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女騎士が来たよ


「ど、どうしてそんなことになっているんだ?」

うろたえるエルディー先生。

後ろで聞いてたディスカムも真っ青になってる。

『単なる誤解や法令違反でそのようになるとは思えません。』

『おそらく意図的な情報操作が加わっているのではないかと…』

ビクターさんの説明に唸る、先生。

「目的は…この町か、イオニアか、それともベガか…」

『心当たりがありすぎますな。』

「とにかく今はディスカムを保護するのが先決だ。」

「わたしもそちらへ行く。」

『はい、私は立場上ご一緒できませんが…』

「うむ、イオニアのそばにいてくれ。」

ビクターさんは王都の商人であるカロツェ家の支店長という立場。

王国の官憲と表立って対立するのはまずい。

「アイザック、なるべく正体を隠して来てくれ。」

「荒事になるかもしれん。」

了解、先生!

「ミネルヴァ、ここを頼む。誰も入れるな。」

駆け出す先生。

『3人を頼むよ。』

『…』

あれ? 声に出して言い直す。

「ミネルヴァ、三人を頼む。」

「了解しました。」

あれれ? 今度は反応した。

い、今はそれどころじゃないか。

マビキラ、ディスカム安心しろ、俺と先生がついてる。

ここに居れば、ケルベロスが守ってくれる。

俺も遺跡を飛び出した。

先生、走りながら…詠唱? 事前詠唱魔法か?

戦闘に備えてるのか!


途中、家によってマントを羽織る。

トンボ型ドローン、トンちゃんを放つ。

頼むよ、王軍の行動を追ってくれ。

タマちゃんは…ビクターさんはタマちゃんを組合長のところに置いて行ったようだ。

『組合長』

「わ、びっくりした! アイザック?」

『ちょっとこれ、動きますんで、驚かないでくださいね。』

「ええ?」

タマちゃん起動! 視覚センサーオン。

組合長のお店、葬儀屋の中だ。お、おやっさんもいる。

足を展開、おしりを出してボール型から蜘蛛型へ変形。

「ええ?」

「なんじゃこれ?」

じっくり見せるのは初めてだよね。

『偵察用ですよ。隠れて監視してますね。』

「あ、ああ…」

監視と言われても、おやっさんも組合長もピンときてないようだ。

そりゃそうか、通信だって伝声管が基準。

そもそもカメラすら存在しないのに偵察ドローンを理解しろって方が無理だよ。

タマちゃんは天井に張りついて監視お願いね。


「まだ来てないか? 間に合った。」

先生と俺は葬儀屋へ到着。

「最初は私が相手しますので…」

組合長、頼りになる。

俺はどうしましょう? どこかに隠れる?

「アイザックは…ここに入って。」

組合長がお店の壁に立てかけてあるモノを指差す。

棺桶かあ…


やって来た、王軍の兵士たち。

街へ入るとすぐ隊商と別れて、町の代表者、組合長のところへ来た。

あらかじめ、隊商から情報を得ていたのか?

トンちゃんで追跡、チェック。

王都から来た兵士たちは総勢12人、と一人。

その一人は指揮官らしい騎士。

女騎士だぞ!

女騎士キター!! くっ殺せ!

なかなか美人さんだ。

短髪をさらにかき上げ、金属製のティアラ風鉢金で抑えて額を出したオデコスタイル。

王都からレガシまで隊商と一緒に来たから、ほこりだらけ。

外観的にはだいぶくたびれてる。

ちゃんとしたらきっと美人。

スタイルは…わかんないな、鎧姿だから。

胸は金属鎧に覆われているし、腰は剣帯とか巻いてるから。

露出度皆無。フィギュアだったらちょっと売れそうもない。

キャストオフが必要だ。

部下の兵士たち、こっちもくたびれてる感じ。全員男。

鎧から見て二人は士官か? ちょっと身分高い感じ。

その他は平兵士って感じ。むしろ荷物運び的な。

どうでもいいな、男は。

いや? 待てよ?

12対1? それってどうなの?

女騎士隊長のお世話は誰がするの?

お風呂はいるときはどうしてるの?

隊長、夜はお寂しいんじゃないですか?

俺たち御奉仕しますよ。

ぜひ御命令を!


俺は棺おけの中、外は見えない。

天井のタマちゃんからの映像。

隊についてきて葬儀屋の窓に取り付いたトンちゃんからの映像。

多重多角合成して状況を把握。

女騎士隊長が前に出た。

「この町の代表者はどなたかな?」

「わたくしです。お役目ご苦労様です。」

組合長に対して、ちょっと首をかしげる女騎士。

「この町はエルフが多いと聞いていましたが?」

「代表者と言っても、雑用係ですからな。」

姿勢を正す女騎士。実直だな。

「我々は王命を受けて犯罪人を追っている。」

「バッソ家、エスブイ家、二人のご令嬢を誘拐したエルフハーフ、ディスカム・イサネットだ。」

「捜索に協力、あるいはただちに身柄を引き渡していただきたい。」

「なお、二人のご令嬢も保護し連れ帰るよう命令されている。」

むっつり顔の組合長。

「ご用件は承った。」

「しかし、当該人物とその事情についてはこちらで把握している事実とかなり齟齬があるようだが?」

堂々たるもんだ。相手が王国騎士でもまったく臆する所がない。

さずが、組合長。

「どのようなことでしょうか?」

女騎士、有無を言わせず、と言うことではないようだ。

いちおう、話を聞く姿勢を見せている。

「当方は、ご令嬢は二人ともご自分の意思でディスカムに同行したと聞いている。」

「誤認ですな。」

首をかしげる組合長。

「わたくしはご令嬢ご本人から直接お話をうかがっておりますが?」

そうなの? まあ、大家さんだしな。事情は聞いてるか。

「こちらの情報では、犯人は腕のいい魔道士。特に洗脳技術に長けているとの事です。」

「ご令嬢方は精神支配を受けている可能性があると聞いています。」

はあ?

「こちらにも魔道士は居りますが…」

先生の方を振り返る。

「そのような痕跡がありましたかな?」

「そのような魔力的痕跡は認められなかった。」

「精神魔法は非常に高度な魔法だ。学園中退の少年魔道士が使えるようなものではない。」

先生がきっぱり。

「そちらは?」

女騎士が先生の事を尋ねる。

「この街の魔道士だ、縁あってご令嬢がたの指導をしている。」

先生は自分で返事。

「いかなる魔法を使っても、精神操作をすれば不自然さは出るし、魔力使用の痕跡は残る。」

「あの者たちはただの子供だ。」

先生を騙せるわけがない。それ以前にあいつらが嘘言ってるわけがない。

女騎士が反論。

「ディスカム・イサネットは王国貴族に対して高度に政治的な脅迫を行なっております。」

「協力者の存在が強く疑われている。」

組合長がいかにも心外、と言う感じで鼻白んだ。

「この街に協力者がいると? あるいは町そのものが陰謀に加担していると疑っているわけですかな?」

女騎士は微動だにしない。

「我々は犯人の確保とご令嬢の保護を命じられています。」

「それを実行するのみです。」

組合長がゆったりとした口調で話を続ける。

「この町は自由集落、王国に属しているわけではない。」

「王国の法は適用されないし、そちらの希望にこたえる義務はないわけですが…」

女騎士の表情が強張る。

「それは、こちらも同じです。町の許可を取る必要はない。」

「万難を排して達成する。実力を行使する許可も出ています。」

兵士たちが一気に緊張する。臨戦態勢!


「力づくか…いいだろう。だが…」

先生が入れ替わるように、組合長の前に出る。

「王国が自由集落に千人隊を送り込んだとなると、他の自由市、集落が黙ってはいまい。」

「交易路や街道の維持は難しくなるぞ。」

この世界の国家単位は面ではなく、点と線。

城塞都市を結ぶ街道の維持は、点在する中立、自由な異種族の集落による所が大きい。

その支持が失われることは都市間の連絡を大きく損なうことになる。

「せ、千人隊? 我々は12人しか…」

「わたし相手に力づくなら、千人隊を連れて来い、と言っているのだ!」

先生の周囲に、なんともいえない「気」が満ちる。

「わたしの弟子に手を出すなら、覚悟を決めろ。」

こ、怖わ! 本気の先生! 怖い!

あの襲撃団の時でさえこんなじゃなかった。

まだまだ本気を出すには程遠かったってことだ。

底が知れないぞ、エルディー導師。

女騎士にも伝わった。思わず後ずさる。

「そ、そうか! お前が報告にあった大魔法を使うという魔道士か!」

「だが、こちらにも備えはある。」

「いかに強力な魔道士か知らんが、こちらには【大賢者】が居るのだ!!」

女騎士、後方を見やって声を掛ける。

「大導師! お願いします!」

うーん、このシーン。時代劇で見た事ある。

『先生、お願いします!』と言って出てきた用心棒はたいてい役に立たないの法則。

兵士たちを分けるように進み出たのは、灰色のローブを着た…エロジジイじゃん!

さっき、デイヴィーさんを口説いてた生臭ジジイだよ!

え? 居たの? 俺、気付けなかったぞ? 気配を消してた?

かさにかかる女騎士!

「お前も魔道士なら名前は知っていよう。王国に名高い大賢者、エアボウド大導師だ!」

エアボウド、聞いた事あるその名前。

ずずいっ! 前に出る大賢者!!

すうっと右手を上げた。


「よっ、久しぶり! エルディー。おやっさんも、お元気で何より。」


ひどい。気の毒なのは女騎士。

後ろに並ぶ部下たちも唖然。

「え、ちょ? な?…」

言葉にならない。

先生も気が抜けた。

「おまえなー、何やってんだよ? いったい?」

「いや、ほらー。この歳になるとさ、レガシまで一人旅とか、心細いし…」

「ちょうどこのヒト達が行くって言うから、敵の魔道士に対抗するため手伝うとか、」

「うまいこと言って、騙して連れて来てもらったんだわ。」

騙したって、言っちゃったよ。

ひどすぎる。クソジジイ!

「どうせ、一緒に旅するなら美人の方がいいしさ。ねっ。」

女騎士にひらひら手を振る。生臭賢者!

「まあ、そっちも元気そうで何よりだが。」

「大賢者とか呼ばれとるのか? ずいぶん出世したのお。」

おやっさんに言われて頭を掻くジジイ。

「お恥ずかしい。いちおう、王立学園の学長とか、やってたんで。箔付けにね。」

「で、どうするんだ? 困っとるぞ、そいつ。」

女騎士のほうを向いて、

「ごめんね。」

ひどい。

「ど、ど、ど、どーし! おんどぅるるぎったんでぃすかー!!」

ああ、うん、「本当に裏切ったんですか?」 って言おうとしたのね。

うん、知ってる。オンドゥル語。

「いや、ほら、どっちみち俺が10人いてもかなわないし、このヒト。」

先生を指差す。ぎょっとする女騎士。

「ま、まさか…大賢者が? うそだ! どんどこどーん(そんなことー)!」

気の毒女騎士、くっころ系に違いない。

見てみたい! くっ殺シチュエーション。

「隊長! お下がりください!!」

二人の男騎士が抜刀!

錆腐風ルストハリケーン!」

先生の複合魔法! 一瞬の旋風。

抜いた剣が見る見る錆び落ちる。

柄だけになった剣を呆然と見やる騎士たち。

それはいいんだけど、男騎士の前に居た女騎士。

位置的に、先に錆腐風を浴びちゃった。

濃厚なやつをね。ピュッピュッドロドロ。

金属鎧が腐食、消滅。

剣帯を留めていた金具、ズボンのベルトの留め金、額の鉢金まで消えてなくなった。

がちゃん! と剣が落ちる。

剣は鞘に入っていたので無事っぽい。

「な? なんと!」

慌てて剣を拾おうとすると、膝までずり下がったズボンに脚をとられた。

こける! 前のめり!!

パンツ丸出しヘッドスライディング!!

慌てる男騎士二人。だが武器がない。おろおろするばかり。

凄いぞ、先生。武装解除魔法、人道的!

残りの兵士たちは棒立ち。仕事しろよ、お前ら。

代わりの武器を渡すとかさー。

お前らの武器の方が何気に良さげじゃん?

「え? え? 何? なんで? 鎧は?」

身を起こす女騎士。

どうやらシャツのボタンも金属だったらしい。

前が開いてぱーぱー状態。

スポーツブラ的下着とおへそ、ふんどし風紐パンツが丸見え。

うん、さすが女騎士。腹筋割れてる。

なんて運の悪いヒトなんだ、キャストオフ女騎士!



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