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出発するよ


家に帰るとキラすけが居た。

そのまま残っていたわけじゃなく、いったん家に帰ってから出直してきたらしい。

「今日は我は泊まる!」

お泊りセットも持ってきた。

「今日は、工房の浴場へは行かれないのですか?」

先生に尋ねる。

「しばらくは、入れませんが…」

「昨日行ったからいいよ。それに…」

「今日、行くと送別会みたいになりそうでな。」

「たった、ひと月だ。そういうのは苦手なんだ。」


お風呂はウチで入ることになった。

浴槽にお湯を張る。ドボドボ、ほかほか。

「え? それ…水魔法? 」

キラすけ、目丸くしてるな。どーだ驚いたか。

「新たに習得しました。」

「ヒーター機能と併用で直接お湯が出るんですよ。」

「凄いでしょ。」

ふふーん。ちょっと自慢してやる。

ぐぬぬぬって顔で悔しがるキラすけ。ふふーん。

先生とキラすけはお風呂で背中流しっこ。


「しぇんしぇと寝るー。」

甘えん坊め。まあいいだろう。しばらくは甘えることも出来ないからな。

しかしお前、中二病キャラぶれまくりだぞ。

最近はマントやベールなしでも外へ出れるようになったな。

いいことだ。

ところで自分ちで寝るときはちゃんとパジャマ着てるんだろうな?

裸で寝るのは先生んちだけだぞ。


一つベッドでくーくー寝息を立てる先生とキラすけ。

この先、旅先では宿とかとれるんだろうか?

こないだのピクニックの時を見れば野宿とかも割と平気そうだったけど。

さて、俺も寝るか…

自動監視状態は継続、スリープモードへ移行。


ん? 真夜中だよな…?

あれ? この感覚…水底に引き込まれるような感覚。

スリープモードとは違う…

これは…夢?

そこにいるのは…【黒き宝玉】

ええ? キラすけ、今日はこの前みたいにくっついてない…よな?

夢幻投影ドリームキャストの能力、上がってるのか?

俺の前に立つ、【黒き宝玉】

前回同様、黒レースのドレス、大きく開いた胸元、なんだけど…

あれ? なんだか前と違う?

…何だか縮んでませんか、【宝玉】さん?

背とか…胸とか…

前回、前々回のときははいかにも男の妄想全開的な盛りっぷり。

セクシーファンタジー【黒き宝玉】だったけど…

ちょっぴりリアルキラすけよりに修正された感じ?

何年か順調に育ったキラすけ未来予想図的な?

うわ? ヤバい。これは…ヤバいよ!

おい、ちょっと待てって、このイメージ、生々しいよ。

え? いや、そりゃあ、そのままでもカワイイって言ったけど。

そりゃ、小動物的にカワイイって感じで…意味が違うって!

そーゆー対象として見てたわけじゃ…

いやいや、そのカッコで前みたいなことされたら…

ちょっと犯罪…

う、むむ…おま、し、舌…どこでこんな…

え? 先生から? こないだの夢幻投影で教わった?

やっぱ、教育に悪いよ、先生!

おい、こら、そんなとこ触っちゃだめだって。

ちょっ、やめ。あれ? 身体動かないぞ?

あ、ちょ、いじっちゃ…だめだめ

そうそう、まだお前には早すぎ…

おう! こら! 何すんの?

ええ? まさか、口…おうう!

あうう! そっち側を? あ、う、お。

さきっぽ? そんなとこ!? ちろちろって、くああ!

こんどは下? 何を?

くあ、まさか? それを? 

ええ? 口に? あ、ちょ!

もひとつも? こ、こら、噛むな! ぞわってすっから!

う、待て、待てって! そんなにしたら!

あ、は…はう…う!

やり過ぎだって、いくら何でもだな…

おう? 今度は何を…

はうあ!? まるごと?

くわえ…おおう、熱っ!

ちょ、待てって、そんな?奥まで、飲みこ…前後に…

やめ…だめだって。あ、こら! いや、ほんとに、もうっ…

きゅーってなってるから! あっーーー!


うっ! 目が覚めた

えええ? キラすけのやつ、いつの間にこんな高等技術を…

お、いた。寝室からちょろっと顔出してこっち見てる。

ちょっぴり顔赤いけど、にまーんと自慢げに笑う。

「ふふーん!」

こ、こいつ! 成長著しい、恐ろしいやつ、伸び盛りか!


朝ごはん、平然もしゃもしゃ食べる、キラすけ。

まともに顔が見れないよ。もう、俺の負けでいいです。

まあ、360度視界で見てはいるんですがね。

「よし、行くか!」

後片付けが終わり、一休みした後、先生が立ち上がる。

荷物は昨日のうちにカロツェ家へ運んだから、小さなずた袋一つ。

家はベータ君が見てくれるし、ミネルヴァもいる。

問題なーし!

外へ出ると、そのミネルヴァとケルベロ2号、タマちゃんが来ていた。

「行ってらっしゃい、導師、アイザック。」

あれ? 俺の事アイザック? 呼び捨てかよ。いいですけど…

「行ってくる、後を頼むぞ、ミネルヴァ。」

「はい!」

先生には、いい返事だな。

『心配です。』

え? 俺には通信で? 心配?

大丈夫だよ、新ナビも問題なく作動してるようだし、愛想は無いけど。

『いえ、そっちの心配ではなく…』

『ボクが見張ってなくても、節度を持った行動を…ノゾキとか…異常性癖とか…』

そっちかよ! だいじょぶ、だいじょぶ!

バレる様なへまはしないから。

露見しないように十分配慮します。(やらないとは言ってない)

歩き出すと、キラすけが無口。

ご飯食べてる時は元気あったけど、やっぱ、寂しいか。


街に入るとまず組合長のお店に。

おう、みんないる。イーディさん、ベータ君、アイワさん、ディスカム、マビカ。

デイヴィーさんとミニイたんまでいるぞ。

あと、どうでもいいけど女騎士もいる。

あ、こいつも一緒に来るんだっけ。

迷惑かけんじゃないぞ。

新調した金属性鎧は工房製。

軍服は洗濯してボタンや金具を付け直してある。

ブーツも新しい奴だな。

工房への支払いはツケ。

路銀は飲食代で使い果たした。

今回の案内役で先生から、帰りの馬車の警護でビクターさんからアルバイト代が出る。

公務員はアルバイト禁止じゃ? 異世界無罪?

そして、すでに前借り。哀れ貧乏借金女騎士。


ミニイたんが抱っこをせがむ。

「あいじゃくおでかけ?」

「はい、しばらく留守にします。」

「かえりいつ?あした?」

「いえ、もう少しかかります。」

「あさって?」

「いえ、もう少し…」

いかん、俺、泣きそう。

デイヴィーさんがミニイたんを抱きとる。

お母さんにぎゅーと抱きつくミニイたん。

泣きたいのぎゅーっと我慢してる。

ごめんね、小っちゃい子にひと月は長いよね。

「先生、これを。」

ベータ君が出してきたのは輪っかになった紐。

色違いの細紐を編んだ組み紐。

3枚の金属製?の小さなプレートが通してある。お守り?

「憶えました。」

イーディさんが、はっと驚いた。

「先生、それ…」

「あくまで用心のためだよ。」

んん? 何の話?

首にかけると服の下に入れ、プレートを胸元に落とし込んだ。

挟まってますよね? それ、おっぱいに。

「組合長、後を頼む。それじゃ、行ってくる。」

キラすけ、涙うるうる。

先生がぽんっと頭を叩く。

大丈夫だぞ、たったのひと月だよ。

「ん!」

何だよ? キラすけ。今度は俺を手招き。

え? 何? 聞こえないよ。

かがみ込んて耳を近づける。

「いってらっしゃい。」

ふにっと柔らかいものが顔に触れた。

ディスカムやマビカがびっくりした顔してる。

「行ってきます、キララさん。」


「いってらっしゃい」が、元の世界とは違う。

ひどく重く、そして軽い。

交通機関はもちろん、電話もメールもないこの世界。

一度、旅立てば連絡を取る方法は無い。

道中の危険は元の世界とはけた違い。

ましてや、獣機の本拠を目指すのだ。

大丈夫なんて保証はない。

そして、私有財産も少なく、生活基盤もシンプルで、そして軽い。

旅先で新しい生活を始めてしまえばそれきり戻って来ないこともある。

タモン兄貴は王都を離れて、レガシで新しい生活を始めた。

ベータ君の兄だというハイバンド道士はレガシを離れたきり10年も音沙汰無しだと言う。

「行って来ます。」と出かけて「行った」人が「来なかった」そんな経験を。

「行って来ます。」と言って出かけて来たけど「帰らなかった」そんな経験を。

この世界、この街の人たちは繰り返してきたのかもしれない。


次は工房へ立ち寄る。

俺のマントや女騎士の装備を受け取るため。

女騎士の荷物は背嚢ランドセルにまとめて背負う。

剣を吊るし、ナイフや投げ矢を装備。額には鉢金を巻く。

ほほう、それなりに凛々しく見えるぞ。

「クラリオを頼むぞ、アイザック。」

兄貴が言うと、女騎士。いかにも心外だと言う風情。

「案内、護衛するのは私の方なんですけど…」


俺の方は、おやっさんとダット姐さんから完成したマントを受け取る。

シルバーナイトな雀竜マントを覆うオーバーマント。

布ではなく、暗灰色の革製。

薬品処理されているので水にも強く、燃えにくいそうだ。

「しばらく使えばいい感じに色が抜けて、味が出てくると思うよ。」

ありがとうございます、ダットさん。

「俺もおやっさんに作って貰うことにしたから、帰ってきたらお揃いだな。」

いや、タモン兄貴、男同士でペアルックはちょっと…


貧乏女騎士、俺がマントを羽織るのを見て、唖然。

「ええ? ちょっと待ってください! それ、雀竜のウロコ?」

「マント、まるごと? ちょあ!!」

変な声出てるぞ。

おやっさんがウロコ製の盾を渡す。

あ、それ、鉄蜘蛛の時ビームを防ぐのに使ったやつ。(傷もの)

「え、これを私に。使っていいんですか? 私が?」

「うっひょーい!」

喜ぶのはいいけど、貸すだけだからね。

おやっさん、ダットさん、タンケイちゃんとシーシーに挨拶してカロツェ家に向かう。


カロツェ家の庭ではすでに馬車がスタンバイ。

兄妹エルフも来てた。

「おはようございます、ハイエートさん、デイエートさん。」

挨拶をかわす。二人ともいつもと変わらぬスタイル。

気負ったところは全くない。頼もしいね。

デイエートが俺を見る。

「あの黒いのはどうした?」

え? キラすけ? 何で?

「組合長のお店で別れて来ましたが?」

「ふーん…そうか。」

何だよ?

「おおお、おはようございます。よろしくお願いします!」

借金女騎士だけが緊張気味。

お嬢様、ビクターさん、メイドーズが見送りに出て来た。

イオニアさん、ヘアスタイルがいつもと違うな。

髪を結んでる、ヘアピンで止めている。

ああ、遠足の時デイエートからもらった紐。先生からもらったピンだ。

「先生、お姉さま…お気をつけて。」

みんな馬車に乗り込む。

「さて、行きますか。」

お兄ちゃんエルフが軽ーい感じで言う。

出発だ。



この世界に召喚されてから、レガシの街を出るのは初めてだ。

この街には悪人はいなかった。みんないいヒトばっかり。

当たり前だ。

ディスカムたちへの対応を見ても、組合長が人格者なのは疑う余地がない。

しかも有能だ。救護院、町内放送、消防団…みんな組合長が立ち上げた。

工房の経営者、おやっさんは言うまでも無い。

警備担当の兄貴は正義感にあふれ、そして強い。

そしてエルディー先生。

多少、行動に問題はあるが、優しく、筋の通ったヒトだ。

そして、強くて容赦ない。

理不尽な暴力を振るうような輩は「いちばん簡単な方法」で排除されちゃっただろう。

街の顔役がそろって強くて人格者なら、悪人のはびこる余地は無い。

だが、街の外は違う。

悪人だっているだろう。

実際、王都では刺客を送ってくるような奴が威張ってる。

人間だけじゃない。

獣機以外にもヒトを襲うモンスター、魔獣がいると聞いている。

先生から図鑑を見せてもらった。

おなじみのモンスターから聞いたことも無い魔獣まで勢ぞろいだ。

うん、怪獣図鑑。

そんなやつらに遭遇するかもしれない。

そもそも、獣機の本拠を目指すのだ。危険に決まっている。

将機みたいに、まだ知らない獣機が襲ってくる可能性もある。

ビームガンみたいな新たな武器を装備してくるかも知れない。

だけど…

不謹慎だろうか? 俺。

ワクワクしてる。心躍る。


俺の異世界冒険はこれから始まるんだ。


…あれ? 俺、ガスの元栓閉めて来たっけ?

ま、レガシにガスは来てないんですけどお。



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