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修羅場ですよ


「ミネルヴァって言ったな、お前。」

「私の名前とか…獣機を射たこととか、何で知っているんだ?」

けげんそうなデイエート。

そういえば初対面だっけ? お兄ちゃんはヘッド部分だけ会ってるけどな。

うーん、この世界、SNSはもちろん、写真とか、通信手段とかがないから。

たいていの場合、顔を合わせたことのない相手イコール知らない人だ。

会ったことがないのに名前を知られているのを不思議に思っても不思議じゃないですね。

「ああ、ボクはアイザック本体と記憶を共有しているので…」

あ、それ…言わない方が良かったかな…

「共有? え? ええ? 」

俺とミネルヴァを交互に見るデイエート。

「じゃ、じゃあ…あの時とか…あの事とか…知ってるってこと? ええ!」

真っ赤になって悶絶するデイエート!

あ、こら、やば! 自分で言っちゃってどうすんだよ!

お嬢様が耳ざとい!

「あの時? あの事? お姉さま? アイザックさんと何が?」

「ええあ! なんだとー!!」

うわ、キラすけまで参戦!

「まさか? あの事、知ってるのか! コイツ!!」

「ああ! 初めての時、声かけて来たの…あの時邪魔したの、お前か?」

いや、初めてってキラすけ、言い方がね、誤解をね…

「キララちゃん? アイザックにしちゃったの?」

いや、マビカさん、そうゆー言い方やめてくれるかな?

ああ、お前もやられたことあるんだっけな。夢幻投影ドリームキャスト

「な? 何? あの事? はじめて?? しちゃった? アイザック、お前やっぱりこの黒いのと…」

デイエートが聞きつけて突っ込む。

うわ! 十字砲火クロスファイヤ! 修羅場! 修羅場ですぞ!!

「何だ、お前。タンケイだけじゃなく、こいつらにもあんなことしちゃった?」

せ、先生!! 何で今、そんなこと言うんですか!?

「あんなこと!? やっぱりお前タンケイにも!!」

「あの、巨乳ドワーフか!!」

「アイザックさん、何ですの? 何ですの? そこんとこ! く・わ・し・く!!」

ベータ君も思い当たった。

「あれ? ミネルヴァさん? 記憶共有って…いつから?」

「アイザック本体が起動したときからずっとですよ。」

「ええ!? じゃあ…僕のあれ…も?」

「あれ? …ああ、服飾工房のあれですか。」

「あううっ! うわああああーーーー」

ベータ君も参戦で大混乱に。


先生! 煽っといて、なに平然とビクターさんと相談してんの。

「留守中はケルベロスのうち1体を屋敷に常駐させたい。」

「それは有り難い。アトラックもいいかな?」

「味方となれば頼もしいですね。」


俺の評判は地に落ちた。

「デイエートさんの言ってるのは獣機騒動で怪我をした時のことですよね。」(ねっ)

「キララさんの言ってるのは固有魔法とかのことですよね。」(ねっ)

「タンケイさんにしたと言うのはマッサージのことですからね。」(ねっ)

一生懸命、虚実を交えて説明、弁解、言い訳。言い逃れとも言う。

デイエートとキララ、イオニアさんから…

なんともいえない不信感に満ちた視線。

マビカは別に何とも思ってない。どこかから取り出したクッキー、ポリポリ。

もっとも、デイエートもキララも自分の行状をあからさまにするわけにはいかないので歯切れが悪い。

デイシーシーが居なくて良かった。こんなとこあいつに見られたら。

……

「……しっ?」

いるじゃん! いつの間に?? 神出鬼没!

「どうしたかなーと思って、工房帰りに寄って見たっし。」

「ダット姐さんから、お嬢の感想聞いてこいって言われてるっし。」

「なかなか面白いことになってるしーい。」

満面の笑み、邪悪! 闇の眷族ダークエルフ! 黒ギャル!

「シーシー、何かご存知?」

お嬢様に耳打ち、ひそひそ。

俺のデビ○イヤーには聞こえてるぞ。

「デイエートんちに寄った後、肌香油のいい匂いをさせて帰ってきたことが…」

「まままあ! まままああー!!」

興味津々のお嬢様を振り切るように解散となった。


帰り道。

デイエート、マビキラ、ベータ君はアトラックさんの馬車で送ってもらうことに。

ホントは俺が送って行くつもりだったんだけど…もう、そういう雰囲気じゃないよな。

俺たちも帰路につく。

もう夜中で人通りもないからゆっくりで大丈夫。

俺、ミネルヴァ、先生、ケルベロス。

先生は足が長すぎてケルベロスに乗れないし、みんなでてくてく歩く。

「なんだか、不適当な発言でしたか?」

のほーんとした様子のミネルヴァ。羞恥とか嫉妬とかが、わかってない感じ。

こいつ! おぼえてろよ!

ここで気づいた。

俺、ミネルヴァがどうしてベータ君と仲良くなったのか、わからない。

タンケイちゃんと打ち解けるのにどんなやり取りがあったのかも、知らない。

…ここ最近の記憶を共有していない!?

いや、それ以前にミネルヴァ状態のナビ君から記憶を提供されてないよね。

意識や記憶の主体がすでにフクロウ型機体ミネルヴァに移行しているのか!

『え?』

意識してなかったの? ミネルヴァ? いや俺もだけど。

『ミネルヴァヘッドの演算能力が予想以上ということでしょうか。』

そういえば、ここの所ナビ君のツッコミが少ない。

人格の分離が進んでいるのか?

『なにぶん、どれもこれも想定外の事態ですので』

『バックグラウンド解析にリソースを回すためにナビゲーションやチュートリアルを除くパーソナリティをアウトソーシングしたのかも知れません。』

意識高い系のプレゼンテーションみたいなこと言ってるな。横文字。

獣機関係の解析は終わったみたいなのに、何を解析してるの?

『過去に受けた魔法攻撃を解析しています』

えー? 俺が戦ったのは、獣機に雀竜、襲撃団。

魔法攻撃なんか受けてないんじゃない?

『解析により、対策や…あ、』

『ピロリーーーン!』

おう? 何?

水精竜ウオーターシュートの解析が完了しました』

『水精竜を習得しました』

な、何だって!? それ、マビカの固有魔法だよな。

習得? 固有魔法を? いや、マビカから攻撃されたことなんかないけど…?

ああー、あれか。マントに火がついた時。パニックになって…

あれ、攻撃されたって分類なの?

「どうした? 黙りこんで。」

「何か、ムセンツウシンとやらで会話してるのか?」

先生、実は…

「何だと!! 固有魔法を解析!? 習得?」

「そ、そりゃあ凄いことだぞ!」

「過去に、分析、体系化されて一般化された固有魔法はあるが…」

「どれも一流の魔導師が何年…何十年も掛けて研究したものだ。」

「それをこんな短時間で…」

「よし! 今度、固有魔法持ちに会ったら、もれなくお前を攻撃してもらうことにしよう。」

うんうん、いや! 嫌ですよ、そんなの。

「使えるのか?」

「やってみます。」

マビカの真似をして手を合わせる。

水精竜ウオーターシュート!」

ちょろちょろ、ぷしゃー!

「おおー、出る出る。」

「いや、これ、これから旅するには便利だぞ。」

あーホントだ。水筒いらずだ。

「マビカには黙ってた方がいいかなー」

「存在意義がーとか言ってすねると困るしな。」

「あと、後ろから見ると立ちションに見えるぞ。」

やめてよ! 先生!! 

綺麗なカッコで下ネタ発言されるとガッカリ感倍増だから。


家に到着。

ミネルヴァたちは遺跡に引揚げた。

がっつり疲れた。ロボは疲れないけど精神は疲れた。

先生も疲れた。

ぽいぽい脱いで、ガシガシ顔洗って化粧を落とす。

借り物なんですからもちょっと丁寧に扱ってくださいよ。

「イオニアも、チビどもも楽しそうでよかったが…さすがに疲れた。」

髪を下ろしてほどく。ソバージュ風、モード3。

裸族先生、パンツいっちょで大きく伸びをする。

「うーん、しゃれたカッコして肩が凝った。」

こいこい、と手招き。

「揉んでくれよ。」

はいはい、実のところ、日課みたいになってるのであった。先生マッサージ。

ベッドの上にあぐらかいた先生の肩を揉みながら、つい愚痴が出る。

「ひどいですよ、先生。あのタイミングであの発言。」

「ん? ああ、タンケイのことか? 事実じゃん。」

そうですけどね。

「ずいぶんうまくなってるよな、最初の時と比べると…」

学習機能、バイブ機能、ヒーター機能を組み合わせて最適化することで達人の域に達してますからね。

「わたしにもタンケイの時みたいに本気出してみるか?」

両手で髪をたくし上げ、半身に振り返る。胸を見せつけるように。

え? …人間だったらゴクリっと喉が鳴ってるところだ。

思わず硬直する、あ、身体が、ですよ。

「ふふん?」

見慣れすぎたせいか、あんまり意識しなくなってたけど…先生ってすごく…

「さーて、背中もやってもらおうか。」

ベッドの上でうつぶせに身体を伸ばす。

じょ、冗談ですよね? 今の…


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