関所で一泊するよ
今夜はゆっくり、というわけで宿へ。
軍服カフェに比べて宿は割と空いている。
フリースペースで野宿や車中泊する人の方が多いらしい。
カフェでつぎ込んでお金がないからじゃないよね?
夜になると酒場…っていうか時間経過でそういう感じのお店に自然に移行するらしい。
そして、閉店後もそれなりのことがある。
カフェの女給さん、ホントの軍人てわけじゃないしな。
お店も勤務時間外の副業については関与しないそうだ。
そっちに課金するお客も多いそうで…異世界モラルはちょっと緩め。
ただし、その気がない娘に無理言ったりすると本物の兵士が黙ってないぞ、ってことらしい。
部屋は男女別で取ったので先生、デイエート、女騎士は別室。
俺と兄エルフ、そしてアトラックさん…アトラックさんが来ない?
「まだ飲んでるんでしょうか?」
もう、夜も遅い。課金しちゃったのかな?
「知り合いもいたようですし…先に寝ますか。」
「そうですね。」
ベッドにもぐりこむハイエート。あんたも裸族かー。
椅子に座る俺。
「いつも座ったままなんですか?」
お兄ちゃんが聞いてくる。
「どんな姿勢でも寝る…休息することは出来るんですが…」
「ちょっとベッドに横になるのは…何か違うと思うんですよね。」
なんか、不気味だと思うんだ、その光景。
「うーん、確かにすごく変かも…しれないですね…」
人間用のベッドに横たわる黒いロボ。毛布掛けるとさらに変なことに。
もう、ホラーだよね。
「それでは…おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
たちまち寝息をたて始めた。1日中馬車に揺られてたんだから疲れてて当然。
そんな様子、おくびにも出さなかったけどね、お兄ちゃん。
うん? なんだ? 部屋の前に誰か…
カギはかけてないけど…アトラックさんじゃないぞ。
二人いる。そーっと扉が開く。
しまった、油断した。トンちゃんを配備しておくべきだったか?
滑り込んで来たのは…女の子だ。
一人は長耳、エルフだな。
もう一人は獣人イヌ系…ぴんと立った耳、ふさふさ尻尾。
イヌ系って言うよりキツネ系?
武器は持っていない。というか薄着。
薄着って言うか…ほとんど着てないですが?
ハーフケットほどの布を巻き付けただけ。
ほぼ真っ暗だけど、エルフも獣人も夜目が効くから問題ないようだ。
いったい何を? 対処に困る。
俺がベッドじゃなく椅子に座っているのに気づいてびっくりしたようだ。
キツネ耳娘が俺に近づく。耳元にささやく。
「起きてた? しー、何にも言わないで…」
エルフ娘の方はハイエートお兄ちゃんのベッドに近づく。
するりと布地を落とす。白い裸身が露わになる。
ほっそりと引き締まって、でも一部はくっきりと主張したボディ。
そっと毛布の端を持ち上げて身体を滑り込ませた。
ああ! 夜這いだこれ!!
昼間のタイプSエルフ軍服女給さんだ、あの娘。
種ねらいか!
なるほどお兄ちゃんは見るからに極上美形血統種馬。
これを逃す手は無いよね。わたしを産婦人科に連れてって、的な!
そして、こっちのキツネっ娘は最初に席に案内してくれた娘?
同室である俺を抑えるための援護か。
たぶんアトラックさんもどこかで身柄を抑えられているんだな。
見事な連携、役割分担。
クリプス騎士の軍人風ジョブトレが効果を上げているのか?
「エルフの風習は知ってるでしょ、あなたも協力して。」
俺の耳元にささやくキツネっ娘。
「あなたにはワタシがいいことしてあげる。」
身体に巻き付けていた布を広げる。
たわわな胸がむき出しに。布の下はこちらも全裸。エリートおっぱい。
制服の時に金モールによって強調されていたあの稜線が、今、白日の下に晒される!
ま、真っ暗、夜ですけどね。
おっぱい山脈! 動く日本アルプス! プリモ・カルネラ!
つんっと尖った山頂は、本来なら霧に包まれ拝む事すら叶わない難所。
天候に恵まれて僥倖でした、な展開。ラッキー!
ええ? でも、これどうしたらいいの?
こんな事態は想定してなかったんですけど?
キツネっ娘の手が股間に伸びてくる。
意図を明確にすると同時に、万が一拒絶されたときでも弱点を抑えることが出来る。
いい初手だな、これ。ま、俺にはついてないんですけど。
「んん、どうした? デイエート?」
お兄ちゃんも目が覚めた?
…って、しょっちゅうもぐりこんでるんだな、デイエート。
「え? 誰?」
妹じゃないことに気づいた。
そしてこっちのキツネっ娘も気づいた。
「ええ? 無い? 硬い? え、人形? 何?」
あわててペタペタ股間を確認。おうっ! あんま触んないで! おう!
蹴破るような勢いで扉が開く!
「なーにをやってるかあー!! おまえらー!」
デイエート乱入! 相変わらず勘がいい。
女の子二人は逃走!
うーん、正直残念っていうか…もう少し記録を撮っておきたかった。
先生もぐじぐじ目をこすりながら顔を出した。
「うーん、なんだあ? 夜這いかあ?」
先生、もう少し何か羽織った方がいいと思いますよ。
「そんな目くじら立てんでも…種くらい分けてやれよぉ…」
「何言ってんの導師! お兄ぃ、油断しすぎ!」
「いや、そんなこと言われてもねえ…」
「あんたも何やってんのよ! あんな女にくっつかれて!」
ええ? 俺もですか? いや、そんなこと言われてもねえ…
ちなみに女騎士は爆睡中。
夜明けとともに活動開始、馬車のところへ行くとアトラックさんがいた。
「おはようさん、アイザック。どうだった? うまくいった?」
共犯かよ!
「ダメでした。デイエートさんに気づかれました。」
「あちゃ!」
「アトラックさんはどうしておられたのですか?」
「あいつらと飲んだ後、馬車で寝てたよ。」
「俺はエルフじゃないし、女房は鼻いいし…リスクは犯せない!」
既婚者か。なるほどね。
兵士が馬を連れて来てくれたので馬車にセッティング。
アトラックさんと二人で、今日も頼むぞ的なことを言ってご機嫌を取る。
「おはよう、アトラック。」
先生も起きて来た。女騎士は大あくび。緊張感が足りないぞ!
デイエートはお兄ちゃんにくっついてる。まだ警戒態勢。
馬車には乗らずにアトラックさんが馬を引いていく。
みんなも歩き。
カフェの前を通ると女の子が店の前を掃除してた。
まだ制服は着ていない。エプロン姿だ。
あー、昨日の子たち。デイエートが殺気を飛ばす!
ショボーンとするエルフっ娘、千載一遇のチャンスを逃したね。
キツネっ娘が俺に気づいて小さく手を振る。
ぺこりとお辞儀で返す。
思わず昨夜の光景を脳内再生してしまう。
今現在のエプロン姿、そして制服姿と全裸姿。同時再生。
うーん、制服っていいですね。一粒で二度おいしい的な!
ああ、しまった! 後姿の記録がない!!
ふさふさお尻尾ヌードで付け根の謎を解明したかったのに!
千載一遇のチャンスを逃した。
がん! おう! いつの間にか後ろに回ったデイエートのローキック!
「何か良からぬこと考えてるだろ!」
通関手続きが始まった。
独自に徴収している通行税はカフェの軽食一食分くらい。
わざわざ王軍の兵士に文句を言うような額じゃない。
むしろ、はっきり決められたおかげで、やれ袖の下だの賄賂だのが入り込む余地がなくなった。
おおむね好評だ。
しかも、パーキングエリアで宿泊や飲食したヒトは免除札がもらえる。
逆に通行税を払って「こちら側」へ来た人はお食事割引札がもらえると言う。
エリアでお金を使った方がお得感が高まる仕組み。
そして、軍服キャバクラで搾り取るわけだな。商売上手。
通関を仕切っているのはちょっと年配のいかつい従騎士。
チャラ男騎士は事務員みたいな顔して後方に控えてる。
本来、大街道は治外法権地域。
特に禁制品とかが定められているわけではないし、物品に税はかからない。
そのせいで荷物のチェックは、ゆるゆる。
昨日の聞いた話では、事実上人身売買とか誘拐とかだけが監視対象だと言う。
まあ、そんなわけで女性や子供は厳しくチェックするらしい。
ディスカムや、マビキラに関して情報が来てないか尋ねたが、クリプス騎士のところには特に通達はないそうだ。
「カロツェ家の手形ですか!」
通関の兵士がちょっと驚いてた。けっこう権威があるらしい。
「お気をつけて。」
イケメンチャラ男商売上手騎士に見送られて出発。
「クラリオも気をつけてね。ホントに。」
念を押す。
「なんだ! クリプス! それじゃ私が『心配なやつ』みたいじゃないか!」
「いや、だってお前…いつだって…」
ああー、タモン兄貴も言ってたなあ…運が悪いって…
さくさくストーリーを進めようと思っていたんですが
…さっそく道草食ってます。




