「活動できない領域なのに、どうして街があることを知っていたのでしょう?」

そこが気になるんだよな。

「獣機とは違う斥候がいたのか? 事前情報があったのか…?」

アニキの顔が暗い。

「奴らはどう見ても古代技術の産物だ。」

おやっさんも難しい顔をしてる。

「もしかしたら街の周りにある遺跡に関係があるのかもしれん。」

ぎくり。もしかして…

「私と言う存在が、標的という可能性は? 敵を排除しようと。」

「それはないと思うよー」

「そうだな、それなら途中でヒト族を襲ったりして、道草はするまい。」

「わたしも起動するのに苦労したんだ、動くかどうかわからんもののために戦力を割かんだろ。」

「他の遺跡に…何かあるんかいな?」


わからないことは仕方ない。今は棚上げだ。

「ハイエート、デイエート、エルディー導師の援護があれば街の防衛は可能でしょう。」

「敵の戦力の上限が今回程度であれば、の話ですが。」

タモン兄貴がメンバーを見回す。

強者ぞろいか? それともこんなのがうじゃうじゃ居るのか、この世界。

「エルフの弓というのはすごいですね。」

兄エルフがちょっと困ったように答える。

「えー? 時々言われるんだけど…弓って普通当たるもんでしょう?」

は?

「だから、外れないように射れば当たるよね。」

は???

こくこくうなづいてんなよ、妹エルフ!

タモン兄貴、苦笑い。

「まあ、その辺は、人間の俺にはわからん世界だが…」

「エルフだからってわかる世界じゃないがな。」

先生もあきれ顔。

天才兄妹か!


「だからさ、」

兄エルフが続ける。

「あれを見た時、こりゃだめだって思ったんだよね。矢が効くイメージが見えなくて。」


獣機につづいて動き出したのが移動基地局車。

6本脚の巨大な鉄の蜘蛛、蜘蛛みたいな機械。

最初から塚の特徴である骸骨塔を載せていた。

すごいスピードで接近。

獣機を迎え撃って塔の建設を阻止するか、街に戻って防衛するか迷っていた二人。

これを見て街に戻ることを決断。それほど圧倒的。

街の見える山頂に到達した鉄蜘蛛。活動領域の広がった獣機に、途中追い抜かれてしまう。

あとを追いかけて駆けつけて今に至る、と。


組合長と呼ばれてるおっさんがやって来た。人間、か?

特徴のない人で判別できない。

「被害はどうじゃ?」

おやっさんが尋ねると、組合長は顔を横に振った。

「5人、やられた。」

「けが人は? わたしが…」

先生が立ち上がる。治癒魔法があるのか?

組合長が制止する。

「けが人は…いない。みんなひと噛みだ。」

ぞわぞわする。母エルフの破れた襟元を思い出す。

くそ!

だが、けっこう冷静だ、俺。

怒りの感情も薄れているんだろうか?

アドレナリンが出ないから?

いや、そうじゃない。澄んでいる感じ。

純粋に、理不尽に対する異議。

この現状は修正されなくてはならない!


「ここの防衛をお任せします。私は移動する塔を破壊しに行きます。」

ハイエートとタモン兄貴が顔を見合わせる。

「いくら君でも、あれは…」

「単独で何とかできる代物とは思えんぞ。」

「大丈夫、考えがあります。」

そう、鉄蜘蛛とやらを破壊する必要はないんだ。

破壊するのはアンテナ、骸骨塔の部分。

「先生、先ほど炎の魔法をお使いでしたが…」

「お、おう?」

「雷系の魔法はありませんか?」

「ん、あるぞ。獣を追っ払ったり、人を気絶させたりするやつが。」

人を? なんに使ってるんです? エルフ先生?

腰のケースからさっきのコースター…ディスクみたいなのを取り出す。

「これだ、3枚いっぺんに使うと殺せるぞ。」

いや、いい笑顔で何言ってんの先生。怖い。

「私でも使えますか。」

「あ、ああ、ちょっと待って…」

なんか、もぞもぞいじってる。

「本来は起動呪を使うんだが、折れば起動するようにしといた。」

「3つ数えてから投げつけるんだ。」

わかりました軍曹!

3枚もらった。火炎のやつも3枚。

獣機や俺が何エネルギーで動いているのかはわからない。

だが、動力はともかく、獣機の通信には電波が使われている。

電子回路があるはずだ。

電撃魔法は役に立つかもしれない。


「ぼくが見た限りでは、鉄蜘蛛と一緒に来た獣機は12体。」

「まだ4体いる、ということは、鉄蜘蛛の警護でしょうか?」

「そうだろうね。」

移動基地局の電波が強すぎて、直近にいる獣機は判別がつかない。

あと4体もいるのか…

いや、まだ他にもいるかも…

「ハイエートが12体と言うのなら他には居ない、と考えていい。」

アニキ、俺の心読んでるの?

「エルフの視力は人間とは違うからな。」

すげえな。

「遠くはいいんだけどねえ…、近くは見えすぎちゃって苦手なんだよ。」

「長いこと近くばかり見てると頭が痛くなっちゃうよね。」

妹エルフがこくこく。

「ま、わたしは眼鏡つかってるがな。」

ああ、先生の眼鏡ってそういうあれか。

だが、悪い情報ばかりじゃない。

警護を必要としている、つまり、鉄蜘蛛自体の迎撃力はそう高くない。

「獣機相手なら弓も役に立つけど?」

長弓をぽんと叩く。ありがたい、だがこの作戦はスピード命!

「ワシはアイザックが走るのを見たが…」

おやっさんがフォロー。

「生身でついていける速さじゃないな。」

「足手まとい…ですかね。」

「よし! 君を信じる、我々はここを守る!」

タモン兄貴が立ち上がる。

「だが…」

まっすぐ俺を見る。

「帰ってきてくれよ。」


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