母子を助けるよ
獣機は常に電波を発信している。
基地局と常時通信を行っているのだろう。
電波発信体を探る。直近に2体を確認。現場へ走る!
そこで見たのは…
うっ! 人だ!
二人、女性と子供。背後に子供をかばい、立つ女性。
母子だろうか? 耳…エルフか。女性は石を握っている。
背中越しに、前方から迫る獣機が見える。
立ち向かうつもりか? 子供を守るために?
この人を死なせてはいけない。急げ!
だが、獣機は2体!! 1体を止めても二人は救えない!!
どうする!?
飛び道具! 拳銃? ミサイル?
敵の突進を止めるパワー。大質量を伴う固体弾!
石をぶつける!!
そうは言っても思考は加速できても動作まで速くなるわけじゃない。
適当な石を捜して拾っている余裕はない。
ああ、アレが! アレが使えたら…
「ピロリーーーン」
お知らせサウンド!
『ライブラリに……がダウンロードされました』
来た! 知ってる!!
こぶしを握る! 両腕を前に突き出す! 胸の奥からこみ上げる!!
熱い! 叫べ!! 魂の叫びだ!! 超合金の魂だ!
ピシリッ、と音がして前腕部、肘の手前に亀裂が走る!
赤いなにか、が噴き出す。うなれ鉄拳!!
「ロケッ○○ーンチ!!」
両腕が弾き出される!! 振り返った母エルフの両脇を通過。
首をすくめる母エルフ、子エルフはしっかり視線追尾!
突進する獣機にカウンターで激突する!
1体の頭部がひしゃげ飛ぶ。もう1体の肩口に打撃が炸裂、弾き飛ばす。
頭部を失った獣機が、戸惑ったようにたたらを踏む。
正面から見ると首のあった場所にぽっかりと穴が開いている。
あそこに…
「ピロリーーーン」
いや、この音、もうすこし何とか…
『ライブラリにビームがダウンロードされました』
これだ!
額のパネルになんだかランプが配置されていることは知ってた。
ターゲットスコープ、オープン!!
発射! レーザー?だかなんだかわからない閃光が走る。
額から打ち出された光弾が首のあった穴に吸い込まれるように命中!
はじけるように装甲の隙間から煙が噴き出す。
一瞬の静止ののち、崩れ落ちる。うずくまるように動きを止めた。
右腕が戻ってくる。一旦、垂直上昇して噴射が停まる。
そのままの姿勢で落下してくる右上腕を、腕を上げて迎える。
寸前で一瞬、制動噴射をかけドッキング。
もう1体の獣機が立ち上がる。パンチを受けた方の前足がぶらぶらしている。
それでも攻撃をやめない。顔アームを開き飛びかかって来た。
身を沈め、もぐりこんで下から右腕でかかえ込み、担ぐように抱き上げる。
たかい、たかーい
そこへ戻ってきた左腕が激突! 頭部が吹っ飛ぶ!
地面に叩きつけると、もがく獣機の後ろ足の一本を踏みつける。
もう一本の後ろ足を右腕でつかむ。
左上腕は、弧を描いて戻ると前方でくるりと回転、そのまま惰性で進む。
腕を前に突き出してこれを迎える。ドッキング!
両腕で後ろ足をつかむと、股裂きの要領で関節を逆方向にこじる!
引っ張る! チューブやらコードやらが引きずり出される。
さらに捻る! 破壊音と断裂音。
空回りするモーターのようなうなりをあげたまま動かなくなった。
呆然と見つめるエルフ女性。
360度視界で見えてはいるが、振り返って視線を向ける。
その表情に恐怖が走る。怖がられてる。
まあ、しかたないか…正体不明のロボだしなあ。
母エルフにすがるようにしてこちらを見ている子エルフ。
女の子だ、かわいい! ちっちゃい! 抱っこしたい。
ぽかーんと口を開けている。プニプニだ。
俺が視線を向けていることに気づくと、にまーと笑ってこぶしを突き出した。
「かこいい!!」
泣きそうになる、うれしい。ほっぺたが緩む…まねえよ、金属製だしw
幼女エルフ、最高だな!
「お怪我はありませんか?」
「あっ、はい。大丈夫です。」
母エルフ、見ると上着の襟から肩のあたりが裂けている。
1体目の獣機は首から肩、頚動脈を狙ってきた。
この女性、初撃を避けたのか? 獣機が外した、と言うべきか。
本当にぎりぎりだったんだ。
あと少しでも遅れていたら、この人は死んでいた。
怖い。絶体絶命になってから現われるようなヒーローはダメ!
左肩がむき出しに…おっぱいもこぼれてますね。
豊かです。エルフってそういう種族なのかな?
俺が人語を発したことで、感じるものがあったのだろう。
ちょっと顔を赤らめ、恥ずかしそうに上着の襟を寄せる。
匂い立つような色気。
いいですね! いいですぞ! こういうところですぞ、エルフ先生。
エルフ先生は露出度は高かったが、こういうところがまるで無かった。
うん、無かった!
母エルフ…人妻エルフに声をかける。(なぜ、言い直したし?)
「教会に行って下さい、立てこもります。」
誰かが言っていたことを繰り返す。
ま、教会がどこにあるかも知らないんですけどね。
「はい、ありがとうございました。」
人妻エルフは幼女エルフを抱き上げ、走り出した。
そっちなのね。いや? そっちは…
電波発信体を感知。そのまま進むと途中で遭遇?
こりゃまずい。
「お子さんをしっかり抱いていてください。」
声をかけると、有無を言わさず人妻エルフごと抱き上げる。
「ひ、や!」
「走ります!!」
腕の中で身を固くする人妻エルフ。
身は固くしているけど柔らかい。
柔らかくてあったかい。
そして、いい匂い。
匂い?
感触も温度もだが、匂いも? エルフ先生の足の臭いは感じなかったのに!!
機能が、アップしている?
成長してるんだ! 成長してますよ、安西先生!!
「ひゃっはー」
どんどん加速する。幼女エルフ大はしゃぎ!
立体地図をチェック。石造りで塔のある、鐘楼? 教会らしい建物に向かう。
「こちらで間違いありませんか?」
「は、はい。」
教会前に到着、急減速。幼女に注意。
二人を降ろす。
教会前には戦士の一団、剣やハンマー?を持ったドワーフ。弓を構えたエルフ。
エルフの女戦士が駆け寄る。
髪を後ろでまとめている。ポニーテール。
ホットパンツ、太腿丸出し。まぶしい。
「デイヴィーさん、無事!? ミニイちゃんも。」
「デイエート! 大丈夫よ。」
名前が似てるな? 姉妹?
違うか? さん付けだし。それに…
今までの出会いからエルフはみんな、きょに…、胸が豊かなのかと思っていたが…
個人差、うん、個人差。
「えーと…こちらの…人? が助けてくれたの。」
すいませんねえ、奥さん。分類不明で。どーも、すいません。
「こ、れ、おまえは… いったい??」
俺を見て個人差エルフが固まる。
「事情は後で、今は味方だと思ってください。」
電波発信体、獣機が迫っている。
「扉を閉めろ!!」
デイエートと呼ばれた女戦士が命令を出す! リーダー格か?
まだ、少女っぽさが抜けてないくらいの年齢に見えるんだが?
「おまえは?」
「私はここで迎え撃ちます! あなたこそ。」
にやりと笑う女戦士。
「わたしは…こっちだ!!」
教会の石積み、わずかばかりの凹凸を手懸かり、足懸かりにして、するすると体を引揚げる。
たちまち、教会の屋根に陣取った。
すげえ! 凹凸が少ない同士、親和性が高いのか?
俺が失礼なことを考えている間に、獣機が姿を現す。3体。
まずいな、1体より2体、2体より3体が厄介に決まってる。
連携やフェイントを混ぜられたら対応できないぞ。素人だ。
出会いがしらにパワーで押し切ったさっきみたいにはいかない。
どうする?