ファッションショーをするよ
そんなこんなで次の日。
何やら、先生とビクターさん、ダット姐さんも巻き込んで悪だくみ進行中。
俺のほうはミネルヴァとケルベロスをお嬢様に紹介する準備。
ミネルヴァと脳内ミーティングを行なう。
『命令すればあとは自動警備モードになりますからカロツェ家…イオニアさんの警護は可能です。』
『もし、外部から…【上位存在】から電波で新しい命令が来ても問題ありません。』
ハード的にもソフトウェア的にもセキュリティに問題なし、と。
あとは、お嬢様やメイドーズがケルベロスを受け入れてくれるか、だな。
俺や先生がレガシの街を留守にしている間、ミネルヴァが留守番してくれるとありがたいんだが…。
『意識を鳥型メカ、ミネルヴァに収納できるか試行中です。』
戦闘力で言ったら飛行ユニットが留守中でも動けるといいんだが。
『権限をミネルヴァに委譲できるかやってみます。』
ミネルヴァが仕切ってるから実感はないけど、解析作業をやってるのは俺の脳だからなあ。
…はて? 俺の脳、この機体の中央演算装置って…どこにあるんだ?
やっぱ頭部? どうなの?
『さあ?』
さあ!!!
『ボク、ハードウェア的な部分はさっぱり。』
えええー?
ああ、いつかプログラマーやってる友人に同じ様なこと言われたっけ。
「お前のパソコン、CPUは何積んでるの? i7? i5? まさかPentiumとか言わないよね。」
「え? さあ? 俺、そういうの知らないし。」
マジかよ!!
『そもそも、神代魔道機ってそういうもんじゃないですし…』
何なの、俺。中身何が入ってるの?
考えてみると、翻訳システムがスマホとかパソコン風に表現してるだけなんだよな。
ホントの所はわからない。
うーん、怖い。
「さあ、工房へ行くぞー。」
先生が、マビキラに声を掛ける。
ベータ君、ディスカムの男子は帰宅、かと思ったら。
「お前たちも来い。いいもん見れるぞ。」
マビキラは緊張してる。
何やかや言ったって貴族出身、身分制度が染み付いてるようだな。
王都を出てからだらだら解放生活が続いてただけに、失礼がないか心配なんだろ。
「こんなカッコで夕食会とか…無理だよう…」
泣きが入ってる。マビカ。
「我のドレス…もう、擦れ擦れだし…」
女の子だなあ。キラすけ。
「ふふふ、だから工房に行くんじゃないか。」
先生がにんまり。
そういうことか。
「え、服飾工房へ行くんですか?」
ベータ君が尻込み。ビビりまくり。
まあ、無理もない。陰謀渦巻く女の園。
うっかり近づくとまたカワイイ格好させられちゃうかも知れない。
てなわけで、服飾工房前に集合。
にこにこ顔のダットさん、むふふ顔のデイシーシーがお出迎え。
隅っこの方にタモン兄貴もいますがね。
なんでか、ベンチが置いてある。おすわり兄貴。
あれ、服飾工房の前、ちょっと高くなってない?
デッキ? こんなのあったっけ?
入口の垂れ幕とつながって舞台みたいになってるぞ。
「来たわね。カロツェ家での夕食会、準備は任せてもらうわよ!」
「デイエートはまだ来てないのか?」
「まだね。」
「イオニアを喜ばすのには、あいつがメインなんだが…」
なるほど、そういう悪だくみか。
「じゃあ、マビたん、キラたん、先に準備しようか。」
マビたん、キラたん!! 乗りに乗ってるなダットさん。
「それともベータ君が先?」
「いえ、いえ、僕は参加しませんから。」
クールに、冷たく返事するベータ君。でも腰が引けてる。
後ずさる、3メートル。
「ち!」
「ちっ!」
「ち!」
ダットさん、シーシー、先生まで舌打ちしたよ。
イオニアさん喜ぶのになあ、ベータ君が可愛いカッコすれば。
そう思ったけど、言わない。
「二人の次は導師ね。」
「え? いや、私はいつもので…」
にこにこ顔が凄みを帯びるダットさん。
「ほほほ、そんなわけないでしょ。」
「まあ、そんなわけないしー。」
ヒトを呪わば穴二つ。
「あ、ちょっ…」
引きずり込まれた、先生。
さて、男子班はどうしよう。
女の子たちの準備待ち。手持ち無沙汰。
ベンチに座って、待つ。
「なるほど、これはいいものが見れそうですね。」
だれともなしにつぶやく、俺。
うん、ひとごと。この時点では大して期待してない。実のところ。
「そういえば…」
ベータ君がディスカムに尋ねる。
「最初の頃…何であんな変なマントを着ていたんですか? 三人して。」
「あ、あはは。」
ディスカムが頭を掻く。
「まあ、あれはー、キラの趣味なんですけど…」
お祖母ちゃんから【黒き宝玉】の名を受けたキララ。
中二病路線まっしぐらだったわけだが…
なんでお前もマビも付き合ってたの?
「アイザックさんにはお話しましたけど…」
「王立学園でいじめを受けていたって話。」
「最初に標的になったのはマビで、それをかばったのがキラ。」
「まあ、同じ学園にいた兄や姉に逆らって…それでキラも標的に…」
「そんな目にあってもくじけないで突っ張るキラの姿、侠気を見て…」
「僕も二人をかばうようになったっていうか…」
キラすけ、頑張ったのか…。いかん、涙出そう、出ないけど。
「だから、精神的には僕らのリーダーはキラなんですよ。」
「生活能力は皆無ですけどね。」
うふふ、と笑う、ディスカム。
こんちくしょう! いい男だぜ、お前もよ!
おっと、デイエートもやって来たな。
お兄ちゃんも一緒。
昨日、お前も工房まで来いって先生に念を押されていたもんな。
「服飾工房…ああ、なるほど、みんなおしゃれしようって事ですね。」
察しがいい。
「ええ、今マビカさんキララさんが準備中です。」
「それは楽しみですねえ。…え、じゃあ、デイエートも?」
「え? あたし!」
ビクッとするデイエート。
声を聞きつけたダットさんが入り口の垂れ幕を跳ね上げて出現。
がしっと妹エルフを捕まえる。有無を言わせず引きずり込んだ。
「ええ、ちょっと、待っ…」
「ふふふ、メインはアンタだよ…」
怖い!
「ウチの女房、【可愛い】に命掛けてる。」
ぼそっと兄貴がつぶやいた。
いつの間にか人が増えてる?
主に女のヒト。受付ドワーフさんとか、食堂のお姉さんとか。
おう、タンケイちゃんも来た。
「シーちゃんに見に来いって言われたんすけど…?」
工房中から集まって来てる? こんなに女の子いた?
お針子さんとかも、見物に回ってるのか?
どう見ても工房の外からも来てるよね?
デイヴィーさんまでいるぞ。
抱っこされていたミニイたんが俺を見て、腕の中でもがく。
パス! 抱っこをパス、デイヴィーさんから。
うはは、大出世。
「なにが始まるんです?」
ファッションショーですよ、デイヴィーさん。
と言おうとしたけど、「ファッションショー」が『翻訳不能』
ああー…
と、アトラックさんがいるぞ!
「馬車でお迎えに上がりました。ビクター支店長が、演出に凝れ、とのことなので。」
なるほど。総力戦だな。
「お待たせーしっ!」
デイシーシーが出てきた。司会か。
「ふふーん、まずは【黒き宝玉】キララちゃーん。」
垂れ幕をくぐって出てきたキラすけ。
人が多いの見てビクッとする。
おお! 可愛い!
バージョンアップした黒いドレス。
フリルが抑え気味でちょっと大人っぽい。
ふわふわ髪を結い上げてまとめ、小さめの黒い帽子。
目の部分だけレースが下がっている。
お、唇、ほんのり赤い。紅が差してある。
うーん、可愛い! ちょっと背伸び感あるのがたまらなく可愛い。
「ほおおーー、」
「かわいーー」
観客からも好評。どよどよ。
「おお、美人さんですねー」
「素敵ですよキララさん。」
ハイエート、ベータ君の賛辞に鼻高々だ。
「どうだ! ディスカム。」
「う、うん。すごく可愛いよキラ。」
俺のほうを向く。口紅が、夢の中の【黒き宝玉】を思い出させる。
まずいな、変な気持ちになっちゃうぞ。
「どうだ! 我の美貌!! 惚れ直したか!?」
ええ? それだと元から俺が惚れてたってことになるじゃん?
うん、それでもいいや。そう思える。
「素敵ですよ、お綺麗です、キララさん。」
「ふふーん!」
鼻の穴膨らんでるぞ、ぴすぴす!
幕からダットさんも顔出してる。観客の反応を確かめてるな。
シーシーに合図。
「続きまして…普段はボーイッシュ、ボクっ娘、マビカちゃん!」
ほほー、おおお?
こ、これは!
スカートだ!! マビのスカート姿!
キラすけと対照的な白いドレス。
良く見るとフリルのレースやコサージュにキララと色違いでおそろいのものが使われている。
二人並ぶと対照的で、なおかつ統一感がある。
そして、肩出し。肩紐だけで首筋、鎖骨も露に。
膨らみかけとあいまって、清楚なお色気。
女の子だ! たまらなく女の子!!
「きゃーかわいー」
「これ、すてきぃー」
観客から賛嘆。
「これはまた…素晴らしいですねえ。」
ハイエートは腕組みしてうんうん頷く。
「以前…男の子と間違えたなんて…ありえないですよねえ」
うん、絶賛。ベータ君に同意を求める。
「素敵ですよマビカさん!」
ベータ君、語彙少ない。まあ、仕方ないかー。
見物人にびびったマビ。恥ずかしげに身をよじる。
でも、意を決したように尋ねる。
「どう、ディスカム?」
ぽかーんと口をあけていたディスカム。
うろたえる! 口をパクパクさせて珍妙なリアクション。
相変わらず、感情を隠せない。
「き、き、綺麗だ。マビ…まさか…こんな…」
ふふーんてな顔でキラすけが俺のほうを見る。
なんでおまえが自慢するんだよ|(笑)
でもやっぱり肩出しは恥ずかしそう。
と、シーシーが白レースのカーディガンをキラすけに渡す。
流れるようにマビに羽織らせる。歳相応な可愛い感じに。
初手でインパクトを与える演出か、やりますね。
にかーっと笑ってるダットさん。
次の合図。
「はい! そいじゃ次はエルディー導師っし!」
突き出されるように先生が登場。
おおう! こ、これまた…
髪は巻いてアップに止めた、モード1。
おっぱい丸出しエロドレスだったらどうしよう、と思ってたけど。
襟の高い服。谷間とかは無しで。露出度控えめ。
ところがコルセット風にウエストを締め上げているので、でっぱりが強調されて大変なことに。
乳袋、エロイ! 問答無用で教育に悪い。
DTを殺す! 瞬殺! 滅殺! DTジェノサイダー!
そして背中が丸出し!
振り向いた途端、いきなり素肌が覗くからどっきり。
ウエストから腿へボディラインのはっきり出る、絞り込んだスカート、歩きにくそう。
「先生、素敵ですよ。」
「これはまた…大人気ない…ですねえ…」
「なんだ! ハイエート! その感想は!」
「いえ、いえ、褒めてるんですよ。」
女性陣からはため息が漏れている。
おおむね好評と見ていいんでしょうかね。
ディスカムは?っと。うん、釘付け、視線がね。一部分にね。
ほーら、マビキラに突っ込まれた、脇腹に。
げふあ! くの字!
「おい!」
え?
「どうだ?」
あ、俺?
「お美しいですよ、先生。」
お世辞じゃないですよ。
さて、後はデイエートだが……
キララの呼び方がキラすけに戻ってしまいました。




