昔のことを聞くよ
レガシの住民のドーピングが明らかになった。
犯人は先生。
「今さら収穫量が落ちても困りますから…」
もう何十年も経ってるし、ま、いいか、ってことになった。
おおらか。
「だだだ、大導師はこの方々とはどどど、どういったお知り合いで…?」
おっと、気の毒女騎士。ビビリながらも好奇心が勝ったか。
「ああ、昔パーティ組んでた。」
「は? 大導師のパーティって…ナビン王…の?」
「そ、ナビン、プロフィル…あ、初代バッソ侯ね。俺、エルディー、おやっさん、メガドーラ…」
「メガドーラは夢魔族、今のバッソ侯…湾岸侯のおっかさんね。」
「お祖母ちゃん?」
キラすけが反応した。
「そっか、そういうことになるか…似てるよ、雰囲気が、黒いとこ。」
やっぱ、黒いのか…お祖母ちゃん。
いや、キラすけが黒いのって…お祖母ちゃんの影響?
「あいつ、どうしてるの? 何か連絡あった?」
おやっさんが渋い顔。
「一時期、ここにおったんだが…エルディーと一緒にやらかしたんで…逃げた。」
ああ、睡眠学習事件…
「あと、もう一人ブレビー…は先代のモアブ伯…ま、後半もっと大勢になったけどね」
「けけけ、建国七英雄?…この人たち?」
「建国はしとらんよ、わしらはな。」
おやっさんが否定した。
「今の王都…王城を作るとこまでかな…手伝ったのは…」
「頑張ったのはナビン、プロフィル、ブレビーだな。」
「いやいや、俺も頑張りましたよ?」
心外だなって感じで突っ込む、エアボウド導師。
呆然とする女騎士クラリオ、口、開いてるよ。
いや、俺も初耳ですよ。そんな話。
「昔話だよ。どうでもいい…と思ってたけど、イオニアや…」
先生、キラすけの方を見やる。
「キラにしてみれば、身内の話だもんな…そのうち話してやるよ。」
こくこく頷くキラすけ。
「それで? お前さんは…タモンの部下だったって?」
おやっさんが話を振った。
そっちの話も聞きたいよね。
「は、はいい! タモン・ギャザズ将軍旗下クラリオ・ヒタチでありますぅ!」
直立不動!
「いや、俺もう将軍やってないし…」
「アイザックには詳しい事情、言ってなかったっけ?」
いちおう、魔道機演技中なので黙ってうなづく。
「5、6年前?かな…獣機が王国の隊商を襲うようになって、討伐軍が結成されたんだよ。」
その指揮官を務めたのがタモン・ギャザズ将軍。
各地の自由集落を転戦し、獣機を撃退した。
だが、きりがない。
プログラムを改変された襲撃モードの獣機。
奴らは恐怖を感じない、自己保存本能もないから、危険には鈍感だ。
壊れた獣機は回収され、再生されてまた、やってくる。
何度となく襲撃を繰り返す。軍の被害も大きい。
「軍隊」は基本的に人間の軍隊と戦うために作られている。
獣機が相手では従来の戦法は通用しない。
戦意や士気に左右されず、退くことのない獣機相手に戦うことは終わりのない無間地獄だ。
打ち続く戦闘の間に、獣機がテリトリー内だけでしか活動しないことが明らかになる。
上層部は、街道の警備だけを優先し、集落の防衛は放棄するよう決定。
王軍の進駐を受け入れ、物資を提供、現地兵まで出して協力した集落にしてみれば、それは無いだろう! と言うことになる。
王軍への反発は高まったが、対策があるわけではない。
いくつもの集落が放棄され、住民は移住を余儀なくされた。
準備を進めていた集落の一つに獣機が接近。
近くにいた将軍は集落住民の移住に協力。避難民の防衛に従事。
現地に居る兵にしてみれば、集落は街道の一部でありその防衛は当然の任務だった。
だが、上層部はこれを命令違反とみなし、帰還した将軍を糾弾した。
すでに勢力を拡大しつつあった至上主義派閥。
将軍が「亜人」を守るために戦力を消耗したことを問題視したのである。
「ま、俺も上のやり方にブチ切れてさ、情報部のやつとつるんで…」
一部の貴族が、現地集落に物資の供出を強要し、その分の物資を前線に送らず着服していたことを暴露。
首脳部は激怒し、その貴族は処分|(首チョンパ!)。
これによってその貴族が属していた至上主義派閥は打撃を受けた。
「ま、恨みを買った、てのもあるが…」
「何より、自分が【政治】をやらなきゃならない立場になってた、て事に気づいて…」
「もういいかな、ってね。全部放り出しちゃったんだよね。」
兄貴にも壮絶な過去があったんだなあ…
「お前らには悪いことしたな…」
クラリオ女騎士に頭を下げる兄貴。
「い、いえ。将軍がすべての責任を引き受けてくださったおかげで…」
「とにかく、コイツ、運が悪くてなあ…」
兄貴が話を変えた。
「部隊を分けるとコイツのいる方だけ敵と遭遇。」
「渡河作戦で仮橋をつくると、コイツが渡ってる時に落ちる。」
「潜伏任務ではコイツの伏せたとこにはアリの巣がある。」
「閲兵式ではコイツの進行線上に犬のふんが…」
うーん、このヒト…軍人には向いてないよね。
「そそそ、そんなことはありませんんー!」
くっころ女騎士、気の毒。
「そそ、それで…将軍…その、奥さまとはどういったなれそめで…」
核心を突いて来たな、女騎士。
「もう、将軍じゃないって、タモン呼びでいい。」
「あの時の避難民に居たんだよ、村の代表格だった。」
ほほう、ダット姐さん、そんな過去が。
「そそ、そうだったんですか。」
「ま、よろしくね。アタシはデイエイティ、親しいヒトからはダットって呼ばれてる。」
「よ、よろしくお願いします、奥さま…え、デイエイティって…」
ダット姐さんのフルネームを聞いて何かに思い当たった。
「みみみ、ミソロギィの女豹!?」
「ちょっと! やめてよね。その呼び方!」
「こりゃまた懐かしい呼び名じゃな。」
「やめてよ、おやっさん。恥ずかしい。」
「ミソロギィ村の自警団を率いとったんじゃが、自警団と言うか…」
「もー」
うーん、レディースのリーダー的な…うん、しっくりくる!
ついて行きたい、姐さん!
「あの時は、私も現場に居りました。命を救われました。」
「大げさだよ、みんな無我夢中だっただけさ。」
「でも、あの時とはずいぶん雰囲気が…お召し物とか…」
「それ以上言ったらコロス!」
「はうう!」
震え上がった、クラリオ騎士。
なるほど、ダット姐さん、特攻服的な何かを着てたんですかね?
女騎士、さっきからちびちび何か飲んでたけど…それ?
「失礼しりゃした! 奥さま!」
「クラリオ・ヒタチ! 反省しておりゃす!」
「あらま。この子、酔っ払ってない?」
「ああ、こいつ! 酒、弱いのに!!」
焦る兄貴。姐さんの目が細くなる。
「ほう? そんなことまで知ってるんだ?」
焦りまくる兄貴。
「いや、いや、部下とコミュニケーション、皆で飲んだだけだから!」
「さて、今日のところはお開きとしますかね。お疲れさまでした。」
組合長が場を閉める。
「クラリオ殿も宿が取ってありますので。」
「じゃあ、俺、送っていく…」
と、兄貴が立ち上がりかけて、…座った。
うん、ダットさん、怖い。
「すまん、アイザック、頼む。」
「はい、わかりま…ワカリ・マシタ。」
帰宅後、兄貴は事情聴取を受けることになるだろう。
ダットさんから。
「エアボウドはワシんとこへ泊まるか?」
「いいんですか? お世話になります。」
生臭賢者はおやっさんの家に。
「我は、先生んところに泊まる。」
ええ? キラすけ、何で?
ぎらり、とデイエートがにらんで来る。
「今帰ると、お邪魔かも…」
…おいおい、マビカ…そこまで攻めてるの?
大丈夫なのか? 年齢的に。先生はどう思われ…
「そっか、そうするか。」
問題ないんですかね、この世界的には。
でも、先生の基準、ゆるいからなあ。
「今夜はメガドーラの話でもしてやるか……いや、」
「あいつの話は…まずいか…ちょっと…」
「そうだな、お祖父ちゃんの方、プロフィルの話をしてやろう、うん。」
先生のゆるい基準でも話しづらい行状。何者だ? メガドーラお祖母ちゃん。
解散。まあ、兄貴夫婦以外はお風呂に寄っていくとのこと。
先生とキラすけも入ってから帰ると。
デイエートが小声で
「何なんだよ、さっきのしゃべり方?」
「隠蔽工作ですよ。王都の騎士に、なるべく能力を見せないように。」
「…まあ、いいけど…泊めたからって黒いのに変なことするなよ。」
しませんよ。…しないよな?
さて、俺はみんながお風呂に入っている間に、女騎士を宿屋まで送っていくことに。
葬儀屋近くの宿屋、何度か看板を見てるので場所はわかってる。
女騎士、さらに酔いが回ってきた。酔っ払い。千鳥足。
「あんでこんらことに…イオニア様を襲撃するとか…」
「せっかくタモン将軍いあえらのに…結婚してるとか…ひどい!」
ぶちぶち、愚痴を言い続けている。
捨てて帰りたい。
「相手がエルフとか、ひどすぎるのら…」
おや? こいつ至上主義?
「いつまでも若いとか、スタイルいいとか、ずるいのら!!」
ちがったわ。
「美人でおっぱいでかいとかーずるいのだーー!!」
大声出すな!
「獣機相手にビキニアーマーで戦ってたくせにー!!」
びきっ!? 聞いてはいけない情報! 知ってはいけない事実!
想定外、なんてこと教えてくれるんでしょうかね? この、酔っ払い騎士!!
俺まで生命の危機! ダットさぁーーーーん!
「おい、魔道機!!」
「わたしとあのエルフとどっちがミリキ的だ!」
「腹筋には自信があるりょ!」
今度はからみ。たちが悪い。
そして腹筋美はマイナー魅力すぎる。
「だいたい、エルフは結婚しないのりゃなかたのか?」
「女だけで子供と暮らすて聞いてたのに…」
突然、立ち止まった。
「待てりょ、たことは…子供が出来れば、男は用済み?」
え? いや、ちょっと待って! そんなことは…無い…無いのか?
ええ? 兄貴、ピンチ? ダットさん、種だけ狙い?
「それかりゃなら、チャンスあり? わたし、まだいけまーす!!」
「しょーぐん、まーつわ。よーずみ!なったらわたーし、いるからー」
歌うな! 暗黒面ソング!!
こいつ、ちょっと電撃くらわして黙らせるべきか?
と、思ったら急に静かになった。…そしてリバース!
ああああー
誤字報告ありがとうございます。
もう一方は迷いましたが、俗字のまま行こうと思います。




